疾い小童 その参
…俺の朝は早い。侑季を起こす前に
洗濯機にぶち込んでおいた洗濯物を干す。
次に作り置きのおかずを弁当箱に詰めつつ、
自分の朝食と侑季の離乳食を作る。
そして戸締りを確認して会社へ出勤する。
これが出勤日のモーニングルーティンだ。
さて、いい加減起きるか。
ハハッ、3時間も寝れたのか。非常に宜しい(?)
よし。急いで洗面所に行かなくては……ん?
俺は一瞬、目を疑った。
……なんと子供達が増えていたのだ。
中には昨日よりも成長している子も居る。
「ひー、ふー、みー、よー、いつ、むー、なな。
……やっぱり3人増えてる。
お前達どう云う仕組みなんだ?」
こいつらは一昨日から居る。
その時はまだ1人(正確には1匹?)だけだった。
その子は裂けた口を糸で結んでいる男の子
だったはず。でもその子は昨日よりも背が伸び、
今度は右腕に糸を巻き付けている。
……一体、何がどうなっているのだろうか。
ふと考察に浸っていると、
ピピーッ! と高い電子音が鳴った。
「………あっ、いけない!
洗濯が終わったのか。すぐに干さなくては。
侑季、もう少し長く寝てくれても良いんだぞ。
………あれ?侑季?どこ行ったんだ?」
隣のベットを見ると、侑季の姿が無かった。
毛布は綺麗に畳まれており、ベットから落ちない為の簡易的な拘束具も何処にも無かったのだ。
「おーい!侑季!
何処なんだ!?どこに行ったんだ!?
頼む、何処にも行かないでくれっ!!!」
「あなた、どうしたの?
私ならいつでもこの家に居るわよ?」
聲が聞こえた。その聲の主は
最愛の妻、侑季だった。
あの赤ん坊みたいになった妻ではなく、
7年前の……本来あるべき姿である妻が居た。
俺はふと涙を溢し、侑季に抱きついた。
侑季は訳が分からず困惑していた。
狼狽える侑季をよそに、
俺は泣いた。叫び狂う獣の様にひたすら泣いた。
長かった。この7年間。本当に長かった……
そんな俺をベットから見ている
子供達は嗤っていた。
ただ、その笑顔はとても禍々しくみえた。