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半竜皇女~父は竜人族の皇帝でした!?~  作者: 侑子
第一章

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約束

《キアラ、キアラ。起きろ、キアラ!》

 

 頭の中で響くような声がして、わたしはゆっくりと目を開けた。

 初めはぼんやりとまどろむような心地だったのに、ズキンとした痛みを後頭部に感じて、急に意識がハッキリと覚醒した。

 

「……いったぁ! え、なにこれ。ここ、どこ?」

 

 ガバッと体を起こそうとしたが、それは叶わなかった。

 両手と両足が鉄の輪でベッドに固定されており、ガチャンと音が鳴っただけで、起き上がれなかったからだ。

 

 ……どうなってるの? わたし、誰かに捕まってる?

 

 起きる前はどうしてたんだっけ、と考えて、ハッと思い出した。

 

 ……そうだ。わたし、お母さんを傷つけられそうになって、頭に血が上っているうちに後ろから殴られて、そのまま気を失っちゃったんだわ!

 

 やってしまった。きっと、母がすごく心配しているに違いない。

 早く帰らないと、と考えた時、見慣れた一匹の黒いプーニャが、ひょこっと視界に飛び込んできた。

 

「えっ、クロ!? どうしてここに……」

《やっと起きた。キアラ、大丈夫か?》

「へ……!?」

 

 先ほども聞いた少年のような声が、頭の中で聞こえた。そういえば、先ほどわたしを起こしてくれたのも、この声だった気がする。

 

 ……まさか、これはクロの声なの?

 

「クロ、天才だとは思ってたけど、まさか話すこともできるなんて!」

《静かに。話せるわけじゃないよ。これは相手の意識に直接話しかける、念話という魔法なんだ》

 

 ……魔法!?

 

「それって、クロは魔法が使えるってこと? 人間族でも魔法使いは珍しいって聞くのに、クロってばすごい!!」

《静かにしろってば! 見つかりたいのか!?》

 

 興奮のままに話していたら、クロに怒られてしまった。

 確かに、わたしはベッドに縛りつけられているのだしそんな状況でないことは確かだが、感動したのだから、少しくらい声が大きくなってしまっても仕方ないと思うのだ。

 

 ……それにしても、クロは結構男の子っぽい話し方をするのね。見た目がすごく可愛いから、なんだか意外だわ。

 

「ねぇクロ。クロって、一体なんなの?」

《……なんなのって、なんだよ》

 

 クロの声音が少し不機嫌になる。

 でも、特におかしなことを聞いたつもりはない。

 

「すごく賢いから、天才だって思ってたけど、やっぱり普通のプーニャじゃないわよね? クロが魔法を使えるなら、その姿も本来のものじゃないとか?」

 

 わたしは魔法使いではないのでよくわからないが、魔法とは、とにかく不思議なことができるものだと思っている。きっと、プーニャに変身することだってできてしまうに違いない。

 

 わたしがそう質問すると、クロはフイッと視線を逸らした。

 

《……キアラって、たまには鋭いこともあるんだな》

「どういう意味!?」

《とにかく、今は早くここを出ないと。この部屋を見たら、このままここにいればどうなるか、嫌でもわかるだろ?》

 

 そう言って、クロがぐるりと部屋の中を見渡した。

 

 確かに、嫌でもわかる。

 この部屋の壁のいたるところに、様々な武器が飾られているからだ。

 剣や斧、鞭やロウソク、トゲトゲのついた板のようなものまである。

 

 とても禍々しい雰囲気の部屋だ。

 きっとここは、人を痛めつけて、言うことをきかせるための部屋なのだろう。

 

「じゃあ、ここを出た後でなら話してくれる?」

 

 そう尋ねたわたしを、クロはじっと見つめてきた。わたしはまっすぐにクロを見つめ返した。クロは少し迷っている様子だったが、やがてゆっくりと頷いた。

 

《わかった。無事にここから出て、奴らから逃げられたらな》

 

 ……よーし! それなら、早くここから出ないとね!

 

《キアラの腕や足を拘束してる鉄輪の鍵はあいつらが持っていったから、なんとかしてオレが持ってくるよ》

 

 そう言ってクロが部屋を出ようとするので、わたしはすぐにそれを止めた。

 

「大丈夫よ、クロ。えいっ!」

 

 バキバキッ!

 

 わたしが力を込めて右腕を引っ張ると、鉄製のベッドに留められていた鉄輪のネジがバキバキと音をたてて壊れ、わたしの手は自由になった。

 

「えいっ!」

 

 もう片方の手や足を拘束する鉄輪も、ちょっと力を込めて引っ張ると、ベキベキと壊れていき、すぐにただの鉄くずと化した。

 

《……》

「ほらね。鍵なんてなくても、壊せば動けるようになるのよ。簡単でしょ?」

 

 そう言って、クロへ向けてにぱっと笑う。

 問題をすぐに解決できたというのに、クロはなぜか、わたしに呆れたような視線を向けてきた。

 

《もういいよ。キアラが普通じゃないってこと、忘れてたオレが馬鹿だった》

「なによ。怒ってるの?」

 

 ……自分だって、普通のプーニャじゃないくせに!

 

 わたしを置いて部屋を出ようとするクロを追いかけて、ベッドを降りる。

 わたしも後に続こうとしたけれど、クロはなぜか、ピタリとその足を止めた。そして、素早く物陰に隠れてしまう。

 

「クロ? どうし……」

「なんだぁ? どういう状況だ、こりゃあ」

 

 ドアが開いて、髭面の大男が姿を現した。

 


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