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旅の商人が行く、ぶらり救国物語  作者: TOSAKA(渡坂系統)
1章 【旅の商人と野望の工場】
6/12

ヨアムの正体

 ーバルガルド帝国 パゼル基地 情報部長室ー



「さて、何もかも分かっていないという表情をしているけれど。何をどこから話して欲しいかな?」


 ヨアムは微笑を顔に浮かべ、俺に問い掛ける。


 普段は優しく物腰の柔らかな温和な雰囲気のヨアムだけれど、たまにその面の皮を剥がし細めた目で相手を見透かすように見つめて話をする時があった。


 俺が今見ているヨアムの表情は、今までこの男との付き合いの中でも見たことがないくらいに極まった笑い方をしている。


 俺としては蛇に睨まれた鼠もいい所で、正直この場から逃げ出したいとさえ思っているが、それもこの男の前では叶わないだろう。


 目的のものがなくなった時は他国の草の根まで探し出し、自分のものにするという執心ぶりを部下の目線で知っているために、逃げ出す案は却下された。


「…まず、ファナが精霊に愛されているというのはどういうことだ」


 俺の妹に精霊の友達がいたとすれば、兄の俺ですら疑わなかったようなぐらいに存在をひた隠しにしていたということになる。


「なるほど、やはりそこが1番気になるのかな?まあ君が知らないようなことの由来は予知者でもない僕でも知らないよ。ただ、(アテナ)の目で()えているから是非については知っているけどね」


 なるほど、精霊がいるのは知っているがそれが何故かは知らないと。


 確かに俺にすら言わかなったファナがヨアムに言っていたとすれば確かに不自然だ。


「分かった。分かったが、その…アテナってのは話を聞く限りでは神らしいが、本当なのか」


 ヨアムは明言していたが、俺にしてみれば妖精すら見たことがないのにいきなり神と言われても信じられるわけがない。


 つい先程まで神の存在の信ぴょう性も怪しいと思っていたような俺にとっての衝撃は少なからずあるものだった。


「アテナ。君の存在が疑われているよ。何か示せるものはないかな?」


 ヨアムは何もない空間へ、そう声を掛けた。


 俺にしてみればかなり不思議な感覚であり、確かにそこに何かいるような気もするし、目を凝らせば何となく分かると感じたが、それは勘違いだった。


「やはり魔法を使うのが手っ取り早いとアテナは言ってるよ。でも、困ったな。彼女の能力は()()()()()()()()()()()、本人の能力を底上げしたりサポートしたりする所に本質があるからなあ」


 俺の一番身近にいて、最も魔法が得意な者で思い浮かぶのはアビーである。


 彼女は確か、火が使える下位の精霊の力を借りているはずであり、使っている様も見たことがある。


 まあそれも暖炉の火をつけたり、辺りを照らすための小さな灯火であったりと戦闘系ではない。


 何故アビーの魔法戦闘を見たことがないのかと問われれば、俺が弱すぎてアビーに魔法を使わせるほど腕が練達していないからと言う他ないのだけれど、それはあまりに格好悪いのでこれは考えるのをやめよう。


 それならばと、


「戦闘系の魔法は俺でも見たことがない。何か他に分かりやすい魔法はないか」


 と言った。


 ヨアムは目で横をーーーー恐らくアテナがいるであろう方向ーーーーを見やり、力を見せる。


 次の瞬間、俺は目を見開いた。


 何と目の前に下位悪魔が現れたのだ。


 …とは言っても、俺は悪魔を含めた精霊系を見たことがなかったし、今も何故見えているのかは分からないけれど、姿かたちに関しては軍部所属となった時に座学で教えて貰っていた。


 次の瞬間、悪魔はヨアムの方へ襲いかかる。


 するとヨアムが、


「悪魔が見えるかい?グリム。君には神の目の力を少し貸した。さて、これが正義と知恵の神、アテナの能力だよ」


 そう言いながら護身用に持っていると言っていたダガーを取り出し、悪魔に迎撃する。


 悪魔は持ち前の長い爪でヨアムを切り裂かんとするが、ダガーで弾かれてその勢いのまま壁に叩き付けられてしまう。


 何て力だ、と思ったが、冷静に考えてヨアムにこんな力があるはずがない。


 アビーには精霊の力抜きでも負けてしまうし、たまに遊びに来て決闘を申し込んで来る第5皇子バッシュ様と良いとこ勝負と言ったところだろう。


 いや、そうであったはずだった。


 叩き付けられた悪魔は立ち上がろうとするが、ヨアムはそれを許さず、


「ーーーー正義執行(ジャスティス)


 と呟き、目にも止まらぬ速さで駆け出して悪魔の急所である心の臓ーーーー俗に魂と呼ばれているがーーーーを刺し、悪魔は消滅した。


 俺はその光景を必死に理解しようと頭で処理しようとするが、すぐに諦めた。


 これはきっと聞いた方が早いと思う。


「…すまない。説明をしてくれ」


「ふふふ、まず悪魔が急に現れたよね。あれはなんでだと思う?」


 あくまでこちらに気付かせる、ということか。


 悪魔がここに発現する可能性を考え、ひとつの方法を導き出した。


「…召喚、か」


 この世界の召喚は基本的には禁止されている。


 そもそも確立されている術式ではないし、帝国内では既に安定して悪魔を屈服させる召喚方式はないのでは、とさえ言われているのである。


 が、今でも力を求める者が不安定な術式の中で悪魔を召喚し、使役しようとする。


 案の定、力を受け止めきれずにそのまま殺されるか肉体を乗っ取られるかして、軍によって制圧される案件がしばしば見受けられる。


 そう考えているとヨアムが、


「大正解。やっぱりヨアムは勘がいいね。その通り召喚術式であり、帝国内では禁術だよ」


 あどけない笑顔でそんなことを言ってのけるが、こいつは意味を分かって言ってるのか。


 禁術は死者蘇生術、召喚術、転生術と語りきれないほど多岐に渡り、それらに派生したものがたくさんあるが、禁忌を破った者はすべからく永久投獄という重罪に問われるのだ。


 軍の中枢部にいて、国のトップである皇子が破ったと知れたら、同時に帝国内で禁止されている死刑も免れないかもしれないと考える。


 しかし、どうして確立されてないような難しい術式をヨアムは使えるのだろうか。


「ヨアム、禁術発動についてはまあ、いいだろう。しかし、何故そんな難しいものを…いや、アテナか」


 なるほど、ここでアテナとやらが出てくるのなら納得出来るし、知恵と正義の神であるなら知恵を貸したのだろうか。


 いや、仮にも正義の神であるなら禁術発動とか悪魔召喚とかしないで欲しいんだけども。


 …まあ、召喚を勝手に禁止してるのは人間側であるし、悪魔に関しても神の世界では別に悪ではないということなのかもしれない。


「うん、そうだよ。僕の愛するアテナが力を貸してくれたんだ。思ったより弱い悪魔が出ちゃったけどね」


 そう言って、笑顔を消して召喚された悪魔が消滅した場所を一瞥する。


 しかし、それだけではあの力の説明が付かない。


「それで、お前のあの爆発的な身体能力上昇は何なんだよ。まさかそれもアテナの力とか言うんじゃ…」


 ヨアムは、おどけたように手を広げ、


「いや、アテナの力だよ?まあ正確にはアテナの力というより僕の力を増幅させる力だけどね。あの悪魔が僕を襲ってきただろう。それで『正義執行(ジャスティス)』の発動条件が揃ったんだ。」


 と何でもない様子で言う。


 色々納得出来ない点はあるが、なるほどとも思う。


 つまり、神に反する神殺しの術ーーーーそんな物があるかは知らないがーーーー以外の人間が勝手に取り決めた禁術については、問題なく自由に使えるということだろう。


 それと正義執行(ジャスティス)とやらは、悪の所業で例えやすい盗賊に襲われるというのを広義で捉えれば、悪魔に襲われるのと同じということになる。


 正義というのは時に人によって違うものであり、ヨアムが人類全てを敵とみなした時に滅亡させる力を与えられるのだろうか、という好奇心は嫌でも出てくるが、自分が死ぬのは嫌なのでヨアムには人類みな友達という平和思想を持って欲しいものだと思う。


 俺は、以前から常々ヨアムが味方で良かったと思っていたが、今回の出来事で本当の意味で敵に回したくないと強く思った。


 俺はふーっと息を吐き、


「なるほどな。色々気になる部分はあるが、大体は理解した。」


 と情報を


 しかし、まだ説明されてない部分があったよな?


「理解したが、まだお前の言ったことはあっただろう。この俺が世界に愛されている理由を聞いていない。そうだろ?」


 ヨアムはそれを聞いて口角を上げ、話し始めた。

読んで頂きありがとうございます。


正義執行のルビがジャスティスとなっていますが便宜上と言いますか、分かりやすくするためカタカナ英語にしています。


バルガルド帝国の公用語はバルガルド語です。


知恵と正義の神も新しい神を作っても良かったですが、分かりやすさ重視でアテナとしました。


…まあ、つまりオリュンポス十二神がいる所に七つの大罪系のネタが入ってきたりするかもしれません。


現在は天使系と悪魔系は盛り込もうと思っています。

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