ランニング
タッタッタッ
タッタッタッ
またかとAは飛び起きた
ここのところ毎晩毎晩深夜に誰かが走ってるような音が聞こえる
Aは試しに大枚をはたいて用意した監視カメラで音の聞こえる辺りを一晩録画してみた
すると 人の影が走る姿が
「うっわ なんだこりゃ」
その影はしばらくすると消えた
第2話「ランニング」
ポルターガイストのような霊障はないものの 走る音がうるさい
タッタッタッ
タッタッタッ
「俺が気にしすぎなのか実際うるさいのか くっそ どのみち我慢できねぇ!」
このランニング野郎を祓うため そこそこ高名の霊能者を呼ぶことに
出現地点にくるなり いきなり霊能者が騒ぎ出した
「ぬあああああああ! なんて邪悪な霊だ! 直ちに祓わないと
まるでトミノの地獄を音読したような事になる!!」
分かりづらい例えで霊能者はAに訴えかける
「どういう事ですか 悪いことがあるんですか?」
「凶事じゃ 凶事が起こる 祓いましょう! 10万円で!!」
「じゅ 10万円? それはちとばかしお高くないですか?」
「バカ言いなさい! このまま呪殺されたいのですか!? ええ!!?」
物凄い剣幕
霊能者の謎の勢いに押され Aは金を払ってしまう
その後 霊能者は意味不明な経文を唱え 数珠を振り回したり 何やら叫んだ後
終わりました と一言残し 去ってしまった
「な なんだったんだ・・・」
ともあれ幽霊は祓われ 穏やかな夜が来るはず・・・だった
深夜
タッタッタッ
タッタッタッ
「祓われてねーじゃん! あのインチキオヤジ!」
タッタッタッ
タッタッタッ
再度 監視カメラを仕掛ける やはり同じ影が映っていた
「お前どうすれば消えてくれるんだ・・・」
そこでAは考えた
翌日 深夜
おおよそランニング音が聞こえてくる辺りに立つA
やがていつものように音が聞こえてくる
タッタッタッ
タッタッタッ
ちょうど自分の近くに来たところでAも走りだす
「うおおおおおおおお!俺が勝ったら消えてくれよおおお!!!」
タッタッタッ
タッタッタッ
ダダダダダダダダ
Aは走った 必死に走った
全力で走った満足感と疲労感でその日はぐっすり寝ることができた
翌日 深夜
タッタッタッ
タッタッタッ
「どうすればいいんだ・・・」
げっそりとし まるで自分が幽霊かと言わんばかりの青い顔
あまりにも悲惨なその姿を見て友人であるBが寄ってきた
「どうした 随分げっそりしてるな」
「お前か・・・」
オカルトに詳しくはなさそうだが 何かヒントは得られないかと
AはBにランニング影の事を話した
「幽霊ねぇ 毎晩走ってんの?」
「ああ もううんざりだ 地味な音だけど響くんだよ」
「うーん そういう霊って何か未練とか残してるんじゃないかな
ランナーなら・・・そうだね 出るはずだったレースに出れなかったとか ねぇ」
「そんなの幽霊の勝手な都合じゃないか!」
「まあそう言われりゃそうだがね うーん 効果があるかどうかは分からないけど 一つ試してみるかな」
同日 深夜
「この辺かい? 音が聞こえるのは」
ゴールテープを手に 立つ男二人
やがてAの耳に いつもの音が聞こえてくる
タッタッタッ
タッタッタッ
「!」
「ちょうど僕らのところで来たとこで合図してくれ
テープしっかり持ってくれよ」
タッタッタッ
タッタッタッ
音が近づく
タッタッタッ
タッタッタッ
・・・
「来た!」
「ゴーール!!」
思いっきりBが叫ぶ
すると その地点で音がピタリと止んだ
「止んだ! B! 止んだぞ!」
しばらくして かすかに男の声が聞こえた
ありがとう と
「B どういうことだ?」
「彼はゴールしたがってたんだよ だからゴールを切らせた これで 彼のレースは終わったんだ」
それから 深夜にランニングする音が聞こえることは無かった
完
結構昔からある都市伝説だったような気がします
噂ではランニングマンが建物の壁を突き抜けてきたとか
それはさすがにビビリますねw