廃墟の出来事
ある男性がオカルト好きの友人と 殺人事件があったといわれる廃墟を探検することに
現地集合ということにしたものの 待ち合わせの時間になっても友人が現れない
トゥルルルル
トゥルルルル
電話にも反応がない
「やれやれ 一人で行くしかないのかねぇ」
彼はしぶしぶ歩き始めた
第20話(最終回)「廃墟での出来事」
「廃墟ねぇ・・・」
彼は廃墟の入り口に手を掛ける
ギィィィ
施錠されていなかったのか なんの抵抗もなく扉が開く
外はまだ明るかったが 廃墟の中は暗く 何があるのかよく見えない
携帯からの明かりで 心許ないが 周囲を照らす
「こんなに暗いなんて 準備をしっかりしとくんだったな・・・」
ギシッ
中に足を踏み入れてみる 空気が生暖かい
「雰囲気出てるねぇ」
ギシッ ギシッ
床を踏みしめる音だけが響く
「何も起こらないな アテが外れたか」
そう思って引き返そうとした時
ガタガタッ
上の方から物音が
「おかしい 誰かいるのか あいつ先に来てたのかな?」
ガタガタッ
音のする方に進む
「この先か」
階段 その先はさらに深い闇が広がっている
だが もしかすると友人がそこにいるかもしれない
「ここで行かなかったら臆病者扱いだな」
そして彼は階段を一歩一歩進み始める
ギシッ
ギシッ
階段を登り切ると 扉が1つ
「この部屋だけか?」
扉を開けようと手を掛けるが ここでふとある事に気づく
「壁に 何か書いてあるのか?」
携帯の明かりを照らしてみる
壁には真っ赤な文字でこうあった
『わたしは このさきのへやに います』
「なんだあいつ気味悪いことしやがって」
ギィィィ
中に入る
「うわっ なんだここ」
その部屋は他の部屋よりさらに空気がじめっとしており
何かよく分からない生臭い臭いが充満していた
床を照らすと あちらこちらに血痕らしきものが付いている
「血?」
ガタガタッ
部屋の奥から 音が響いている
恐る恐る近づく
「!」
人が倒れている 足元に気をつけながら 彼は近づく
「ちょ! 大丈夫ですか!」
その肩に触れようとした瞬間
バン!
後ろから肩を叩かれてしまう 彼は反射的に振り返る
「よう 一人でこんなとこまでよく来たな」
そこにいたのは友人だった
「お前! いままでどこに?」
「ずっといたよ」
「はぁ!? あ それよりここに人が!」
彼は目線を戻すが そこには何もなかった
「あれ? ここに人が倒れてたのに」
「それって だ れのこと だ ??」
「入り口にあったんだ わたしはここにいます って」
「わたわたわたしは ここに いまままます」
「は?」
友人は白目を剥いて 小刻みに震えながら
「わたわたわたしは こここに いまあああす」
の言葉を繰り返していた
これはヤバいと彼は友人の手を引いて 出口へと向かう
「おい! しっかりしろ!!」
「わたわたわたしは」
バァン!
玄関の戸を蹴り開け 外に出る
「とりあえず お寺か この辺にあったかな?」
「・・・」
それまでしきりに喋っていた友人が 急に黙りこむ
「おい 大丈夫・・・」
後ろを振り返る そこにいたのは
「わたしは ここに います」
顔の潰れた女が そこにいた
「わたシは こコニ いマす」
「うわああああああああ!!」
彼は女を突き飛ばし 無我夢中で走る
「何だよアレ何だよアレ!!」
後ろは振り返れなかった あの女追ってきてる そう感じたからだ
「ハァ ハァ ハァ」
その時 前方から車が走ってくる
ブロロロロロ
「おい どうした そんな慌てて」
乗っていたのは友人だった
「お前本物だよな!」
「何ワケの分からないこと言ってるんだ 乗るか?」
彼は友人の車に乗り込んだ 安心感からか 全身の力が抜けていく
只事でないことを悟ったか 友人は廃墟の方面とは逆に車を走らせる
「行ったのか? あの廃墟」
「あ ああ」
彼は友人に廃墟での出来事を話した
すると 友人は急に笑い始めた
「ククク アーハハハハハ! お前見たんだな! アレ!」
「何がおかしいんだよ!!」
「いやー 大変だったよ あの女元カノでさ 生意気だったワケ
で ウザくてさ あの廃墟に連れ込んで殴って殴って蹴って蹴って
そうしてたらさ あいつ 動かなくなってさ もしかしたらこいつ幽霊になって
ここに化けて出るんじゃないかって それってオカルトじゃん? 都市伝説になるじゃん!? そうしたらワクワクが止まらなくてさ!
だから演出でジャパニーズホラー感を盛り上げるためにアイツの血文字で書いてやったんだ!
わたしはここにいますって! な お化け屋敷感出るだろ! スゲーヨナアアアアア!!」
といって友人が彼の方を向く その目は虚ろで焦点が定まっていなかった
「お お前 おかしいよ 頭イってる!」
「うひゃひゃひゃひゃ」
友人は虚ろな目のまま笑い続ける 前を見ず 彼の方を向いたままで
キキキキー ガシャーン!
強い衝撃が走る
「っ!」
・・・
・・・
ピッ ピッ ピッ
「う うう・・・」
気が付くと 病院のベッドの上にいた
「あ 気が付かれましたか!」
看護師が覗きこんでくる
彼は体を起こそうとするが 体が痛くて動かない
「まだ絶対安静です あちこち骨折してて 生きてたのも不思議なんですよ?」
「あいつは・・・どうなったんですか 友人は」
そう尋ねると 看護師の表情が曇った
「残念ですが・・・」
「そう ですか・・・」
友人が何故あんな凶行に及んだのか
到底理解できるものではなかった
ふと 友人の言葉が思い出される
『もしかしたらこいつ幽霊になって
ここに化けて出るんじゃないかって それってオカルトじゃん? 都市伝説になるじゃん!?』
あの廃墟での出来事がいつか都市伝説となって あの女性が呪いを振りまく存在になるのかと思うと
彼はやるせない気持ちで一杯になった
・・・
・・・
「○○県 △市の外れにある廃墟がマジでやばそうな件wwwww」
『マジであそこの廃墟出るんだって 女の霊!』
『誰か凸ってレポよろww 俺は行かん』
『ちょ! 地元かよ!』
『噂によると2階の部屋の前に血文字あるんだってさ』
『何でもその廃墟で殺人事件があって その被害者の霊が出るんだって(T人T) ナムナム』
『これ 下手すりゃ都市伝説の1つになるんでね?』
完
最後は頑張ってホラーにしました やはりホラーは(ry
ちなみにモチーフは「このさきのへや」っていう怖い話です
あのうしろみないでね ってヤツ あの話も結構怖いですよね 想像させる文というのはすごいですね
そしてここまでお付き合い頂き ありがとうございました
20話と少ない話数ではありましたが 楽しんで頂けたなら幸いです
また機会とご縁があればお会いしましょう
UGM




