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親友を作りたいなら女の子になればいいじゃない  作者:
最終章. 天使との運命の文化祭
36/40

36. 告白

とうとう31日になってしまいました……。なんとか最後まで粘ってみます。今日の夜には上げられるところまでは上げます!


ちなみに、話数はギリギリ40話になりそうです。

 約束の日当日。待ち合わせ場所は、俺たちがよく遊んでた公園ということになった。手早く身支度を済ませると玄関で靴を履き始める。


「本当にいいんですか?」


 エリスは不安そうな顔で聞いてきた。


「大丈夫」

「でも……」


 納得のいってなさそうな顔をしている。でももう決めたことだし。覚悟もできてる。


「ほら、もう時間だし」

「わ、わかりました」


 約束の時刻まで時間がなくなってきた。やや強引に話を切り上げると家を出る。と言っても、家から公園までは十分くらいで着くわけだけど。

 歩きながら、エリスはまだ不安そうにこっちを見てくる。不安になる理由はわかるのだけれど、こればっかりは俺は折れる気がなかった。

 どうしても、二人にはズルをしたままでいたくない。だから、二人には話さなきゃいけない。そう思った。

 そうこうしているうちに公園が見えてきた。大きい木下、そこに二人の人影見える。先に集まってたみたいだ。

 二人もこっちに気がついたのかこっちを見てくる。ようやく見えた二人の顔は、驚きの表情をしていた。


「え、えーと」

「なん、で?」

「お待たせしました」

「お久しぶりです」


 まあ、こうなることは予想してたけど。だって、今の俺は。


「「なんで、奏向 (ちゃん)が?」」


 まだ女の、奏向の姿のままだったから。


「あはは、まあそうなりますよね」

「実は、お話したいことがありまして」


 やらなきゃいけないこと。最後のネタばらしをすること。そのためにこの姿で来た。混乱した様子で美香が尋ねてくる。


(・・)は? もしかして今日は来れないとか?」


 (・・)の代わりに奏向が来たのならそう思ってしまうだろう。まあ、(・・)は既に来てるんだけど。


「いいえ、ちゃんと来ます。というかもう来てますよ」

「「えっ?」」


 二人は驚く。キョロキョロとあたりを見渡すが公園には俺たち四人しかいない。


「どこに(・・)がいるの?」


 自分で決めたこととはいえ、やっぱり緊張する。深呼吸を一回挟んでから答える。


「目の前ですよ」

「「???」」


 さっぱりわからないという顔でこっちを見る二人。真剣な顔で、二人に真実を告げる。


「私が、いや俺が、(・・)だよ」

「「………………えっ?」」


 完全に訳がわからない。理解できない。何かの冗談なのか。きっとそんな状態になっているのだろう。


「エリス、お願い」

「わかりました」


 俺は後ろにいるエリスに声をかけると、エリスは一回指を鳴らした。その瞬間、俺の体が輝き始めた。

 目の前の二人はおろか、俺ですら目を瞑ってしまうほどの光が俺の周りを包み込んでいく。

 そして、次第に自分の感覚が変化していった。体の重心がいつもと違うように感じ、重量感も感じ始める。

 何かが変わっていく。そんな感じがするが、目を開くことはできない。でも、痛みは感じない。

 そして、目を瞑っていてもなお眩しいと感じるように光が輝きを増したと思うと、次第に弱く消えていった。

 ゆっくりと目を開けると、さっきまで見ていた景色と少しだけ違う。目線が変わったからなのか見え方が少し違って感じた。

 いつのまにか着ている服も変わっていた。着心地の良かった服が、やや頼りなかったスカートが、きっちりとしたシャツとズボンに変わっている。

 エリスが言っていた通り、姿だけじゃなくて服装の変化も申請してくれていたみたいだ。

 そして、視線を前に向けると目を丸くした二人が呆然と立っていた。


「な、な、何……これ?」

「え、や、か、かなた?」


 少しだけ声を出して、声の出し方を確認すると二人に、改めて自己紹介する。


「うん。俺は、奏、柏木奏だ!」


 そのあとしばらく、事情の説明や姿が変わったことなどをエリスと二人で説明したが、二人がなんとか理解するまでには数十分くらい時間がかかった。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ってことは、()()ちゃんは、奏本人だったってこと?」

「そういうこと」

「で、エリスさんが天使だと」

「はい。そうなんです」


 ようやく全部説明すると、二人はなんとか事情を理解してくれた。


「「って信じられるか!?」」


 というわけにはいかなかった。母さんの時もそうだけど、やっぱり簡単には信じられないよな。

 この真実を二人に話していいのかエリスに聞いたところ、最後の概念変更でどうにでもなるらしい。

 ちょっとだけ意地悪な顔をすると、二人に今まであったことを話す。


「だよね。でも、ここ一月のことは知ってるよ。例えば、翔の好きな人とか?」

「なっ!」

「っ!!」


 翔は動揺し、美香は顔を赤く染めた。ちょっとずるい手だけど、信じてもらうにはこれしかないだろう。

 奏として翔からも美香からも、特にその話は聞いていないため知ってるのは直接聞いた()()のみ。つまり俺が()()であった証明になる。

 俺はそっと翔の耳元にささやく。


「(美香のこと、ずっと好きだったんでしょ)」


 するとグッと服の襟元を掴まれる。


「わかった! わかったから! 信じるから!」

「あ、うん」


 すごい形相の翔に勢いで押された。今までに見たことない顔で驚いた。そして、手を離されると微妙な空気になってしまう。

 これ、間違えたかな。美香と翔はそっぽを向くし、話しかけにくい。

 すると、美香がこっちを向いてきた。


「じゃあ、この間ノリノリでアイドルソング歌ってたのも奏だったってこと?」

「うっ!」

「マジかそれ……。それじゃあ、俺と話をするために、あんな大胆な事したのも奏……」

「何!? 大胆な事って!」

「はぅ!」


 自分でしたことが、特大ブーメランとして返ってきた。やばい、二人の俺を見る目がどんどん酷いものになっていく。


「奏、翔にそんなことをしてたの!?」

「だ、だって、そうするしかなかったから」

「やばい、奏がノリノリでアイドルソング歌ってる姿想像できねえ」

「それはやってみたら結構楽しかったよ」


 二人は俺のことを腫れ物を触るように接し始めた。そりゃ、男だった奴が女になって大胆な行動してればそうなるか。


「はあ、だから反対だったんですよ」


 後ろからエリスが俺の横に歩いてきた。


「お二人とも、奏がそのような行動をした一番の理由はお二人と再び仲良くしたかったからです」


 その言葉に二人はハッとした。俺としてもそれを目的に行動していた。まあ、カラオケとか自分が楽しむこともしてなくはないんだけど。


「ですからすべての行動が、奏自身が、女の子女の子したくてしたものではありません」

「女の子……」

「女の子?」

「はあ……」


 いい感じにフォローしてくれるかと思ったけど、やっぱりエリスはエリスだった。おかげさまで空気は変わったけど。


「そう、だよね。奏は頑張ってたんだよね」

「そうだよ、な」


 なんとか二人とも納得してくれたみたいだ。そしたら、言わなくちゃならないことは言わないと。


「二人とも、あの時のこと、なんで仲悪くなっちゃったのか、それが知りたくて赤の他人として接触して、二人が話したくないこと、本当は俺がきちんと話を聞かないといけないこと盗み聞きみたいに聞いちゃって、本当にごめん! 二人には隠したままにしたくなかったから、()()としてここに来たんだ」


 二人に頭を下げる。美香が苦しんでたこと、翔が悩んでたこと。本当は俺が、奏が知らなきゃいけなかったこと。この謝罪にはその申し訳ない気持ちと、奏として聞けなかった悔しい気持ちの二つがあった。


「奏、私の方こそ一番助けが欲しい時に力になれなくて、ごめん!」

「俺だって、勘違いでお前を傷つけて、悪かった」


 顔を上げると、二人も俺に向かって謝ってくれた。二人にもそれぞれ事情があるのに。


「二人は悪くないよ。俺が、勝手に思い込んで二人のこと諦めて、だから」

「違うよ私の方が」

「いや、俺の方が」


 そうやって責任は自分だと三人で言い合い始めた。初めは真面目に言い合ってたけど途中から、馬鹿馬鹿しくなってきた。


「なんで俺たちコントみたいな事してるんだっけ?」

「だって、みんなそれぞれ事情があって、それで……」

「だったらさ、みんな悪いってことにしちゃわない? それで、謝っておしまいって事で」


 三人それぞれを目を合わせると、同時にうなずいた。そして、


『ごめんなさい!』


 ようやく言いたかった一言を、二人に、二人から伝えることができた。途端に笑い始めてしまう。


「あはは、私たち何してんだろ」

「ほんとほんと。ぱっと謝れば良かったのにな」

「みんなが大事に思ってるっていう証拠だろ?」


 今まで心に溜まってた気持ちがようやく解放されて、互いに話したいことでいっぱいになった。

 昔の思い出、高校に入ってからのこと、他にもいっぱい。今まで話せなかったことを、昔と同じようにバカな事しながら話す。


「にしても、奏にあんな趣味があるとはね〜」

「だから、あれは別にそういうことじゃ」

「だったらさ、今度カラオケ行かね? 奏の歌も聞きたいし」

「それいいね!」

「だから……」


 久しぶりの感覚に、心がすごく暖かく感じる。ようやく取り戻せた大切な場所。それが、すごく心地良くてたまらない。


「(よかったですね、奏。ようやく取り戻せて。これで、私も……)」


 ちらりと後ろを向く。エリスが何かを言ったような気がしたのだが、エリスはこっちをただ微笑んでるだけだった。

 その視線、エリスの後ろの方から人影が歩いてくるのが見えた。公園の真ん中、俺たちの方へと真っ直ぐに向かってくる人影。

 背格好から高校生くらいに見えた。そして、その人影は俺たちに向かって声をかけてきた。


「お前ら……、もしかして柏木たちか?」

「おっ、お前!」


 翔が大きな声を上げる。俺はいまいち思い出せないが、確か中学の頃の同級生? その人は俺が思い出せないのを悟ったのかため息を漏らす。


「もしかして、柏木は俺のこと覚えてないのか? 悲しいなー」


 すると、翔が後ろから声をかけてきた。


「奏。こいつだ。こいつが、俺に嘘を流してきた奴で、お前をいじめた張本人。()(がい)(かい)()だ!」


 我街快斗。そいつは俺の目の前に立ち、めんどくさそうに頭の後ろを掻いている。こいつが、いじめの張本人なのか?

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