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親友を作りたいなら女の子になればいいじゃない  作者:
2章. 天使との学園生活
22/40

22. 演劇

またギリギリですみません!今回はタイトル通り演劇をします?


活動報告更新しました。よろしければそちらもご覧ください。

 あれから数日後、俺たちはとりあえず誰かに助力を願おうということになった。例え事がうまくいっても、先輩たちに報復に会う可能性もある。そのために、安全に事を進めるには誰かの助けが必要だと考えたからだ。

 利麻の提案で静香先生に話をすることになった。放課後、話があると教室に残ってもらってそこで話をすることにした。


「で、話ってなんだ。恋愛相談とかなら私は適任ではないぞ」

「そんなことではないですよ先生」


 いつも通りあっけらかんとしている静香先生。


「先生。重大な話があるんです」

「祠堂……。話してみろ」


 利麻の真剣な顔を見てか、先生も姿勢を正した。それから、利麻は今までのことを時間をかけながら話した。

 先輩たちのこと、何をされているか、どうしたいのか。静香先生はずっとただ頷いているだけだった。


「なので、できれば協力して欲しいんです」


 一通り話すと、利麻は大きく息を吐いた。静香先生は難しい顔をしながら考え込んでいる。


「(まさか、本当にこうなるとはな)」


 静香先生が何かを言ったようだが、小さくて聞き取れなかった。すると、顔を上げていつも通りに話し始めた。


「なるほどな。確かに今の祠堂の話だと、例え学校に話を通しても対処をする間に何かされる可能性は高いかもしれない」


 こう言う場合どうやって学校は警察とかに知らせるのかは知らないけど、もし今回の件を話したことが解決するまでに先輩たちに知られてしまったら利麻に何かをされるかもしれない。


「なら簡単なことだ」

「簡単?ですか」

「ああ」


 静香先生は片手の人差し指を伸ばすとこう言った。


「絶対に言い逃れできない証拠を手に入れればいい」


 静香先生の話はこうだった。つまり、学校ではなく警察に直接先輩たちが悪事を働いた確実な証拠を示せば警察沙汰にすることができる。

 そうすれば、先輩たちの動きも制限することができて解決までは何もしてこないだろうということだった。


「ただ、問題なのは警察が関与するから事が大きくなってしまうという事だ」


 実際のところ、警察と聞くだけで話が大きく思えてしまう。事が大きくなると利麻や利麻のご両親にも負担がかかるかもしれない。


「それでも祠堂は大丈夫か?」


 先生は利麻に質問する。でも、その問いに利麻は怖気付いたりしてなかった。むしろ向かう覚悟ができてるように見える。


「もちろんです。私一人だったら怖いかもしれないけど、二人がいるから」


 先生は俺たちを見ると大きく咳払いをした。


「よし!なら私も協力しよう」

「せ、先生!」


 先生は心強い一言を言ってくれた。これで、うまく事を運ぶことができるかもしれない。


「となるとだ。まずは作戦を立てる」

「作戦、ですか?」

「そうだ。まずは確実な証拠を掴む必要がある。そのためにはどうにかして証拠を吐かせないといけない」


 先生の言葉に利麻が質問する。


「写真とかはダメなんですか?」


 利麻の言う通り先輩たちが利麻からお金をもらっているところを写真で撮れれば、十分な証拠にできると思うけど。


「確かに、写真もうまくいけば証拠になるだろう。だが、言い訳をされる可能性もある。例え金を渡してるところの写真を出しても、その金が祠堂のである証拠もないしな」

「そしたらなにを証拠にすれば……」

「だから言ったろ」


 悩む俺たちに、静香先生はスマホを取り出しあるアプリを起動させた。


「証拠を吐かせるって」

 ピッ

「ショウコヲハカセルッテ」


 スマホから静香先生の声が聞こえる。これは、録音のアプリか?


「アイツらに自分たちがやったと喋らせればいい。それをこいつで録音すれば十分な証拠になるだろう」


 声ならほぼ確実に本人だと証明することができる。それに本人が喋っていれば言い訳も難しくなるかもしれない。


「でも、それ難しくないですか?先輩たちが素直にやりましたなんて話してくれるとは思えませんし」


 エリスの心配はもっともだ。先輩たちに、自分たちが利麻に対して恐喝していると喋らせるのはかなり難しいことだと思う。


「だから作戦を立てるんだ。うまく誘導して必要な言葉を喋らせる。それにはお前たちの行動が重要だ」


 ゴクリ。つまり、俺たちがミスをすれば証拠が手に入らなくなるかもしれないってことか。


「まあ、祠堂は心配ないだろうが問題は柏木姉妹だな」

「「なんでだよ!(ですか!)」」


 静香先生の言葉に二人で反論する。すると(ひょう)々(ひょう)とした態度で先生は続ける。


「柏木姉は少し抜けすぎてる。作戦内容とかを忘れそうで心配だ。それに柏木妹は意外と短気なところがあるからな。さっきみたいに突っ込んできたりな」

「エリスはともかく私は問題ないですよ!後、短気とツッコミは別です」

「なっ!?奏向それどういう意味ですか!」


 エリスは横でぷんすかと怒っているが、それよりも自分は確かに少々短気かもしれないが問題はないと思う。


「だが、ここまでやってきた行動力は立派な物だ」


 ポン、と先生が俺の頭に手を乗せる。するとその手で髪をわしゃわしゃと掻き乱し始めた。


「ちょ!何するんですか」

「ははは、すまんすまん。頼りにしてるぞ、柏木妹」


 笑いながら先生は手を離す。


「だから、私は奏向です。か・な・た!」


 髪を整えながら不満を垂れる。いい加減名前くらいは覚えて欲しいものだ。


「そうだったな、と。とにかくお前たちがなんとかアイツらから言葉を引き出せるように考えといてやるから明日の放課後は残れよ」

「どうやって引き出すんですか?」


 エリスの質問に先生は楽しそうに答えた。


「私は学生時代は演劇部だったんだ。だから、言葉の運び方なんかは任せろ。どう挑発すれば言葉を漏らすかなんかはだいたい見当がいく」


 先生の発言に俺たちは少しばかし恐怖を覚えた。先生を敵に回すと、手のひらで踊らされそうだ。というか、それって演劇関係あるのだろうか。


「あとはお前らの演技次第だ。だから、これからみっちりしごいてやるから覚悟しとけよ」

「わ、私たちは演劇部じゃないんですけど」

「目指せ名女優だ!」


 ノリノリの先生、これから大変そうだ。そんな事を思ってると下校のチャイムが鳴る。いつのまにか日が傾いていた。今日のところはこれで解散となった。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 それから一週間、静香先生の指導のもと練習が始まった。放課後になると、家庭科室に籠もって練習をする。

 家庭科室なら鍵を閉めれば他の生徒は入ってこれないし、部活に来ない先輩たちにバレる心配がない。

 先生が書いてきた原稿は分厚く、先輩たちが返すであろう言葉までもが書かれていた。

 これを読み合わせしたり、全部暗記してこいと言われたり、それが二、三日続く。そして、それが終わると今度は演技指導が始まった。


「ほらそこ!感情がこもってない!そんな事じゃアイツらを煽るなんてできないぞ」


 かなりスパルタだった。どこまでも突き詰めていく先生。日を追うごとに熱量が増していき、ほんとに演劇をするかのごとく練習が続いた。

 そうして、今日。あれから一週間が経って、ようやく演技指導が終わった。


「よし、よくここまでついて来た。お前たちに教えることはもう何もない」

「な、なんか私たち目的を見失ってませんか?」


 エリスの言葉に俺たちはまだ、目的が果たせていない事を思い出す。本番はこれから、証拠を掴んで問題を解決する。


「祠堂、決行はいつにする?」


 先生の質問に利麻は即座に答える。


「明日です。明日を逃すと来週になっちゃいますし」


 明日は週末だ。ここまでやってきて日が空いてしまうと忘れたり何かあるかもしれない。利麻の言う通り早めにやる方が賢明だと思う。


「そうか、なら呼び出し等はお前らに任せる。決まったら時間だけは教えてくれ」

「わかりました」


 そうして俺たちは下校することになった。利麻と三人で駅まで向かう。利麻は俺たちとは方向が違って最寄駅で分かれてしまう。


「あ、奏向ちゃん、襟澄、ちょっと待ってて」


 そう言って利麻はコンビニに入っていった。俺たちはコンビニの脇で待つ。すると、利麻はある物を持って出てきた。


「はいこれ!二人の分」


 それはソフトクリームだった。コンビニで作ってるやつで、そこそこお高いアイス。利麻が早くと言うので二人でもらってしまうが。


「いいの?お金払うよ?」

「いいのいいの。ここは私の奢りで。ほら、アイス垂れてきちゃうよ」


 ソフトクリームが濃厚なのかすぐに溶けてきてコーンの縁から溢れようとしていた。慌ててそこを舐め始めると反対側が溢れて、そこも舐めると今度は横……と、しばらくアイスに翻弄された。


「いいんですか?こんなに美味しい奢ってもらって」


 エリスは利麻に尋ねる。見るとまるで食べ方の手本のように一滴も垂らすことなく綺麗にアイスを食べ進めていた。


「いいんだって。これは二人に対してのお礼みたいな物だし。それに……」


 利麻は俺たちを見ると、嬉しそうに答えた。


「こうやって友達と寄り道したりするの、したかったんだ。どうせ使うならこういうことにお金使いたかったから」

「利麻……、っと!」


 利麻の言葉に夢中になってるとアイスが再び垂れ始め、手についてしまった。再び食べ始めると、二人は綺麗にアイスを食べ終えていた。


「奏向ちゃんって可愛い食べ方するよね?」

「ですよね!やっぱり奏向には天性の素質があるんですよ」

「ふぉんふぁふぉと、ふぁい!」


 可愛いという言葉に顔を熱くしながら抗議する。口に物が入ってたために声がおかしくなってしまい、それすらも可愛いと褒め立てられた。

 うー、本当は俺男なのに。でも、別に嫌な感じはしない。なんでなんだろう?っと、ようやく最後の一口でアイスを食べきった。

 再び三人で駅へと向かう。駅の入り口まで着くと、利麻と別れる。


「奏向ちゃん、襟澄。本当にありがとう」

「利麻、話が早すぎますよ。その言葉はうまくいってから言ってください」

「そうだね」


 周りでは、帰宅の時間なのかサラリーマンやOL、学生が行ったり来たりしている。構内のアナウンスや人々の騒めきで騒がしい。


「明日。絶対にうまくいく。だから、頑張ろう利麻」


 一言、声をかける。ここまでやってきても利麻はきっと不安だ。俺も不安だし。でも、勇気を出して乗り切るしかない。


「うん。絶対、成功させて見せる」


 利麻はそう言って俺たちと別の電車の改札に向かって行った。俺たちも改札に向かう。


「いよいよですね」


 エリスの表情は少し強張ってるように見える。エリスも緊張してるんだろうか。それでも、やることは変わらない。


「明日、頑張るだけだ」


 運命を変える明日に向けて、俺たちは家へと帰宅した。

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