一章 その1「少年の後悔」
いつだって僕は忘れない。
いつだって僕は忘れることができない。
兄さんたちがやったことを忘れられない。
「どうして皆を殺したの? 方法はあったはずだよ」
炎の壁が町を取り囲み、その内側は死の世界と化していた。炎の壁の内側にあるとは思えない凍てついた世界。僕ら小隊の人間以外町そのものが凍って死んでしまっている。
人の形をした氷。建物の形をした氷。動植物の形をした氷。
どれも少し前まで命を宿していたと言ってもいい。こんな氷の彫刻ではなかった。その命を奪ったのは僕ら第0小隊のメンバーであるフリーズ兄さんだ。
僕は兄さんの所業が許せなくて彼を睨みつけ問いただしていた。
「それが命令だ。敵が一般人に紛れ込み、判別方法もない。しかし、ここで逃がせば後々問題になる。だから町ごと敵を始末する。それがリアの判断。リアの命令は絶対だ」
冷たい目で、当たり前といわんばかりの無表情で兄さんは答える。
僕の憎しみのこもった眼差しにも動じない。
兄さんはぶれない。リアさんがすべて。忠誠を誓っているのは国技団ではなく、彼女にだ。彼女以外に兄さんを制御することはできない。
「……じゃあ兄さんは何も思わないの? これだけ多くの人を殺して何も思わないの? こんなやり方が正しいと思うの?」
「そんなことどうでもいい。リアさえいればそれでいい。まあ第0小隊のメンバーもできればいてほしいと言えばいてほしいがな」
僕の問いかけにぴしゃりと言い切る。やはり無表情。やはり冷たい目をして。
後に更なる大虐殺が行われることをこの時の僕はまだ知らない。