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4.王子の過去〜避けられないリスクから敵襲、後、運命の出会い〜

コメディを入れられないので後書きで騒ぎます。

「季節的にそろそろ夜に今までの服だけでは凍死する可能性が出てきた。どうしても森から一度出なければいけないと思っている。坊主、お前も来い」


「僕も行くことには賛成です。師範は1人で逃げたと思われている。なら子ども連れの方が対象だと思われにくいでしょうし、僕が成長する度に森を出てサイズの合う服を貰うより、師範と共にここで一度に色々なサイズを貰う方が遥かに賢い」


「…常々思うが、お前は本当に子どもか?その歳で頭の回転がそこらの大人より速い」


「僕はまだまだですよ。師範のように現実を理解していないからこそ、今まで通りの国の在り方を変えたいと思えるのですから」


「…ああ、そうだな。」


師範に謀反を本当に企んだことはなかったのかと聞いたことはない。でも、きっと考えがよぎったことはあったと思う。けれど、師範はしなかった。したところで自分が目指す国を作れないと十分に現実を知っているからだろう。


戦ばかりしていた王の政治論を聞く者は軍の配下や信奉者ばかりで、別の層は戦しか能がないと自分達の政治を押し付けるだろう。結果内部の軋轢から崩壊。じゃあ自分を敬うものばかり重用し、自分を狙う者たちを尽く殺せば良いのかって、そうして自分の国だけ理想通りにしたところで、他国が新しい思想を危険視して連合を組んで攻め入ってきたら終わり。


だから、師範は諦めた。どんなに理想の国にしようとしても、今のままじゃ、どう足掻いたってできない。人1人が生きる人生の間では僕たちの考える革命など到底成し得ないのだ。師範が理想とする国が作られ滅ぼされたとしても、師範の思想は残るだろう。長い長い時間を経て、そうしたら、影響を受けた者たちが次々と師範が望んでいた理想的な国を作り出すだろう。


でもそれは師範の死と、長い時間が前提で、師範はそれを代価にしてまで叶えたいと思わなかった。


僕も分かっている。分かっているけれど僕はまだ子どもだから、自分の代で国を変えて守り続けたいと、思ってしまうのだ。


「おい、坊主。準備はできたか?さっさと行ってさっさと帰るぞ」


「はい!」


朝食を食べ終わった後、僕たちは川で水洗いをしてから森を出た。


師範は程よく美味しい食物を手製のカゴに目一杯詰め込み、2つを僕に持たせ自分は片手に2つ持った。唯一の衣服である出来るだけ装飾を外しておいた軍服を着て、僕も唯一の服であるボロを着て近くの集落を探すことにした。


平民だということにしたくても、残念ながら服を作る技術は僕も師範も持っていないので、この格好になってしまう。だからだいぶリスキーだ。


「「「!!!」」」


集落に到達し、周囲が頭を垂れる。みな、恐れ慄いている。


「頭を上げよ。我はこの領地の領主を視察しにきた者。して、領主には我が、下民どもの格好をしていても我に気づくかどうか試してみたい。お主ら、持っている布や服を全て差し出せ。ハサミもだ。言っておくが、我はここの領主よりずっと偉い。領主に事前に言おう者なら死が待っていると考えろ」


「「「はい!!」」」


そうして民たちは布をこれでもかと持ってきて、僕たちはこれで冬を越せると安堵した。


「ふむ…。上出来だ。お主ら、今我は気分が良い。特別に我が食そうと思っていた食物をやろう。どれもお主ら下々の者には手の届かないようなものだ。ありがたく思え。1、2…全員で40人か。1人一つだ。人の物を盗もうとするなよ。盗みが許されるのはお前ら畜生どもではなく我の様な尊い者だ。ガキから奪おうなんざ考えるな。お主ら底辺の者どもは黙って我の言うことを聞いておけば良い」


「あ…あの」


「なんだ」


「私はたくさん持ってきました。なのに、持ってきていない者にも同じく褒美を渡すのですか?」


師範は質問をしてきた若い男を威圧し睨みつける。


「お前…我に口答えするとは、死にたいのか?我はたくさん持ってきただの、一つも持ってきていないだの其奴らの顔など一々覚えてなどおらぬ。ここにいるのだから全員に一つずつ渡すのが一番楽なのだ。我にわざわざお主らのことを考えろとでも言いたいのか?」


「も、申し訳ございません!!」


「気分を害した。お前にはやらぬ。殺さぬだけありがたいと思え。どうせお前がたくさん持ってきたというのも、お前がゴミの分際で他の者から奪ったのであろう。」


「そ、それは!」


師範は目に見えない速度で剣を鞘から抜いて男の首に当てた。


「死にたいのかと言っている。ここの領主は違う様だが、我にとってゴミに上も下もない。ゴミはゴミらしく集まって必死にない頭を使って互いに生きていくんだな。塵芥のくせして一端の領主気取りとは…ここの領主に言ってやろうか?一瞬で首が飛ぶだろうな」


「ヒイッ」


「ガキから順に並べ、次に女だ。勝手に食べてろ。」


「「「ありがとうございます!」」」


そうして僕は師範と共にその男以外の人たちに食物を渡した。恐らく師範は、質問をしてきた男が他の者たちを虐げていることに気づいていて、これ以上搾取されないように圧をかけたのだろう。本当に時代が時代なら名君となっただろうな…と感じる。そして、勝手に食べてろと言うことで、今直ぐ食べさせる選択の余地を与えて、後々奪われないようにする。本当に素晴らしい人だと思う。弱者の子どもや女性を優先するのも忘れない、今の時代とは真逆の傑物だ。


「疲れた。我は帰る。」


「「「ありがとうございます!!」」」


後ろで子どもたちが美味しそうに食物を食べている。泣いている子もいて、これを食べられるところを教えてあげたいけれど、下手に自分達の情報を与えるわけにはいかないのでもどかしい。


「師範、これで冬を越せますね。僕がどんなに成長しても服が足りそうです。」


「…ああ。そうだな。それにしてもあの領主代理、あそこまで口答えするとは、このまま改善されなければ領主に殺されるだろうな」


「そうですね。何もしてなくても殺されることがあるのに意見を述べた、そしてその後弁明をしようとした。まず2回死んでますね」


「人は過去のことを忘れるからな。今回のことで他の者どもに虐げられるくらいしたら忘れないかもな」




―――そして森に入ってからしばらくして、事は起きた。森に、盗賊団が居たのだ。


「あれ…?あいつ!謀反を企んだ王弟だ!」


「!!」


「こいつを殺せば俺たちは莫大な金をもらえる!殺れ!」


「チッ…!私が見つからないからと、懸賞金でもかけたのか…お前は邪魔だ、逃げろ」


「やあっ!」


僕はもしもの時のために作っていた毒玉を敵に投げ付けた。


「うわぁぁぁ!痛い!痛い!」

「あああああ!!!」

「ぐああああ!!!!」


この毒玉は皮膚に触れると皮膚が爛れる毒で作ったものだ。目に入ったらすぐさま水で流さないと失明する、取り扱いを非常に気をつけなければいけないもの。


「よくやった坊主!あとは任せろ」


それから師範は30人は確実にいる盗賊団を皆殺しにした。


「ふう…この森には加護があると思っていたのだが、そんな事はなかったのか」


「どうでしょう…ぶっちゃけ師範と僕が出会った時この森の入り口辺りでは敵に襲われていましたからね。入口は誰でも入れるのかもしれません」


「坊主!」


「えっ」


師範は叫び声と共に短剣を投げ、僕を押し出した。


見上げると師範には弓矢が刺さっていた。辺りには短剣が刺さって即死している男。


「ぬかった…まさか坊主から殺そうとするとは…」


「師範!大丈夫ですか!?」


「致死量の毒が塗り込められてなかったら平気だが…」


「どのみち此処には居られない、盗賊の残りが他にもいるかもしれないから意地でも森の奥に行くしかない」


「……」


師範に刺さった弓矢には毒が塗り込められていた。体から抜いた時に血のついてないやじりの部分が緑色だったのだ。


師範はどんどん体調を悪くしていった。休憩しようと言っても、言うことを無視した。


そして師範は倒れた。


「師範…!!」


「坊主…最期の頼みだ。私を出来るだけ森の奥に運んでくれ。そして、死んだら土に埋めてくれ。」


「師範!」


「お前にもわかるだろう?あの緑色の毒…あれには解毒剤などない。致死量を体に摂取したら死ぬ」


「それは…!!」


「死んで腐っていく体を晒すくらいなら誰にも見つからないところで腐る前に埋めて欲しいんだよ。自分の死体にウジが沸いているのを誰かに見られるなんざごめんだ」


「…ごめんなさい、師範。僕さえいなければ…」


「いい。お前と一緒にいた時が生きていた中で一番楽しかった。子育ても悪くないもんだな」


「でも…!!」


「くどい」


「……はい」


それから僕は一心不乱に森の奥を目指した。師範を肩に背負って進んでいる道中、師範には一番美味しそうな食物を食べさせた。師範は基本笑わないが、食べている時だけは少し笑っていたから。


「はぁ…はぁ…」


そして僕は疲労で意識を失いかけた時、2人の幼い子どもの声を聞いた。


それが、僕たちの運命を変える出会いだった。

















イケオジが相手役かどうかってタイトルとかですぐにわかるんで回避できるんですけど、回避できないものがあるんですよ…それは…ヒーローの手練度!

童貞のヒーローが全女子が一番好きなはずなのに、人気上位の小説とかでも遊び人が相手とかありますからね(戦慄)

何故ここだけ急に現実味を出すのでしょうか…


ちなみに頭の中にいつか書きたいと思っている遊び人を徹底的に許さないお話、ファンタジーものがあります。簡単にいうと、ヒーローが闇堕ちして王家が子どもができないから〜とかの理由で側室や愛人を作っていたとしてもただそれだけでその国を滅ぼします。そんな国を尊敬している国民もおかしくない?という過激派思想です。結果大陸中ほぼ滅ぼされます。なお、神も滅ぼして自身が神になります。ちなみに闇堕ちした元凶の方々は他の作者さんがするざまあ系よりヒーローがウルトラスーパーエキストラハイパーやばい報復をします。


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