釣り
まだ幼稚園だった頃、私は父と生まれて初めての釣りに行った時の事を今でもよく覚えている。
自分専用の小さな釣り竿を買ってもらい、大喜びで海釣りに出かけた。
針のセッティングも餌も付けてもらい、私は釣り竿を持って魚を待つだけだったが、とても楽しかった。
新品の自分だけの釣り竿が良かったのだ。
「ぶるっ!ときたら、巻くんだよ」
と言われたがイマイチその感覚は分からなかった。
きたかな?きたかな?
と何度巻き上げても魚はかからず、それでも根気強く待っていると、ようやくその時がやってきた。
しかし、その衝撃ははまだ幼稚園だった私にとっては大き過ぎて、私は釣り竿を持っていた手を離してしまった。運よく防波堤に引っ掛かり、見える所にあるものの、取りに行くのは中々困難だった。
衝撃を受けたのは私だけではない。
父もである。
なにせ今日買ったばかりの釣り竿が届きそうで届かない所にあるのだ。
それでも父は防波堤を降り、釣り竿を取ってきてくれた。
もちろん、魚はとっくに逃げてしまっていた。
その後に釣り上げたのは、たしかヒトデだ。
どれ程長い間じっとしていたか分からないが、ヒトデの真ん中、口がある位置にしっかり針が刺さっていた。
父も驚いた。隣で釣りをしてた知らないおじさんも驚いた。
その後は大人の手のひら程のカニを釣り上げた。
糸が絡まり、グルグル巻きになったカニだ。もう糸を切るしかなく、私の釣り体験は散々な結果に終わった。
先日、友人と一緒に釣りに行ってきた。
川釣りで、一匹も釣れなかったが昔の思い出に浸り、私も子供が出来たら一緒に釣りに行こうと考えた、いい休日だった。