まいったね、こりゃ 1‐8
始まる前にお詫びを。
この次の章から、不定期投稿とさせていただきます。
理由としては、毎週1章ずつ書いて投稿するのがしんどい&私生活の変化で時間が取りにくくなったためです。(いっぺんに書いて順番に出せば良いじゃん、てのは無しですよ?)
とは言え、まだまだストーリー的には終わりが無いではないし、一通り自分が満足できる範囲で書き終わらせるつもりなので、暇つぶし程度に呼んでいただけると幸いです。
ではでは、第8章の始まりですよ~
第8章 人形
カライヤ宙域 ワープゲート前
スカーレル海賊団との戦闘後、艦隊の拡張+強化をした俺たちはパンドラの箱の謎を知るために、小マゼラン王国に隣接しているカライヤ、という宙域にワープゲートを使って来た所だ。
「全艦艇、ワープ成功を確認」
「今の所、各艦艇のシステム及び、船体はオールグリーン」
「100隻以上でのワープは初めてだからな。些細なエラーも見落とすな」
「アイサー」
サナダの注意にカノンが返事をする。普段の気楽な雰囲気とはかけ離れているのは、俺たちはそれまでの3倍に及ぶ120隻という大規模な艦隊を同時にワープさせたからだ。そのため、この宙域に来るまで慣熟訓練も兼ねてそれまで行っていた仕事を効率よくする方法を模索していた。
その結果、通常時は艦隊を4分割する事にした。
理由として、先のスカーレル海賊団との戦いで指揮系統が脆弱である事が判明。その上、艦隊数が大幅に増えた事も関わっているので、各艦隊に30隻ずつを配置した。
その内訳は、第1艦隊に艦隊総旗艦である俺やそのサポート役であるティア、などの航宙戦艦である4隻を集中的に配置して、その周りに巡洋艦や駆逐艦を配置。言わば、前衛にも後衛にも回れる万能艦隊にした。
第2艦隊は、高速戦艦であるインテグラ達4隻を中心に構成されていて、主に前衛として敵艦隊の撃破を目的としている。無論、乗員クルーの腕を鈍らせないように俺の艦隊も積極的に前に出るつもりだ。
第3艦隊は、空母アメリアを中心とした空母機動艦隊。270機もの艦宙機を搭載しているアメリアと同じ規模の空母を4隻建造したため、1000機以上の攻撃をもろに喰らったらひとたまりもないだろう。まぁ、使う機会はそうそうないだろうが。
第4艦隊は、センチュリオンを旗艦とした遠距離砲撃艦隊。武装を大型化して、敵の射程範囲外からの攻撃を加えるため、後衛特化の艦隊だ。中世風のファンタジーで例えるなら弓兵か魔法使い、といった所だろう。
まぁ、こんな感じでそれぞれの分野を明確化させると、戦術的にやりやすくなるから便利だ。それとクルリ達、工作艦はセンチュリオン達の第4艦隊に編入してある。なぜかというと、クルリ達の武装は貧弱だからだ。
一応、武装させてはいるがあくまで自衛程度でしかないため、インテグラ達の第2艦隊に入れると格好の的になってしまう。それを防ぐ意味で、後衛特化の第4艦隊に入れたわけだ。
そんな訳で、各艦隊から大丈夫だ、という通信を確認した落ちに俺達はワープゲートにほど近い、惑星テロスに向かった。それと同時に警戒レベルと緩め、乗員に交代で休息するように伝える。
その最中、
「そういや、なんでこの艦隊のAIは女ばかりなんだ?」
と、ギレンが聞いてきた。
「そりゃあ、船に名前を付ける時に女性名詞で呼ぶだろ?」
「へ?」
「だから、女性名詞で呼んだり、女性定冠詞を付けたりするだろ?俺らの思考はそこから来てるんだが?」
「それだけ?」
「んだ」
実際、ここまでの文字の表記や言語は、英語にスペイン語やドイツ語などのヨーロッパ圏の言語を足したような感じになっている。そのため、少なくとも俺の艦隊はそういう風にしている。
「いやいや、ちょっと待て!」
そういうと、ギレンは慌てたように考え始めた。
「となると・・・こうなる訳だから・・・えーっと・・・」
あ、これはあかん奴や。何せ、ギレンもサナダと同じマッドサイエンティストの端くれだからな。何か面白おかしい研究でも始めるんだろう。その犠牲になるのは俺なんだがな。
「面白い考えが浮かんだから、俺は研究室に戻るぜ!」
「あ、ちょっとま・・・」
「後でサナダも呼ばないと!じゃあな!」
そういうと嵐の様に帰っていった。はぁ、悪い予感しかしねぇ。
「止めなくてよかったの?」
「止めてもどーせやるんだし、放置するのが一番だよ。あれこれ言い過ぎるといなくなっちゃうし」
俺は、嵐のように去っていったギレンと入れ替わるようにカレンの交代のために来たサティに答えた。
「そう。それはそうとカレン、交代に来たわよ」
「ん、わかった」
その短いやり取りでカレンとサティは交代して、カレンは艦橋を出た。宴会後、二人の距離はかなり近くなったと思うのは俺だけじゃないな。特に、艦橋クルーは食堂やスポーツジムで二人が話しているのをよく見かけると、言っているし。
それはそうと、あの戦闘後、スカーレル海賊団所属の海賊船は大幅に勢いを失っており、近い内に消滅することが予測されている。そのため、比較的に平和な航行を行っているのが現状だ。
そのため、輸送船の手伝いぐらいしかないのはつまらん、という事で資源開発にも手を出して小遣い稼ぎにしていた、1ヶ月だった。まぁ、編成を変えた艦隊の調整に多少手間取ったのは、退屈しのぎにはちょうどよかったがね。
~~~~~~
惑星テロス 宇宙港・地上エリヤ
「しかし、こんな寂れた所に本当にいるのかしら」
「少なくとも私が聞いた限りでは、そう聞いている」
「まぁ、なんにせよ、オムレス宙佐曰く、例の人物はこの惑星に来て以来、消息不明だそうだ」
俺はカレンとサティ、それと数人の保安局員を連れて、パンドラの箱について知っている人物に会うために、中心部からやや離れた街に向かってバスで移動していた。
「となれば、別の惑星に行っている可能性も考えられるけど・・・」
「その可能性は限りなくゼロに近いぞ?」
「なぜかしら?」
「彼はこの手の研究では、高名な博士らしくてな。惑星間を移動していれば必ずと言っていい程、すぐにわかるそうだ」
「ならなんでどこかに消えてしまったのでしょうか?」
「さぁな。少なくとも凡人の俺らにはわからん、という事さ」
「しかし、意外」
「なにが?」
目的地に向かっているバスに揺られて、のんびりとしていた俺にカレンが心底意外そうに俺に声をかけてきた。
「能天気に見える艦長が、飯の種にならない伝説の話に興味を持つなんて」
「君は、俺の事をどう見ているのかね?」
「ドSで能天気なしがないお人よし艦長」
「お人よしはともかく、最初の三つは違うと思うだがなぁ。なぁ、サティよ」
「ごめん、艦長。否定できない」
「ひでぇな、おい」
俺がそうぼやつくと、同行していた保安局員から笑い声がしてくる。まったく、後で覚えてろよ?
そんな、気の抜けたやり取りから30分後。
「なんとか着きましたよ~、と」
そう、ぼやつく俺達の前には研究所が建っていた。
「こんな所に、本当にいるのかしら?」
「この有様では廃墟と同じか、それよりちょっとマシなレベル」
「聞いた話をまとめると、確かにここなんだがなぁ・・・」
その研究所、かなり老朽化していて窓がいくつか割れていた。日本人だった俺からすれば、地震が来たらいつ倒壊してもおかしくない状態だった。実際、研究所の敷地内や不審人物に対応するための門番的な警備員も見かけない上、扉も半分開いていた。
「艦長、どうします?」
「ここで突っ立ていても意味がない。入るとしますか」
もう敷地内に入っている時点で不法侵入なんだが、この場合は、気にしても意味はないだろう。そんな訳で潜入もとい、捜索と行きますか。
とは言え、
「・・・かび臭い」
「それに埃だらけですね」
「喘息にならないように気を付けないとな。こうなるんだったらガスマスクでも持ってくるんだったぜ」
とまぁ、建物の内部は三者三様の感想でわかるように、外見と同様にひどいありさまだった。簡単に言ってしまえば、それは捜索に苦労しそうな雰囲気である。
俺達は周囲に気を払いながら、それでも着実に捜索は進んでいき、最後のエリアである3階の廊下に来た所で、サティはわずかな変化に気が付いた。
「艦長、ここだけわずかだけど空気の流れがあるわ」
「ん?あぁ、確かにな」
サティはキュウビ族の特徴である狐耳で、俺は高性能のサーモグラフィや空気の流れを感知できるような機能を、他の複数の機能と一緒に目に備えているのでそれで確認する。
「ふむ、この空気の流れは空調機などが出す流れに似ているな」
「そこまでわかるのか?」
「あくまでここで測った範囲ではな。このまま進めばわかるが、どうする?」
俺は念のため、一緒にいるメンバーに訪ねた。
「ここまで来たんだから引けない」
「えぇ、行ける所で行かないと一族の恥となってしまうわ」
他のメンバーも大丈夫そうだ。
「よし、行くよ」
俺がそう言うとより一層、慎重に進んでいく。そうして進んでいくと、廊下の突き当たりにある一部屋から光が漏れているのに気が付いた。それを後ろにいるメンバーに伝え、短いやり取りで入る事にした。
キィ・・・。
金属が擦れるような音がしながら、ドアが開いた。それと同時に、それぞれ武器を構えて手際よく、突入した。すると・・・。
「人が倒れてるぞ!」
「えぇ!?」
「大丈夫なの?」
俺が驚きつつ、状況を伝えるとメンバーは驚いて一瞬、呆然とする。まぁ、当然の反応だろう。だって、無人の研究所で一部屋だけ、明かりがついていたら普通は警戒するでしょ?しかし、蓋を開けてみたら研究員らしい老人が倒れていて、ピクリともしない。
そのため、俺達は迅速にその老人の脈拍や呼吸、怪我の有無などを応急的ながら確認して艦隊から輸送艇を出してもらった。応急処置の結果、老人は低血圧でぶっ倒れた可能性が高いとみられる。外からは出血や骨折は見られず、それらしい症状もないが断定は禁物だろう。
そんな訳で、その老人の所有物であろう鞄と書類をまとめて持ち、輸送艇が来たのを確認して、俺達と一緒に艦隊に輸送してもらった。
~~~~~~
「まぁ、艦長が推測したように低血圧で間違いないじゃろう」
艦隊の医務長であるサド先生が検査の結果、そういったのだから間違いないだろう。それを聞いて、あの場にいたメンバーと騒ぎを聞いた野次馬は一息ついた。
「まぁ、なんにせよ、この老人が目を覚まさない限りどうしようもない。サド先生、頼みます」
「念のため、保安局から何人か、こっちに回せんかのぅ?前回みたいなのはごめんじゃ」
「わかった、今すぐ手配しよう。他に何か必要か?」
「今の所、大丈夫じゃ」
「はいよ」
俺は現段階で出来る事をやって、野次馬たちには帰るように言った。そして一段落して、艦橋に戻ろうとした時、サド先生に呼び止められた。
「艦長」
「何だい?サド先生」
「最近、乗員たちの一部に妙な動きがある」
「乗員たちに?」
「あぁ。反乱がどうの、とか、最近入ってきた乗員を中心にそういった話がよく上がる」
「・・・」
「艦長の事だからあまり気にせんでおくが、気を付けた方がいい」
「はいよ。忠告ありがとな、サド先生」
「気にせんでいいわい」
そう言って俺は、医務室から出た。
サド先生の忠告通り、反乱の兆しというものがここ最近、顕著になってきている。それも、クラウディアとメーリンを中心に、だ。彼女たちは一族の再興を願っての行動なので、それ自体に否定やケチをつけることはできないが、反乱だけはいただけないな。
彼女たちが、俺の事をどこまで知っているのかはわからないが、少なくとも俺がただの人間ではない事は知っていそうだな。そうでなければ、ここまであからさまに動きを見せる訳にもいかないだろう。そのため、問題はいつ始まるか、という事だけが焦点になるだろう。それだけは俺にもわからないから、考えられる範囲、相手に気付かれずにさりげなくやれる手を打っておこうと思う。
「ふむ、ならばこっちか・・・」
そう言って、俺は艦橋とは別の方向に足を向けた。
「あ、艦長。ちょうどよかった」
俺が研究室を通りがかった時に、誰かを探していた技術士のクロムに呼び止められた。
「どうした?クロム」
「艦長に見せたいものがあるってサナダさんが言ってましたよ~」
「見せたいもの?・・・嫌な予感しかしないんだが?」
「まぁまぁ、そう言わずに。こっちですよ~」
そう言われて、クロムに背中をぐいぐい押された。
「おいおい、そう押さなくても俺は逃げんよ~」
「そう言って、すぐにいなくなるじゃないですか!」
そうどやされながら、俺は研究室に入った。
「サナダさ~ん、艦長を連れてきたよ~」
「半分、連行されていたがな」
その気の抜けたやり取りで、マッドサイエンティスト達は入ってきた俺たちに気が付いた。
「艦長、見てくれ」
「これをどう思う?」
近づいた俺に、サナダとギレンが質問を投げかけてきた。
「すごく、大きいです。じゃなくて、この人形は?」
俺たちの前にはベット風の台があり、その上には二体の人形があった。
「この人形は、限りなく人間の肉体に近い人形で、高性能のAIを積んでいる」
そう言って自慢げに話すサナダに続いて、ギレンがこう繋げた。
「宇宙港で故障した自立型AI人形をかき集めて解析、限られた予算で作った艦長用の自立型AI人形だ」
「自立型AI人形・・・?って、ギレンが言っていたのはこれかい?」
俺はそう言いつつ、二体の人形に目線を投げかける。その人形たちの片方は、俺が演算能力で構成している体に似せた人形だ。身長や体型、髪や目の色、体のラインまでよく似せている。しかも、体の各部にはいろんな機能を載せている、ときた。まさに、研究の粋を集めた人形といえるだろう。
一方、もう片方の人形の体型はかなり幼く作ってある。いわゆる幼女体型、とでも言うのだろうか。まさにロリコンが大興奮しそうな体つきだ。体の色は北欧系で色素が薄く、白子に近い。それでもって金髪で赤い目をしているのだから、俺も男だったら誘拐しそうなかわいさだ。無論、そんな事をしたら保安局員に冷たい眼差しで見られながら、本当の"蜂の巣”にされるからしないけど。
「艦長の話でピーンときてね」
「これまで男にしたかったら超兄貴とショタに、女にしたかったらこの2つにしようと考えていた所だ」
「いや待て、男の方のチョイスがおかしすぎるだろ」
「「え?どこが?」」
「え?」
あ、ハモった。て、違う違う。
お互いの認識がずれている事に気が付いた俺達は一応、それぞれの考えている艦長像を上げていくと大分ずれていた。
まずサナダの方は、今までの俺の行動からどういった外見が好みかを予測して組み立ててみた、と技術者らしい判断だった。一方、ギレンの方は、艦橋クルーを始めとした乗員全員に聞いて回った所、この4体に票が一番集まった、との事らしい。うちの乗員は一体、俺に何を求めてんだか。
「で?プランBは?」
「え?」
「プランBだよ、プランB。他にないの?特に男の方」
「無いな」
「無いですね」
「艦長にはこれが一番似合ってますよ」
「あぁん!ひどぅい!」
という事で、今までの体と幼女の人形にしたぜ。異世界に来て超兄貴が新しい体とか、俺だったらすぐに発狂ものだぜ。そういった意味で神様とやらに感謝だな、いるかわからないし、俺個人としては神様は嫌いだけどな。
それはともかく、人形を動かすのと演算能力で一から始めるのとではだいぶ変わるな。何しろ、物質転換システムを長距離でも使うため、それ相応の演算能力を使っていた。その処理に手間取っていたのが、人形を動かすだけで勝手にやってくれるんだからな。
その結果、従来の10分の1の演算能力で2体の人形を使う事ができるのは嬉しいね。まぁ、その対価として、一定のメンテナンスや充電なんかに時間を当てないといけないのがネックになりそうだ。つまり、長時間の野外活動には注意が必要って事だ。
30分後。
「システム、インストール完了。オールグリーン」
「電圧、油圧、その他のシステムにも異常なし」
「艦長、いつでもどうぞ」
「はいよ」
サナダの合図で、俺は人形の四肢をゆっくりと動かしてみる。
すると、とても懐かしい感覚に包まれた。まるで、暖かい布団に入っているかのような感覚、とでも言えばいいのだろうか。とにかく居心地がいい。そして体を起こし、あたりを見回すと景色が変わっているように見える。
「ナイスだ、サナダさ「お姉ちゃ~ん!」ぐはっ!」
いい仕事をした、というニュアンスでサナダとギレンを褒めようとしたら横からかなりの衝撃が来た。この抱きしめられた触感と声は、隣で寝ていた幼女のものだな。
「全く、我が妹よ。いきなり抱きつくんじゃねーや」
「え~。姉妹っていうのは、こういうものだってサナダ達に教えてもらったよ~?」
俺が三人に目を向けると、三人は目をそらして知らないふりをしていた。
「サナダ達は、船外でちょっとOHANASIしようか」
俺はイラッときたので、ついドSモードで言ってしまった。すると、
「わあああああ、悪かった!済まなかったからよしてくれぇぇぇえ!」
「技術者に船外活動とか、艦長は鬼畜やで~」
「私もできればやりたくないですね」
全く、最初からそうしておけって話だ。
それはともかく、姉妹って奴はこんなものかねぇ。如何せん、元の世界では姉が一人いたが仲が良いって訳でもなかったし、これと言って友人に親しい姉妹はいなかったからな。まぁ元々、サナダ達がプログラムしていたおかげで、姉妹関係を演じるのも苦ではないがな。
「あ、そうそう。こっちの俺に名前はついているのか?」
「名前?」
「勿論、ついているぜ」
俺がマッドサイエンティストに聞くと、即答で返ってきた。その表情から察するに、前もって考えていたらしいな。
「技術科のメンバーで投票した結果、イルミナに決まりました」
「へ~」
「別に、お姉ちゃんがいればいらないのに」
「君がそうでも、人間的にそうは行かないんです」
「そういうものなの?」
「そういうものです」
しかし、よく似せたものだぜ、うちのマッド達は。声の高低こそ違うが、性格や口調もよく似ている。妹はあまり名前とかに興味が無いが、そのうち慣れるだろう。
「まぁ、それはともかく。艦内視察でも行きますかね、イルミナ」
「はいよ、お姉ちゃん」
という事で、艦内視察の時間が始まるよー。
まずは砲雷科。
「艦内視察とか、珍しいな艦ちょ・・・ふぁ!?」
「ん?どうした?砲雷長」
砲雷科に割り振った乗員室にきた俺達二人に、砲雷長のミッチャーが固まってしまった。
「おーい、砲雷長。大丈夫か?」
「幼女、キタコレーーー!!」
「うおっ!?」
そして少々フリーズした後、大興奮だった。同時に、砲雷長の大声に気になったクルーが来ると更に大騒ぎになり、大広間はごった返しになった。
「こんにちわ!」「握手してくれ!」「いや寧ろ、尻を踏んでくれ」「なに、抜きん出ようとしてんだ、この変態!」「艦長の妹なのか!?」「薄い本が厚くなるな」「うおおお、こっちに微笑んでくれたぞ!」
とまぁ、一部は変態的な発言をしたため、他のクルーから突っ込まれていたが概ね好評だった。この艦隊には、女性クルーもある程度勤務してくれるがその大半は働く女性だ。そのため、どうしても男勝りな性格の女性が多くを占めてしまうから、イルミナのようなおしとやかな女性の割合が少なくなってしまう。
結果、男性諸君からは大好評なのだ。一方、それを快く思っていないクルーもいて、
「へぇ~、大好評じゃない」
「クラウディア?」
「ふーんだ。どうせ、私には可愛げがありませんよ~、だ」
イルミナの人気に、嫉妬しているようだ。だから俺はフォローを入れる。
「俺は、そんなあんたが好きだけどな」
「同性の艦長に言われてもね~」
と、そんな冗談を言い合える仲にまで俺とクラウディアの友情度は上がっていた。元々、お互いがそれぞれのトップに立っているため、その重圧やら苦労やらが共感できたのが大きいかな。
それはともあれ、適当にワイワイしてから他の部署に行くことをクルーに伝えると、また顔を出してくれと多くのクルーに言われてしまった。無論、顔を出させるがね。
その後、航海科と船務科を回ったが両方とも好評で、機会があったら増やしてくれ、と頼まれてしまった。そんな訳で、機関科に着いた所でこの艦の最古参の一人である人に会った。
「おや?」
「どうした、機関長」
「艦長、娘さんでもできたのかい?」
「あ、違う違う。妹ができたからそのお披露目に、ね」
「あぁ、なるほど」
今回の件で、トクガワ機関長と話が盛り上がっていると、俺が来たことに気付いた機関科クルーが大騒ぎして、それが当直でないクルーを集める結果になってしまった。
しかし、砲雷科のように騒ぎを大きくするような動きがなく、比較的静かだった。それでも、変態な奴がいて、ペロペロしたい、とか、踏んでくれ、なんて言っていたな。だが、それを言ったクルーは他のクルーにアームロックされていたぜ。
次は衛生科。
ここは比較的、かわいい女性クルーが多くいる場所で、そのクルー達を中心にイルミナを囲んで賑わっている様子だ。こうしてみると、俺も男勝り過ぎたのかね、と思ってしまうぜ。
「はっはっはっ、艦長はみんなを引っ張っていかないといけないから仕方ないじゃろう?」
「それはそうなんですがね、やっぱり羨ましくなってしまいますよ」
そんな俺の様子を見ていたサド先生に、肩を優しく叩かれてしまった。別に傷ついてはいないだがなぁ。
整備科。
「ふっふー、話は聞いてるよ?艦長」
「ライラか。うちの妹を見てどう思う?」
「いいんじゃないかな?彼女がよくやってくれるんだったらな」
「フッ、ちゃんとやらせるさ」
ギレンは技術科に出張っているから、整備科補佐のライラが対応してくれた。彼女は初期クルーではないものの、暴走しがちなギレンを押さえる役目を果たしてくれる。そのため、ヴァレリや俺の負担も大幅に減らせて楽になったな。それでも、押さえ切れない場合は俺が止めるがな。
ここでも、イルミナは人気だったさ。理由は、この部署に来るまでの通りさ。
主計科。
「・・・」
「・・・」
「よ・・・」
「よ?」
ヴァレリは、イルミナを見てプルプルしていた。
「幼女、キタコレーーーー!!」
「ぬぉっ!?」
「きゃっ!」
「ひゃっ!?」
そしてイルミナを見たヴァレリは、少し固まってから大声で叫んた後、イルミナを抱きかかえて頬をすり合わせ始めた。てか、冷静なヴァレリが物凄くキャラ崩壊してるんだが。
「ヴァ、ヴァレリが壊れちまった」
「キャラ崩壊する所なんて、初めて見た」
その場にいた俺やメーリン、主計科のクルー達もドン引きの状態である。あのマッド達との予算に関しての戦いに一歩も譲らないヴァレリが、可愛いものが好きとはね。いい意味で裏切られた感じがする。
とは言え、このままでは埒が明かないため、イルミナから引き剥がす事にした。
「すみません、艦長。取り乱しました」
「別に構わへんよ~」
引き剥がす事、10分。ヴァレリは、イルミナから完全に嫌われてしまった。そのため、俺を盾にする形で後ろに隠れて、涙目で頭だけを出していた。ここまで怖がられるとか、どんだけだ。
そんな訳でお披露目したいんだが、完全に怖がって話しにならないため、別の日にする事にした。
最後に、生活科と保安局にも行ったのだがここでもイルミナは歓迎され、なかなかの人気ぶりだった。いつもは暴走しがちな技術科のマッドサイエンティスト達だが、今回はいい仕事をしたと思うよ。
~~~~~~
艦隊ネットワーク内 VIPエリア
ここでは、定期的に行われる"お茶会”という名の会議や今後の方針について話し合う空間である。今回のお題は無論、サナダ達が作った人形についてだ。
「旗艦ミーナ!今回という今回は許しませんよ!」
そう、がなり立てるのは艦隊の初期メンバーであるティア。彼女は今回の件で、本気で怒っているのが見て取れる。
「唯でさえ、人間を乗せる事を大目に見ているというのに、黙っていれば人間の言いなりになって!」
随分とご立腹のようだ。こういう時は、一通り聞いてあげるのが一番の薬だぜ。
「それで大規模な戦闘に参加した時に限って、無茶な戦闘をなさって。挙句の果てに、彼らが作った人形を使うですって!?熱でもあるんじゃなくて!?聞いてます!?ミーナ!!」
「聞いておるよ」
彼女は真面目で冷静沈着であるため、人間が乗っていない艦隊をまとめる役割を果たしている反面、感情的になると話が長くなる傾向にある。特に、人間を乗せている俺の事になるとそれが顕著になる。今回はものすごく短いけどな。
「つまり、妹であるティアは大好きな姉である俺を失いたくない、と」
「なっ!?」
「そうなのか?ティア」
「うちの姉たちは仲がいい事で」
俺の発言にティアは動揺し、新しく増えた妹たちであるミズーリとレナウンは、それぞれ思った事を発言する。それに対して、俺はこう付け加えた。
「ミズーリ、こういう女同士での恋愛感情を“百合”と、世間一般では言うのだよ」
「な、なぁ!?」
「百合・・・タグ添付、分類、記録・・・」
「随分と変わった恋愛をするものだなぁ、ティアは」
生まれて間もない彼女らにとって、世間に対しての違和感や先入観がないため、なんでも吸収してしまう。そのため、ティアはブチ切れた。
「いい加減にしてください、ミーナ!貴女はいつだってそうやってのほほんとしていれば・・・!」
「ティア。ちょい、カモン」
俺の発言に怪訝な顔をしながら、ティアは席を立ち、俺に近づいてきた。それに対して俺は、ティーカップに入っていた紅茶を口に含むと、彼女の唇にキスをした。いわゆる、口移しってやつだ。
「!?~~~~っ!?~~~~~!!」
ティアが何かを言おうと離れようとしているが、俺が腰と頭の後ろに手を回してガッチリと支えているため、びくともしない。しばらくして、口に含んた紅茶を一滴残らず飲み干させると、顔を赤らめて弛緩し、ぼんやりとした顔になった。ハードすぎるプレイだったかもしれないが、そんな彼女に俺は姉として話す。
「ティアの心配は、自分の道標である俺が消えていなくなってしまう事だろう?なら、その心配は不要だ」
「・・・!」
「俺はお前達の姉だぞ?そう簡単に消えてたまるか」
俺は自分を諭すように語る。
「それに、お前達だけではないぞ?俺の後ろには140隻弱の艦隊があるんだ。簡単に消えれる理由がなかろう?」
「・・・」
あ、やばい。こうやって現実を正面から見ると、物凄い重圧がかかってるんだな、俺に。そう考えると震えてきた。この震え、ティアに伝わってなければいいんだがな。
ティア視点
震えている?そうか。普段からのほほんとしているのは、この重圧から逃れるためのものか。艦隊旗艦として、艦長として人に弱さを見せないために。
でもなぜ?と聞くのはおこがましいかな。なぜなら、私は彼女の妹。彼女に初めて名前をもらったのだから。
「?」
その思いに浸りながら彼女の体温を感じていると、急に震えが止まった。気になって頭一つ分高い彼女の顔を見上げると、別の方向を向いていた。その方向に私も顔を向けると、
「ふーん。ティアって堅物なイメージだけど、とんでもない変態だったんだ」
インテグラの四女であるシグマがいた。
パリーン
メガネが割れるほど、顔が真っ赤になるのを感じて呆然としているとシグマが前回と同じようなことを言った。
「状況を一部始終、みんなに伝えておくからね。百合長のティアさん」
根も葉もない噂を広げられても困るから、すぐに追わなければ。
「ミーナ!今回はここまでにしておきますが、次はありませんよ!いいですね!」
「はいよ、あんまり暴れないようにな~」
そう言って、彼女はいつもと変わらない口調と顔で見送ってくれた。
ミーナ視点
フー、なんとかバレずに済んだようだ。俺が、冷や汗かいて一息つくと、
「ミーナが震えていた」
「確かに震えていたな、ミズーリよ」
「!?」
どうやら、妹たちにはバレていたらしい。
「あー。て事は、ティアにもバレていた感じだな?」
「多分、気付いていた」
「あの距離で気が付かない方がおかしいと思うが?」
やれやれ、変な噂でも流されてなければいいんだが。いや、ティアならともかく、シグマあたりが言い触らしそうだな。あいつ、噂好きだし。
「はぁ、艦長像が崩れたりしないかね~」
「寧ろ、人間味があっていいんじゃないか?」
「どっちかって言うと、私達にもあの人形、ほしいんだが」
「わかった、サナダに量産型の開発を急ぐように伝えておくよ」
俺はサナダにメールで、その事を伝えると『了解』の二文字で返信してきた。今すぐに、という訳にはいかないが、それでも彼らならやってくれるだろう。
その後、騒ぎを聞きつけた艦隊のメンバーが入れ替わり立ち替わりで入ってきたが、比較的にゆったりとした時間が過ぎていった。




