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親友を作りたいなら女の子になればいいじゃない  作者:
最終章. 天使との運命の文化祭
28/40

28. タピオカ

う……早速遅れてますが最終章開幕です。

 青い空が広がっている中で、太陽の光が燦々(さんさん)と降り注いでいる。八月を過ぎたというのに気温は夏とそう変わらない。

 未だにセミの声が聞こえてきて、まるで夏が終わった気がしない。

 教室のクラスメイトは髪が若干色づいていたり、肌が焼けて黒っぽくなっていたりとみんな何かしら夏の前と違っていた。

 そういう俺はというと、特別夏の前と変わりはないんだけど。


「というわけで、今年の文化祭の実行委員を決めたい。立候補はいるか?」


 静香先生がクラス全体に呼びかける。今現在は二学期の最初のホームルームであり、二学期のメインイベントとも言える文化祭の実行委員や出し物を決めている。

 今が九月の初めであり、来月の頭には文化祭が始まる。猶予はあとひと月ばかしと短く実行委員はかなり忙しいらしい。

 うちのクラスはかなりの人数が運動部に所属しているし、やりたいという人はなかなか出ないだろう。

 それに、出し物の意見や作業分担などの大変な仕事を進んでやる人なんてそうそうはいないし。


「はい! 私たちが立候補します!」


 いた。それもすぐ近く、俺の席の隣に。


「おお、柏木姉がやってくれるか」

「だから襟澄ですってば!」


 そう、手を挙げたのはエリスである。加えてエリスが言った言葉、それは。


「うん? "私たち"って言ったか?」

「はい! 奏向と二人でやります!」


 やっぱりこうなった。ここのところ、エリスの活発的な行動は単にエリス自身がやりたいだけなのではと思えてきた。もともとは俺の人間不信を治すためだったのに。


「というわけだ。二人に拍手」


 パチパチ、パチパチ

 俺には拒否権などなく実行委員になることが決定してしまった。先生も先生でこういうところは強引に話を進めてくる。まあ、もう慣れたけど。


「早速で悪いがこの先の進行は二人に任せていいか? 文化祭でのうちのクラスの出し物を話し合いで決めてくれ」


 そういうと、先生は教卓の前から窓際へと移動した。つまりは、話し合いを進行させろってことか。

 横にいるエリスはすぐさま教卓へと向かう。俺も急いで立ち上がると、その後を追う。

 教卓の前に立つとクラスメイトがこっちに注目する。いくつもの視線が俺たちに向けられている。

 登校初日を思い出すな。何度この場に立ってもこの緊張感はなかなか抜けない気がする。

 そんな俺の心情を察してか、エリスが進行を進めてくれる。


「えーと、では早速文化祭でやりたい出し物ある人いますか?」


 エリスの問いかけに対してちらほらと意見が出た。カフェや出店、体験型アトラクションなど。

 エリスが進行役を買ってくれてるため、俺は書記係として黒板に意見を板書することに専念する。

 そんな時、窓際にいる先生も意見を出してきた。


「それなら演劇とかはどうだ?」


 っ! ま、マズイ! 俺とエリスは顔を合わせると、お互いに顔を青ざめていた。


「実は昔は演劇をやっていてな。多少のアドバイスならしてやれるし、やりやすいのではと思ってな」


 いや、違う。それはやりやすいんじゃなくて単に先生がやりたいだけだ。そして、思い出すのはあの辛い特訓の日々。

 教室を見渡すと、ちらほらと興味が出てきたみたいで、「先生が演劇!?」「意外だな」「先生の演技見てみたーい」など少しざわつき出した。

 静香先生が演劇になると熱血教師になるのは前回の件で経験済みだ。もちろん、その分クオリティの良いものになるだろうけど、文化祭においてその指導でついてこれる人は少ないと思う。

 何より俺はもう一度あの指導を受けたくない。どうにかしてクラスの興味を別のものに()らさないと。

 だがしかし、そんな妙案がすぐに思いつくはずがなく次第に先生も乗り気になってきている。


「えーと、盛り上がってるところ悪いんだけど私はカフェとかやりたいかな。ほら、タピオカミルクティーとかだったらみんな興味持ってくれるだろうし、私も飲んでみたかったし」


 その中で、唯一先生の演劇指導を知っているうちの一人、利麻が別の案を出してくれた。しかもタピオカというなかなかに興味を持つ武器を手にして。


「どうかな?」


 利麻の言葉に、数人の女子は目を輝かせ始めた。他のクラスメイトもタピオカという言葉に興味を惹かれたようだ。次第に演劇ムードが去っていく。

 利麻はこっちを見ると、片目でウィンクをしてきた。利麻もこのヤバイ状況を何とかしようとしてくれたみたいだ。


「それじゃあ多数決を取りますね。この中からやりたいものに一回手をあげてください」


 ある程度案が出たところで多数決による投票に入る。だが、例の二つ以外ではほとんど票はなかった。

 最終的にはかなりの大接戦を繰り広げ、票数二票差でカフェの案が勝利を収めた。タピオカの影響力が大きかったようだ。

 でもカフェに決まるまでは演劇の票数にヒヤヒヤしたけど。

 先生はやや不満そうな顔をしつつも、ひとつため息をつくと、


「よし、それじゃあ世界一うまいタピオカカフェを目指していっちょ頑張るぞ!」

『おー!!』


そう言ってクラスを鼓舞する。みんなも先生の言葉にのるように声を出した。

 何とかクラスの出し物が決まった。みんなもやる気みたいだし、文化祭に向けてはみんな頑張ってくれそうだ。

 今日の学校は午前のホームルームのみで終わりを迎えた。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「はぁ、やっと終わった」

「お疲れ様」


 いつものように利麻と三人で下校する。今日は用事があるとかでお昼は一緒に過ごせないけど。


「って、奏向はほとんど仕事してないじゃないですか」


 横にいるエリスが文句を言ってくる。今日の話し合いも基本的にはエリスが進行をしていたから俺はほとんど話をすることがなく、ただ板書のみに徹していた。


「書記やってたし。それに前に立ってるだけでも気力を使うんだよ」

「いい加減慣れてくださいよ」


 と言われても慣れないものは慣れないのだ。ちょっとむくれた顔をして見せると、とっさにスマホを構えて写真を撮ってきた。


「やっぱり二人とも変わらないね」

「そんな短期間で変わる人なんていませんよ」

「そう? クラスでもイメチェンしてる人とかいたけど」


 クラスメイトの中には髪の色が違う子や雰囲気が変わってる子なんかが少数いた。利麻の言葉にエリスは答える。


「確かに見た目なんかは短期間で変えることができます。でも、内面なんかはそう簡単には変えられないんですよ」

「性格とか、優しさとか?」

「そうですね。後は人との接し方なんてのもです。強い影響でもない限りは簡単に変わりませんし、逆に変わってしまったら元に戻すのにも時間がかかるんです。だから、私たちの仲の良さはそう簡単に覆りはしないんですよ!」


 そう言って手を繋いでくるエリス。


「私も二人はそのままでいてもらいたいけどね」


 利麻はそう返すと話題を変え始めた。今のエリスの言葉、ただ利麻に話しているわけではない。俺にも言ってるように感じた。

 エリスが来てからもう数ヶ月が経過している。まだ人と接するのは多少の抵抗があるし、前みたいに誰とでも話せるわけではない。

 結果として目標に到達できるのかわからない今、なんとなくモヤモヤを感じている。


「そうだ! これ、二人に!」


 突然、利麻がカバンから何かを取り出し始めた。取り出されたそれは、写真だった。


「ありがとうございます利麻。無理言ってしまってすいません」

「全然大丈夫だよ。今はコンビニとかでスマホの写真はプリントできるんだし」


 そう、この写真は夏の最後、夏祭りの日に撮った写真だ。写真自体はSNSアプリ"LICE"内で既に共有していた。

 でも、エリスはどうしても紙の写真を欲しがった。エリスは機械が若干苦手らしく、スマホから写真を印刷する手段がわからなかったため、利麻にお願いして印刷してもらったわけだ。

 機械が苦手って、やっぱりエリスは年…………うん考えるのはやめよう。触らぬ神に祟りなしだ。


「それに私も写真を久々に印刷してこっちもいいなって思ってし。なんかこう手元にあると大事な宝物って感じがするよね」

「そうなんですよ。できれば、こうした思い出は残るもので持っておきたかったんです」


 エリスの目は何かを慈しむような、そんな目をしているように見えてた。エリスはそれを鞄にしまう。

 そんな話をしていると、駅前に着いてしまった。利麻と別れると俺たちも駅に向かう。

 昼に近いせいか電車内はやや人で混雑していた。ふと、さっきのエリスの目が気になって質問してみる。


「そんなに写真嬉しかった?」


 その質問に対して一瞬間を空けてからエリスは答えた。


「当たり前じゃないですか。奏向と利麻とのスリーショットですし、奏向の浴衣姿をいつでも見れますしね」


 いつも通りの返事が来た。さっきのあれは俺の思い過ごしだったんだろうか。

 そうこうしてると、電車のアナウンスが最寄駅に着くことを告げる。開く方のドアに近づくと、電車はゆっくりと停止しドアが開かれた。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「その食材で何作るの?」

「せっかくですから美味しいパスタでも作ろうかと」


 最寄駅に着くと、近くのスーパーでお昼の買い出しをした。なんでも、今日は久々に腕によりをかけるとかで気合が入っていた。

 スーパーには近くの高校の生徒も見かけた。どこの学校も始業式の日は早く下校するか。

 まだ昼なのに下校していると舞い上がった気分になってくる。そのせいかすぐに家に着いてしまった。


「あれ? 鍵どこにしまいましたっけ?」


 エリスは鞄を漁るが、家の鍵が見つからないみたいだ。しばらく探してみたがどこにも鍵は見当たらないらしい。

 そういえば今日鍵を閉めたのって俺だっけ。おおかたエリスは鍵を家に忘れてきたのだろう。


「うー、奏向〜! 玄関を開けてください」


 探すのを諦めたのかそう頼まれた。


「はいはい」


 俺は鞄から鍵を取り出すと玄関の扉を開ける。そのまま家の中へ入ろうと……。


「かなた? (・・)!」

「えっ?」


 後ろから呼び止められる。でも、その声はエリスの声ではなかった。その人物は、さっきスーパーで見かけた近所の高校の制服を見に纏った女の子で。


「えっ!? 誰? お、女の子? でも、ここの家って」

「あ、え、み、美香……」


 中学までの幼なじみ、(とも)()()()だった。

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