疾い小童 その壱
処女作です。拙い文章ですが、
何卒宜しくお願いしますm(_ _)m
「あのクソ上司!ふざけんじゃねぇよぉ!!」
同僚の怒号がガヤガヤとした居酒屋に響いた。
一瞬、場の空気が凍ったが再び戻り
奥の座席の若者が宴会を始めた。
「おい鳥口、もうその辺にしておけよ。」
「うるへぇっ!!
呑まねぇとやってられねぇんだよぉお!」
……ダメだ。完全に酔っている。
こうなった以上、奴の十八番になりつつある
愚痴こぼし劇場が始まるのだ。
「大体よぉ……なんでこの世は
きちん仕事こなした奴が不幸な目にあって
上司のご機嫌取りしかできねぇ奴が
出世するんだよぉ!オカシイだろっ!!」
まぁ確かにその通りだ。
だが、それが世の中と云う物なのだよ。
………とか口挟むと俺が責められるから辞めよう。
「オイ烙本っ!お前もだぞっ!」
あ、マジすか。
「お前は良いよなぁ!
馬鹿(部長)に気に入られてるから
安全だし、何より超が付く程の美人と20代で
結婚したんだからよぉお!!」
「……妻の話題はよしてくれ。鳥口。」
確かに俺の妻,烙本侑季は
今でも美人だ。それは否めない。
だが、彼女は以前勤めていたボランティア団体の
リーダーに強姦されかけた事があり、
ソイツのせいで酷い鬱になってしまったのだ。
おそらく、もう7年も家から出ていないだろう。
だから俺はなるべく早く帰って、
家事をしなければならない。
食事も、掃除も、洗濯も、日々の買い物も、
全て俺がやらなければいけないのだ。
嗚呼……実に面倒くさい生活だ………
…そんな生活を続けているせいか
俺、烙本清照は
日を跨ぐ度に存在意義が
分からなくなってきている。
そういう時は隣のコイツ、
鳥口閑汰と呑むに限る。
なんだかんだ云ってコイツは仕事はできるし
人脈も広いから何気に頼りになる。
(ただ品性がな……………うん。)
そんな俺は日頃の悩みを
鳥口に打ち明ける事にした。
それは会社の事でも妻の事でも無い。
「なぁ、鳥口。」
「あへぇ?」
「俺の周りにさ、″何か″が見えないか?」
鳥口は「は?」と云う顔をしつつも
まじまじと俺を見つめた、だが
「うーん……何も見えねぇけど
あっ!もしかしてスタンd」
「違う違うそうじゃない」
「じゃあ、なんだってんだヨォ!」
ブチ切れそうな鳥口を抑えつつ、
俺は聞こえるようにゆっくりと云った。
「俺の周りに″子供″が見えないか?」
鳥口は泣いた。俺が狂ってしまったと云い、
ギャーギャー泣いている。(本当に大人か?)
今、俺の周りに居る子供達は皆変わった姿を
している。
口が裂けていて、それを糸で結ぶ男の子
耳が無く、翼が生えている女の子
頭部が無く、皮膚が荒れている子
団子みたいに、頭が重なっている子など……
一昨日からこの子供達は俺についてきている。
家でも電車でも会社でも、この飲み屋でもだ。
しかし、ついてくるだけで特に何もしてこない。
本当に不思議な存在だと思っていた。
この時の俺は知らない。
この子供達を、いやこのガキどもを
疾く潰しておけば良かったと云う事を。