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親友を作りたいなら女の子になればいいじゃない  作者:
最終章. 天使との運命の文化祭
33/40

33. 恋は盲目

土曜投稿です!作者はまた体調を崩しましたが、投稿ペースは落としませんよ。

活動報告は明日あたりに更新します。そして、明後日あたりには……。


追記 2019.12.9

活動報告更新しました

 飲み物を足して来て元の席へと座る。一口飲んでから。


「話の続きをどうぞ」


 と翔に続きを促した。すると、翔は大きくため息をつく。


「お前ってマイペースだな。それに、それ何足してきたんだ?」


 翔は俺の飲み物を指差す。


「オレンジジュースですけど」


 グラスに足してきた飲み物は正真正銘オレンジ色のオレンジジュースである。しかし、翔は怪しげな目で見ている。


「じゃあなんで泡が出てんだよそれ」


 オレンジジュースの水面にはいくつもの泡がぷくぷくと出来ていた。


「そりゃ、炭酸と割ったからですよ。隣に炭酸水があったらミックスしたりしませんか?」

「いや、まあ飲みたいときはやるけどさ。もういいや、とにかく話を続ける」


 そう言って翔は話を続けようとした。今日の俺はテンションがおかしいのか、まるでエリスみたいなことをしてる気がする。

 それも、久々に翔と喋ってるからなのかな。そんなことを思いながらもう一口オレンジソーダを啜る。


「言っとくけど、本当に呆れたりするなよ。あの時は、その、幼かったんだよ」

「ん? はあ、わかりました」


 呆れたり幼かったりってどういうことだろう。翔は真面目な顔で、話を始めた。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 あれは、奏がクラスで変な噂をされ始めた頃だ。そこら辺のことは美香から聞いてるんだろ?

 俺が話すのは事が大きくなり始めた頃の話だ。最初は軽いいじり程度だった噂も、途中から軽蔑するような感じに変わっていった。

 クラス全体で奏をいじめ始めた。正確にはそういう雰囲気になったって事だけど。誰かが奏に何かをするのを黙認するどころか煽るようなムードになってた。

 誰もおかしいとは思わなくなった。いや、おかしいと思えなくされていた。いじめてる奴らも過激な奴らだったからその行為に意を唱えるやつを脅してたんだ。

 俺も同じようなことをされた。けど、そんなことで奏から離れることなんてない。本当はそのはずだったんだ。


 ある時、いじめの発端になった奴が俺に同じようなことを言ってきた。もちろん俺は構わずに離れようとしたが、あいつは、俺にあるものを見せたんだ。

 それは、奏と、美香の写真だった……。それを見せられてから、俺は奏を嫌うようになったんだ。

 そして、俺は奏に声をかけられた時、こう言ってしまった。


「もう、俺と関わるな!」



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「写真……ですか?」

「ああ」


 俺と美香が写ってる写真で何故翔が俺を嫌うことになったのか、今の話からはわからなかった。だいたいクラスのやつがなんでそんな写真を持ってたんだ?


「その写真はどんな写真だったんですか?」

「……えーと、だな」


 翔は踏ん切りがつかないのか口をまごまごさせながらようやく写真の詳細を話した。


(・・)と美香の、ツーショット写真だ。遊園地で撮られた」

「遊園地?」


 いくら記憶を巡っても、美香と遊園地でしかもツーショットでとった写真なんて記憶にない。それなのに、なんでそんなものがあるんだ?


「その、遊園地で撮られたってことは本当のことなんですか? 例えば合成写真とか」

「いや、それはないと思う。写真自体に変なところはなかったし、美香本人も遊園地に行ったって言ってたし」

「あ、そう、なんですか」


 俺の考えを翔は即座に否定した。だけどあの頃に遊園地になんて美香と行った記憶ないぞ。しかも二人でなんて……。翔の証言ではまだ理由がはっきりしなかった。とりあえず、その話を置いて別の気になることを聞いてみる。


「あの、なんで翔さんは(・・)君と美香さんのツーショット写真で(・・)君を嫌いになったんですか?」

「っ! そ、それは……」


 そう聞いてみると、翔はやや顔を赤らめ始めた。翔のやつ、なんで恥ずかしそうにしてるんだろう。

 翔は覚悟を決めたように目をカッと開くと、やや小声で答え始めた。


「み……きだっ……からだ……」

「ん? み、ぎだったから?」


 小さすぎてよく聞き取れない。変な聞き間違いをしたことに苛立ったからか、今度は大きい声で答える。


「俺は! 美香が! 好きだったからだよ!」

「……………………へ? えええ!?」


 翔は息を荒くしながら大きく肩を上下させると、次第に体中を真っ赤にして小さく丸まったようになった。

 え? か、翔は美香のことが好きだった!? そんなこと、ちっとも気がつかなかった。

 恥ずかしそうにする翔に、反射的に言葉をかけてしまう。


「い、いつからなんですか!?」

「お前は鬼か!」


 声を荒げて怒りを露わにする翔。よくよく考えれば、ほぼ赤の他人に自分の好きな人をカミングアウトするのって一種の拷問かも。

 しばらく膝を抱えて(靴は脱いでた)うずくまっていたが、ようやく落ち着くと再び話をしてくれた。


「いつからかは、覚えてない。気づいた時には、気になってて」


 真面目に話す翔に対して、実際は(・・)本人が聞いているということに罪悪感を覚えた。


「でも、あいつらとの仲は変になりたくなかったから。だから、言わずにいたんだ」

「そう、だったんですか」


 翔は自分の恋路よりも、俺たちとの仲を優先してくれた。それは、かなり辛いことだと思う。


「そんな時に、二人がまるでカップルみたいな写真を見せつけられて、まるで騙されていたみたいな気持ちになって……」


 翔は少しだけ震えていた。気持ちの中では複雑だったのだと思う。俺たちのことを信じたい気持ちと、騙されていたと疑う気持ちがぐちゃぐちゃになってて。


「だから、だから! なんであいつらはあんな時に二人でデートなんてしてたのかがわからねえんだよ!」


 そんな気持ちになったら、あんな行動をとるのも納得……。


「でーと……。デートですか?」

「ああ! あいつらはあの時二人だけで遊園地デートをしてたんだ! 俺を騙して、二人は付き合ってたんだよ! だから、俺はあいつのことを……」


 おかしい! 俺はデートなんて行った記憶はない。これは確実な事だ。なのに、翔はこう言っている。それに遊園地にだって最近は行って……。


「ああぁ!!」

「うわっ! な、なんだよ急に」


 突然声を上げたために翔は驚いてしまった。そうだ、そうだった。俺は、あの時期に遊園地に行った。美香と、美香の両親と行った。


「翔さん。その話は、半分嘘です」

「半分嘘? お前何言って……」

「確かに、(・・)君は美香さんと遊園地に行きました。でも、それはデートではなくて、本当は家族間でのお祝いだったんです!」

「家族? お祝い?」


 翔は意味がわからないと言った顔をしているが、構わず話を続ける。


「翔さんが話を聞いた頃に、(・・)君は美香さんのご家族と一緒に遊園地へ行ったんです。受験が終わったお祝いに」

「家族と、一緒に?」


 そう。あの時、美香の両親の提案で家族で遊園地へ遊びに行くことになっていた。ただ、母さんは仕事の都合で行けなくなり俺と美香の家族で行くことになったけど。


「はい。なので、その写真はその時に撮られたものかと」


 翔は信じられないと言った様子で体を(こわ)()らせていた。


「でも……、俺はあいつから、美香から直接聞いたんだ。(・・)とデートに行ったってな」

「直接、ですか?」


 翔が嘘を言っているようには見えなかった。いじめの発端となった人から聞いたならともかく、美香本人からデートだと言われたって。

 でも、美香ならそう言いそうだ。


「もしかしたら、美香さんも嘘をついてたのかも知れません」

「あいつが嘘を? そんなことしてなんになる!?」


 翔はもう訳がわからないと言った顔で俺に問い詰めてくる。でも、付き合いの長い俺たちならわかるはずだ。


(・・)君から聞きましたが、美香さんはよく二人をからかっていたとか」

「そ、それは……、確かにそうだったけど」


 美香はよくくだらないことで俺たちをからかうことが多かった。小学校の頃は子供だましのようなものが多かったが、中学になってからは恋愛絡みのことが多かったように思う。

 彼氏ができたとか、体を触ったとか触ってないとか、そんなことで俺たちをドギマギさせていた。

 思えばその時一番リアクションが大きかったのは翔だったと思う。もし、美香はからかうつもりで言ったのなら。


「わざと、翔さんをからかうためにデートだと言ったのなら辻褄が合いませんか?」

「っ!」


 実際のところは美香に直接聞くしかないが、可能性としては十分にあると思った。翔もそう思ったのか動揺している。


「その話は、(・・)君からも聞いた話なんですか?」

「…………」


 答えの分かっている尋問。自分がまるで犯罪者を問い詰めてるみたいで罪悪感を覚える。

 翔はずっと(うつむ)いて黙っている。


「私は、二人から直接聞いてみることを勧めます。その方が翔さんも納得できると思いますし」


 こうは言うものの、本人としては二人に聞くことは怖いことだと思う。自分が間違っていたことを認めること、自分のしたことを後悔すること、それを知ることはきっと怖い。


「いまさら、どうしろって言うんだよ」


 翔の言葉には覇気がない。しばらくどう声をかけていいか考えた後、翔に話しかけた。


「今、だからじゃないですか? 今だからやり直せる、今だから取り戻せる。そうじゃないですか?」


 店内には注文のコール音、食事で賑わった声、食器などの音、そんな雑音が響いていた。

 でも、この時は、その音すら感じない沈黙が流れていた。

 翔は体を震わすと……。


「あぁー! もうわかったよ! やってやるよ。美香にも、(・・)にも聞いて。勘違いかどうか確かめて、それで、それで謝ればいいんだろう!」


 自分の中の感情をぶつけるように大きい声でそう言った。でも、その顔は曇ったり、暗かったりしたものではなく、何かが吹っ切れたような清々しい顔をしていた。


「はい! 言ったからには、実行してくださいね」


 俺は軽くダメ押しをした。翔は拗ねたように顔を横に向ける。


「本当に、お前はなんなんだよ」


 愚痴のように溢れたその言葉に、今度はふざけずに答える。


「私は、三人の仲の良い姿が見たいだけのお節介さんです」

「なんだよそれ」


 そう言うと、ポケットからスマホを取り出して俺に画面を見せる。


「ほら、美香とも交換したんだろ? 裏で何か手引きされたら困るから、俺にも何かあったら連絡よこせ」


 照れているのか、それとも本当に不安だから見せてるのか、わからないが素直に連絡先を受け取る。


「わかりました。何かあったら連絡しますね」


 そう言うと、俺たちは二人でファミレスを出た。外は真っ暗で、時間も八時を過ぎていた。


「家は近いのか? って、(・・)の家に住んでるんだっけ。じゃあ、そこまで送るよ」


 急な誘いにちょっと戸惑った。


「大丈夫ですよ。家までここから近いですし」

「夜遅くに女子一人で歩かせるのは危ないだろ? 最近事件とか物騒なんだから」


 そう言って翔は俺の家の方へと歩き始めた。俺は慌てて後を追う。こういうところ、翔は気を遣えるんだよな。

 けど、女として扱われると少しドキドキしてしまう。気恥ずかしく、自分がか弱く感じ不安になる。そんな中で嬉しさもあって、いろんな感情でごっちゃになってしまう。

 それから、家に送ってもらうまでの間はお互いにぎこちない会話をしつつあっという間に家に着いた。そしてその後翔と別れた。

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