1-31 不覚
後頭部に突き付けられたそれが銃口だとわかると同時にあたしは纏っていた電撃を背後に放出するようにして解放した。
「ーーっ!?」
女の驚いた声が聞こえるけど、ざまぁみろよ。
放電によって今度こそ女が痺れてしまっている間にあたしは再度電纏を起動すると振り返りながら裏拳を放つ。
「『電纏操術・電散手甲』!」
裏拳が女の胴にめり込むと同時に手に纏っていた電撃を放出する。
鎧通しに似た効力を持つこの技は、衝撃と共に電撃を直接相手の内部に注ぎ込む技よ。
これならいくら丈夫な人間でも大きなダメージを与える事が出来るわ。
「うふふふふ。油断してしまいましたわね。まさか三撃も受けてしまうとは」
「ーーっ!」
女の口から聞こえた確かな言葉にあたしは背後に飛び退いた。
効いてないの!?
余裕の笑みを浮かべている貴族風の女にあたしは焦りを覚えた。
今の技はあたしの技の中でも一番貫通力に優れている。
相手がどれだけ頑丈でも今までこれを受けた立てたものはいない。
師匠から直々に凶悪な技と言われているのだ。それが効かなかったとでもいうの? ありえないわよ!
「パトラ」
突然聞こえた第三者の声にあたしの心臓が激しく跳ねた。
周囲に意識を向けると女の背後から誰かが近付いてきているのが見えた。
援軍!?
「あら? 珍しいですわね。あなたがそれだけのダメージを受けるとは。中々の強者と出会えたようですわね。ディン」
パトラと呼ばれた貴族風の女にディンと呼ばれるその者はまるで戦国時代を思わせるような鎧に身を包んでいた。
何故か左手で顔を覆っているのだけど、指の間から漏れ出しているのは……血!?
「帰るぞ」
「帰る? 私たちのあるべき場所はここですわよ?」
「ここはもう終わる。我らがあるべき場所はここではない」
「終わる? 何を言っていらっしゃるのかわかりませんわよ」
「ここはこ奴らによって終わりを迎える」
「何を? ここで倒せば良いでしょう?」
そう言って拳銃を構えるパトラをディンが手で制す。
「どうして邪魔をするのかしら?」
「こいつは我が戦った者の連れだろう。戦うな」
「……報復を恐れるというのかしら? あなたが」
「否。あやつの仲間なのであれば何かを隠しているはずだ」
「私に万が一があると仰るの?」
「そうだ」
ディンの言葉にパトラは諦めたように長く息を吐くと、持っていた拳銃の仕舞った。
「うふふ。命拾いしましたわね」
そう言って背中を向ける二人。
「ま、待ちなさいよ!」
「死に急ぐな小娘」
その声はあたしの背後から聞こえた。
それを自覚すると同時に、さっきまで正面であたしに背中を向けていたディンが背後にいる事に気付いた。
早い! まったく反応できなかった。
「案ずるな。我らはもうここから退散する。後の事は好きにしろ」
「待て!」
あたしが振り向いた時、そこにディンの姿はなかった。
二人にはまんまと逃げられてしまった。
だけど。
「……見逃されたって事わね……」
助けられたのはあたしだ。
奥の手? そんなものない。
言ってみれば電散手甲こそがあたしの奥の手なのだ。
あの男はあたしが密かに焦っていた事に気付いているように思えた。
敵であるあの男に助けられてしまったのだ。
あたしは強く歯を噛み締めた。
☆ ★ ☆ ★
「あーもう! めんどくせえっ!!」
出口の見当たらないダンスホールらしき場所を彷徨うこと約十数分。
そろそろイラついてきたぞ。
「もういい! 適当に風穴こじ開けてやる! 『解除』!」
全力の力をこの拳に込めて。
「一○○パーセント!」
適当に選んだ壁に拳を突き出した。
どうやら三倍の力って奴は凄まじいな。壁が一瞬でただの瓦礫になったぞ?
「よし! 出口完成!」
壁の向こうには運の良い事に道があった。
どこに続いているかなんてわからないが、このままここにいるよりかは断然マシだろう。
深いことは考えないないで、俺はその道を進み始めた。
「なんか……雰囲気が変わったな」
さっきまで通っていた廊下にしろ、ダンスホールにしろ、研究所というよりも洋館とか、お城とか言われた方がしっくりくる感じだったのだが、今度の道は全面がシンプルで真っ白だ。
そう。まさに研究所って感じがした。
「どうやらやっと目的の場所についたらしいな」
目の前にある巨大な真っ白の扉を見て俺はつぶやいた。
俺はもう一度リミッターを解除すると、静かに刀を鞘から抜いた。
「拳よりもこっちの方がいいよな」
硬いものを斬る練習にもなるしな。
ということで、上段に構えた刀を俺は全力で振り下ろした。
次回更新は明日です!
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