15.きっと前世も、貴方に恋をした。
船上でのプロポーズ(船酔いや海が荒れる可能性あり)や、バラの花束での求婚(生花なら枯れるので悲しい)や、フラッシュモブ(したら逆に今までの好感度が消え振られる可能性有)など、プロポーズには様々なものがありますよね。ですがフィクションで知る一番アウトオブアウトは契約結婚をしないか?だと思います。
――時は私が14歳から2歳の頃にまで遡って――
私がいわゆる前世の記憶を思い出したのは、2歳の頃で、この世界がファンタジーな世界で、前世の世界とは違うということは、周りの大人たちの髪色や瞳の色が信じられないカラフルさであることから察した。
どんな世界かはわからないけれど、この世界の2歳児が前世のようなものなのかもわからないけれど、とりあえず前世の2歳と同じ風に生きていこうと決めた。
そして、生まれた時から一緒だったゼノンとは、その頃から「2人はきっとお似合いの夫婦になるわね〜!」といつも言われていたのもよく覚えている。
私は前世の記憶が蘇ってから、ゼノンのことを将来の夫と言われている男の子として見てみたけど、幼すぎて将来美形になるかわからないけど、この村には美形しかいないからきっとうちの夫は美形になるんだろう、と、なんとなく思っていた。2歳なので性格が合うとか全くわからない。
今までのぼんやりとした記憶の中で私はいわゆる子どもと言われるような年齢のゼノン以外の子どもを見た記憶はなかった。少なくとも中学生くらいの見た目の人すらいなかった気がする。
語彙数がないとは言わないけれど、少なめのこの集落で、ふんわりと把握している意味とかも思い出すけれど、多分それを鑑みるに、子どもは私たち2人だけ。
うーーーん…と思った。不安で仕方なかった。
遊べる友達は男の子1人だけ。ネットでも繋がれるあの世界を知っている私じゃなくてもキツイ。男の子だから遊びたいことが違う可能性は女の子より遥かに高い。2人だから鬼ごっこすらほぼできない。
そもそもこの世界はファンタジー。戦争とか血みどろあるのでは…?というかうちの村はおんぶしてもらったりしてるから知ってるけど山ん中だから他の国とかより遅れているのでは…?滅ぼされたら終わりでは…?会う村の人たちみんな仲は良さそうだけど、採集生活だったような…食べ物少なすぎでは…?
まあ、そんなことを考えながら年相応よりちょっと賢いレベルに抑えつつ、4歳。私とゼノンだけで遊べるようになった時、誰もいないからと私はゼノンに向けて話した。
「ねえゼノン。今から言うことわけわからなくても頭おかしいとか思わず、聞き流してね。ちょっと愚痴を言いたくてさ…」
「なに?」
「クッソ…こんなショボい魔法しかないなんて…!!私は異世界転生じゃなくて現代に恵まれた美少女として転生したかったんだよ!どう考えても異世界なんて食文化が終わってるし、娯楽なんか碌にないなんて私は知っていたんだよ!マンガ読みたい夢の国行きたいポテチ食べたい」
「」
ゼノンは目を瞬かせてしばし呆けた後、ニヤリと笑ってこう言った。
「俺も現代転生で、イケメン御曹司になってスーパーカー乗り回す人生送りたかったわ」
私は実はなんとなく、本当になんとなくもしかしたらと思っていたので、意外と冷静に返せた。
「あ、ゼノンも異世界転生者?通りで私たちこの歳で天才的な語彙力なわけだ。私もスーパーカー乗ってみたかったなぁ…」
「ロゼ、意外と冷静だな」
「んー…実はさ、ゼノンも私と同じ地球からの転生者なのかなーってちょっと思ってたから」
「え!?なんで!?」
「偶然聞こえちゃってさ。『うちの村ってどう考えてもエキストラステージだよな…美形ばっかりだから、はじまりの村ではねーな…』って。だから地球の、コンシューマーゲームが生まれた後の時代の記憶を持っているのかな〜って」
「ああ…なるほどね…」
「ところでゼノンは西暦何年生まれでどこ生まれでどれくらい記憶あんの!?」
そこから私たちはすごく意気投合した。2人とも大人の精神を持っているのにこの世界の事を知らず、まして高度教育を受けていたからこそ余計に不安だった。でも同士がいたと知って、とても安心した。
「なぁ、幸いな事なのか知らねーけど、うちの村って子どもは俺たち2人だけじゃん?」
「うん、そうだね」
「2人天才がいたら、それが標準だってなると思わねえ?」
「思う!」
「だからさ、これからは俺たち今までの持ってる知識、包み隠さずどんどん村のみんなにも伝えて、ここを変えていこうぜ!とりま転生者は基本チートだから、このショボさを極めた魔法もファンタジーバトルもの並みに進化できるのでは?と思うわけで。」
「そうだね!やっていこうよ!私もね、バレないようにこっそり魔法で小さな炎を出したんだけど、青色の炎をつくれたから、多分いけると思う!」
「マジ!?」
それから私たちはちょっとずつ知識を披露していったけど、思った通り村のみんなは朗らかで、明らかに4歳では思いつかないだろうことを話してもニコニコ受け入れてくれた。
ゼノンと協力してまず真っ先に村を守る魔法も作り上げることができたし、本当に仲間がいると心強かった。
すぐに私はゼノンに恋をした。
同じ転生者だから、恋をしたんじゃない。
きっと、前世に出会ったとしても、私は恋に落ちた。
いつまでもお互いに話し続けられた。
会話がなくてもそばにいるだけで居心地が良かった。
お互いが支えになれた。
よく、価値観の不一致で離婚とかニュースで見かけていたけれど、私たちは価値観の一致と互いの完全納得が出来た。大概は考え方が似たり寄ったりだし、たまに価値観が違っても、納得ができるのだ。
村のみんなからお似合い夫婦なんて言われて、嬉しかったけど、焦ってもいた。
夢見る乙女として、なあなあで結婚まで行くんじゃなくて、ちゃんと告白をして欲しかったのだ。
私は告白はしてもらいたい派なので、チラッと話をしたりもした。
「ゼノンってさ…付き合ってとは言われてないけど、好きですって言われたから付き合ってると思ってたとかってどう思う?」
「大事故だろ。それ、片方が付き合ってると思ってなかったら浮気とかに繋がるかもしれないし、付き合ってって言われてないから俺たちはカレカノじゃないのかもって思い続けるかもしれねーじゃん…」
「!!でしょ!私もそう思う!まあ、周りからの実体験とかは知らないけど、2次元とかでよく見たから、私、絶対しっかり言って欲しいんだ!!」
「……俺は、場所とか、シチュエーション大事にしたいから…一生の思い出として喜ばせたいからな。まぁ、だから、今はそれだけ言っとく。でもあんまり待たせねーから。」
「!!!うん!待ってる!!」
――そして私が5歳の誕生日、ゼノンは秘密の場所に連れていってくれた。
「ここは…?」
「綺麗だろ。お前の名前の由来のローズの花園」
「すごい…!綺麗!真っ赤な薔薇でいっぱい!」
「薔薇の色はさ、やっぱり赤が良いなって…ロゼの髪色と、俺の瞳の色」
「すごいよすごい!どうやったのこれ!」
「引き寄せ魔法でいろんな薔薇を持ってきて、種から全部育てた。それで結果選んだのはロゼの命が誕生した時にこの村に現れた種から出来た薔薇。魔法で全体に丁寧に苗に当たらないよう水やりもしたし、天気の管理だって完璧にしたからな。最高だろ?」
「きれー…」
「ああ。薔薇の中で一番俺とお前の色に近い薔薇だと思ったし、一番華やかだと思った。母さんがパパメイアンって名前にしたらどう?って言ってたから、多分あっちの世界ではそういう名前だったんじゃないか?」
「ありがとう…絶対忘れない」
そこでゼノンは私に手を差し伸べた。
「お手をどうぞ?お姫様」
夢のようなシチュエーションで私はドキドキしながら笑顔で答えた。
「エスコートお願いします。王子様」
それからゼノンは私を真ん中の噴水の前まで連れて行き跪いた。
「俺はこの世界に生まれてからずっとお前以外の他の子どもを見たことがない。…でも、確信してる。俺はこの先、ロゼ以外に恋をすることはないし、ロゼだけを生涯愛し妻にすると誓います。まだ俺は5歳だけど…結婚を前提に、付き合ってくれますか?」
「私も、ゼノンのことが、好きです。…きっと私は、前世でも貴方に会えていたら、恋をしていたと思います。これから外の世界に出たとしても、誰より貴方が大好きです」
そうして私は世界一素敵なプロポーズを受けた。ゼノンは手をそろりそろりと伸ばして、私の
左手薬指に真っ赤なルビーの指輪をはめてくれた。
「えへへ…緊張しすぎだよゼノン。」
「大人になってもそのルビーは付けられるように、
リングの部分はネックレスみたいな構造にしたんだけど…最初にはめるときに緩かったり、入らなかったら締まりがないだろ!だから緊張したんだよ!」
「入らなかったとしても嬉しいし、十分かっこいいよ!だってゼノンが、これ以上ないくらい素敵なプロポーズしてくれたんだもん」
「そうか…?喜んでくれて嬉しいよ」
辺りに薔薇の香りが漂った晴天の中、私は一生忘れられない最高の思い出ができた。
ルビーはピジョンブラッドの最高級ルビーだと考えてください!




