表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親友を作りたいなら女の子になればいいじゃない  作者:
最終章. 天使との運命の文化祭
37/40

37. 離れない思い

ということで、37話です。残りは40話だけなので、なんとか間に合わせたいです。

 目の前に立つ目つきの鋭い男。我街快斗。こいつが俺をいじめた張本人? 我街はニヤつきながら話し始めた。


「まさか柏木が元気にこいつらとつるんでるとは思わなかったぜ」


 そう言って俺の方に手を乗せようとしてくる。それを隣にいる翔が手で弾く。


「気安く触ってくんな。お前、どの面下げて会いにきたんだよ」

「どの面?」


 翔と我街の間に見えない火花が散っているように感じる。すると、悪びれる様子もなく我街は言い捨てた。


「こんな面だよ!」

「ふざけんな!」


 手こそ出さないものの、二人ともヒートアップしている。俺は不安げの顔で二人を見ている。


「はぁ、柏木は引きこもりになったとか聞いてたのによ。いつ元に戻ったんだ?」

「え? ここ最近、だけど」

「半年くらいしか落ち込んでなかったってわけか、あーつまんね」


 我街の様子が掴めない。一体、何故ここに現れて何故俺に絡んでくるんだ。表情も笑ったりつまらなそうにしたりまるで掴めない。


「お前は……なんで奏にあんな事したんだよ!」


 翔は怒りに満ちた顔で我街にそう問いかけた。すると、我街はあっさりと答えた。


「気に食わなかったから、ただそれだけだよ」


 そして、俺を睨みつつも話を続ける。


「誰に対しても優しく、真剣で助けてくれる。そんな真人間みたいな態度が気に食わなかった、だからいじめてやったんだよ」

「お前、そんな理由で!」


 我街の言葉でますます(たかぶ)り始める翔。動き出そうとする翔を美香が腕を掴んで止める。


「本当にあの時は最高だったぜ。事が面白いようにうまく運ぶんだからな」


 だが、我街は言葉をやめない。まるで俺たちを煽るように話し続ける。


「もともと奏を気に食わない奴らは何人かいたんだよ。そいつら集めてクラスに小さな噂を流した。本当あいつらバカだよな、あんな噂で転がされて流されて」


 俺は息を呑む。話は続く。


「クラスが盛り上がってきたら、後はお前ら二人を引き離すだけだ。友井は女子に動いてもらわないと難しかったが、翔、お前は本当簡単だったな。あんな作り話にまんまと引っかかって、大事な友達を見捨てるなんて薄情な奴だよなー」

「お前!」

「翔! 奏も手伝って!」

「うん!」


 我街の言葉に翔の頭には血が上ってしまった。美香と二人掛かりで両腕を掴んで抑えるが、離してしまったら一瞬で我街と喧嘩を始める勢いだ。


「それで、柏木、お前が日に日に弱ってく姿、お笑いだったぜ! 本当あん時はスカッとしたよな。学校も結局は何も解決しなかったしな」

「お前、俺だけじゃなく奏までも!」

「翔やめなって!」


 ニヤつきながらこっちを見る我街。俺は、翔の腕を離すと、我街の前に立つ。


「奏?」

「なんだ? 柏木」


 俺は、我街の言葉に、自然と怒りを感じなかった。もちろん翔や美香のことを悪く言われると頭にくる。でも、俺のことをなんと言われても、あの時のことを言われても、特に怒りを覚えない。

 それは、多分今までのことがあったから。むしろ、エリスと出会ってからのことの方が大きく感じたから。そして、さっき過去の全てを終わらせたから。

 俺はもう、あの時のことを乗り越えたから。だから、俺はもう。逃げない!


「あの時の俺は、辛いことに耐えられなくなって、自分が納得するまで向き合わないで逃げた。でも、もう違う。向き合うことで、変わることがあったから。俺はもう逃げない!」


 俺の言葉に、うろたえたように我街は一歩後退りをする。だが、まだ余裕の表情で俺に言葉を吐き捨てる。


「何が変わっただよ。お前なんて、一人になれば何もできない、ダチがいないと何もできないただのザコなんだよ!」


 すると、後ろから背中を押された。隣にはいつのまにか翔と美香が並んでいる。


「奏には俺たちがいる」

「だから、一人にはならない」


 二人の言葉に、我街は鼻で笑った。


「簡単なことで離れていくお前たちが何を言ってんだよ」


 その言葉に一瞬顔を曇らせるも、二人は迷うことなく我街に告げる。


「「もう俺たち(私たち)は離れない!」」


 一瞬の間が訪れる。我街は予想してなかった返答に困惑しているようだ。


「お前ら、本当に何言ってんだ?」

「俺たちは失って、大事なものに気がついた」

「だから、もう二度と離さない」


 二人がこっちを見る。二人の言葉に、胸が熱くなる。俺は、大きく息を吸うと、我街に一言をぶつける。


「俺は何があったって、もう挫けたりしない! だって、支えてくれる人が、俺にはいるから!」


 我街の表情が歪んだ、そして一瞬だけ怒りを見せると、まるで火が消えるように我街は無表情になった。


「あー、しらけた。帰るわ、じゃあな」


 そして、つまらなそうな顔を向けると俺たちを背にして公園を後にした。


「見たかよ! あいつの顔」

「私たちが予想してた反応しないもんだから、ふてくされて帰っちゃった!」


 我街を退けたことで喜ぶ二人とも。これで、ようやく全てのことにケリをつけられたのかな? 何もかもを失ったことも、前に進めなくなったことも、全部終わったんだよね?

 気がつけば日は暮れ始め、夕方から夜へと変わり始めていた。


「もうこんな時間」

「話の続きはまた今度だな」

「そうだね」


 俺たちはまた会う約束をすると帰ることにした。みんなで公園の入り口へと向かう。


「また、会えるよね?」


 不安になって二人に尋ねる。二人はやれやれとしながら答える。


「当たり前だろ」

「離れないって言ったじゃん。もう、しょうがないな」


 そう言って、美香は片手を出してきた。


「これって?」

「指切り、何があっても離れないって約束しよ! ほら、翔も早く」

「わーったよ、ほら奏も」

「うん」


 三人で片手を出し、小指を立てる。そして、三人の小指を絡める。三人だから絡めるまでに少してこずるもののなんとかできた。


「いい? 私たちは何があっても」

「決して離れることなく」

「互いを助け合うことを約束します」

「じゃあ、いくよ」


『指きりげんまん、嘘ついたら針千本、飲ます。指切った!』


 掛け声とともに三人の小指を離す。


「と、これでもう私たちは離れない」

「うん」

「今度何かあったら、必ず俺たちが奏を支える」

「俺も、二人に何かあったら支えるよ」

「だから、また今度も会うからね。ちゃんと予定開けといてよ」

「わかった」


 そうして俺たちは今度こそ別れた。俺はエリスと、翔は美香と一緒に帰った。翔には美香を家まで送ってもらうことにした。俺としても、二人が付き合うことには賛成だし。余計なお節介かもしれないけど。

 そして、エリスと二人で帰り道を歩いている。エリスは、我街が現れてから俺たちにはあまり関わろうとはせず、今は暗い表情でいっぱいだった。


「よかったですね。お二人とまた仲直りできて」

「う、うん」


 話しはするものの長く続かない。こっちから話しかけようとしても、なんで声をかけていいのかわからなかった。

 そんなことをしてるうちに、家の前に着いてしまう。


「ようやく帰ってきた! おかえり!」


 そこに、俺の家の前で立っている少女が話しかけてきた。年は小学校低学年くらいだろうか。

 可愛らしい服を着たまだ幼い少女。それが俺の家の前で俺に話しかけてきている。一瞬人違いかと思って後ろを振り向くと、後ろにいたエリスが驚きの表情をしていた。


「えっ!? エルシー様?」

「エリスの知り合いか?」

「ええ、天界の女神様です」


 どうやらエリスの知り合いみたいだ…………って、今なんて言った? 女神様? 

 もう一度少女の方を向くと、にっこりした笑顔を向ける。


「えへへ、久しぶりエリス。それに、はじめましてだね柏木奏くん」


 この、幼女が女神様!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ