疾い小童 その弐
本当に申し訳ないのですが
不定期更新です。すみません………
呑み会をお開きにし、
酔っ払った鳥口をタクシーに任せた俺は
すぐさま駅へと駆け込んだ。
急いで定期券を取り出し
改札を通過したのも束の間、
私も少し酔っているせいか視界がボヤけて見える。
「しまったなぁ…どの電車だっけな………」
いつも通勤で乗りこなしている筈なのに、
やはり酒は人間を狂わせる物だ。(だが、美味い!)
その時、焦っている俺に気付いたのか
子供達がいきなりコートの袖を引っ張った。
子供達は、俺を導いている様に見えた。
「電車、分かるのか?」
翼の生えた女の子が微笑んだ。
その笑顔を見て確信したのか、
俺は…いや、″俺達″は急いで電車へと向かった。
一瞬その光景を想像してみたが、その姿は
遠足に行く保育園の先生に見えたのだろうか。
そんな想像をしてたら、いつの間にか
電車の中に居た。子供達は皆居て、眠っている。
俺は電車の窓に映る夜間の街を見て、
(保育園の先生って、凄いな………)
と思うのだった。
しかし、後にその電車が自宅とは真反対の方向で
進んでいたのに気づいてタクシーで帰った。
トホホ………
やっと、自宅に着いた。
侑季はもう寝ていたら良いが、
灯りがついているから
まだ起きているのだろう。
俺は素早く玄関の戸締まりをし、
颯爽にリビングへと向かった。
そこには、いつも通りリモコンを
半分以上齧っている妻が居た。
いや、喰っていた。その方が正しい。
「ただいま。侑季。」
「…あばゎぁ…………ぃびぃい……ヒ」
「オイオイ、リモコンは食べ物じゃないって
教えただろ?早く″ペッ″しなさい。」
しかし離さない。
余程リモコンの味が気に入ったんだな。
俺の妻は、鬱だ。それも酷い程の鬱だ。
人間の言葉が離せなくなってしまったのだ。
それに赤ん坊みたいに
四六時中何かを舐めたり齧っている。
今じゃ、家中の物と云う物がベトベトだ。
だが、可愛い。本当に美人なのだ。
そりゃあ、妻が鬱になって赤ん坊と
ほぼ同じレベルになるのは一大事だ。凄く困る。
しかし、4Kテレビの角を舐めている時の顔,
姿,唾液がこんなにも愛おしく見えてしまう。
……俺は狂っているのだろうか。
こんな生活を7年も続けているんだ。仕方がない。
俺の代わりが出来る奴なんて
きっとこの世には居ないのだろう。
侑季に簡単な夕食を食べさせた後、
汗拭きシートで侑季の局所を優しく拭う。
風呂だと窒息しかねないからだ。
ついでにベットに横たわせて寝かせる。
(この寝かせるのが超大変)
後は俺がシャワーを浴びれば、
これで烙本家の1日は終わる。
シャワーは至福の時間だ。
1日の疲れを全て洗い流してくれる。
俺は2秒で全裸になりバスルームに入ったが、
……そこには子供達が風呂で遊んでいた。
唖然としたが、すぐさまガキどもを止めに入った。
「オイ、シャワー出したままにするなよ!
平泳ぎもするんじゃない、プールじゃないぞ!
つーか、物理的に無理だろ!?
……ん?風呂の色が違う。あっ!お前達、
入浴剤使ったな!?楽しみにしてたのに!!!」
やりたい放題のガキどもだが、
なんだか楽しかった。それと疲れた……