66. 第十七章 うん!2個買いは当然でしょ!
今回は視点入れ替えあります。シリアス風味〜不穏さはない〜
「今年もベビーカステラは何店舗か買うのかい?」
「うん!2個買いは当然でしょ!」
「あ、あそこにキャラ型のベビーカステラ売ってるね」
「某行って参る!」
私は前世からお祭りで売っているベビーカステラが大好きだった。この世界では四大君の1人、暁の賢者が好きだったと本人の残した書物に記述があるのもあって、ほぼ大半の祭りで売っている。地球のお祭りはベビーカステラがないところもとても多かったので、本当に暁の賢者の私はいい働きをしたのである。
「ただいま〜」
「おかえり」
「うーん、焼きたてで美味しいわ。もぐもぐ…はい、一個どーぞ」
「ありがとう」
「フレアは他に買わないの?」
「うーん、じゃあ…一緒に射的をしない?」
「うえっ?!…魔法射的じゃなくて?」
「そう、魔法射的じゃない方で」
「えーーー!一緒にやった時私が壊滅的だったの覚えてるでしょ〜!」
魔法射的は自身の扱う魔法で的に命中させるもので、射的は地球で行われていた射的と一緒だ。
私は弓道や銃手に憧れがあったので、弓道や射撃を試してみたものの、普通に向いてなかった。
早々に諦めて魔法による競技ばかり楽しむ方向にシフトチェンジした。
フレアとはお祭りの射的もスポーツの弓道も射撃も一緒にしたけれども、残念な結果をお披露目する私とは違い、全て天才的な能力を発揮していた。
私とはあまりにも違いすぎて嫉妬すらしなかった…という思い出がある。
「ふふ、上手くなってるかもしれないよ?」
「うーーん、まあ、射的は少し当たるだけでも嬉しいし…するか!」
そして私とフレアは射的をすることにした。
パンッ
「あー外れた…もう少し右だったかなぁ」
「手伝おうか?」
「ううん!1人でやる!」
パンッ
「やった!ちょっと動いた!」
結局私は景品に当たりはしたけれども落とすことは出来ず終わった。
でも、射的は当たるだけでも満足感があるもので、意外と楽しめた。
「じゃあ次はフレアだね、がんばれ〜」
「うん、凛子は何か欲しいものある?」
「え、じゃああれ取って!ラジコン!」
私は自分が射的をする時には全く眼中にも入れなかったラジコンを指差した。
私が射ろうとしたところで重くて動かないだろうけど、本当に上手い人は動かなさそうなものでも取れたりするのだ。
ということで実際にゲットしたら嬉しいラジコンをフレアにお願いすることにした。
「任せて」
フレアはそういうと私なんかより迷いなく銃を構えて撃った。
パンッ
ゴトッ
「わーーー!すごいフレア!一発で落としちゃうなんて!」
「おお!兄ちゃんすごいなぁ、賢者のおかげでお祭りは絶対に取れないものを作らないようにされているとはいえ、これは配置とか考えなくても重さで全然動かんのになあ!」
「はは、ありがとうございます。ほら、凛子あげる」
「ありがと!」
―――
(凛子が射的ができないのを理由に、一緒に銃を持って触れ合ったり出来るかと思ったけど…あの頃は小さかったから1人で持てなくて仕方なく2人で持ったんだった。彼女の性格からしたら、誰かの助けなく自分だけでやりきりたいと思うことは想像にたやすかったのに…今世、結局彼女は彼に惹かれている。)
フレア・ブレッド…真の名前をアレン・サンジュは祭りの最中そんな事を思っていた。
暁の賢者、宵の賢者の後に生まれ変わった2人の人生には、介入することもなく観察するだけで終わった。
2人に自分という存在がいない時、どんな会話をしているか、どんな関係性なのかを把握しておく必要があると思ったからだ。
そして彼女たちの今世、僕は彼女の幼馴染というポジションにつくことにした。
彼が幼馴染という立場で生まれなかったことは驚いた。だが似たような立場の家に生まれていたので、結局彼女と彼はいずれ出逢うのだろうと思った。
そして彼女たちが出逢う前に、僕は彼女に誰よりも素敵な男として映るように努力した。
認識を歪めて彼女の家の近くのどこかの家庭の息子になることは簡単だが、彼女にバレるのは必然。
僕は不慮の事故で両親を亡くした赤ん坊として、息子を育てたいと思っている彼女の近くの家にそれとなく近づき、無事養子になった。
そこからずっと彼女の隣にいて、今世僕は僕自身で好いてもらえるように努力した。
彼の真似をするなんて癪だから。
彼よりも長くずっと傍にいた。
彼女は僕を好きだったと思う。
告白もした。
彼らが賢者の時、すぐにプロポーズしてOKしたと言っていたけど、彼女はどんなに両親に僕たちがお似合いだと言われても、彼らが両親にそう言われた時みたいに、「でしょ?」とは返さなかった。
『そうだね〜、私もフレアも天才だからね』
告白の返事も「私も好きだよ」ではなかった。
『ありがとう。私もフレアのこと好きなんだけど…まだ付き合うとかよくわからないんだよね。』
『それでもいいよ、お互いに徐々に恋人になりたいな』
『ごめん、しばらくはこの関係が居心地いいな…』
そうはぐらかされ続けている間に、彼は彼女の前に現れた。
今世は途中で現れたのは彼だったにも関わらず、彼女はあっという間に彼に惹かれた。
今世の敗因は…僕の性格で好きになってもらおうとしたからかもしれない。
次は…彼の性格を真似してでも、彼女を手に入れる。
僕は今世の彼女を諦めることにした。
諦めることも諦めないことも得意なんだ。
今章、なかなかに凛子が最低な感じに見える人もいたかもしれませんが、凛子は実は告白を断っています。
素敵だと思っても、他にいい人がいるかも、そう思う程度には軽い恋心でした。
他にもアレンがヒロインと結ばれなかった理由は色々ありますが、また今度。




