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1-36 不穏なニュース

 あの後桔梗は、自身を心配し待っていてくれた2人にお礼を言った後、早々に帰宅した。

 そしていつもの様に皆で協力し夕飯を作り、それを食べた後、順番にお風呂に入る。


 この日は1人ずつ入る日という事で、現在ルミアが入浴している。


 人数も人数の為、少女達もなるべく早く上がろうと考えているようではあるが、とは言え幾ら急ごうとも女性のお風呂はどうしても長くなってしまう。


 その為、当然待ち時間というのはかなり存在する。ではその間、桔梗達は何をしているのかというと、リビングで垂れ流しにしたテレビに時折目を向けながらも、各々好きな事をしているのである。


 現在テレビで放送しているのは、時間の関係もあってかどの局もニュースばかり。それでもはじめはテレビが珍しかったからか、少女達は食い入る様に眺めていた。

 しかし数日が経過し、目新しさも無くなったのか、いつからかテレビだけに集中する事は無くなり、皆現在の様にチラチラと見る程度となった。


 と。そんな中、周囲に反し、ボーッとテレビを眺める者が2人居た。──桔梗とラティアナである。


 何故こうもテレビに、それもニュースに意識を向けているのか。テレビを見る見ないに何故も無いとは思うが、これには理由がある。


 実は桔梗は、3年という月日の中で忘れてしまった現代の情報をなるべく得ろうと考えているのだ。因みにラティアナは、単に桔梗の真似をしているだけである。


 ──この日も数多くのニュースが流れた。


 保護犬に関する微笑ましいものから、殺人事件の様な凄惨なものまで、いつも通り様々である。


 因みにこの日1番大きく取り上げられたニュースは、4年前人気絶頂の中突如姿を眩ませたアイドルが、動画投稿サイトに突然動画を投稿し、賛否両論様々な意見が寄せられているというニュースである。


 桔梗にとっては7年前とかなり昔の出来事であるが、アイドルに疎い桔梗でさえも当然の様に知っている程人気なアイドルのニュースであったからか、当時かなり衝撃を受けたのを覚えている。

 死亡説なども出るなど、色々と騒がれていた事もあってか、桔梗も今回の突然の生存報告にはかなり驚いた。


 と、そういえばそんな事もあったなと3年のブランクを埋める様にニュースを見ていると、ここで建造物破壊に関するニュースが流れた。


 内容は、何やら日本の様々な場所で、建物が何の前触れも無く壊れるという不可解な出来事が起きており、警察がテロを念頭に調査をしているというものである。


 そのニュースに、桔梗は校舎裏での出来事を思い出し、


「似てるな」


「ん、何がっすか?」


 呟く桔梗に、左に座るシアが彼の方を向く。

 そんなシアに、桔梗は今日あった事を話そうとし、


「いや、今日さ──」


「……あ! ねーねーごしゅじんたま!」


 そんな桔梗の話を遮る様に、彼の膝の上に座るラティアナが声を上げ、バッと振り返ると、自身へと注目を向ける様に服を引っ張った。


「なになに! どうしたのラティ」


 突然の事に驚く桔梗。対しラティアナはテレビを指差すと、


「あそこにまりょくあるね!」


「え……あ、本当だ」


 テレビの映像で紹介されている事故現場。その崩壊部分からほんの僅かであるが魔力を感知できる。


 それは注視しなければわからない様な、本当に僅かなもので──


 ……凄いなラティは。


 桔梗は驚嘆する。


 ラティアナは未だ生まれて1年。しかしこと魔力感知に関しては、平常時の桔梗を上回る力がある。


「流石ラティだね」


 と言いながら彼女の頭を撫でる。


 にへらと嬉しそうなラティアナ。桔梗はその姿に癒されながらも、「また魔力……どういう事だ?」と頭を悩ませる。


「この世界って魔力使える人居るんすか?」


「いや、居ないはず。まぁ、確認した訳ではないから厳密にはわからないけど」


 確かに、地球にも魔力の素である魔素は異世界と同程度、空気中に存在する。しかし以前異世界で聞いた話であるが、どうやら地球人には魔素を魔力に変換する器官の様なものが存在しないらしい。


「なら、おかしな話っすね」


「だね」


 とりあえず注意はしつつもどうしようもできないことから、未だ様子見か? と考えていると、ここで桔梗の右方からパチンッという小気味良い音が響く。


「…………王手」


「……あー詰みか。流石強いなリウは……」


 桔梗の言葉に、リウがむふーっと満足げに息を吐く。

 そしてちょうどこのタイミングで、ルミアがお風呂から出てくる。


「桔梗様。お風呂頂きましたわ」


「はいよ。じゃ、僕も行くか」


 言って立ち上がると、ラティアナを抱えお風呂場へ向かう。


 各地で発生する建造物破壊と、そこに何故か存在する魔力に対する小さくない不安を覚えながら。

一応言っておきますと、ダンジョンではありません。

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