ラーメン
学生が街で遊び歩いていた
「腹減ったな どっかで食うか」
が流行りの店はどこも混んでいてとてもすぐご飯にありつけそうにない
「参ったな・・・ 朝飯抜くんじゃなかった」
混雑しているのでは仕方ない と彼は弁当を買いにコンビニへと足を向ける
が ふと一軒のラーメン屋が目に止まった
第15話「ラーメン」
他の店と違って客が入っている様子ではない
「営業はしてるのか」
色々不安もあったが 彼は店内に入った
「いらっしゃい!」
店内に入るなり 店主らしきおじさんの声が響く
「あ、 ども」
彼は少しオドオドした様子でカウンター席についた
「兄ちゃん! 何にしますよ!!」
「あ じゃ じゃあこのわかめラーメンで」
あいよっ! っと店主はラーメンを作り始める
彼は辺りを見回す ダイアル式のテレビ 少し色あせた新聞
自分の親世代に流行ったマンガ
置いてあるものが妙に古かった
「変な店だな 昭和モノのコレクターか?」
「あいよ! わかめラーメンお待ち! 熱いから気を付けて食っとくれ!」
注文したラーメンが置かれる 出来たてであることを証明する激しい湯気
そして空腹の胃袋を刺激してくる香り
「う ウマそうだな!」
「ウマそうじゃない ウマイんだよ!」
彼は早速ラーメンを食べてみた
ほどよい硬さの麺 こってりし過ぎずあっさり過ぎない程よいバランスのスープ
食べれば食べるほど 箸が止まらなくなる
「おっさん 美味しいよ!」
「そうだろうそうだろう」
おじさんが満足気な顔でカッカッカッと笑う
空腹も後押ししたせいか 彼はあっという間に平らげてしまった
「ごちそうさん! こんなに美味しいラーメンなのにどうして流行らないんだよ!」
「はっはっはっ! 流行りには勝てんよ!」
「そうだ お代を」
そう言って彼は財布を取り出そうとするが・・・
「いらないよ お金はいい」
おじさんはそう言って支払いを拒否した
「何で?」
「俺のラーメンを食ってくれて それで喜んでくれる 俺はそれだけでいいんだ」
おじさんの表情が曇ってくる
「オッサン?」
「違和感 あっただろ この店さ 察してくれ な?」
その一言で彼はうっすらと何かを察した
そして彼は店を出る
翌日
彼はあのラーメン屋のあった場所に向かう
そこには誰もいなかった 看板は外され 店内は綺麗に片付けられていた
近くの商店の店主に ラーメン屋のことを聞いた
「ああ あのオッサンの店か 懐かしいね 病気で入院してたんだよ
どうも最近 亡くなったらしくてね」
「やっぱりそうなんですか」
どうしてそんなことを? と聞かれたが彼は答えなかった
そして 帰り際 彼は何かを思い出したかのように店に戻る
「おっさん! ごちそうさん!」
「あいよっ! お粗末さまでした!」
はっきりと聞こえた おじさんの元気な声・・・
完
個人的な話ですが チェーン店より商店街の隅っこでひっそりと構えている個人のラーメン屋の方が風情があって好きです




