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百話厭説  作者:
5/20

005.よって件の如し

以下、インタビュー音声の書き起こし。


【取材記録:A氏への聞き取り】


──あんまり覚えてないですけど……。

高校の頃のあいつは友達もいなくて。

教室の隅で一人でいましたよ。

いっつも、何かキモいオカルト雑誌とか読んでて。

でも別にイジメとかはなくて。

うちのクラス、そういうの全然無かったんで。

まあ、だからってわざわざ話しかけるヤツもいなくて。

……ぶっちゃけキモいとか言ってるヤツはいましたけどね。

あっちからも話しかけてこないんで。

クラスの中では「いるなあ」くらいの扱いでしたよ。


***


【取材記録:B氏への聞き取り】


──はい、そうです。大学で、俺と同じ学部で。


──そうです。あっちから話しかけてきて。

最初は俺も友達とかいなかったんで、時々話しましたよ。


──どんなって、普通の会話ですよ。

ただ、俺も友達増えてきたら、こっちから話すことは無くなって。

そっからは、たまに挨拶するくらいの感じですね。

あいつはいつも一人でいました。友達とかいないみたいで。


最後に話したのは、一昨年の秋くらいですね。

俺が学食で珍しく一人でいたら、あいつが話しかけてきて。

まあ、暇だったんで「おう元気か」みたいに返して。

少し雑談してたら……そうだ。

あいつ、変な事、話し出したんですよ。


「あのさ、ここだけの話なんだけどさ……鳩っているだろ。あの『ホーホー・ホッホー』ってやつ。あれさ、実はモールス信号なんだよ。それでさ、沢山いる鳩の中には、あの『ホーホー・ホッホー』って以外のリズムで鳴くやつがいるんだよ。そいつの鳴き声を解読すると──いや、単純にモールス信号ってわけじゃなくて、さらに複雑な暗号なんだけど──それは予言になってるんだ。そう予言。実は、コロナ禍なんかも鳩が全部予言してたんだよ。この事は僕しか知らない事実でね──」


って。

いや、何で俺に話したのかはわかんないんですけど。

流石に冗談だと思って。

その時は「何だよそれー」みたいな感じで流したんですけど。

正直ちょっとヤバいなって思って。

そこからは、こっちから避けるようになりましたね。


***


【取材記録:C氏への聞き取り】


──え? 鳩の話ですか?

いや、別に詳しい話は知らないですけど。

でも有名でしたよ。

何か鳩捕まえようとしてる奴がいるって。

私も見たことあります。鳩追っかけてるの。


──話した事? ないない!

えー、だってキモいじゃないですか。何か怖いし。


***


【取材記録:D氏への聞き取り】


──え?

ああ……はい、まあ。知ってますよ。


──最後に会ったのは……去年ですかね。

叔父の通夜の席です。5、6年ぶりに会いました。


──鳩の話? ああ、あれ……。

あの、これは記事に書かないで欲しいんですけど……。

──ああ、お願いします。本当にお願いしますね。

鳩の話、ですよね。はい、知ってます。

通夜の時、僕がタバコ吸いに部屋を出たら。

あいつが、ちょっと酔った感じで絡んできて。

それで、その、鳩の話をしてきたんです。

……内容が内容なんでね、適当に相槌打ってたんです。

そしたら、何か嬉しそうにね、話すんですよ。


「仕組みについては大体分かったんだ。予言をする鳩には、脳のある部分(注記:実際にはもっと詳しく話していたらしい)が他の鳩とは違っていてね」とか、


「でも予言を行うと脳にかなりの負担がかかるんだよ。鳩の小さな脳ではそう何回も予言を行う事が出来ないんだ。死んじゃうんだ。だから今まさに予言をしている鳩を見つけないと予言は聞けないんだよ。これを探すのは本当に大変なんだ」とか……。


まだ聞きます? そうですか……。


「だから僕はね、人間の脳に、その特別な鳩の組織を移植したらどうかと思うんだよ」


って……もう止めましょう。

だってあれでしょ?

あいつ、赤ん坊盗もうとして逮捕されたんでしょ?


正直、あいつは一生刑務所に入れてた方が世の為ですよ。

だって絶対、またやりますよ。あいつは。

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