案山子
ある男の子が田舎の親戚の家に来ていた
野山が広がる田舎の風景
虫が捕れる場所を祖父から教わり 彼はそこに向かった
「あんまり遅くなるなよ!」
「はぁーい」
山に向かっている最中 ふと 大きな田んぼの前を通りかかる
すると その真ん中辺りに何か立っている
「なんだ?あれ?」
それは一体の案山子だった
第18話「案山子」
案山子なのだが 立っている位置が不自然である
ぽつんと立つその姿は不気味なものだった
「変なの」
彼は山に向かおうとするが ふと気になり 案山子の方を振り返る
気のせいだろうか 最初に見た時より近づいているように感じた
「かかしが動くわけないよね それより虫取りだ!」
が 彼は特にそれを気に留めず 先を急ごうとする
ズボッ!
ズボッ!
突然 田んぼの方から音がした
「なんだ!?」
驚いて田んぼの方に振り返る
ずぼっ!
ずぼっ!
なんと 案山子がこちらに向かって動いていた
ずぼっ!
ずぼっ!
案山子はだんだんと迫ってくる
「わああああああ!」
彼は恐怖を感じ もと来た道を引き返し 走る!
が その背後からは ずぼっ! という音が響く
そしてその音はやがて
ざっ
ざっ!
という音に変わっていった 案山子が田んぼから出たのだ
「うわああああ おかあさん! おとうさん!」
ざっ!
ざっ!
ざっざっざっざっ!
迫る音
何を思っただろう 彼は後ろを振り返った
そこには 顔を真っ黒に塗られたかかしが立っていた
「うわあああああ!」
恐怖でパニックを起こし 必死に走るが
ガッ!
石に躓き 転んでしまった
ざっ
迫る案山子
「た たすけて・・・」
涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら彼はそう言った
「ト モ ダ チ」
・・・
・・・
「あの子はどこまで行ったんだ!」
「虫を採りにいったはずだがねぇ」
夜になっても男の子が帰らない と 大人たちが動き始める
周囲を探せど見つからない
警察に通報し 大がかりな捜索が始まる
が とうとう男の子は見つからなかった
それから 時が過ぎ 田打ちの時期がやってきた
トラクターで田んぼを掘ると 地中から男の子の遺体が出てきた
彼は今までどこにいたのか
それはあの案山子にしか分からない
完
田舎シリーズ(?)第2弾です
突然不気味なものに襲われるというのはホラーとして扱いやすいです
が 肉付けが大変です




