1-17 異世界から化物みたいなのいるよねー
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案内人をしていたルカさんと一緒にメディンの所に戻っている間、今度はルカがメインとなって話していた。
「いやー、それにしても信じてくれる人がいるとはねー」
「あんなに深い谷を作るのは多分無理ですけど、一万の大群なら一人で処理出来るような知り合いがいますので」
「へぇー。そんな凄い人が師匠なのかい?」
「はい」
マーレ師匠ならどうやって処理するだろうか。
大波でも起こして終わらせそうだなー。
「いやー、懐かしいなぁー。今頃あの子たちも君たちと同じくらいかのかなー」
「あの子たちっ誰のことですか?」
「あの谷を作った子達だよ」
「てことはやっぱり……」
「まあね。会った事あるよ」
なんとなくあの谷の話をしている時のルカさんは楽しそうに見えたからな。
もしかするととは思っていたが、やっぱりそうだったのか。
「けどまあ、もう会えないんだけどね」
「えっ?」
その時のルカさんはとても悲しそうに、そして、寂しそうな表情を浮かべていた。
まさか……。
「風の噂で聞いたんだ。みんな死んじゃったんだって」
「それは……」
この世界は戦いの世だ。
それはイーターという化け物がいるため日本よりもより強くある。
知り合いの死なんて、こっちではそう珍しい事ではないらしい。
「まあけど、それを知ってから一年以上経ってるし、もう大丈夫だよ」
「ルカさん……」
俺たちの表情から空気を読んでくれたのだろう。
笑みを浮かべてそう言うルカさんだったが、その笑みは薄く。無理をしているのがよく透けて見えた。
☆ ★ ☆ ★
「あっ。おかえりなさーい」
「ただいまー」
既に通行証は貰っているらしく、メディンは列から離れた所でぽつんと待っていてくれていた。
俺たちと一緒にいるルカさんを見つけるやいなや、花が咲くような笑みを浮かべる。
「ルカさん!」
「やあメディンちゃん。久しぶりだねー」
両手を合わせる二人。メディンの方は嬉しさのあまりその場でぴょんぴょんと跳ねていた。
「ルカさんっ。どうしたんですか?」
「この子達にメディンちゃんと一緒に来たって聞いてね」
そのまま手を繋いでクルクルと回り出した二人。ダメだ意味がわからない。
「ルカさん通行証はありますか?」
「あたしは大丈夫だよ。ほら、わかるでしょ?」
「あっ。そういえばそうでしたね」
どういうことだ?
「さーてと、門、行こっか」
並んでいた列とはまた違い、検問所のような門に向かう俺たち。
システム的にはあの並んでいた受け付けで軽い面接、まあ質疑応答をして、合格すれば貰える通行証を検問所で見せれば入れるという感じだ。
向こうと比べれば列は短いのだが、並んで待つこと数分。
「どうぞ。お通りください」
本人とメディンの提案によって先頭に並んでいたルカさんの番になると同時に、通行証を確認されることもなく二人の門番が頭を垂れていた。
「……えっ?」
「ほらほら。行くよ」
ルカに言われ俺たちも進むが、始終唖然としている俺と実久だった。
ちなみに俺たちも通行証を確認される事はなく、素通り。
「ね、ねえ、さっきのってどういうこと!?」
俺も思っていた疑問を実久が代わりに聞いてくれた。
先頭を歩くルカが振り返り、意味深な笑みを浮かべた。
「え、えーと……」
「ルカさん、悪戯はメッですよ?」
「ごめんごめん。久々なメディンちゃんのメッが聞きたくてさ!」
「あぅ。メディンのせいなんですか!?」
なんだここ二人。コントなのか?
「別に簡単な話だよ。あたし元々は何でも屋をやってたんだよね。そのおかげがこの街での知名度が凄くてね。まあ、顔パスってやつだよ」
「なんだ……」
あの意味深な笑みを見て、一瞬、もしかするとルカさんは偉い人なのかもしれないと思っていたのだが、ただこの街に貢献したからって事らしい。
「いや、それも十分凄くないか!?」
通行証までやってて出入り口をあそこまで厳重に固めているというのに、それを顔パスできるとか。
「まあまあ。使える人脈は使えってね」
そう言ってウインクをルカさん。残念ながら色気のようなものは感じないのだが、普通に可愛く感じた。
まあ、年上にそんなこと言っちゃダメだと思うけど。
☆ ★ ☆ ★
ルカさんとメディンとは門の前で一旦別れることになった。
どうも個人的な用事があるらしい。
「まっ。久々の故郷だって言ってたし、友人とか、家族とかに会いたいんでしょ?」
実久の予測に賛成。
俺たちは現在はこの街を誰よりも知っていると言っても過言ではないルカさんからオススメされた宿屋に向かっていた。
そしてついた宿屋の名前は。
「……ねえ。この宿屋の名前……」
「なんか、あれだな……」
デカデカと書かれている宿屋の名前は【神々の止まり木】
オススメされたとはいえ、普段なら近付きたくないオーラが滲み出てるぞ。これ。
「まあ、いくか」
ここに泊まらないとあの二人と合流するのは難しいだろ。
ここに来た目的のためにもルカは必要だ。
俺たち二人は顔を見合わせた後、どちらともなくため息をつき、渋々店の中へと入った。
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