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現世:獄卒:日誌  作者: 直海悠大
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第二話 活動拠点

 山中に転送された我々は、人里を目指しながら今後の方針について話し合っていた。


「まずは人里に下りて情報を集めます。脱獄衆と言えど死した魂……生者(せいじゃ)()かれる性質は変わりません」


「人間は魂なんか見えねーだろ。情報なんて集まらねぇんじゃねぇの?」


 牛頭(ごず)がこんなに鋭い意見をするとは……。道中に生えている木の実を手当り次第に口に運んでいるから、てっきり話しは聞いていないと思っていましたが、少し見直しました。でも……


「生者に惹かれる、と言ったでしょう? 死した魂は生者に憎しみや怒り、(ねた)み等の感情を抱きます。なので……」


「なるほど! つまり、生者に悪さをするって事っスね!」


 私の言葉を遮り、馬頭(めず)が自信満々に説明の続きを答える。ふむ、(いま)だに首を(かし)げている牛頭に比べ、馬頭は物分りが良いみたいですね。


「正解です。正確に言えば生者に取り憑き生命力を吸ったり、中には心霊現象(ポルターガイスト)を引き起こして直接命を奪う者も居ます。そういった症状や現象を体感している人が周囲に居ないか、聴き込みをするのです」


 正直とても面倒な方法ではありますが、脱獄衆の所在が分からない以上仕方ありません。


「あの、赫座(あかざ)さん。ところでなんスけど……生活する場所ってどんな所なんスか?」


「…………」


 セイカツスルバショ? この子は何を言っているんだ?


「いやほら、聴き込みから始めるって事は活動の拠点になる場所がいるじゃないっスか。あまり狭い所だと嫌だなぁ、って。ほら、獄卒って言っても(あかざさん)(ウチら)がギュウギュウ詰めって言うのも……って、赫座さん? 何で目を()らすんスか!?」


「…………」


 盲点(もうてん)だった。最後に現世に来たのは数百年前だったし、その時は一人だったし、拠点も(いくさ)で人が居なくなった村の空き家を使っていたし。いっその事、野宿でも……


「そんなの野宿で良いじゃねぇかよ」


「良くないっスよ! 牛頭も女の子なんスから、そう言うトコも含めて気を付けなきゃ!」


 待って、牛頭と思考が被った。まさか私の思考って牛頭レベル!?


 ショックを受けつつも考えを巡らせていると、閻魔王の補佐を務める獄卒長 金平鹿(こんへいか)様から『ある物』を渡された事を思い出し、着物の(そで)から取り出す。


「これは……」


 役に立つから、と言って渡された時はコレが何なのか分からなかったが、今なら理解出来る。心の中で金平鹿様に感謝を述べると再び歩き出す。『オススメ賃貸物件』と書かれた雑誌を握り締めながら。


====================================


「ようやく決まりましたね……」


「疲れた……」


 山を下りた我々は、まず不動産屋を訪れた。そこの社長は昔、心霊現象によって日に何度も殺されそうな毎日を送っていた所を金平鹿様に救われたらしく、それ以来金平鹿様が現世に出張した際は格安の値段で物件を貸してくれているらしい。


 心霊現象を体感したからか霊や獄卒にも理解があり、金平鹿様の紹介と言う事もあって我々にも格安の値段で物件を貸してくれる事になったのだが……案内された物件は馬頭がことごとく却下してしまった。間取りや設備が不満だったようで、間取りはある程度妥協、エアコンや冷蔵庫などは後から購入と言う事で納得させ、決まった頃にはすっかり陽が沈んでいた。


「人間の大多数は夜になると寝てしまいます。あなた達も初めての現世で疲れたでしょう。今夜は休んで、明日から聴き込みを開始しますよ」


「「了解……」」


 現世出張一日目は物件探しで終わってしまった。他にもやるべき事はあるが、彼女達の上司として部下の体調管理に気を配らない訳にはいかない。今夜はひとまず、三人でファミレスに駆け込んだ。つまみ食いしてた牛頭と違って何も食べてないんですもの。鬼だってお腹空きますよ。

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