1-16 メディン
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黒髪ミディアムの小柄の少女ことメディンにこれから行くテニントの街を案内してもらう事になった後、着くまでの間、俺たちは雑談に花を咲かせていた。
「ほぇ。そんな事があったんですかぁ」
話の内容はほとんどが実久の冒険劇についてだった。
まあ、俺ってこっちでの話のネタ、ほぼ無いからな。
それに比べて実久の話は凄い。
あのドS幼女の命令で各地を回ってきただけあって、話題に事欠かないからだ。
内容もとんでもないしな。
「それから北幻峡ってところは不思議でね。普通、谷の入り口って二つあるでしょ? けどここには出口が一つしかないのよ」
「なんで?」
「構造が特殊で上から見ると渦巻き模様の谷なのよ。だからもう一つの先端は渦巻きの中心になってるから塞がってるってわけ」
「渦巻き模様の谷ってちょっと見てみたいな」
「あら。それなら今度行く?」
「いいのか?」
「あたしは一向に構わないわよ」
「それなら」
「え、えーと、確か北幻峡った魔境ですよね?」
「……あら、良く知ってるわね」
魔境? なんだそのめちゃくちゃ不安になる単語は。
「……なんだその魔境って……」
恐る恐る聞いて見ると実久が満面の笑みを浮かべていた。
なんだろう、この感じ。まるでマーレ師匠のような……。
「え、えーと、魔境というのは特殊な環境で、生息しているイーターの強さが他と桁違いの場所の事です」
メディンが苦笑しながら教えてくれたのだが、え、高レベルダンジョンって事か?
「一緒に行きましょうね」
学校のマドンナから誘われた場所は高レベルダンジョン。嬉しくねぇ。
「えへへ。あっ、着きましたよー」
俺と実久のやり取りを楽しそうに見ていたメディンのおかげで降りるべき場所で場所から降りた俺たち。
「なあ、馬車ってこんなバスみたいな感じだったか?」
「こっちではこれが普通よ」
バスという単語がこっちでも使っていいのかわからなかったから実久に耳打ちをしていると同じく耳打ちが返された。
アウトらしい。
「それと、バスならこっちもあるわよ?」
アウトじゃないらしい。
「二人とも何してるんですかー? 行きましょうよぉー」
こそこそやっていた俺たちに向けて少し先に行っていたメディンが手を大きく振りながら言った。
「ええ。今行くわ! ほら、案内してもらうんでしょ?」
「ああ」
「随分と立派な壁だな」
馬車で来られたの街の四方にある門の内の一つの前だ。
この街、巨大な壁に囲まれてるっぽい。つまり、街に入るにはこの門を通らないといけないのだが。人がめっちゃ並んでる。
「昔イーターの襲撃があった際に神様が作ってくださったのではないかと言われる巨大な谷があるんですけど、それが観光地のようになって街にたくさんの資金が入るようになった結果、また襲撃があっても大丈夫なようにとこの壁が建てられたんですよ」
「へえ。その巨大な谷って誰でも見られるのか?」
「はい。大丈夫ですよ。谷の中に入る事は許されていませんけど、上から見る分には無料です」
「私が三人分の通行証を貰っておきますので、お二人は見てきてはどうですか?」
「いいの?」
「はい。場所は向こうで無償の案内人がいますので」
そう言ってメディンが指差した先には【テニント名物神々の谷・案内人】という看板を持った人たちがいた。
なんか、一見怪しいな。
「それじゃあお言葉に甘えて行ってくるわね」
「はーぃ。いってらっしゃぁーい」
パタパタと手を振って見送ってくれたメディンと一旦わかれて俺たちはその怪しげな案内人のところまで来た。
「名物の大谷に行きたいんですけど」
「はいはーい。案内人のルカだよー」
短パンに白のTシャツ。頭には鉢巻まで巻いているちょっとワイルドなお姉さんに実久が声を掛けると、ルカさんは俺と実久の顔を交互に見た。
そしてニヤリと笑うと。
「デートかな?」
「「違う!!」」
「おうふ」
失礼な。こんな猫被り女とデートなんてありえない。まあ、外見だけは素晴らしいけとな。中身が詐欺だ。
俺としては実久よりも水連の方がいい。
「あははっ。いきなりごめんねー。昔会った事のある二人組と同じ空気だったからね」
そう言うと懐かしそうに目を細めるルカさん。なんか未亡人みたいな空気が出てますけど?
「おっと、ごめんねー。女神の谷に行きたいんだよね?」
「ええ」
女神の谷ってさっきから名称が安定してないな。看板には神々の谷ってあるぞ?
「それじゃ案内してあげるよ。今は案内人だしね」
ルカさんに連れられて俺たちはその女神の谷とやらに向かっていた。
「二人は何処から来たのかな?」
「木枯ってとこからよ」
「へぇ。木枯かー」
「知ってるの?」
「まあねぇー。あたしもいろいろあったからね」
そう言って二ヒヒと笑うルカさん。
「さーて、ここだよー」
「ここが……」
柵によって仕切られている先に見えるのはどこまで続いているのかわからないほどに深い深い谷だった。
「凄いな……天災でもあったのか?」
「あはは。こんなこと言っても誰も信じないと思うけど、これ、一人の女の子がやったんだよ」
「えっ?」
女の子がやった?
そういえばここでイーターの大群が一瞬で消えたって話があったな。
もしかして、その娘がやったのか?
「この深さ……多分、師匠でも無理よ」
柵から身を乗り出して下を覗いてみるが、底なんて全く見えない。光すらも届いていない真っ暗がそこにあった。
「師匠以上の超人がいるって事か……」
あのドS幼女の強さは身に染みて知っている。あの過酷なイジメという名の修行を生き延びる事が出来たのは純粋に回復魔法による治癒のおかげだ。
そう考えると回復魔法も無しに生き延びている実久って凄い奴なんじないか?
実際に戦った時、結構強かったしな。
「し、信じてるくれるの?」
「ああ。世界は広いですから。そういう化け物みたいな奴がいてもおかしくないと思います」
「そ、そっか……」
微かに頬を赤めているルカさん。なんだろう。多分五歳は年上だと思うのだが、可愛いな。
「さて、そろそろ戻りましょうか?」
「そうだな。メディンも待ってるだろうし」
「え? メディンちゃんの知り合いかい?」
赤くなっていた顔を隠すようにやや俯いていたルカさんが驚きの声と共に顔を上げた。
「もしかしてルカさんもメディンちゃんを知ってるんですか?」
「うん。メディンちゃんはお得意様だからね」
そう言って可愛らしくウインクをするルカさん。
「それにしてもメディンちゃん帰って来たんだ。それならあたしも会いに行こうかな」
「それじゃあ一緒に行きますか?」
「そうだね。デートのお邪魔にならないかな?」
「「だからデートじゃないです!」」
「あはは、息ぴったりだね!」
心から楽しそうに笑うルカさんだった。
次回更新は多分明日です!
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