プロローグ
私の名前は逆木明由美。某国立大学に通う理系な二年生である。セミロングの明るい茶に染めた天パの髪を前髪だけ毎朝アイロンでまっすぐに直し、ナチュラルにメイクを施した私を、人は“黙ってりゃお嬢様風で可愛い”、と評価する。何故、そんな褒められているのかけなされているのか分からない台詞を賜るはめになっているのか。私の自己紹介を含めて、その辺りを語ってみよう。
まず、外見。まがいなりとも“可愛い”と称賛されているので、自分で言うのもなんだが、割と愛らしい顔立ちをしていると思う。目は二重でくりっとしており、丸顔なのも愛まって幼く見える。美人というよりは美少女、そんな系統である。また、背も百六十センチメートルと特に平均を凌駕する事も無く、服装も至って普通な、強いて言うなら生足の露出度が高いぐらいで、むしろ異性に受けそうですらある。つまりは、平均的な女子大学生より少し上ぐらいの外身を持っているという事だ。
さて、ここまで言えば、というか“黙ってりゃ”という修飾語句ですでにお分かりの事だとは思うが……。
ぶっちゃけよう、中身が残念なのだ。
どこがどう残念なのか、恥さらしも甚だしいが、しかしあえてそれを知ってもらうには、友人の言葉をそのまま引用させてもらう。曰く。
『なんというか、残念だよね。惜しいとかじゃない所がまた残念なんだ』
『いや、でも最初の人見知りキャラよりは全然良いよ。友達としては面白いし』
だそうな。それって、恋愛対象にはならないって事!? とつっこんだが、あははーと流すだけだった。くそう。フォローもフォローになってないっつうの!
……そんな私であるが、これでもきちんと彼氏がいる。かれこれ二年以上の付き合いになるのだが、ただし只今絶賛倦怠期、それが一年以上続いてるけどね! みたいな状況にある。期間の長さ的な意味でも、私の性格が推し量れるというものであろう。
そう。私はとても流されやすいのだ。よく言えばノリが良いとも言えるが、それにしたってすでに愛が冷めた彼氏に、“俺の事好き?”、と聞かれたからと言って、“大好き”と即答出来る訳がない。
だから、あそこも辞められずにいるんだろうなぁ……。
週四日、学校終わりに向かうは、こちらも一年以上辞められないでいるバイト先である。今日こそは辞めてやる! そう意気込んでも、結局はずるずると言い出せないまま、丸めこまれてしまうのだ。そんな愚痴を延々としていたら、またもや友人に
『逆木は絶対バイト辞められないね。それに、彼氏とだって別れられない。このまま四年になっても同じ事を言っているね』
と予言されてしまった。そこまで言われては、黙ってはいられない。
「いや、辞めるね! そしてもっと格好良くて優しい彼氏をゲットするね!」
売り言葉に買い言葉。いつもの仲良し四人組の前でそう宣言した私は、その決意を揺るがさない為に、こうして筆を取ったのである。
言うなれば、これは私の決意を表したものなのだ。
これから語られるのは、革命の物語。“逆”という文字を名前に冠しながら、それでも流れに逆らう事の出来ない私が、孤軍奮闘し、最終的には自由と幸せを手に入れる過程である……はずだ。
本来は表に出ないような、心の内と出来事をさらけ出した、日記。だからこそ、今ここに宣言する。本日をもって私、逆木明由美は、今までの自分自身とけりを着ける為の戦いにその身を投じ、全力を尽くす、と――
一人戦争、開幕の火蓋は今、切って落とされた。
今回、初めて大学生を主人公にして、リアルな日常を描いていきたいと思っています。
コメディー路線突っ走りつつ、時には恋愛要素もあるかもです。
どうぞよろしくお願いします。