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半竜皇女~父は竜人族の皇帝でした!?~  作者: 侑子
第二章

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利己的

短めですみません!

後半は三人称になります。

「この魔道具は、ご存知の通り威力はほぼ関係なくあらゆる物質・衝撃・現象の拒絶を体現したものです。つまり、その現象を否定するには、それ以外の現象をぶつけることが肝要ではないかと考えます」

「つまり、拒絶できないものをぶつけることにより、現象の体現の否定が起こり、魔道具の効果は崩壊に至るというわけだな」

「ええ。しかし、肝心なのは何をどうぶつけるかですよね」

「拒絶できないもの……息をするための空気だけは通すという造りであるが、空気をぶつけた際の衝撃は拒絶してしまう。そんな魔道具が拒絶できないものなど、存在するかね?」

「難しい議題ではありますが、不可能ではないと考えます。例えば『事象の否定』と似せた干渉ならどうでしょう? 時空を巻き戻す逆位相の魔力ならあるいは……」


 魔道具師二人が、結界を突破しようと真剣に議論を重ねている。医者は、様々な薬に対する拮抗薬を用意しておくと言って、一度医務室へ戻って行った。

 式典が始まるまでに全く新しいものを作り出すなんて難しいかもしれないが、ここはもう、優秀な魔道具師二人に任せる他ないだろう。


 ……オレはオレにしかできないことをしておくか。


 そう。オレはこんな事件を起こした奴を、むざむざ取り逃がすつもりはない。これ以上キアラを悲しませないために、証拠固めに動くとしよう。




◇◇◇



「ねぇ、ロマロ様っ! 一体、どういうことなんですか!? ロマロ様は昨日、私が聖火を点灯させるのにふさわしいって言ってましたよね!?」


 イレーヌは、一時的に城に与えられているロマロの部屋へ向かうと、怒りで息を荒くしながら、すぐさまロマロに詰め寄った。あんな風に馬鹿にされたのは、初めての経験だった。思い出すだけで、怒りで目の前が真っ赤になる。


「おやおや、どうしたのですか? イレーヌ様。もちろん、私はそう思っておりますよ。セラ様の旧友で、年齢も近い優秀な聖女であるあなたがここにいるのですから、当然ではありませんか」

「でもっ! さっき、私は帝国認定聖女じゃないから資格がないって言われたんですよっ!?」


 怒りと羞恥でぶるぶると手を震わせながら、イレーヌがわめく。そんなヒステリックな彼女にもまるで動じることなく、ロマロはにこりと微笑んでみせた。


「それならば、イレーヌ様が帝国認定聖女になればいい話ではありませんか」

「え……?」


 思ってもないことを言われたというように、イレーヌがポカンと口を開け、彼女の内に煮えたぎっていた怒りが霧散した。

 そして、別の感情がじわじわと胸に湧いてくる。もしかしたら、自分も帝国認定聖女になれるというのだろうかという期待だった。


「わ、私が、帝国認定聖女に……?」

「ええ。イレーヌ様は優秀な聖女であり、聖火を灯すこともできる。残念ながら、なぜか審査には落ちてしまいましたが、式典には皇帝陛下も教皇聖下も来ておられるはず。この機会に、彼らへ直談判してはどうでしょう? 式典に出られない友人を気遣い、代わりに務めを果たしたいのだと訴えれば、その清らかな心には、誰もが胸を打たれるのではないでしょうか」


 ロマロの言葉に、イレーヌは胸を高鳴らせた。そう。こんなに努力して、聖火を灯せるようになった優秀な聖女である自分が、帝国認定聖女ではないことの方がおかしいのだ。

 セラとは数ヶ月共に聖女活動をしていたが、自分の方が能力だって優れていた。あの獣人族が認められているのに、自分がなれないなんておかしい。


 この機会に帝国認定聖女になって、聖火を点灯させるのだという考えは、彼女にとって、とても魅力的な話だった。


「……そうよね。私は帝国認定聖女になれる実力があるんだもの。今まで認められていなかったことの方がおかしいんだわ」

「その通りですよ、イレーヌ様」

「うふふ。ありがとうございます、ロマロ様。こうしてはいられないわ。式典まで、もうあまり時間がないですもの。私、失礼致しますね」

「ええ。いってらっしゃい」


 イレーヌが笑顔で去っていく。恐らく、身なりを整えたあと、式典が開催される広場まで向かうのだろう。


 本当に愚かな娘だと、ロマロは薄く笑みを浮かべた。

 彼女がこれから馬鹿なことをすればするほど、彼女の罪は重くなり、自分の罪は霞むだろう。自分は、あまりにも愚かな暴走を重ねる彼女を止められなかった、哀れな被害者になるのだ。


「さて、神に祈りにでも行きましょうか」


 司教という役職を得てはいても、神を崇めているわけではない。

 けれど、祈る姿を見せるだけで清廉な心の持ち主であると認識してもらえるのだから、ありがたい存在であるとは思っている。


 ロマロは、どこまでも利己的な男なのであった。

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