おっさん勇者
少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです。
男やもめで34年。アラサーと呼ばれるのを嫌がっていたのもとうに過ぎ、寧ろアラサーと読んでもらえるのも今年まで。
最早徹夜なんてやりたくもないのに、それでも生きる為にやらざるを得ない毎日。
職を変えようにも資格も持ってなけりゃどうしようもないと来たもんだ。
「こんなハズじゃなかったんだがなー」
コンビニの弁当を片手に今日も午前様な時間に帰宅。
この後泥のように眠って起きたらまた仕事だ。
そこそこ日当は良いとは言え、そこから作業着やヘルメット代等を引かれてしまう訳で、となると寧ろ少ないくらい。
若い頃にやりたい放題やりすぎた借金を返す為にただただ働く日々に、10年前くらいの自分の殴りたいくらいだ。
何がギャンブルで生きていくだ。
そんなバカな事を考えるから後々こうやって苦労するんじゃねーか!
やり場のない怒りを抱えながら、誤魔化すようにため息を吐き出す。
くそっ、全く人生楽しくない。
ふと見上げれば、楽しそうに投稿する高校生のカップルが視界に入って、思わず見つめてしまう。
……俺だって20代半ばまではそう言う物もあったのに……。
「って、何だ何だ!」
見ていれば突如光に包まれる高校生カップル。
別に人が良いとかそんな事は全くない俺だが、気付いたら2人に向けて駆け出していた。
人間咄嗟の時って本当に何やるか分からないってこったぁね。
高校生カップル達も何やら叫んでいたように思えるが、気付いたら何やら石造りの部屋で複数人に囲まれていて……。
なんじゃこりゃ?
それに、そのカップルと俺だけかと思っていたら、なんか他にも制服着た男子生徒居るし。
……、作業着の俺が超浮いてる。
マジどんなドッキリだこれ?
「おお、勇者様方……」
ゆ、勇者!? 何言ってんだこの子。
ってか、スッゲー衣装だな。どこかのお姫様か何かかよ?
本当に手がこんだドッキリだな。
多分あれか、この高校生達に仕込んだドッキリとかか。
しまった、全く無関係なのに混ざっちまったな。
どうするかねー。取り敢えず様子を見守るか。
「ゆ、勇者とは?」
高校生カップルの方の少年が代表して口を開く。
そいつにしがみつく少女と……複雑そうなもう1人。おおお、これは三角関係か?
いいねー、青春だねー。けっ、俺はとうの昔に過ぎたぜ。
じゃなくて、状況を把握しないと。
邪魔すると流石に可哀想だからな。
……、ガチで俺これ邪魔者じゃないか?
と、隠れる場所はないかと探そうとした瞬間頭を深く下げる推定姫様。
「大変申し訳ございません……実は……」
……しばらく話を聞いていたのだけど……どんなドッキリの設定だよ。
しかも、なんかこいつら真面目に受け止めているらしいし。
カップルじゃない奴は違う意味で勘違いしていると言うか、間違っていると言うか。
「ちょっ、少し良いかい?」
我慢出来なくて口を開く。
まぁ、同じ1人身の少年とどうやらガチで姫様設定らしい側と険悪になっていたので、助け舟の意味を兼ねて事だな。
「はい、何でしょう?」
少し不機嫌そうな声色の姫様。
おいおい、演技忘れてんぞ?
まっ、俺は少なくとも話している面々より年上っぽいからタメ口でいいだろ。
兵士役の奴らは……この際いいや。
「いや、ツッコミどころ多過ぎるっていうか。
まぁ、確かにその兄ちゃんが言う通りそんなの自分達で解決しろとか、最もだと俺も思うんだけどさ。
それ以前に、メリットとデメリットくらい先に話してくんねぇ?」
そう言うと、何故か全員キョトンとした表情を浮かべる。
って、おいおい、ギブアンドテイクだとかしらねーのかよ?
ちゅーか、雇用の基本だろ?
「いやいや、取り敢えずさ。俺らに勇者になって欲しいって事も、この国を救って欲しい事も分かった。
で、魔族だっけ? を倒せば良いって事も分かったが。
で、具体的に何するんだ?
衣食住は勿論、倒すって言うなら戦争をさせるって事で、それに対して発生する賃金や保証は?
で、倒した後元の世界に返すって言っているけど、あんた達が倒せなかった魔族を倒した俺達が国を寄越せつったらどうするつもりだよ?
つまりは道具扱いして都合悪くなったら処理しますってしか聞こえねーんだけど?
後、勇者している間の権利とかはどうなってんだ?
其の辺を説明するのが先だろ?
今は返せないとか言ったんだし、呼ぶだけよんで終いじゃあるまいし。
もし終わりのつもりならただの無駄をあんたらはした訳でって、おいおい、このくらいすぐに思い浮かぶだろ?」
いや、もしかすると俺がずれているかもしれないけど、でもだって割りと死活問題だからなー。
ぶっちゃけ1日無断欠勤しただけでアウトな職場だし、ならばもう腹を括ってこいつらからある程度金を巻き上げないと生活も出来ないからな。
と、何やら困惑気味に周りを見る姫様。
高校生達は……おい、何でお前らも困惑してんだよ。
ずっと俺いただろう! ずっと黙ってたけど。
「と、捉えなさい!
こんな年老いた男がなんて何かの間違いです」
「えっ、いや、おい!
ちょっ、お前ら止めっ……てぇ! 思いっきり叩くな!
わーった、わーったから。暴れないから止めろ!」
乱暴に俺を拘束し始める周りの奴ら。
くっそー、なんだよこいつら。
どうせ俺を外すいいチャンスだとか思ってんだろうけど、多少お金積まれた程度じゃ許さねーぞ。
「あ、あれ?」
その後何故か牢屋に放り込まれ、そのまま1夜を過ごし徐々にヤバと思い当たる。
ま、まさかあの戯言全部本気だったのか!?
や、やべぇ、どうしよう。
と、何か牢屋から出してもらえる。
理由を聞いてみれば、あの高校生達が俺を出してくれとお願いしたらしい。
デカした!
本当にデカした!
偉い!
その後、まぁ何か俺が突出して魔力強かったり、隠されていた聖剣に選ばれたりしてしまう訳だが……。
いや、まさか俺が勇者とか、え? 最初光ってたの高校生カップルじゃん!
って、よくよく考えれば俺途中から吸い込まれてたような気がしないでもない……。
ともかく、こうなりゃ開き直って頑張るしかないな。
やべぇ……、初日やらかしまくったせいで周りの評価がすっごい悪いんだけど。
ぐぅ、自業自得とは言え辛い。
ご閲覧誠にありがとうございました。
流石に中途半端ですので、いずれ続きを書くかもですが。
ともかくこれにていったん終了でございます。




