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半竜皇女~父は竜人族の皇帝でした!?~  作者: 侑子
第一章

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ノアルード③

 オレは、再び魔力暴走を起こした。

 

 今度は、どれだけ魔力を抑え込もうとしても駄目で、次から次へと勝手に体中から魔力が溢れ、無茶苦茶な術式となって外へ放出される。

 

「く、そ……っ! とまれ、止まれよ……!」

 

 必死で自身の体を掻き抱くようにしてうずくまるが、暴走はどんどん激しくなるばかりだった。

 

 左腕の一部が、自らの魔力に喰われて崩壊していく様を目の当たりにして、オレは息を呑んだ。

 

 オレの魔力暴走は警戒されていたため、周囲にはとっくに人がいなくなっていた。せめて人に被害を出さずに済みそうなことは幸いだったと、頭の隅で考えていた時。

 

 遠くから、見たことがない長身の男が姿を現した。

 

 ……誰だ? 危ないから、こっちへ来るな……!

 

 そう願うのに、燃えるような長い赤髪をなびかせながら、男はゆっくりと、しかしまっすぐにこちらへ向かってくる。

 

「く、来る、な……!」

 

 さっきから、ずっと耳鳴りがひどい。

 

 そのせいで、オレはきちんと言葉を発せていなかったのだろうか。男は、我関せずとばかりに悠々と近づいてくる。

 彼の後ろで何人もの人たちが叫ぶようにして彼を呼び止めているのが見えるのに、彼らが何を言っているのか、全く聞こえなかった。

 

 オレの魔力が、よりによって雷となって、男へ迫った。

 雷魔法は上級魔法だ。威力が高く広範囲で、避けにくいという厄介な性質を持つ。紡ぐのが困難な魔法のはずなのに、オレの魔力は勝手に雷魔法を生成し、あの男へ向かっていったのだ。

 

 もう駄目だと思った。いくら竜人族とはいえ、あの規模の雷魔法をくらえば、無事に済むとは思えない。

 

 しかし予想に反し、彼は平気そうな顔をして、なんとオレの魔法をバシッと素手で弾いた。

 

 驚いて目を見開いて固まっているうちに、彼はオレの目前にたどり着いていた。

 

 どこか空虚な感情を宿した金色の目でオレを見据えると、彼は何事か呟いた。耳鳴りで声は聞こえなかったが、口の動きから、恐らく「すまないな」と言っていた。

 

 何が、と問い返す間もなく、彼がこちらへ向かって手をかざすと、オレは急に息ができなくなったように感じた。

 

 そして次の瞬間、オレの意識は途切れたのだった。

 

 

 ◇



 目を覚ますと、石造りの狭い部屋の中だった。


 窓はないが、四隅に置かれた魔法具の灯りが、優しく部屋中を照らしている。オレはその真ん中で、一人、倒れ込むように寝かされていた。

 オレは事の成り行きを悟り、思わず深いため息がこぼれた。

 

 ……やっぱり、こうなったか……。

 

 床に描かれた魔法陣と、未だに不安定なオレの魔力を鑑みれば、きっとこのまま放っておくのは危険だと、ここへ閉じ込められたのだとすぐに推測できた。

 

 心配そうに周囲を漂う精霊が、そっとオレの額に触れる。すると、オレが意識を失ったあとの精霊の記憶が流れ込んできた。

 断片的な映像のイメージだけだが、だいたいの流れはわかる。

 

 どうやら、オレはあのあと、尖塔の地下にある隠し部屋へ連れてこられたようだった。

 

 左腕の崩壊は治っていない。それどころか、右足まで同じように崩壊が始まっていた。そこから漏れる魔力が、時折魔法となっては散っていくのを繰り返している。

 

 床の魔法陣の術式は、強い封印の効果をもたらすものだった。オレをここから出さないよう動きを制限すると同時に、魔法を外部へ出さないようにするためのもののようだ。

 

 ……仕方ないよな。

 

 オレだって、彼らの立場ならこうすると思う。いつ暴走して周囲に危害を及ぼすかわからない危険な存在は、こうして閉じ込めておくしかないだろう。

 

 そう思うが、閉鎖的な空間に一人でいるのは、祖国でのことを思い出して、やはり苦しかった。

 

 ……それにしても、暴走した魔力を受け続けながらも平気そうな顔でオレを運んでいるあの赤髪の男って、もしかして……?

 

 彼の周囲には、複数の護衛や付き人がいた。全員が彼を敬い、オレに近づくのを心配していた。そのことから、かなり身分が高い人物だと思われる。

 

 オレは帝国へ来たばかりのことを思い出した。

 なぜか皇帝はおらず、代理である皇帝の側近たちが対応していた。そのことに、オレを連れてきた大使はたいそう腹を立てていた。

 

 ……まぁ、誰であっても関係ないか。二度と会うこともないだろうから。

 

 どれくらい意識を失っていたのかわからないが、少なくとも数日間は眠っていたような気がする。

 それでも空腹を感じていないのは、精霊たちが知らないうちにあの実を食べさせてくれたからだろうか。それとも、今なお続くこの魔力暴走の影響だろうか。

 

 徐々に体が崩れていくのを、精霊たちがなんとか止めようとしてくれているのがわかる。

 

 それでも、決壊したようにどんどん溢れてくる魔力は、もう止められない。

 こぼれないように蓋をしたって、次々と湧いてくるのだから、すぐに別の所が壊れてしまう。精霊たちの行動は、ただの時間稼ぎにしかならないとわかっていた。

 

 オレはもう、自分の人生が終わったのだと感じて、静かに目を閉じた。

 

 

 

 それから何時間経った頃だろうか。

 扉の奥からこちらへ近づいてくる足音が聞こえて、オレは目を開けた。

 

 誰が来るのかなんて、探ろうとも思わなかった。

 オレの様子を窺いに来ただけの奴でも、殺そうとしている奴でも、別にもう、どうだっていい。

 

「……おや。起きていたんだね」

 

 扉から現れたのは、オレを昏倒させた赤髪の男だった。

 

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