トチュウガキ
「真実って…?」
千夜は、真剣な顔で皇子に聞いた。
皇子は、重い口を開け
「…マリンさんは…殺したくて殺したわけではないですよね?」
…!!
私は、頭が真っ白になった。
嗚呼、そう言えば私、つい最近暗殺グループに入って…確か…お父さんを殺せって言われて…刃で殺したんだっけ…それで…殺気の無い殺人が誉められて…次に…千夜を殺せって…
コロサナキャ
私は、笑顔で手で握っていた小さな刃を自分の顔の前に持ってきた。
私は思いっきり千夜の所へ飛んだ。
千夜は、青白い顔をしてこちらを見てくる。
怯えているのだろう。
そんな千夜を私はフフっと笑いながら千夜の首に刃を降った。
死んだと思ったが千夜の首にめがけて降った刃が間一髪のところで千夜に当たらず、代わりに皇子
の手に刺さった。
皇子の手は、ボトボトボトと生々しい音を立てて血が垂れてくる。
「…っ!」
「………チッ」
私は、つい、舌打ちをしてしまった。
だって後もう少しだったのよ~悔しいじゃない!
そう私が腹を立てていると皇子が苦しそうに
「…っ!痛っ!マリンさん…ッ…ハァ大丈夫です…仲間だからッ!僕はっ!君のっ!仲、間…」
「手を刺された位で大げさにしないでよ…仲間?何それ?こっちは命懸けなんだよ!」
私は、苦しんでいる皇子の腹を蹴った。
もっと苦しんでいる皇子。
「…分かった!分かったから!千夜君殺してもいいから!助けて下さい!」
「…だっさ!あんたに言われなくても千夜は殺すけどさぁ…さっき、必死に守った国民をすぐ手放すんだぁ?あんたそれでも皇子?」
「じゃあ、君は…何で、自分でお父様を殺したのか分かりますか?」
「分からない」
さっきまで苦しんでいたのに平然と喋る皇子。
そして、フフッと笑った皇子。
何で…笑っているの?
「お父様は、殺人の天才と言われた人なのです…だから皆、憎かった…殺したかった…だから、君の居てるグループは君を使って殺そうとしたんだ…いくら、殺人の天才と言われた人でも、流石に実の娘に殺されるなんて思わないですよ……」
「つまり、君を利用したんだと思います…君のお父様を殺すために誘って…たくさんの人に助けてもらったですよね?それは…殺人の天才と言われた人を殺すためです…普通なら助けないのです」
なにそれ…私は、あの人たちに利用されてたの?最悪…誘って貰えたのもお父様を殺すため…皆、仲間だと思ってたのに!
私は、怒りが込み上げてきた。
この世界には…真の笑顔なんて見えないの?