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半竜皇女~父は竜人族の皇帝でした!?~  作者: 侑子
第一章

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新しい日常

 眩しい朝日がまぶたの奥から差し込んで、心地よい眠りから目が覚める。

 

「ふわぁ。良く寝た!」

 

 うーんと伸びをすると、わたしはパッとベッドから飛び起きた。いつも母よりは寝坊してしまうけれど、寝起きは悪くないほうだと思う。

 

「おはよう、お母さん!」

「おはよう、キアラ」

 

 台所にいる母がにっこり笑って挨拶してくれる。

 わたしの母は、本当に美人だ。何と言っても、このあたりで一番偉い、領主のブーゴン男が噂を聞きつけ、ひと目で見初めるほどである。

 

 ……でも、わたしのお母さんは、あんなやつには絶対に渡さないけどね!

 

 母に振られたからといって、仕事場や家主に言って仕事をクビにしたり家を追い出したりする、最低なヤツだ。あいつのところへ母を無理に行かせるくらいなら、牢屋に入れられたっていいから、わたしは絶対に領主をぶん殴ってこらしめてやると決めている。

 

 わたしは、部屋の隅に置かれている、取っ手がとれたカゴの中を覗き込んだ。その中で、まだ丸くなっているプーニャにも声をかける。

 

「おはよう、クロ!」

《……ん。おはよ》

 

 朝が弱いらしく、いつもわたしよりお寝坊さんのクロは、まだ眠そうに大きく口を開けてあくびをした。

 

 言うと不機嫌になるので言わないが、そんな姿はとても可愛い。

 

 最近、わたしには三人もお友達ができた。

 

 一人はもちろんこの黒いプーニャ、クロである。

 お友達といっても魔獣じゃないかと言われるかもしれないが、実はこのクロは、元々はノアルードという名前の、人族の男の子らしいのだ。

 

 半分は人間族だが半分は精霊族で、魔法が使えてとっても賢い、大好きなお友達なのである。

 

 二人だけの時は、念話という魔法を使って会話だってできる。こんなちょっとした挨拶以外は、他に人がいる前だと、ほとんどお話ししてくれないけれど。

 

 まだ、わたし以外にはただのプーニャではないことを話すつもりはないらしい。

 

 ……お母さんにも教えない二人だけの秘密なんて、なんだかドキドキしちゃう!

 

「あれ? そういえば、セラは?」

 

 台所にいると思っていた彼女を探して、部屋の中を見回してみる。でも、その姿はどこにもなかった。

 

「あぁ、セラなら水を汲んできてくれてるわ」

「ええっ!? わたしも手伝いに行ってくる!」

「ふふ、お願いできる? セラはキアラほど力がないから、助かると思うわ」

 

 わたしはすぐにドアを開けて、外にある井戸の方へと向かった。水は家から少し離れたところにある井戸から、毎日汲んでこなくてはならない。家には水を貯めておくタンクがあって、そこへ水を入れておけば、水道やトイレで水が使えるようになる。どういう仕組みかはわからないが、とにかくタンクに入れさえすれば、家で水が使えるということである。

 

「セラー!」

「あっ、キアラさん。おはようございます!」

 

 二人目のお友達は、このセラだ。

 アプリコット色の髪は、出会った時はボサボサだったけれど、今はまっすぐでサラサラしている。茶色くて丸い目がとっても可愛い、獣人族の女の子である。

 

 セラは井戸から汲んできた水を持って、少しふらつきながらこちらへ向かってきていた。

 

「セラったら。こういう力仕事はわたしがするって言ってるでしょ! ふらついてるじゃない。ほら、貸して」

「あっ、あの、でも……」

「わたしが力持ちなの、知ってるでしょ? 遠慮しないの!」

 

 パッと水の入った容器を奪うように受け取ると、セラはしゅんとうつむいてしまった。

 

「わたしもキアラさんみたいに、もっと力持ちならよかったのに……」

「何言ってるの? セラは治癒魔法が使える聖女じゃない! わたしなんて力持ちなことくらいしか取り柄がないんだから、こういうのはわたしがやるわ!」

 

 セラは行き場のない自分を受け入れてくれたということで、わたしたちにとても感謝しているらしい。役に立とうと、必要以上に頑張りすぎている気がする。

 わたしがいない間、セラは母のお手伝いをしてくれているし、十分助かっているのだが、本人はまだまだ納得していないようだ。

 

 家に戻り、外にあるタンクへ水を入れてからドアを開けると、母が笑顔で迎えてくれた。

 

「おかえりなさい。二人とも、水汲みありがとう。お疲れさま」

「うん!」

「はいっ」

 

 その後、母が用意してくれていた朝食をみんなで食べた。

 クロとセラは友達だけど、こうして一緒に暮らしていると、もう家族みたいなものだと思える今日このごろだ。

 

 朝食を食べ終わると、わたしはふと思い出した。

 

「お母さん。そういえば、今日はブーゴン男が来る日じゃない?」

「こら、キアラ」

「……むー。領主様が、来る日だよね?」

 

 わたしのブーゴン男という呼び方をたしなめると、母は軽くため息を吐いた。

 

「そうね。毎週、無の日にはほとんど欠かさずいらっしゃるから……。セラ、悪いのだけど、今日はキアラと一緒に森へ行っていてくれるかしら?」

「はい、わかりました」

 

 前もって領主の話はしていたので、セラは納得したようにコクリと頷いた。

 

 ブーゴン男こと領主は、毎週無の日に、うちへ母に会うためにやってくる。領主とは偉い立場のはずだけれど、案外暇なものらしい。

 

 わたしは、あんなやつが来たって相手にせず追い出してしまえばいいと思うのだが、そういうわけにもいかないらしい。母は毎回、出来る限りもてなしているという。母が言うには、長時間とはいえ週に一日話し相手になるだけで、無理矢理連れていかれたり今以上にひどい仕打ちをしたりしないのならば上々なのだとか。

 

 ちなみに無の日とは、曜日の名称だ。

 一週間は七日あって、火の日、水の日、風の日、土の日、闇の日、光の日、無の日がある。これは精霊の属性が由来になっているのだと、昔、母から教わった。その中で、無の日はだいたいの人がお仕事をお休みする日らしい。

 

「最近は滞在時間が長くなっているから、日が暮れる頃までは帰って来ないほうがいいかもしれないわ。二人とも、気をつけてね」

「はぁい! お母さんもね!」



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