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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ブラボー

未来を見つめて

作者: ブラボーくん

黄色いひまわり。

花が太陽に照らされ、とても輝いて見える。

ひまわりの色はキラキラとかがやく、太陽のような黄色。

見ているだけで元気になれそうな色のひまわりを見ていると、僕にとっての悪い出来事から身を守ってくれそうと感じた。

暑さに負けず、美しい花を咲かせているのを見ると、僕も負けていられないなと思い、いろいろなことに挑戦することができた。

太陽の方向を向くように成長する姿が、とても情熱的に見えた。

僕は何かあるたびひまわり畑に来ては、美しく咲くひまわりに囲まれて過ごした。

僕はいじめられている。

僕は小さい頃、おばあちゃんにもらったこのネックレスをとても大切にしていた。

学校でいじめっ子にこのネックレスを取られそうになった時は、必死に抵抗したな。

僕に対して唯一優しくしてくれたおばあちゃんからの、プレゼントを失いたくなかったから。

両親は僕がいじめられていても味方なんてしてくれなかった。

先生や中の良かった友達にも相談したけど、みんなへいき、へいきの一点張り。

誰も僕のことを助けようとなんかしてくれなかった。

友達もどんどん僕から離れていった。

友達と笑い合うなんて僕にはもうない。

だから、学校にいるのも、家にいるのも辛かった。

僕は家を飛び出して、いまひまわり畑で夜空に輝く星をのんびりと眺めている。

ひまわり畑にいる間は今まであった辛い出来事も気にせずにいられた。

何があってもひまわりが守ってくれると思ったから。

僕にとっての唯一の安心できる場所だった。

この場所は僕しか知らない。

だから周りの目を気にすることなんてしなくてよかった。

いじめっ子がやってきてイジメられるなんてことの心配をする必要がなかった。

一人、ぼーっと星を眺めていると、ネックレスに埋め込まれた宝石が一瞬光った気がした。

気にせず僕は星を見つめる。

すると僕の視界の中に突然、男の子が姿を現した。

「うわっ。」

僕は驚いて声をあげる。

後ろに倒れそうになり、地面に片手をついた。

さっきまで誰もいなかったはずなのに。

ここは僕しかしらない場所だと思ってたけど、違うのかな。

「俺と幽霊屋敷って言われてる館を探索しに行かない?」

男の子は僕に言った。

いきなりのことに僕は驚いた。

断ろうかと思っていたが、男の子の熱い眼差しを見ていると、断ろうにも断れなかった。

「い、いよ。」

僕は言った。

「ほんとか?よっしゃー!!」

男の子はとても喜んだ。

僕がいいよと言ったことが、そんなに嬉しかったのかな。

でも、僕も嫌じゃないかもしれない。

このこと友達になれるかもしれないと、少しだけ期待をしてしまった僕がここにいた。

また、裏切られるだけなのにね。

次の日。

この日は学校はお休みだった。

ひまわり畑に行くと男の子がいた。

ひまわり畑は集合場所。

今から幽霊屋敷を探索しに行く。

それにしても待たせちゃったかな。

僕は申し訳なくなった。

その時、男の子が僕に気づいたみたいで手をふってくれた。

僕は男の子に手をふり返す。

男の子のところまで行くと僕は尋ねた。

「ごめんね、遅くなって。待たせちゃったかな?」

この一言をいうだけでも勇気がいる。

僕は何かしらを発言することに勇気がいる。

その一言で相手を傷つけてしまうかもしれないから。

その一言で相手が僕から離れていってしまうことがとても怖かったから。

男の子がなんというか怖かった。

また酷いことを言われるんじゃないかって怖かった。

そんな事を考えていると、男の子が口をひらく。

「全然待ってないよ。ブラボーが来たことだし、早く行こうぜ!」

男の子は僕の手を引っ張り、幽霊屋敷まで向かった。

僕の手を握る彼の手は、とても優しかった。

手入れされていない庭。

雑草が好き勝手に成長し、歩くのも大変だ。 

幽霊屋敷の近くまで行くと、金木犀が近くにあるのが分かった。

金木犀の香りがしたから。

そのとき、僕は違和感を覚えた。

一瞬ふらっとなった気がした。

でもどこか体調が悪いわけでもなかった。

僕はそのことは気にせず、男の子に連れられ幽霊屋敷に足を踏み入れた。

この時、幽霊屋敷と呼ばれる館の二階の窓から、一人の少女が二人のことを見下ろしていた。

幽霊屋敷の中はとても薄暗く、今にも幽霊が出てきそうだった。

少し体が震えている気がする。

気のせいだと思いたい。

僕は前を歩く男の子の服の裾を握った。

遠くに行かないでほしい。

僕から離れていかないで。

男の子は少し驚いていたけど、気にすることなく奥へと進んでいく。

僕は近くに古びた鎧があるのに気づく。

西洋のお城にありそうな鎧だ。

今にも動き出しそうで怖い。

僕は男の子の服の裾を強く握った。

そんな事を考えていると、鎧が動いた気がした。

ほんとに少しだから見ただけではわからなかったけど、確かに動いた気がする。 

でも勘違いかもしれないし。

僕は勘違いであることを祈ったが次の瞬間、鎧が持っていた剣を強く握りしめ、僕たちの方へと走ってきた。

驚きすぎて声が出ない。

男の子は鎧の動く音で気がついたみたいで、動けなくなっている僕を連れて走り出した。

鎧は僕たちのことを追いかけてきている。

鎧は尋常でないスピードでこちらへと向かってくる。

このままだと捕まっちゃう。

捕まるどころか命がなくなるかも。

でも、それでもいいかもしれない。

どうせ生きていたっていいことないし。

いじめられて、泣いて、楽しいことなんて何にもないんだから。

生きていたって仕方がないよね。

そう考えたら、僕は逃げようと思えなくなった。 

必死に動いていた足が止まる。

僕が走るのをやめたことに気づいた男の子は驚いた様子で僕の方を見た。

「どうしたの?行くよ。」

男の子は僕の手を優しく握ると、鎧から逃げるために走り出した。

男の子につられて、僕も走り出す。

なんで一人で逃げないの。

僕なんか置いて逃げていいのに。

どうして僕に優しくするの?

優しくされたら、期待しちゃうじゃん。

僕はもうこの世界で行きたくないんだよ。

辛いことしかない、なんの楽しみもないこの世界に。

走っている時、男の子は僕の前を走っていたから表情とかは見えなかったけど、男の子はなんだか、少し怒っているように感じた。

「……まだ、諦めちゃだめだよ。」

男の子がとても小さな声で何かをつぶやいた。

鎧が走っている音が大きくて、小さい声だとなんて言っているかわからない。

なんて言ったんだろう。

そんな事を考えていると、足元の床がガタッと音を立てた。

いきなり足元の床が動いたと思うと、そのまま床が抜け、僕たちはしたへと落ちていった。

落下していた時、鎧が上から下を覗いているのが見えた気がした。

落ちた時の衝撃で僕は気を失っていたらしい。

目を覚ますと男の子が僕のことをとても心配していた。

「大丈夫?けがはないか?」

なんでそんなに心配してくれるの。

こんな僕に、なんで優しくしてくれるの。

僕はわけがわからなかった。

僕に優しくなんてしないでよ。

それで裏切られたときの悲しみが大きくなっちゃうんだからさ。

「うん、別にけがしてないよ。」

僕はこたえた。

けがはしていないと思いたい。

けど、さっきから足がズキズキ痛む。

出血はしていなくとも、足を痛めているのは確かだ。

僕は痛いのを我慢してその場に立ち上がる。

周りを見渡すとそこには剣が落ちていた。

なんでこんなところに。

僕はなんとなくその剣を拾う。

「ここから出ていって。」

するとどこからか声がした。

声の聞こえた方向を向くと、そこには一人の女の子が居た。

先程までは誰もいなかったはずなのに。

僕たちが驚いていると、女の子の口が動いた。

何かを喋っているようだか、声が小さいのか聞こえない。

女の子の口の動きが止まったと思うと、どこからかあの時の鎧がいくつか現れ、僕たちに襲いかかってきた。

三体ほどだろうか。

僕は拾った剣を使って、鎧たちの攻撃を受け止めた。

流石に三体の相手を一人でするのは難しい。

この鎧は女の子に指示を受けているのかな。

女の子が喋り始めたと思ったら現れて。

もしそうなら女の子を倒せば鎧の動きは止まるんじゃ。

男の子を守りながら鎧の攻撃を受けて、女の子を倒す。

すっごいハードルが高いね。

僕にできるのかな。

僕はジャスパーの手を引いて女の子の近くまで行く。

鎧の攻撃をかわしながら。

すこしかすり傷ができたけど、そんな事を気にしている暇はない。

僕たちが近づいてきて焦ったのか、先ほどまでは攻撃をしてこなかった女の子も、僕たちに攻撃を始めた。

女の子の周りにお花のような形をした結晶が現れたと思うと、僕たちに向かって飛んでくる。

その結晶はチグリジアという花と似ていた。

僕はその結晶を剣で弾きながら、女の子へと近づいていく。

もう少しで剣が届くところまで行くというところまでいったとき、女の子の口が動いた。

「あなたたちも私をいじめるの?」

とても小さな声だったけど、その声は僕の耳にしっかりと届いた。

いじめ。

その一言は僕の頭の中に残り続けた。

僕はいま女の子をいじめているのかな。

これがいじめっていうの?

僕は自分がされて嫌だったことを、違う誰かにしていたの?

そんな気持ちが僕の脳裏をよぎった。

僕の足は動かなくなった。

剣を振り下ろそうとしていた手もだ。

「……べつにそういうつもりじゃ。」

僕のことを罪悪感が襲った。

もしかして僕のことをいじめていたみんなも、いじめだと思っていなかったの?

ぼくのはやとちり?

だからみんな助けようとしてくれなかったの?

「そんなつらそうな顔したって、私のいままでのかなしみにはかなわない!!」

女の子はそう言うと僕たちに大量の結晶を飛ばしてきた。

先程よりも何倍も多い結晶の数。

こんな数あったら避けきることなんて無理。

結晶はとても鋭くて、当たったらかすり傷だけなんてほどじゃないだろう。

それにいまの僕は動くことすらまともにできない。

折角お友達になれそうな子が見つかったのに。

やっとぼくにも楽しい時間がやってくるって思えたのに。

僕はどうして辛い思いばかりしなきゃいけないの?

「いじめは辛いよな。」

僕の後ろで声がした。

僕も女の子も驚いて、動きが止まる。

そのせいか、結晶の動きも止まる。

「っあんたに何がわかるってのよ!」

女の子が大きな声でそう言うと、同時に結晶も動き出す。

「わかるさ。俺だっていじめられていた時期があったんだ。だから誰かがいじめられて泣いたりしてるのを見ると、ほっとけねぇんだよ。」

男の子は言う。

もしかして僕に話しかけてくれたのって。

結晶の動きは止まる。

女の子の動きも。

「今までよく頑張ったな。すげーじゃん。」

男の子は笑顔でそういった。

その言葉は僕の心にも響いた。

女の子は目から大粒の涙をこぼしている。

女の子の姿はだんだんと薄くなっていく。

「……ありがと。」

女の子は涙を拭うと、僕たちにそう言って微笑んだ。

次の瞬間、僕たちは意識を失った。

気がつくとそこには女の子の姿も、館もなくなっていた。

この出来事があってから、僕は友達を作ろうと努力を始めた。

ネガティブなことばかり考えていたけど、何事もポジティブ思考でいけるようにした。

みんなと明るく接するようになったからか、だんだん友達も増えていった。

いじめもなくなって、いまはあのときとは別の世界に生きているようだ。

あの男の子との出会いが、僕の人生を変えてくれた。

笑顔も増えて、生きるのが楽しいと感じるようになった。

これからさき、どんなことがぼくを待ち受けているのだろうか。

今までは考えたことがなかった自分の未来についても考えることが増えた。

いままではどうせいじめられるとしか考えられなかったはずなのに。

……あの男の子はいま、どこで何をしているのかな。

そのとき、僕のネックレスに埋め込まれた宝石がキラッと光った気がした。









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