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1-16 ファリヲカート(後)

投稿再開します。

「うん、みんな筋が良いね」


 言って桔梗がニッと笑う。


 レース開始30秒が過ぎた現在の順位は、唯一の経験者である桔梗が単独1位、次いでほぼ同率で彩姫、ルミア、リウが続き、遅れてシアが走っている。


 正直桔梗自身そこまでゲームが得意という訳でも無ければ、ファリヲカート自体をやり込んでいるという訳でもない。しかし、やはり一日の長がある事もあり、単純な操作技術では桔梗に分がある様で、桔梗と少女達の間にはそこそこの差が付いている。


 とは言え、桔梗が想定していた程の差はない。


 そこには久しぶりのゲームという事で多少桔梗の腕が落ちていた事も関係あるだろうが、何よりも少女達──シアを除く──のコントローラーさばきが初めてとは思えない程に、戸惑う事無くスムーズに行えている事が理由としてあった。


 カチャカチャというコントローラーを操作する音がリビングに響く。

 時折「うぇー!」や「のわぁー!」といったシアの声が響く事もあるがそれ以外に言葉を発する者は居なかった。


 と。楕円コースと言う事もあり、特に何か起こるでもなく淡々とレースは進み、遂にはシア以外がゴール。結果、桔梗1位、リウ2位、彩姫3位、ルミア4位、シアが5位となった。


 レースが終わった瞬間、静寂だったリビングに少女達の声が重なる。


「……桔梗……はやい……」

「負けると結構悔しいわね」

「うぅ4位。残念ですわ……」

「ちょ……! まだゴールしてないのに終わっちゃったっす!」


 リウは横に座る桔梗の袖を引きながら、並び座る彩姫とルミアは何とも悔しそうに、そして桔梗の左隣ではシアが立ち上がり尻尾をピンッと立たせながら声を上げる。


「どうだった? 初めてのテレビゲームは」


「……楽しい」


 桔梗の問いに、リウが再度桔梗の袖を引くと、ニッコリと笑顔を向ける。

 それに続く様にルミアがパーッと表情を明るくすると、


「クセになる楽しさですわ!」


 彩姫はその言葉に頷く。


「世のゲーマーの気持ちが少し分かったわ」


 3人の言葉に桔梗は良かったと小さく笑った後、左隣に座るシアの方へと顔を向ける。


「シアはどうだった?」


「うーー! 悔しいっす! けどそれ以上に楽しいっす!」


 彼女の言葉を証明するかの様に、尻尾がパタパタと揺れる。


「なら良かった」


「ご主人! もう一回やるっすよ!」


 言って桔梗の肩を揺らすシア。皆の方を向くと、早くやりたいのかウズウズしている様子であった為、桔梗はうんと頷くと次のレースの準備を始めた。


 ──その後何度かレースを行った。


 レースの中では様々な事があった。


 例えば、リウがニヤリと笑い、サンダーを使用。


「……ん? のわぁぁぁ! 墜落したっすぅ!」

「……んふふ……駆け引き……」


 これにより順調に空を飛んでいたシアのカートが縮むと共に落下したり、


「初1位! 初1位がもう目前──んにゃぁぁ!」


 シアが1位のまま進み、ゴール目前で青い甲羅に吹き飛ばされ、結局ビリになってしまったり、


「……ん? おぉー! キラーっす!」


 かと思えば、運良くキラーを当てたシアが、4人を抜き去り奇跡の1位を獲得したり──


 やはりムードメーカーと言うべきか、おもしろシーンの大半はシアによって生み出されていた。


 そんなシア含め、皆回を重ねる度に操作が上手くなっていく。

 初戦は圧倒的ビリだったシアも、持ち前の戦闘勘からか、操作を覚えてからは上位争いに加わることも増えた。


 結果、10回もレースをした頃には、遂に桔梗がビリになってしまう事に。……いや、みんな成長が早過ぎる。


 ……とそんな感じで初めてテレビゲームをやった少女達だったが、回数を重ねる内にどんどんとのめり込んで行き……以降就寝中のラティアナ含め、空前のファリヲカートブームが起こるのだがそれはまた別の話。

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