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親友を作りたいなら女の子になればいいじゃない  作者:
最終章. 天使との運命の文化祭
34/40

34. 女子会

投稿遅れてしまい本当にすいません!!なかなか筆が進まなかったり、用事ができたり等で遅れてしまいました。

先週の投稿で「明後日までには……」て言ってたのが明後日どころか未来日記になってしまいました……。

次の投稿はいつも通り投稿します!

 家に着くと、遅めの夕食を食べてリビングでくつろいでいた。


「翔さん、優しそうな人でしたね」


 横からエリスが話しかけてきた。


「夜にお家まで送ってくれるなんて、気づかいのできるいい人じゃないですか」


 両手を合わせながら翔を褒めるエリス。


「わかってたの? あの時間に帰ってくるって」


 質問しても、顔色一つ変えずいつもの調子で答えてくる。


「いいえ、たまたま玄関で外の声が聞こえただけですよ」


 俺が翔と別れる際、エリスは丁度いいタイミングで玄関から姿を現した。まるで狙っていたかのようなタイミングで。


「せっかくですから奏向のお友達も拝見したいじゃないですか」

「あー、はいはい」

「むー、奏向素っ気ないです」


 そう言うとエリスはキッチンへと向かい、洗い物を始めた。俺はなんとなくぼーっとテレビ番組を眺める。

 すると、テレビの前に置いてあるタブレットに通知が来ていた。翔かなと思いタブレットを手に取ると、表示されていた相手は。


「美香?」


 美香からメッセージが来ていた。内容を確認してみる。


 ----これ見て----


 一言だけ書かれたメッセージの後に、長い文字の羅列が送られてくる。これは、URL?

 どうやら何かのサイトのアドレスらしい。とりあえず、確認してみる。すると。


「美香の、インストのアカウント、なのか?」


 それは、SNSアプリ、"インストグラマー"の美香のアカウントのURLだった。インストは主に写真などを投稿するSNSアプリだ。

 美香の投稿した写真がいくつか表示されている。どうやら高校に入ってからは投稿はしていないらしい。

 その中で、ある一枚に目が止まった。その写真は、美香の家族と遊園地に行った時の写真だ。

 よく見ると、俺と美香が二人並んで写っていた。


 ----写真見た?----


 写真を見てると、美香からメッセージが送られてきた。とりあえず写真を見たことを伝える。すると、すぐに次のメッセージが送られてくる。


 ----なんか、写真使われたかも----


 使われた? 一体こんな写真を誰が使うというのだろう。そんな時、翔の話を思い出した。


 ----誰に使われたの?----


 翔が見た写真は俺と美香のツーショットだと言っていた。なら、この写真の俺たちの写ってる部分だけ切り取ればツーショット写真は完成する。


 ----(・・)をいじめてた奴----


 案の定美香の返信も同じことを言っていた。つまり、翔が見た写真は美香の写真を加工したものだったってことか。

 ってことは、翔は美香に話をしたってことだよな。じゃないと写真の話出てくるのもおかしいし。翔はうまくやれたんだろうか。


 ----ごめん----


 そんなことを考えていると、美香からメッセージが届く。ごめんって、美香が悪いわけじゃないのに。


 ----美香のせいじゃないよ。それに、俺も全然気にしてないし----


 俺も知らなかった話だし、特別怒ってたりはしてないのだけど。美香はもしかしたら申し訳なく思ってるのかな。


 ----ありがと----


 そのメッセージを境に、美香からの連絡はなくなった。あんまり気にしてないといいけど。

 そしてまたしばらくダラダラと時間が過ぎていった。


「さっきの、誰からだったんですか?」


 そこに、食器洗いを終えたエリスが戻ってきた。


「美香からだよ」


 その瞬間、俺のスマホのバイブレーションが鳴った。画面に通知が表示されている。


「ん? また美香からだ」


 今度は奏向の方にメッセージが届いた。


「えーとなになに、急だけど今度の休み……ってうわぁ!」


 ブー

 ブー

 ブー


 読む暇もなく次々とメッセージが送られて来た。隣にいるエリスも驚いていた。ようやくバイブレーションが鳴り終わるとメッセージを最初から読み直す。


「えーと、今度の休みにカラオケ行かない? ってことみたい」

「カラオケですか!」


 カラオケという言葉に、エリスの目が輝き出した。飛びつくように俺に迫ってくる。


「いつですかいつですか!」

「こ、今度の休み、だって」


 メッセージの文面を読むと、やや強引に約束が取り付けられていた。とにかく、今度の休みに俺たちとカラオケに行きたいらしい。

 日にちや時間も既に決められている。断ることも出来なくないけど……。


「行きましょう! 奏向!」


 このエリスを、止められる気がしなかった。それに、こんなに強引なメッセージ。美香に何かあったのかもしれない。


「仕方ないか」

「やったー! 今から何歌うのか決めておかないとですね」


 そう言ってエリスはテレビの番組を音楽番組へと変えた。鼻歌まじりにスマホをいじっている。多分楽曲を検索しているのだろう。

 そういえば、カラオケなんていつ以来だったけ。ちょっと楽しみかも。俺はそんな楽観的な気持ちのまま、カラオケ当日の日を迎えた。

 今の自分のことを、よく考えずに。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「盛り上がっていくよ!」

「うわぁ! 美香さんって歌上手なんですね」

「う、うん」


 カラオケ当日。俺たちは地元のカラオケ店で集まるとすぐに中へと入った。四人ぐらいが楽に座れるスペースの部屋に案内された。

 部屋には大きなテレビモニターがあり、マイクが二つ設置されていた。ここのお店はドリンクがセルフのため、先にドリンクを取りに行く。

 戻ってくると早速カラオケ大会が始まった。曲を入れる機械で、美香は手早く自分の好きなアイドルソングを入れ、歌い始めた。

 美香の歌声は中々で、カラオケ大会とかに出たら上位に行けそうな歌声をしていた。

 そうして美香の歌に聞き惚れていると、エリスが肩を叩いてきた。


「奏向は何歌いますか?」


 エリスは俺に楽曲を選ぶ端末を渡してくる。俺は何歌おうかなー、無難に流行りの男性ボーカルの曲とかかな。

 そして、ようやくここにきて俺はあることを思い出した。


 あれ? 俺ってこの姿になってから歌を歌ってなくね?


 美香の歌が終わるとともに急激な焦りを感じた。歌える歌がない!

 俺が男の頃に歌っていたのはほとんど男性曲だった。だから今の女の声で歌えるかがわからない。

 音域も違うし、だいたい自分がどのくらいの高さの声を出せるのかわからない。

 そうすると、今の声の音域に合う可能性があるのは女性曲しかないわけだが。歌えるくらい知ってる曲なんてなかった。せいぜいCMで流れているサビの部分が歌える程度だ。

 それに曲を知ってたとしても結局この体で歌うのは初めてだ。うまく歌える保証はない。

 そうこうしているうちに次はエリスの番らしい。俺はなんとか必死にエリスにアイコンタクトを送る。

 しかし、エリスは何と受け取ったのか笑顔でウィンクして返してきた。そして、エリスの曲が始まった。

 曲調が落ち着いている曲、それを丁寧に歌い上げていた。儚げに歌うその姿は、長髪の黒髪がなびいて美しく見えてしまった。エリスも、美香に劣らず綺麗な歌声だった。


「奏向ちゃん曲入れた?」


 冷静な分析をしていたが、美香の言葉で一気に現実に戻される。


「えーと、まだなんですよ」


 苦笑いで答える。すると、美香は心配そうに聞いてきた。


「もしかして、奏向ちゃんってカラオケ苦手だった?」


 まさか自分の歌声がわからないから歌えない、とは言えるわけもなく。


「いえ、苦手じゃないんですけど久しぶりなので何歌おうか迷っちゃって」


 というものの歌える歌が思いつかないわけだけど。


「そっか、ならゆっくり探してて大丈夫だよ。もし、途中だけ歌えない曲とかあったら教えて。知ってたらデュエットとかで歌ってもいいし」


 美香はそう言うともう一つの端末で曲を探し始めた。すごくありがたい申し出だけど

 途中どころかサビしかわからない歌が大半なんだよね。

 そしてエリスは歌い終わり、再び美香に順番が回る。流石にそろそろ何か歌わないとまずい。

 俺は歌い終わってジュースを飲んでるエリスに助言を求めた。


「あっ、すっかり忘れてました。じゃあ奏向は歌える歌がないってことですか……。何かありませんか?」

「サビが歌える程度の曲しかない」

「そうですか……。なら、この曲ならどうですか?」


 エリスは端末を操作すると俺に画面を見せる。端末の画面には曲名とともに歌詞が表示されている。あれ? この曲知ってる。


「私がここ数日ずっと聞いてた曲です。奏向も鼻歌歌ってましたよ」

「ほんと? 気づかなかった」


 ここ数日エリスはカラオケが楽しみなのか家でよくスマホから曲をかけていた。それを知らず知らずのうちに覚えて、鼻歌を歌うまでになってたようだ。


「私も一緒に歌いますから、やってみましょう?」


 問題は音程が取れるかどうか。今の声で歌えるかどうかだ。美香の曲が終わりに差し掛かっている。

 もう、なるようになれ! 俺は端末の転送ボタンを押して曲を転送する。そして、美香が歌い終わった。


 横からエリスがマイクを差し出した。それを僅かに震える手で受け取る。エリスは美香からマイクを借りた。


「二人で歌うんだ!」

「はい。せっかくなのでデュエットです」


 モニターの画面が切り替わる。そして、俺たちが選んだ曲が表示された。前奏が流れ、いよいよ歌い出し。

 エリスとともに歌い始めた。俺はやや上ずった声で歌い始める。モニターに表示されてる音程バーより、やや高い声になってしまった。

 それからもエリスにフォローされつつも不安定な音程が続く。ただ、思った以上に声の感覚が男の時と変わってなかった。

 自分から高い歌声が出てることに違和感を感じていたけど、次第に女性として歌うことに慣れ始める。

 サビに入る頃には、男の時と変わらないくらいに歌えるようになっていた。

 エリスとともに声を合わせながら。次第に緊張が高揚感へと変わってくる。歌ってるのが、楽しい!


「うわぁ、二人ともすごい」


 歌い終わる頃には最初の緊張が消えてしまっていた。もっと歌いたい。高い声を出してみたい。そう思うようになっていた。

 それからはエリスが聴いてた曲を一人で歌ったり、サビだけを美香と一緒に歌ったり、ついには男性曲もある程度歌えるようになってた。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ここらへんで一回休憩しようか。ずっと歌いっぱなしじゃ喉にも悪いし」

「そうですね」


 しばらく歌った後、一回休憩を挟むことにした。俺は飲み物を足しにドリンクコーナーへ行った。今度は炭酸飲料に加えて、ホットココアも持っていった。

 部屋に戻ると、乾いた喉を潤すように炭酸飲料を飲む。いろいろあったけど、俺としてはまだまだ歌い足りないといった感じだった。

 けど、大事なことが一つだけある。今日のこのカラオケ会のことだ。俺はドリンクを飲んでる美香に聞いてみる。


「美香さんは、なんで今日カラオケに誘ってくれたんですか?」

「え? あー、それね」


 罰が悪そうな顔をする美香。やっぱり何かあったみたいだ。


「何かあったんですか?」


 エリスが心配そうに聞くが、美香は大振りに手を振って答える。


「いやいや大したことじゃないの」

「そう、なんですか?」

「うん」


 すると、姿勢を正しながら美香が話し始めた。


「今日は強引に誘っちゃってごめんね。実はさ、気持ちの整理ができないことがあってね。それで今日は気分転換に付き合ってもらったんだ」


 照れ笑いして答える美香。特別悪いことがあったわけじゃなさそうだけど、気持ちの整理ができないことって……。

 そういえば、あの日は翔が美香に連絡した日だっけ。


「この間ね。奏向ちゃんのおかげで翔から連絡がきたんだ」

「そうだったんですか」


 やっぱりあの日、翔は美香に連絡したらしい。と言うことはあの日話したこと全部を聞いたってことなのか。


「それでね、翔と(・・)が仲が悪くなったのって昔私がSNSに上げた写真とかも関係してるって聞いてさ」


 直接的には美香は関係ないのだが、実際に利用されてたのは事実だ。美香はそれに責任を感じてしまったのかも知れない。


「あの、それは……美香さんは何も「これに関しては私も考えなしに写真あげたり発言したりしたって思うし、翔にも、(・・)にも謝ったんだけど」」


 すると、美香は急にもじもじし始めた。カラオケルームの暗い照明の中、やや頬が赤くなっているように見える。


「その後ね、あいつ、私のこと。す、好きだったとか言ってきてね!」

「そうだったんですか!?」


 あっ、そっちか! 美香は顔を朱に染めて、声を荒げつつ話す。


「なんかお前のことが好きだったから、嫉妬して喧嘩した! みたいなこと言ってきてさ! ほんとに、ほんとにあり得なくない!?」

「おめでとうございます!」

「「いやそうじゃなくて!」」


 エリスの反応に、俺と美香は同時にツッコミを入れる。翔は、あの日、本当に全てを告白したらしい。美香に抱いていた恋心も全て。

 そんなことを仲の良かった友達から急に言われたら、そりゃ気持ちの整理もつかないわけだ。

 長い付き合いの俺ですらそのことを聞いて驚いたくらいだ。好きと言われた美香にとっては何倍も心を揺さぶらせられたことだろう。


「あいつ本当にデリカシーないっていうかさ……。 タイミングを考えなよ! タイミングを! おかげでここしばらく顔すら合わせられなかったじゃん」


 美香は両手で顔を隠してしゅんとなった。


「えと、それで翔さんにはなんて返事したんですか?」

「そんなの! "バカじゃないの!?"って言ってやったよ!」


 そりゃそうだよな。今頃翔はフラれたとかへんな勘違いしてなきゃいいけど。美香は火照った体を手をうちわがわりに扇いで冷まそうとしている。


「翔さん。美香さんのこと、大好きだったんですね」

「襟澄ちゃん! そうストレートに言われると……、辛いから」


 美香は恥ずかしそうに襟澄を制止する。


「それで、美香さんはどうするつもりですか?」


 このままだと、一向に仲直りできる気配がない。美香はどうするのだろう。


「それは。私から、奏向ちゃんにお願いしてけしかけてもらったわけだし。そのためのカラオケだったから。だから……」


 顔の赤みは少し引いている。それに、美香は覚悟を決めたようにグッと拳を握りしめていた。


「"そんな過去のことでうじうじしてる奴のことなんか好きになるかバカ! さっさと大事な親友と仲直りして来い!"って言ってやるつもり」


 美香は声高らかにそう言った。そして、テーブルに置いた端末を手に取る。


「さっ、休憩終わり! 今日は夜まで歌いまくるよ!」

「はい! 美香さんが満足するまでお供します」

「私も、まだまだ歌います!」


 そしてまた、カラオケ大会が始まった。昼前から始まったカラオケは、お店を出る頃にはとっくに日が落ちていた。

 その日は三人で軽く夕食をとったのち解散となった。帰り際の美香はいつもと変わらず、気分転換できたみたいだ。

 その夜、翔から(・・)に対してごめんのメッセージが送られてきた。美香との件があったから、なかなか俺に連絡を送れなかったみたいだ。

 ようやく、二人と再び連絡を取るのとができた。残された問題は……一つだけ。


 グループ名: 大親友

 ----というわけだから、この日に集まるからね! わかった二人とも?----


 ----了解。美香も奏も遅れるなよ----


 ----絶対遅れずに行く----

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