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親友を作りたいなら女の子になればいいじゃない  作者:
2章. 天使との学園生活
20/40

20. 決意のお宅訪問 (1)

流石に毎回だと詐欺になるので、なんとか土曜投稿です。続きます!明日にはなんとか投稿します!(できてるとこだけ先に投稿とかじゃナイヨ)

 ピッピッピッ

 ピピッピピッピピッ

 ピピピピピピピピ!!!


「うるさい!」


 布団から起き上がると、隣で騒音を奏でている時計にチョップを喰らわせた。現在時刻、六時過ぎ。

 そろそろ支度しないと学校に遅刻してしまう。でも、俺は行く気にはなれなかった。とりあえず布団をしまうと部屋を出てリビングへと向かう。


「あ、おはようございます奏向」

「おはようエリス。ふ、ふぁ〜」

「ん?寝不足ですか?」

「うん。昨日あんまり寝付けなくて」


 昨日の夜はあまり寝れなかったため寝不足だ。これが学校に行く気になれない理由で。


「やっぱり痛くて寝れなかったんじゃない。だから薬飲んどけって言ったのに」

「うっ」


 はじめての生理のせいで寝付けなかったのだ。痛みはそこまで酷くはなかった、だから薬も飲む必要はないと思ってたのだが。痛みが気になって寝付けなかった。

 ネット記事で経血が漏れるというのも見てしまい、たびたび下着を確認したりしていたらあっという間に朝になってしまった。

 そして、今は寝不足と生理によって体調不良になっている。


「体調はどうなの?」

「体がだるい、頭痛い、お腹も痛い」

「典型的な生理の症状ですね」


 うー、女ってこんなのが毎月のようにくるものなのか?これからこれと付き合っていかないと思うと不安でしかたない。


「なら、学校休む?」

「え?」


 母から出た言葉に思わず声が漏れてしまった。


「だって辛いんでしょ?なら今日ぐらいは休めば?」

「いや、でもちょっと体調悪いだけだし」

「何言ってんの!生理だって病気みたいなものなんだから、辛い時は休んだっていいの。我慢して行ったっていいことないんだし」


 言われてみればそうなのだけど、毎月生理の時に欠席してて大丈夫なのだろうかと思ってしまう。でも、今日の体調だと休む方が賢明だろう。


「生理も月によって重い時軽い時があるんだからね。重い時は薬を飲んだりして過ごすの。あんたは今回が初めてなんだからとりあえず一日休んでなさい」


 そう言われて電話の子機を持たされる。学校に電話をかけると母さんに「生理でとか言わなくていいから、体調不良で休みますって言っときなさい」と言われた。

 電話に出た静香先生に体調不良だと伝えると、「そうか、ゆっくり休めよ」と言われて電話が切れた。


「それじゃあ私も奏向についていないといけないのでお休みに……「こらこら、エリスちゃんは普通に学校行きなさい」」


 エリスはいつものノリで休もうとするが、母さんが止める。


「でも、奏向が一人になっちゃいますよ」


 俺はまだ生理について詳しくないし、誰かしらいてくれた方が安心するのだが。


「私、今日は家で仕事するから大丈夫よ。せっかくお弁当も作ったんだし行ってきなさい」


 母さんが家に残ってくれるみたいだ。それはそれで複雑だけど、何かあった時に相談できるからいいか。

 エリスは渋々に()()(たく)を済ませると、少ししょんぼりしながら学校へと出かけていった。


「あんたはこれ」


 見送ったあと、母さんは俺に薬と水の入ったコップを手渡す。


「寝れなかったんなら、昼くらいまで寝ときなさい。起きたらナプキン交換すること。処理とか分からなければ教えるから」

「あ、うん。わかった」


 言われて睡魔が襲い始めてきた。薬を飲むと、部屋へと戻る。こんな朝から病気でもないのに学校を休んでいいのだろうか。少し罪悪感を感じる。

 でも、不思議なことに今までもそうしてきた。連休前は堂々と学校をサボっていた。不思議な気持ちを感じながら、久しぶりの日が昇ってる中の睡眠へと落ちていった。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 あれから、意外とすんなり寝れて気づけばお昼過ぎだった。母さんが作ったお昼を食べて、ナプキンを交換して、昼のワイドショーを見てぼーと過ごした。

 時計を見ると三時を回って四時近くになっていた。そろそろエリスが帰ってくる時間だ。

 昨日の今日だから、利麻の様子が心配だった。もしかしたら、エリスと利麻は今日は話さなかったかもしれない。

 もう一度利麻とは話をしないといけない、だけど利麻が拒絶してしまってるなら話すのも難しくなってくる。

 結果としては何も解決していないのだ。そう考えると頭が重くなってくる。利麻とまた話したりできなくなってしまうのでは、もう仲良くできないかもしれない、とかが頭に浮かんでは消して、浮かんでは消してを繰り返している。

 ずっと気分は浮き沈みを繰り返し、休んでるのに気持ちだけは休まらなかった。


 ガチャ


 そうこうしていると、玄関から音が聞こえた。エリスが帰ってきたみたいだ。利麻のことが気になってか、足早に玄関まで出迎えに行く。


「えっ!?」

「あはは、えと、ただいまです」

「…………」


 玄関にはエリスの他にもう一人、利麻がいた。なんで、なんで利麻がここに。


「あらあら、あなたが利麻ちゃん?話は聞いてるわ。ほら上がって上がって。エリスちゃん、部屋に案内して」


 後ろから母さんが出てきた。完全にお母さんのテンションで利麻を家へと上げる。


「私の部屋にですか?」

「奏向は昼まで寝てたから散らかってるでしょ?」


 今俺の部屋は布団が敷きっぱなしで着替えも散乱している状態なのでその方がありがたい。けど言い方がなんか癪だ。


「そうですね。では、利麻こっちです」

「……お邪魔します」


 利麻は母さんにお辞儀をすると、エリスの案内で二階に上がった。いきなりのことに動揺しつつも、俺も二階へと上がろうとすると母さんに引っ張られる。


「お菓子とか持ってきなさい」

「わ、わかったよ」


 リビングでコップを出し、冷蔵庫からたまたまあったオレンジジュースのパックを出す。その間に母さんが色々お菓子を器に盛り付けてくれた。それらをお盆に乗せると二階に上がっていく。


「しっかりやりなさいよ」


 母さんが後ろから声をかけてきた。昨日言われたこと、利麻の気持ちを聞いた上で俺の気持ちも伝える。今度こそ、自分の気持ちを利麻に。


「うん」


 割と多めに乗ったお盆をバランスをとりながら持って二階に上がる。エリスの部屋はあらかじめ入りやすいように扉が開けられていた。二人はクッションの上に正座して待っていた。

 お盆を机の上に置くと、コップにオレンジジュースを注ぎ二人に手渡す。俺もクッションに座ると、沈黙が流れる。

 えと、これはどうしたらいいんだろう。利麻は、昨日のことで来たんだろうけどなんて話しかければいいんだろう。

 エリスにアイコンタクトをとるが、エリスは少し残念そうな顔をするとすぐに利麻に視線を向けた。

 その利麻はというと、ずっと顔を伏せたまま両手でコップを握りしめている。またしばらく沈黙が流れる。

 今はただ、利麻が喋り出すのを待つしかない。利麻が覚悟を決めるのを待つしか。


「すー、はー、ううん。ごめんね奏向ちゃん。体調悪いのに押しかけちゃって」


 一つ深呼吸をすると利麻は話し始めた。喋り口調はいつもの利麻だ。


「その、今日はね。昨日のこと、謝ろうと思って」


 昨日の件、利麻は自分にも非があると思ってたようだ。


「ごめんね奏向ちゃん。私、奏向ちゃんが心配してくれたのにあんなこと言って」


 利麻が頭を下げる。でも、利麻だけが悪いわけじゃない。


「私こそごめん!利麻の気持ち、全然考えなくて」


 利麻がどう思ってるのか、どうして欲しいのか考えずに善意を押し付けた。自分の意地で、自分の都合で言葉を言った。私にだって非はある。


「いや、奏向ちゃんは悪くないよ!悪いのは私」

「利麻だけのせいじゃないよ。私だって悪い」

「私のせいだよ!」

「私だって悪い!」

「二人とも!落ち着いてください」


 ヒートアップしたところをエリスが仲裁に入る。いつのまにか、よくわからない言い合いになっていた。


「利麻、今日来た理由はそれだけではないですよね?それに奏向も、言いたいことはそれだけじゃないはずです」

「「うっ」」


 二人して同じリアクションを取ってしまった。エリスは、はぁと息を吐くとこっちに目を向けてきた。俺は意を決して話す。


「利麻、私は利麻の事情を知らない。だから利麻が何に困ってるのかわからないし、昨日の状況だけしか知らないと心配なの。もし、話せるなら、話して欲しい。無理ならそれでもいい、それなら私は、この話はもうしないから」


 利麻の目が少し潤んだ。コップを持つ手が震えている。


「でも、できるなら力になりたい。利麻は、私が転校してからの、初めての友達だから」


 部屋が静まり返る。エリスも俺も、利麻を見つめながらただ待っている。利麻が話してくれるのを待ち続ける。


「きっと」


 利麻の口が開いた。


「奏向ちゃんたちも悲しい思い、すると思う。それでも、聞いてくれる?」


 利麻の声は震えていた。きっと辛いことなんだ。俺たちも、もしかしたら辛い思いをするかもしれない。けど、やっぱり……。


「大丈夫。大丈夫だから、話して」


 もう、利麻の辛い顔は見たくなかった。力になりたかった。昔の俺みたいになって欲しくなかった。ここで、話を聞かないとダメだと思った。


「私も同じです。だから利麻、話してください」


 エリスも利麻の手を握りながら答える。利麻の目からは雫がこぼれ落ちた。


「ありがとう、ありがとう!」


 肩を震わせながら、利麻はそう答えた。落ち着いた頃に、利麻は語り始めた。

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