桜貝
よく晴れた青に浮かぶ白い雲。
穏やかな波揺れる浜辺。
砂浜に足跡をつけながらさくさくと歩く。
潮風が海の方から吹いてきて私の頬を撫でる。
心地よい潮風。
ふと。
足下を見ると、ちいさな桜色が視界に入る。
まっしろいスカートを膝の内に曲げながらしゃがむ。
砂の上に桜の花びらのようなものが2片。
いや、2枚かな?
桜の花びらのようなものは。
桜貝。
桜色をした桜貝が2枚並んであった。
寄り添うようにある、桜貝。
その桜貝をそっと手に取り、分ける。
私の手のひらに、一片。
もうひとつの手のひらに、一片。
ふふっと微笑みふたつ。
歩いてきたふたつの足跡が、静かに波に消えてゆく…