生まれつき死亡概念観測論
これは夢のお話
僕は歩いた先にある、とあるバーに入った。
小学生が書いたようなぐにゃぐにゃな線と茶色クレヨンをグー握りで塗りたくったような幼稚なドアーを開けて。
いつの間にかカウンターのイスに座っており
一旦時間が止まり...
マスターの様子だが、髪の毛は認識出来ず、顔には太すぎる白眉毛で隠れた目と、くの字に折れ曲がった白ヒゲがあり、タキシードのようなものを着ている...これってタキシードというのかな...
「いかがなさいますか?」
「グ...グアランテはあるかい?」
「ございます」
グアランテって何だ?
言って十秒経って考え始めた。
「グアランテでございます」
小さなワイングラスにただの赤い液体が入ったものが目の前に置かれた
「これが...グアランテですか...?」
「左様でございます。」
なにかイライラする。
これは、自分で妄想して創り出したものを、マスターに感覚的に捉えて欲しかったにも関わらず、記号的に読み取られそうになったことに対する苛立ちであろうか...
「あぁ!もういい!こんなバー出てやる!」
...
あれからいくつ経っただろうか
もう一度このバーに入ってみるのだ。
マスターはおらず、カウンターの席に一人、顔を赤くして体をうっぷせて氷だけが入った小さなグラスを科学者が試験管を振るように振り回し何やら小声でぼやいているおじさんがいる。
...
少し尋ねてみたくなった。
「ここのバーはいいのかい?」
「あぁ最高〜さぁ〜」
おじさんが口をあまり開けずにそう答える。
すると、後ろから女の声が聞こえる。
「なぜならここの女性にはお困りの声が無いですもの」
チラつく
「でも、僕は今君にチラついているんだけど?」
「それは大丈夫ですわ」
イライラ...
何も考えてない感じにイライラ...
「何が大丈夫なの?僕はもう帰るよ」
僕は席を少し勢いつけて立つ。
はぁ、この店を出るとき、またこのドアーに触れなければいけない。
なんだかウンザリだ。
グチャ
ドアーを開けながら後ろを振り向き叫ぶ。
「はは!すまないね!おーい君は残っていくのかい?マグレンナがあるぞ!」
「俺は残っていくよ!グアランテもあるし!楽しいからなぁ!」
...
そうして外に出て歩きながら気づく、グアランテとは自分が想像していた理想の大人と、想像と現実の自分のいいとこどりをして出来上がった想像上の自分との間にある想像の想像によってできた中間地点のようなものであるのだと。
そりゃわからん。
そりゃ見えん。
でも、そんなものに酔ってしまう人間がいるのだなぁと僕はマグレンナに酔いながら歩く
さて次のバーだ。