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親友を作りたいなら女の子になればいいじゃない  作者:
2章. 天使との学園生活
17/40

17. 天使の部活見学会 (2)

続きです。最後の会話なんかはTS的なアレです!活動報告も投稿したのでよろしければご覧ください。、

 着いた教室は先ほど行った家庭科室だった。料理研究部というなら活動場所は料理ができる場所なのは当たり前か。利麻は手際よく扉の鍵を開けると部屋の中へ進んでいく。というか、部屋が空いてなかったってことは今日は活動をしてないのかな?

 電気がつけられると、昼間と同じ景色が広がっていた。


「えーと、ようこそ、料理研究部へ」

「「え、えーと?」」


 これってもしかして……。


「やっぱり言ってなかったか。祠堂は料研の数少ない部員の一人だぞ」

「そ、そうだったんですか!?」

「ま、まあね」


 やっぱりそうだったんだ。それなら利麻が家庭科室の鍵を持っていたのも納得いく。あれ?でも、鍵とかって普通職員室とかで管理してるもののような。


「と。とりあえず何か作ってやれよ祠堂。お客はお待ちかねだぞ」

「べ、別に待ってないです!!」


 先生が俺を茶化してくるので軽くツッコむ。静香先生はラフすぎるというかなんというか、距離感が近いし結構ズバズバ言うし。でも、面倒見は良さそうに見えるんだよな。


「わかりました。チャチャっと作るから三人とも座っててください」

「そんな、私も手伝いますよ」

「わ、私も。手伝う。私、のために作ってくれるわけだし」

「それじゃあお言葉に甘えて待たせてもらうわ」


 先生だけはマイペースを貫いていた。


「ありがと。じゃあ食器とか準備してもらっていい?棚にあるからさ。箸は引き出しに入ってるから」

「わかりました」

「わかった」


 エリスと二人で箸やら取り皿やらを準備する。その間も利麻は真剣な表情でフライパンを使って何かを調理している。次第にいい匂いが香り出して来た。ジュージューと言う音も鳴り始める。


「そろそろできるよ」

「いい匂いですね!」


 さっと料理がお皿に盛り付けられると、料理が運ばれて来た。


「この料理って……」

「もちろん!カニ玉だよ」

「「か、カニ玉」」

「なかなかの変化球できたな」


 利麻が作ってくれたのはカニ玉だった。けど、持ってこられたお皿は三つ。しかも、全部同じような料理に見える。


「えと、じゃあこっちの料理はなんですか?」

「カレーカニ玉」

「じゃ、じゃあこっちは?」

「チーズカニ玉」


 カニ玉のバリエーションすげえ!持ってこられた料理は全部がカニ玉だった。味付けは全部違うみたいだけど。


「私得意料理カニ玉なんだ!」

「へ、へーそうなんだ。えーと、じゃあ普通のカニ玉からもらおうかな」

「じゃあ私はカレー味を」

「なら私はチーズをもらおうかな」


 それぞれのカニ玉を取ると、ゆっくりと口へと運んだ。


「「「ぱく」」」

「っ………」

「う、うまい……」

「お、美味しいです!」

「ふむ、なかなかだな」


 利麻の作ったカニ玉は満場一致で美味しかった。卵がふわふわでとろけそうなほど柔らかくて、それぞれの味とカニの風味がマッチしていた。


「よかった。口に合って」

「これ、すごく美味しい!」

「利麻、料理美味かったんですね」

「まあ、お母さんの手伝いとかで料理は結構作ってるから」


 利麻が少し照れてる。利麻が照れる顔は珍しいかも。


「この美味さは自信をもっていいと思うぞ」

「せ、先生まで……。あ、おかわり欲しかったら言ってね!じゃんじゃん作るから」


 利麻が慌てたようにフライパンを持ちながら聞いてくる。時刻は夕方の五時を回ろうとしていた。


「そんなに食べたら夕飯に響きますよ〜」


 利麻の料理のおかげか、さっきまでの空気が嘘のように楽しげな会話で盛り上がっていた。


「で、うちの部は家から食材を持ち寄って作りたいものを作るの。でも、今は部員とか諸々の事情で活動はほぼしてないんだ」


 活動をしてない?それなのに、入学したばっかりの利麻はなんで入部したんだろう。帰宅部みたいになりたくて、仕方なく入ったのだろうか?


 キーンコーンカーンコーン


「と、本当に下校時間だな。それじゃあ各自速やかに片付け開始!」

「先生も手伝ってくださいよ」

「ほらほら、無駄口を叩かずに動いた動いた」


 三人で手分けして片付けを済ませると、教室を出る。外を見ると、夕焼けが綺麗に橙色に染め上げていた。


「綺麗な夕日ですね」

「うん」


 カチャリ、と扉の閉まる音が響く。


「よし、とりあえず今日はここまでだ。全員気をつけて帰ること」

「はい!先生さようなら」

「さようなら」

「おう」


 三人で下駄箱に向かって歩き出す。


「さようなら」

「祠堂」


 エリスは夕日を見ながら早足で下駄箱に向かっている。


「鍵のことは…………」

「わかりました…………ありがとうございます」

「気をつけて帰れよ」

「はい」


 利麻と静香先生は何かしら話をしていた。話の内容はよくわからなかったけど、利麻と先生の表情がさっきの暗い顔になったことだけは見逃さなかった。利麻と料理研究部には何かあるのかもしれない。


「ほら、奏向!利麻!先行っちゃいますよ!」

「今行くよ!ほら、奏向ちゃんも行こ」

「う、うん」


 利麻はいつもの顔に戻っていた。少しだけ、モヤモヤしたものが脳裏をよぎったけど。思考を振り払うように、エリスのもとへ駆けていく。

 こうして、長かった登校初日が幕を閉じた。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 初登校からの一週間はあっという間に過ぎてしまった。日を追うごと俺たちの質問責めも少なくなっていった。その分ガールズトーク?とかをすることが多くなったのだが。

 相変わらず会話はエリスにおんぶに抱っこだ。喋ろうとは思うんだけど、何か変なことを言ったらと考えると(すく)んでしまう。

 放課後は利麻に付き合ってもらいながらいろんな部活の体験を続けていた。エリスは水を得た魚のように大はしゃぎだったけど、対して俺はヘトヘトになる毎日。

 そして、休みの日もすぐに過ぎ去って日曜日の夜になってしまった。


「で、どうだったの?学校生活は」

「どうって普通だよ普通」


 母さんは仕事から帰ってきていた。基本的にしばらくは長く出かける仕事はしないみたいだ。長くても一週間くらいで帰ってくるらしい。


「奏向は少しずつですけどクラスに馴染んできてますよ」

「そうなの!?よかった。奏向のことだから、人付き合いで苦労してるのかと思ったわ」

「そ、そんなことないし!」


 ニヤつく母さんとともに夕飯を食べ始める。今日は母さんが料理を作ってくれた。久々におふくろの味を堪能すると、まだまだ学校トークは続いた。


「それなら、お友達とかはできたの?」

「う、うん」

「どんな子どんな子?」

「うんと、エリスよりしっかりした女の子、かな?」

「ちょ、奏向!それはどういうことですか!」


 利麻とエリスは姉のような存在であると俺は思ってる。でも、二人にとっての違いはしっかりしてるかどうかだろう。エリスはどこか抜けてるところがあるし。


「ふーん。そんな子が友達に」

「お母様も!あんな言葉で理解しないでください!」


 エリスはやたらとツッコミを入れる。ここら辺も利麻とは違うかな。騒がしいというか、でも明るくなれるような。周りを良い意味で搔きまわす、そこがエリスの良いところだと思う。


「写真とかあるの?」

「ありますよ。ちょっと待っててくださいね。と、これですこれこれ」


 エリスはスマホを取り出すと、利麻の写真を表示した。料研に行った日、先生に三人で撮ってもらった写真だった。三人でピースをしてとったもので、なんだかんだで俺も笑顔でピースをしていた。


「この子が利麻です。祠堂利麻」

「へぇー、この子が。それに、この奏向の表情」

「可愛いですよね!」

「っ!またそんなこと言って」


 エリスは毎回俺のことを可愛いとか、綺麗とか言って褒めてくる。元男としては結構恥ずかしいのだが。母さんはというと、満足げな顔をしていた。


 そんな話をしているとあっという間に夕飯が終わってしまう。食器を集めるとキッチンに持っていき、洗い始める。最近は片付けとかは当番制になっていて、今日は俺が当番だ。


「あ、エリスちゃん、ちょっと」

「はい。なんですか?」


 不意に母さんがエリスを呼び止める。俺は食器を洗いながらチラ見した。


「えーと、エリスちゃんって……は来るのかしら?」

「あー、はい、ちゃんと来ますよ。今は普通の人間の体ですし」


 来る?一体何が来るのだろうか?


「それなら、あれの場所は……だから。えっと、私は……なんだけどそれで大丈夫?」

「大丈夫ですよ。こう見えて人間歴は長いですから、どっちでも対応できます」


 どっちでも大丈夫ってなんのことだ?とと、手に持ってた食器が手からこぼれ落ちてしまう。


「ふふ、それならよかったわ。無くなりそうだったら自分で買ってもいいし、言ってくれれば買ってくるから。それと、奏向のことなんだけど」

「奏向も同じです。多分もう少ししたら来る頃だと思います」


 なんとかシンクに激突する寸前でキャッチできた。なんか今、俺の話をしてなかったか?


「そうなの。親としては少し複雑だけど。もしもの時は、あの子のことよろしくね」

「任せてください」


 洗い終わった頃にはエリスはお風呂に行って会話は終わっていた。結局何の話だったんだろう。そんなことを思いつつ、夜はあっという間に過ぎてしまうのだった。

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