第十四話 お絵描きに救われることもあります
「ハッピーバレンタイン♡ ねこ!!」
「ひだにゃん……バレンタインとっくに終わってるよ」
「にゃんだって!? くっ、ならば……!」
「にゃあああん、ハッピーにゃんデー♡ 猫の日おめでとうにゃあ」
「ひだにゃん、惜しい、それ先週終わってるから」
「そんな……わざわざ着替えたっていうのに……この仕打ち」
「ごめんねえ、私が更新しなかったから……」
「ふん……別にいいさ、お前も辛かったんだから仕方ない」
「そうだね……でもね、辛かったんじゃなくて……ただ悲しかったんだ。それを受け止めようとして身動きが出来なくなっちゃったんだよね。絵も小説も書けなく――――いや、正確には書かなかったんだと思う。私にとって絵や小説は楽しみながらするものだからね、とてもそういう気持ちにはなれそうになかったから」
「でもまた描けるようになったんだろ?」
「うん、頭ではわかっていたんだ。私に出来ることは描くことしかないって。それに……描かなかったら私の絵が好きだって言ってくれて、応援してくれたあの人に顔向け出来ないじゃない? だから――――猫の日のイラストは、初めて楽しみながらじゃなくて歯を食いしばって描いた。身体は鉛みたいに重かったし、手にも指にも力が入らなかったけど、それでも泣きながら描いた。線は上手く引けないし、本当に辛かったけど――――ここで諦めたら駄目だと思ったんだ。これまで色んなことを諦めてきたけど絵を描くことだけは死んでも諦めないって決めたから」
「ああ、そうだったな」
「でも……不思議なことに描いている時はあんなに辛かったのに、描き終わったらすごく楽になったんだ。やっぱり私は絵を描くことが好きで、絵を描くことが楽しいんだよ。だからこれからも描くよ。あと何枚描けるかわからないけど、辛くても悲しくても描くよ。ひだにゃん、これからもよろしくね」
「にゃふ、お前は私がいないとダメダメだからな、嫌だと言ってもずっと一緒だ――――って言わせんな恥ずいだろうが!」
「ふふ、照れたひだにゃんなんてレアだね」
「うるせえ!! それより今回の絵はどんなんだ?」
「今回の依頼はアウトラインだよ」
「アウトライン?」
「ようするに線画ってこと。私の絵を塗ってみたいんだって。めっちゃ嬉しいよね!」
「なるほど、塗り絵ってことだな」
「うん、そんな感じ」
「あれ? でもねこって線画苦手だよな?」
「うう……そうなんだけどね、でもせっかくだし頑張ってみたよ。貴族っぽいお姉さんということなので、貴族令嬢を意識したイラストになります」
「おお……三枚も描いたのか? なるほど、質を量で誤魔化す作戦か!」
「違うよ、塗り絵なら種類があった方が楽しいだろうと思ったのと、単純に描くのが楽しくて一気に三枚描いてしまったんだよね。まあ……まったくそういう気持ちが無いかといえば嘘になるけどさ」
「ははは、色を塗らない分時間がかからないからな」
「でも喜んでいただけたから良いのです!」
「ところで……ねこが参加しているお絵描き企画ずいぶん盛り上がっているみたいだな」
「あっという間に集まった絵が百枚超えて、ぞのまま勢いが衰えないからね。最終的にどれくらいの数が集まるのか想像もつかないよ」
「見ているだけでも楽しい企画だよな」
「うんうん、他の方のイラストから刺激を受けたり勉強にもなるしね」
「ねこは何枚くらい描いたんだ?」
「えっとね……とりあえず全部並べてみる」
「全部で……十三枚かな? これ以外にも何枚かお題絵描いてるけど」
「相変わらず絵柄が安定しないな……」
「それは言わないで……!!」
それじゃあまたね。お絵描き修行は続くのです!!