初めてのお世話係
「は、初めまして、皇女殿下。わたくしは、メリアン・ルーシュと申します。そして彼女は、双子の妹のリリアン・ルーシュです。オルディン様からの命により、今日から、わたくしたちが殿下のお世話を担当させて頂きます。よろしくお願い致します!」
「よろしくお願い致します!」
「……へ?」
部屋の扉を開けると、綺麗な竜人族のお姉さんたちが並んで待っていて、緊張ぎみな様子でそう言った。
双子だというそっくりな二人だが、メリアンと名乗った方は紫色の髪で、リリアンは薄紫色の髪をしている。
二人とも、下の方で二つにまとめておだんごにしている。服装からして彼女たちはメイドのようだから、きっと仕事をしやすいようにだろう。
「……ええと、お姉さんたちが、わたしのお世話をするの? どうして?」
わたしは首を傾げた。
父と母が結婚することになり、みんなでこの大きな城で暮らすことになった。
それが決まったあと、大人たちはこれから何やら難しい話し合いがあるらしく、わたしは一人、先に部屋で休むことになった。
今日はもうくたくただったし、わたしは素直にそれを受け入れて、ロドルバンさんに案内されながら部屋へ向かった。
皇女はペットと同じ部屋では眠らないものらしく、クロは責任を持って預かるとロドルバンさんに言われたので、いつもわたしと同じものを食べていたから人が食べるようなものをあげてほしいとお願いして、二人とは部屋の前で別れた。
そして、そこで待っていたのが、彼女たちだ。
出会った瞬間にお世話係だと言われてしまい、一体どういうことなのだろうと、わたしは首を傾げるしかない。
「えっ!?」
「わ、わたくしたちではご不満ですか……!?」
二人が青ざめた顔で焦り始めた。
「ううん。そうじゃなくて、わたしはもう九歳だから、自分のことは自分でできるわ。お世話してもらわなくても平気よ?」
わたしがそう言うと、メリアンとリリアンは、同時に目をパチクリさせた。
「あの、皇女殿下。殿下はまだご自分の立場について理解されていらっしゃらないかもしれませんが、殿下はたくさんの人にお世話をされて当然のお方なのですよ!」
「わたくしたちだけではなく、これからもっとお世話係が増えると思います!」
二人の言葉に、今度はわたしが目を瞬かせる番だった。
……なにそれ。皇女って、そうなの?
でも、そういえばイオに乗っていた時に、母がそんなようなことを言っていたかもしれない。皇女とは本来、大勢の人たちにかしずかれるとかなんとか。
「でも、自分でできるのに、自分でやっちゃダメなの?」
「えっ、だ、ダメではありませんが……」
「その……皇女殿下のお世話をするのが、今日からわたくしたちの仕事になったのです。どうか、お仕事をさせて頂けませんか? 殿下にいらないと言われてしまったら、わたくしたちは、仕事がなくなってしまうのです!」
「ええっ!」
仕事がなくなるのは大変だ。母が領主によって仕事をクビにさせられてしまったことを考えたら、この人たちから仕事を奪うのは、良くないことだと思う。
「わ、わかったわ。よろしくね、メリアンさん、リリアンさん」
「どうぞ、わたくしたちのことは呼び捨てにしてください。皇女殿下」
「お願いします!」
母よりも若そうとはいえ、年上のお姉さんを呼び捨てにするのは変な感じがするけれど、わたしは皇女になったばかりで、どうするのが普通なのかよくわからない。二人がそう言うのなら、きっとそうした方がいいのだろう。
「じゃあ、メリアン、リリアン。よろしくね」
「はいっ! こちらこそ、よろしくお願い致します!」
「よろしくお願い致します!」
こうして、とっても元気なメリアンとリリアンが、これからわたしのお世話をしてくれることが決まった。
「今日はもうお休みになられますか? 何か食べるものをお持ちしましょうか?」
「……んー。お腹はすいてるけど、今日はもう寝ようかな。すごく疲れたの」
実は、今もかなり眠い。
何時間もイオに乗って母を支えながら移動して、帝都に着いても休まずすぐに馬車に乗せられてここへ来た。まだ夕方くらいだけど、もう眠ってしまいたい。
「かしこまりました。お疲れのようですので、入浴も明日の朝に致しましょう」
「いつでも入れるように準備しておきますね!」
「うん。ありがとう、メリアン、リリアン」
お休みなさいませ、と言って部屋を出ていった二人を見送ると、わたしは広くてふかふかのベッドにバフッと倒れ込んだ。
そのあまりの気持ちよさに、わたしはすぐさま眠りに落ちたのだった。




