森深くの廃墟の日記
森深くにティアラを被った幼女が廃墟の中の本棚に目を向けていた。
とある本を取り出すとそこには、日記と書かれていた。
その幼女は何も言わずに本を開いて読み始めた。
僕は、リヤム・キャロル。
この日記を読んでいるということは、きっと僕たちは今頃禁術の代償を受けているということでしょう。
何のために禁術を使ったって?
それは、お姉ちゃんを守りたかった。
そう、死者蘇生をね。
もちろん、死者蘇生なんて禁術の中の禁術だよ。
僕は、死者蘇生の代償を知っていて、なおかつ死者蘇生されたものの代償も知っていたからやったの。
そして、その真実を隠すためにもう一つ代償となる罰が発動する前に《メモリクリア》を使うことにした。
これを使えば、僕の記憶もお姉ちゃんの記憶も何もかも消えるからね。
でも、自分に致命的な魔法をバフすることはまず不可能だから、僕自身が持ってるユニークスキル《裏世界の自我》のもう一人の自分に頼んだ。
もちろん、最初はもう一人の僕は拒否したし、認めなかった。
でも、しつこく頼んでたらしぶしぶ受けてくれた。
もちろん、死者蘇生のやり方なんで独自で身に着けた魔法や錬金を使って作り出したよ。
だって、そんなものが普通に手に入るわけでもないからね。
それに、お姉ちゃんを助けたいからって理由で、本を探し回ってたらそれこそ、時間がかかってたまったもんじゃないからね。
もし、死者蘇生を目的でこれを見つけたならあきらめたほうがいいよ。
死者蘇生の本は、僕の世界で厳重に保管してるから、決して見つけ出せないよ。
~数十年前~
リヤム「お姉ちゃん、前々からやってた空間魔法がとうとうできたよ」
エリィ「ホント!でも、以前から空間を作り出す形式まで行ってもうまく開けないって言ってなかった?」
リヤム「原因は、空間の核となるものがなかったから空間を形成してもすぐに崩れて開けてなかったの。でも、もう一人の僕に頼んで僕自身に核にしてもらって、そこから形成したの。そしたら、空間がうまく形成できて、今も安定してる」
エリィ「それはよかったね。でも、あんまり体が壊れそうなことしないでよね。いくら魔女の子とは言っても、双子でなおかつ魔力が分散している上に、私たちはハーフウルフなんだよ。肉体はそこまで丈夫じゃないんだから無理して、壊されたら困る」
リヤム「ごめんごめん、でもこれで、増えすぎたオオカミたちの居場所が作れたからいいじゃん!」
エリィ「それはそうだけど、頼むから体だけは壊さないでね」
リヤム「でも、スキルを核にした影響なのかスキル扱いになっちゃったみたいで結構使い勝手は不便なんだけどね。まぁ、魔力を使わないから魔力切れでもすぐに開けると思えばメリットかなっては思ってる」
エリィ「それって、半分失敗してない?」
リヤム「確かに、最初の目的からだいぶ外れてるから、失敗といえば失敗だけどでも、こうやって実現してる部分もあるから、実質成功じゃないかな?」
エリィ「まぁ、それならいいけど。それより、空間見てみたいんだけどいい?」
リヤム「うん!それに、空間内の環境を整えないといけないから、ついでに手伝って!」
エリィ「いいよ」
リヤムは、空間の入り口を開けると、二人で空間の中に入っていった。
そこには、何もない空間が続いてた。
リヤム「…本当に成功しちゃった」
エリィ「これで、オオカミたちの暮らす場所はどうにかなりそうね」
リヤム「お姉ちゃん、昔からオオカミたちになつかれやすいからね」
エリィ「まぁね、でもこのおかげで森の警備などははかどってるんだけどね。でも、私の森には天敵がいないせいで、バランスが偏っちゃうんだよね。だからといって、間引きもなんか心苦しいし。でも、リヤムが空間作ってくれたからこれで何もかも解決だね。でも、何度も言うけど無茶だけは本当にしないでね」
リヤム「はーい、それより空間の飾りつけ的なのどうしようか」
エリィ「空間内に魔力を満たして、元素を構築すればいいと思うよ。それにリヤムは、マナ属性だから元素系とは相性非常にいいからね」
リヤム「確かに。それなら、僕の魔力をそのまま引き抜くようにすればいいかな」
エリィ「それじゃ、私はお昼でも作ってくるね」
エリィはそういうと、入ってきたときに使った空間の出入り口から出ていった。
リヤムは、片手を広げると緑く光る玉を生成し始めた。
それを見た、オオカミたちが空間に入ってきて、リヤムに近づいてきた。
オオカミ「何をなさってるのですか?」
リヤム「空間に元素系を維持するための魔法を形成してるだけ。数時間もあれば魔法陣と魔力の数式の作成はできるかな。でも、どこまでの範囲を指定するかが迷いどころかな」
オオカミ「それでしたら、もう一人のリヤム様に頼んで、空間の管理をしてもらったらどうでしょうか?」
裏リヤム「別にやってもいいけど、そうなると表に出られなくなるから、何かあった際に助けれないよ」
リヤム「まぁ、デメリットもあるけど常時見ていられないから、それもありかもしれない。というよりそっちのほうが結構嬉しい。魔力暴走起こしたときにすぐに対処できないから」
裏リヤム「そういうなら。でも、今やってる構築は頼んだよ。こっちには魔力操作を干渉する権限内からどうしようもできない」
リヤム「ほんと、そこらへんややこしいよね。すでに構築されてる魔法には魔力操作干渉が受け付けるのに、新たに生成しようとしたものは、干渉を受けないって」
オオカミ「スキル全般は何らかしらのデメリットを持ってますからね」
リヤム「ほんといやになっちゃう」
裏リヤム「でも、作り出したスキルには影響されないのが良いところじゃない」
リヤムは、「はっ」とした顔をして空いてる手の方をかざして魔法の数式を浮かびださせた。
リヤム「生成スキルを利用すれば、ユニークスキルでもスキル干渉できるかも」
オオカミ「相変わらず、やりたいことが減らなさそうですね。あんまり無理はなさらないでくださいね」
リヤム「なんで、みんなして無理しないでって言うの?僕は無理してるつもりないけど」
オオカミ(いや、はたから見て結構無理してるように見えるから言ってるんだけどな~)
リヤムは、頭を抱えて言葉の意味を考えたがあまりわからなかったのか、紙を取り出して新たなユニークスキルの構築方法を書き始めた。
オオカミ(あちゃ~また、新しいスキル作ろうとしてる)
リヤム「そういえば、二月明けはお姉ちゃんの誕生日だったっけ?こんなことしてる暇ないか~」
オオカミ「そういえば、そうでしたね。すっかり忘れていました」(これで二月明けまでは、こっち系の法には手を出さないかな)
リヤム「…でも、参ったな~僕って料理得意じゃないしな~」
オオカミ「まぁ、ひとまず家に戻ってから考えるといいと思いますよ」
リヤム「それもそうだね」
今度は、エリィの誕生日プレゼントを何にするのかで頭を抱えることになった。
空間を出て、家に戻った。
リヤム「そういえば、僕の部屋に少し変わった本があったような。
リヤムはそう呟くと自分の部屋に行き、本棚の本を片っ端から取り出して、探し始めた。
リヤムの本棚もまた、魔法により四次元かしていたため、ものすごい数の本が出てきていた。
何時間が立って、一冊の本に目を向けた。
リヤム「これだったけな?」
その本を開くとそこには、見たことのない植物たちの情報がずらりと並んでいた。
中には、危険性が高いとされる植物も存在してた。
本のページをペラペラとめくってるとあるページで手を止めた。
リヤム「月陽草か、太陽と月が重なる時に姿を見せる植物か。これなら、魔法で意思的に太陽と月を重ねさせることも可能だし、探してみるのもありかな。でも、そのまま固定させると不自然だし、あるとしたら数分だけか。そうなると、探知魔法を応用した、植物探知を作り出して、そこから周辺を時間固定してそれで太陽と月がずれた後もずっと姿を見せ続けると思うし、念のために時間固定を掛けてる範囲には、空間魔法でフェイクしとけば大丈夫かな?」
オオカミ「…もう何言ってるのかよくわからないレベルになってきたんですけど」
リヤム「簡単に言うと、太陽と月を重ねてそのあとずれるからそれで姿を隠さないようにするために、時間を一時的に固定して、それに気づかれないように僕の空間とすり替えて、そこからのんびりと探すってこと」
オオカミ「う、うん」(正直言うと、ぶっ飛びすぎてる。まぁ、アンミリテッドマジックを所持してるのもあって、こういうぶっ飛んだ発想も実現できるんだけど、さすがに度が過ぎる天才だから困る)
リヤムは、外に出ると早速周囲に空間を張って、地面に術式を書き始めた。
術式は、かなりの大きさになっていった。
オオカミ「かなりの大規模な術式書いてるね。紋章が独立型だから、何がどう動くかよく我はよくわからないけどね」
リヤム「どうしても、現代紋章、古代紋章、信仰紋章どうにも覚えられなくてね」
オオカミ「…どう考えても、独立のほうがかなり難しいと思うんだけど」
リヤム「それに、独立の方が自分の思い描く魔法が作り出せるから、いろいろと便利でね」
オオカミ(もう、この人の考えてることがあよくわからない。この人のおかげで、我もいろいろと助かってるんだけどな)
リヤム「できたできた!」
オオカミ「早!?えっ?えっ!?ついさっき始めたよね?エリィでもこの規模の術式書くのに数日かかると思うんだけど」
リヤム「だって、僕天才だからこれぐらいは朝飯前だよ」
オオカミ「天才とかの次元じゃないから。てか、ちゃんと動くの?」
リヤム「やってみればわかるよ」
リヤムは、軽く深呼吸すると両手を術式の中央について術式を発動させた。
そのとたん、月が太陽を隠した。
リヤム「成功した。そのまま」《タイムスリープ》
魔法を唱えた瞬間に、周囲の生き物は固まり、風は止まった。
リヤム「それじゃ、あんたも探すの手伝ってね」
オオカミ「わかりましたよ」《ライト》
周囲が暗いため、何時間が建ったかもわからないが、かなりの時間がたってやっと見つけた。
リヤム「見つけた見つけた。それにしてもどれぐらい探してたんだろう。周囲がずっと暗いせいでどのぐらいたったのか把握ができない」
オオカミ「見つかりましたか?」
リヤム「見つけたよ」
オオカミ「それでは、一度家に帰りましょうか」
リヤム「そうだね」
リヤムは、魔法をとくと周囲が一瞬で明るくなった。
そこには、かなりの数のオオカミの遺体があった。
リヤム「っ!?」
オオカミ「何が起きたんだ!?この場所で…」
リヤム「お姉ちゃん!」
リヤムは、猛ダッシュで家に行ったがそこには半壊した家と、血だまりがに横だ負ってたエリィがいた。
リヤムはすぐに、エリィに駆け寄って声を掛けながらゆすったが、体は冷たく、傷だらけになっていた。
リヤム「…どうして?」
オオカミ「我以外は、オオカミも全滅しておりました」
リヤム「そうだ、死者蘇生をすればいい。お姉ちゃんがいなければ、僕の存在価値もないし、この才能を代償にお姉ちゃんが生き返ればいい」
オオカミ「それって」
リヤム「ごめんだけど、付き合ってくれる?」
オオカミ「付き合いますよ」
二人は、半壊した家から本棚を探し出し始めた。
リヤム「もし、本棚が壊れてたとしても、コアさえ見つけ出せれば何度でも直せる」
オオカミ「本棚ありました」
本棚は、辛うじてで原型をとどめ居ていた。
リヤムは、そこから魔導書から術式系が書かれた本を取り出せるだけ取り出した。
オオカミ「正直死者蘇生なんて、簡単に作り出せるものではないと思いますよ。探したほうが早いかと思いますけど」
リヤム「死者蘇生なんて、禁忌魔法の一種だよ。そんなのそう簡単に手に入るわけないじゃん。それなら作ったほうが圧倒的に早い」
リヤムは、取り出した本を開いては、ページを破ってまとめていく。
この行動で1日ほどたった。
リヤム「よし、これだけあれば作り出せるはず。それに、万が一お姉ちゃんに禁忌魔法を使ったって知られたら何言われるかわからないし、記憶干渉魔法も念のため作り出しておくか」
オオカミ「それと、記憶系使ったら、もう一人のリヤムさんがどうなるか」
リヤム「それに関しては大丈夫。あの子は、僕とは別の人格で別の記憶を保持してるから、魔法の対象外になるはず。それに、あの子が記憶をなくされると僕とお姉ちゃんが記憶をなくした後がいろいろと面倒さそうだし」
オオカミ「確かに、あの子なら絶対にいろいろ言ってくると思いますし」
リヤム「いろいろありがとうね。ここからは一人で大丈夫」
オオカミ「それは、契約破棄ということ?」
リヤム「うん。どのみちお姉ちゃんがいなくなった今じゃ、契約自体がそもそも成立してないから破棄というより解除のほうが正しいと思う」
オオカミ「それもそうか。それじゃ、契約解除」
オオカミがそういうと、体が光に包まれ泡のように消え去ってい行った。
リヤム「さてと、始めるか。禁じられた儀式を!」
~現在~
?「長き時をかけて記憶が復元されるか」
幼女は、そういうと日記をかばんにしまって、その場を後にした。