Episode1 訪問者
久しぶりの休みのため、部屋の掃除をしていた時それは鳴った。
一人での生活の終わりを告げる音であり、 他人の優しさを改めて実感する事になる運命と言う名の歯車が動き出す音だったのかも知れない。
「河月純哉さんはいらっしゃいますか?」
「はい?今行きます!」
聞いたことの無い声だった大人の女性で、感情が全くと言って良い位無情な声知り合いにこんな声の人は居ない。
疑問に思いながらもドアを開ける。
そこに居たのは、長身の長く美しい黒髪を下の方で結んでいて、茶色っぽい瞳を持つ三十代位の女性だった。暗い紫の眼鏡を掛けて黒いスーツを身につけている。
「えっと...どちら様ですか?」
「私、冬里燕と申します。」
「はぁ...」
「ところで、本日は御話が有って伺いました。」
「えっと、それは僕にですか?」
「はい、勿論です。」
「じゃあ...立ち話もなんですしどうぞ」
先にテーブルの前に座って貰いポッドからお湯を出しお茶を入れ冬里さん?に出す。
それから僕も反対側に座った。お話って何のことだろうか?
「お茶、ありがとうございます」
「あ、いえいえ!お気に為さらず」
「本日御話したいことなのですが、先日届いた書類はありますか?」
「書類ですか?ちょっと待ってください」
棚の中から一番右のクリアファイルを取り出してペラペラと捲る。
「あ、もしかしてこれですか?」
「そうですね。では本題に入らせて頂きます」
「はい」
何だかこの人の話し方何だか凄く緊張する。
「先日届いた手紙はもう読まれましたか?」
「はい、まあ一応」
「手紙にも書いてある通り、とある少女を預かって頂きたいのですが...大丈夫でしょうか?」
「え、あれってドッキリとかじゃなかったんですか!?」
「国からの書類ですので虚言は有りません」
「はあ、所で少女とか彼女って言いかたしてますけど名前はないんですか?」
「はい、まだ有りません。引き取ってくれた方が名前を付けるとの事です」
「...別に僕の所じゃなくても孤児院とかでもいいんじゃないですか?」
「やはりそう思われますよね。ですが、現段階ではお伝えする事ができません。孤児院に入れる事ができない理由があると思って下されば結構です」
「これって断ったら補助金停止とかないですよね?」
「はい、ないと思われます」
「...あ、最後に一つ良いですか?」
「はい」
「僕が断ったらその子ってどうなりますか?」
すると冬里さんは少しだけ考えてからこう言った。
「この話はなかった事になり、第二候補者の所へ相談に行きます。了承が貰えればそこで暮らす事になります。了承が貰えなかった場合は第三候補者、第五候補者の所へと行きます」
預かり相手がいなければ彼女はずっと一人なのだろうか?
「貴方が第一候補者に選ばれた理由...わかりますか?」
「いえ...全く」
「だろうと思います。貴方が選ばれたのは人柄が良い、常識があるのも勿論含まれていますが貴方が孤児だからというのもあります」
「何が言いたいんですか?」
自分で思っていたよりもかなり低い声が出た。孤児と言われた事に自然と苛立ちを感じていたのかもしれない。
「はい、これは貴方も幸せにしてしまおうという計画なんです!」
はじめは冷静沈着な声だったものの最後の方は少しだけ熱を帯びていた。
「あ、すみません少し感情的になってしまいました」
そして一瞬で戻っていた。もしかしたら素が出てしまったのだろうか?それともそれだけこの計画に力を入れているのだろうか?
どちらにしても初対面の僕にはわからない事なんだろう。
「今は国からの支援金で一人暮らしをなさってますが一人って寂しいですよねー」
ぞわりとした。口調だけでなく何と言うのだろうか?何も感じられなかった冬里さんから悪意が滲み出ている様だ。
断る事を良しとしない圧力もしかするとこの人ってやばいパターン?
まさか続きを書くと思っていませんでしたが、続ける事にしましたので何だか中二病臭い所が多いかも知れませんが精一杯書かせて頂きますので宜しくお願いします。