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まいったね、こりゃ 1-7

 第7章 白鯨


 メイルストロームの中


「いや~しっかし、メイルストロームの中だってのに揺れは殆ど感じませんね~」

 航海長のウォルフがそう気の抜けた言葉を出すように、改造した電磁フィールドは隕石がぶつかっても何のその。ぶつかった瞬間に粉々に粉砕していった。そのため、大した振動や揺れもなく、40隻の艦隊は悠々と航行していた。

「しかし、安心はしてられないぞ、ウォルフ」

「どうしてだい?艦長」

「この電磁フィールドは、通常の約30%のエネルギーをプラスして発動しているからな。その分、動力や攻撃用のエネルギーに供給できなくなっている」

「へー、でも巡航速度には異常は見られないが?」

「巡航速度などでは平気だが、戦闘出力になると変わってくる」

「と、言うと?」

「艦長が危惧しているのは、最大速度の低下やビームの出力低下などだな」

 サナダが言うように、エンジンには出せる出力(エネルギー)に限りがあるという事だ。その中で、やり繰りしないとオーバーヒートを起こして、エンジンそのものが駄目になってしまう。

 今回の電磁フィールドの場合、エンジンの出力を100にして考えると、普通の電磁フィールドでその内の大体10ぐらいになる。それに、対隕石用の電磁フィールドを足すと13。対して、艦を維持するのに必要な出力は大体50。通常の戦闘に必要な出力は40前後。MAXで60ぐらいにまで跳ね上がる。

 これらを均等に使うには、どうしてもどこかでしわ寄せが来る訳で、それが戦闘に関する所に著しく現れてしまうのだ。

「ほぇ~、色々メンドーだな」

「そうなんだ、ウォルフ。色々と面倒くさいんです」

「こんな事もあろうかと、こんな計画書があるんです。艦長」

「ん?どれどれ・・・。これをここで言うかね?サナダくん?」

「なかなか言い出す機会がなかったのでね。すみません」

「別にいいんだけどさ~」

「艦長、どうしたんです?」

「新型エンジンの設計図。全く、ヴァレリにドヤされてもしらねぇぜ?サナダさんよぉ?」

 ウォルフの疑問に答えつつ、サナダに対してニヤリ、と笑ってみせた。そんな気の抜けたやり取りの中、レーダーを見ていたカノンが異変に気がついた。

「艦長!光学索敵範囲に巨大な隕石を確認!」

「大きさと距離は!」

「直径10km!距離は500km!ここに到達するまでに10分!」

「なんで、そんな距離に来るまで気が付かなかった!」

「レーダーが使えない上に、こんな砂塵の中での光学兵器ではこれが限界!」

「理由は何でもいい!第一種戦闘配置!」

「各艦に伝達!回避行動を!」

「距離が近すぎる!ビームによって迎撃だ!」

 500kmというと、東京から大阪までの距離とほぼ同じだが、宇宙空間では500mの距離から太さ10mの弾が時速数十kmの速さで向かってくる勢いである。その弾はもちろん岩石の塊で、人間の体に当たれば粉微塵に粉砕するだろう。ただし、それなりの距離があるので迎撃は可能のはずだ。

 これを回避する事は現状では不可能だし、半端な火力で迎撃しても意味が無いので全火力を持って迎撃する事にした。

「センチュリオン!チャージにどのぐらい掛かる?」

『5分はくれ!』

「全艦、センチュリオンが発射するまで全門発射だ!とにかく時間を稼げ!」

『『『『了解!』』』』

「ティア!」

『はっ!』

「センチュリオンのビームであの隕石は粉々になるだろうから、その中でも大きめのやつを狙って撃ち落とせ、と各艦に伝えろ!」

『わかりました!』

 俺が矢継ぎ早に指示を出すと、艦隊はビームを発射し始めた。しかし、いつもよりエネルギーが少ないせいもあって、隕石はびくともしない。そうこうしている間に、巨大隕石は徐々に近づいてくる。

『マスター!充電、完了しました!』

「・・・っ!センチュリオンは左舷へ回頭!目標は巨大隕石!中心を狙え!」

『はっ!』

「全艦、対艦攻撃から対空迎撃に切り替え!近づいてくる目標から撃ち落としていけ!」

『『『『了解!』』』』

『左舷回頭、完了!いつでも撃てます!』

「主砲発射!てっーー!」

 俺が発射命令を出すと、センチュリオンの放ったビームは吸い込まれるように巨大隕石の中心に行き、命中した。それと同時に隕石は爆発して、小型の隕石が散弾銃の散弾のように散らばってきた。

「センチュリオンは右舷回頭!各艦は対空迎撃で撃ちまくれ!」

 そう指示を出すと、艦隊は主砲から副砲、機関砲、ミサイルまで打ち出して迎撃に当たった。だが、飛んでいる銃弾を銃弾で撃つような芸当はいつまでも続く訳もなく、そのうち、ダメージを受ける艦が現れた。

「駆逐艦、2番、5番、17番、23番艦の電磁フィールド、消失!」

「砲艦センチュリオンの主砲、30%使用不能!」

「空母アメリアの甲板、大破!艦宙機、発艦不能!」

「ダメコンを急がせろ!」

「このままでは、いつまでも持たんぞ!」

「っ!残り20kmでメイルストロームを抜け出せます!」

「艦隊!急いで抜け出せ!」

 俺達は被害がでかくなる前に、急いでメイルストロームを抜け出した。


~~~~~~


「各艦の被害状況を報告せよ」

 俺達は、無事に地獄のような隕石の嵐を抜け出した。無事に、と言っても戦闘不能の艦も2、3隻いるし、そこまで行かなくても何らかの傷を負っている艦がかなりいる。

『こちら空母アメリア。甲板は使用不能なれど、艦宙機に異常なし。修理できればいつでも戦えます』

『砲艦センチュリオン、システムを組み替えて損傷した主砲をなんとか使えるようにしたぜ』

『戦艦ティア、損傷した駆逐艦たちはある程度修理したら戦える者達ばかりです』

『工作艦クルリ、修理ならいつでもできますよー!』

 上がってくる報告はどれも、いい報告ばかりだ。あの隕石の嵐で、何隻かは沈んでしまうのではないかと心配していたが、杞憂に終わったようだ。

 サナダが深い溜め息をして肩の力が抜けた俺を見て、

「こんな事もあろうかと、艦隊の装甲を強化しておいたのだ」

 と、自信有りげに言ってきた。

「それ、聞いてないんですけど」

「艦長は時折、無茶な事をしでかすからメイルストロームに入る前の入念な整備の時に、入れ替えておいたのさ!」

「射撃装置だって、良い物に変えましたし」

「レーダーもしっかりとした物にしておいた」

「整備に必要な資材も多めに積み込んでおいたのさ」

「その代わり、随分と予算を着服していたようね」

 艦橋クルーのあまりの用意周到さに感心していると、随分とご立腹なヴァレリが入ってきた。それを確認した艦橋クルー達は、慌てて言い訳をし始める。

「いやだって、メイルストロームを渡ると聞いて色々準備しなきゃ、と思って・・・」

「それにほら、大量の隕石を迎撃しなきゃいけないと思って・・・」

「レーダーが効かないと聞いて購入したし・・・」

「結果的に、あってよかったでしょ。ねぇ、艦長」

「確かに助かったが、着服するのはどうかと思うぞ?」

「「「「艦長の裏切り者~~!!」」」」

「主計局と保安局を除く、各部署は4ヶ月分の給料半減!」

 俺がそう言うと、艦橋クルーの断末魔が聞こえ、怒ったヴァレリは死の宣告をした。こんな事になるんだったらちゃんと主計局に通しておけばよかったのに、と思うのは野暮ってもんだろうか。

 それと、あとでヴァレリ達に差し入れを入れておこう。


 2時間後。


「クルリ、状況はどうだ?」

『アメリアの甲板は使えるようにしたし、駆逐艦群も通常の80%まで修理できました』

「センチュリオンの方はどうだ?」

『10m砲なら使えるようにしたけど、資材が底をついちゃったよ』

「わかった。少ない資材でよくやってくれた、クルリ」

『後で、良い機械油をおごってよ~?』

「わかった、話は付けておくよ」

『期待しないでおくわ~』

 そう言って、クルリは通信を切った。

 現在のこの艦隊の状況を整理すると、空母アメリアはいつでも艦宙機を発進可能。損傷した5隻の駆逐艦群の武装は、基本的に使用可能だが電磁フィールドに関しては、宇宙港に立ち寄らないと修理不可能。センチュリオンに至っては、主砲の20m砲4基の内、2基が使用不能。10m砲の方は、4基とも使用可能だが通常の90%までしか出力を出せなくなっている。

「状況は悪いが、運が尽きたようでは無さそうだな」

 こんな所で尽きてたまるか、と思う反面、本当に尽きているなら、艦隊の半分以上は大破している上、残った艦も全員中破している状態だ。

「艦長。全艦、発艦準備、完了しました」

「よし、損傷した駆逐艦は直衛艦隊に組み込み、不足した分を直衛艦隊から送る形に変更して発汗してくれ」

「「「「了解!」」」」

 こうして、俺達は危機一髪の状況でも1隻の損失もなく、メイルストロームを突破し、敵の本拠地に向けて出発したのだった。


~~~~~~


「なぁにぃ!奴らがメイルストロームを突破しただとぉ!」

「はっ!哨戒中の観測艦の報告です」

「ぐぬぬ、思った以上に早すぎる!」

 彼らのメイルストローム突破の報告を受けたライン・スカーレルは、焦りを露わにした。

 それもそのはず、メイルストローム用のプロテクターは非常に高価なもので、大きさは違えど40隻分を用意するのにかなりの時間が掛かるだろうと踏んでいたからだ。

 そのため、その時間で1隻でも多くの軍艦を購入して、本拠地で迎撃に当たらせようとしていたのだ。しかし、その予想は外れ、目標としていた数の1割にも満たない数しか集まっていないのである。

「まずい!これはまずいぞ!新しく配属した新兵はまだ未熟で、艦をまともに動かすことすらできないのに!」

「頭領!どうすれば!?」

「ええい!新兵を除く、全艦で第一防衛ラインを形成!その後ろに新兵が載っている艦を配置しろ!」

「そ、それでよろしいので!?」

「現時点ではこれが最良だろう。それと、他の所に出張っている奴らも呼び戻させろ!」

「は、はっ!」

 ライン・スカーレルの判断は間違ってはいなかったが、正解でもなかった。

 ミーナの艦隊は修理するための資材が底をついているため、この瞬間に熟練の海賊たちが乗っている艦隊を向かわせていたら、ミーナ達はかなりの苦戦を強いられていただろう。

 だが、彼の右腕であったディエゴの消失による焦りと艦隊の半分を彼女たちに消された恐怖心から、彼は冷静さを失わせていた。

 この判断が、彼を破滅へと導いていくのだった。


~~~~~~


「敵さん、攻めてきませんなぁ」

「そうっすねぇ、おかげで砲雷科は暇ですよ」

 メイルストロームを突破し、修理した俺達は一路、敵の本拠地である惑星ダゴンに向けて航行していた。

 なぜ、敵の本拠地がその惑星に存在している事がわかっているのか、というと、艦隊の修復を行っている間に無傷だった巡洋艦インテグラ以下数隻に索敵を行わせた結果だった。

 インテグラ曰く、レーダーに感知できた範囲で100隻ほどが惑星の防衛に当たっているらしい。その陣形はまるで俺達に見つけてくれ、と言っているようなものだ、という報告もあった。そのため、俺達は余裕を持って接近することができた。

『マスター。そろそろ敵の艦隊がレーダーの探知圏内に入ります』

 輪形陣を取っていた艦隊より、先行していたティアの艦隊が敵の本拠地に近づいた事を知らせてきた。

「わかった、ティア。ティアの艦隊は減速して、レーダーの探知圏内に入る頃に本隊と合流するようにしてくれ」

『わかりました、マスター』

 俺はそう言って、ティアとの通信を切った。

「敵さん、動きそうにありませんな」

「あぁ、まるで蝸牛のように引っ込んで出てこようとしない」

「何か理由があるんですか?艦長」

 サナダの言葉に俺が躊躇なく答えている所を、ウォルフから疑問の声が上がった。

「海賊にとって本拠地を作る、というのは一大プロジェクトな訳だ」

「と、言うと?」

「例を挙げるなら、10年で10億人の都市を作り上げるほど難しい。資材やら何やらをかき集め、一から街を作り上げるんだからな」

「でも、それは初めからやった場合だろう?」

「あぁ、そうだ。だからその昔、どこかの国が完成させた後、コストが似合わずに破棄する予定だった惑星を買い取った可能性がある。今となっては、それ知る術はないけどね」

 そう、海賊が本拠地を最初から作ろうとすると、途轍もない資源と時間が必要となる。途中で計画が第3者に漏れてしまった場合、妨害される可能性が高い。近隣諸国にとって海賊とは、はた迷惑な存在であるため、本拠地の設営の情報を掴んだら速攻で潰しにかかるだろう。

 だが今回の場合、メイルストロームという強力な自然現象のバリアがあったため、国は手が出せなかった。システム的に対メイルストローム用のシールドを簡単に搭載できた俺達ですら、この有様なのだから予算的に厳しい所は押して図らず。

 ましてや、俺達の艦隊に所属している駆逐艦より小さく、人も乗っている軍艦ではよほどの幸運でもない限り、あの嵐は突破できないだろう。そのため、多分裏道があるだろうからそこから帰ろうとするかね。また、あの心臓に悪い道には行きたくないでござるよ。

「艦長、そろそろ・・・」

「あいよ、サナダ。各艦に告ぐ・・・」

 そろそろ、俺達は敵の大群と会敵するため、気を引き締めるために軽く演説した後、作戦をやりやすくするために指示を出していった。


 1時間後。


「各艦隊、位置につきました!」

「作戦、開始!」

 敵の本陣に近づいた時に気づいた事だが、敵の艦隊(150隻)は惑星から宇宙に向かって幅広になっていく扇状に展開している事がわかった。その上、こちらから攻撃してもなかなか動かずにいるため、威力不足ながらセンチュリオンに出てもらう事にした。

『え?X軸(横方向)から攻撃してほしい?』

「あぁ、Y軸(縦方向)からだとこっちが押し負けるからな。Z軸(垂直方向)でもいいんだが、この方法だと中途半端な攻撃しかできないから頼むよ」

『わかった。で?本艦は単独行動を?』

「いや、アメリアとクルリ、それに駆逐幹を2~3隻付ける。こうすれば、ある程度誤魔化せるだろう」

『いいのか?』

「生憎、まだ誰も失いたくないんでね」

『わかった、任せろー、バリバリー』

「それだけはやめろ!」

 そんな訳で、それまでひとまとまりだった俺達の艦隊は敵の頭を押さえるT字戦法から撹乱させるために分散する方法に切り替えた。すると、敵は俺達が分散したら撃破できると思ったらしく、勝手な行動を取り始めた。

 やはり、所詮は海賊。トップはまともかもしれないが、末端は自分の手柄しか考えていないようだ。特に後方に控えていた新入りと思われる艦船は、真正面で行動している俺の艦隊目掛けて、まっすぐに直進してきた。

「ぐっ!?」

「船体後部にビーム直撃!右舷電磁フィールド、60%までエネルギーが溜まっています!」

「このままでは持たんぞ!艦長!」

「こっちもビームで狙い撃ちしてるけど、敵が多すぎて狙いきれないぜ!」

「もうすぐでセンチュリオンが位置につくはずだ!それまで持ち堪えろ!」

 確かに、かなりきついものがある。何しろ、150隻分の放火を5~6隻で持ち堪えているのだから随伴艦にダメージが出始めている。後10分もすれば、撃沈する艦が出てもおかしくはない。

『マスター!センチュリオン、位置につきました』

「エネルギーは!?」

『今、撃てる範囲でマックスだ!』

「よし!敵のど真ん中にぶち込んでやれ!」

『アイサー!』

 すると、俺達の視界の左側から何本かの光の線が見えて、敵艦隊の中心を貫いていった。その光線に巻き添えを食らった艦船は大爆発を起こし、その近くにいた艦を巻き込んでいった。それが連鎖的に起こっていき、それが収束する頃には大部分の敵艦は撃沈した。

「敵の艦隊、90%消失」

「残っている軍艦も撤退しているが、ティア達の艦隊を追撃しています」

「わかった。適当に食い荒らしたら、宇宙港に牽引するように伝えてくれ」

「わかりました」

 ふむ、少々あっさりしすぎているな。気のせいか?

「妙ですね」

「何がだ?」

 ウォルフが疑問を口にしたことで、ミッチャーがウォルフに質問した。

「敵があっさりとやられたのがです。あの混乱状態でも冷静な奴らで我々の前方を囲んで一斉射撃でもすれば撃沈すら可能でした。だが敵は、それすらしながった。だからあまりにおかしすぎる」

「てぇと・・・」

「・・・っ!敵艦隊、直上!数、30!」

 カレンの声と同時に、船体に衝撃が走る。

「やっぱりな!直衛艦隊は急速発進!」

「出払っている艦隊はすぐに呼び戻せ!空母アメリアは艦宙機を全機発艦させろ!」

「他の艦に搭載してある艦宙機も全部だ!」

「敵に対して、通常のT字戦法になるように打電しろ。それまでは何としてでも回避優先だ!」

「「「「了解!」」」」

 その後、何とか動いて回避し始めだが完全な不意打ちを食らったため、回避がままならずにダメージを受ける艦が出始めた。

「巡洋艦の3番艦、第4、第5砲塔、大破!」

「駆逐艦の20番艦、大破し、航行不能!」

「艦長、ここらで撤退したほうが・・・」

 サナダでさえ、撤退の判断をするが、俺はまだあきらめていなかった。

「そいつはならんぞ、サナダ」

「え?」

「ここに来た目的は何だ?」

「それは・・・」

「無論、依頼とお金のために来たがまだ使ってない兵器がいくつかあったろ?」

「・・・あっ」

「それらを使う許可をするから、とっとと付け替えて来てくれ」

「わかりました、艦長」

「あまり時間がないからのぅ、焦らず、急いで、確実に、だ!」

「はっ!」

 サナダが駆け足で艦橋からであると、艦橋クルーは冷ややかな目で俺を見てきた。

「艦長、彼らは何を作っていたんです?」

「マップ兵器、て所かなー。あれを一概に説明するのは面倒でね」

「で、威力は?」

「あの規模の艦隊なら一瞬で消滅するレベル?」

「「「やめさせろーー!!」」」

 あの規模、というのは30隻ほどの敵艦隊でそれこそ、その存在自体が消し炭になる威力である。そんな威力の兵器を限られた予算で開発するんだから、まさにマッドサイエンティスト。本当に敵に回したくない存在だ。まぁ、そんな兵器も今回のでお蔵入りさせるけどな。

 今回は海賊相手だから躊躇なく撃てるが、これが国軍相手ならやばい事になる。

 それこそ、何が始まるんです?、第三次大戦だ、みたいなことに発達しかねないからだ。

「まぁ、大丈夫大丈夫。威力は落として使うからね」

「安心できないから言ってるんですがねぇ。なぁ、ウォルフ」

「そうですね、ミッチャー。ありゃ、あの後で笑顔で拷問にかけるタイプや」

「そこの二人?後で、艦長室に来てくれるー?」

「お、俺たちは何も言ってないですよー、なぁ、ウォルフ」

「はは、そうですよー、艦長。気のせいですよ、気のせい」

「・・・まぁ、そういう事にしておこう。オッ!」

 実際問題、俺自身は拷問は苦手なんだよね。映画のSAWシリーズである程度耐性はあるけど、あれはあれで見てるだけでしんどいからな。やらない事にしよう。

 それはともかく、試作段階である兵器が接続したのを確認した。

『艦長、システムに接続しました』

「オッケー、サナダ。こっちでも確認している。すぐに使える?」

『いつでもどうぞ』

「んじゃ、ファイヤー!」

 俺がそう言うと、本来はミサイルを迎撃するためにある機関砲から幾つものビームが発射され、敵の砲塔や推進機を的確に狙った。その結果、敵の完全な奇襲だったのにも関わらず、戦局は逆転し、敵の頭領や幹部もろとも金づるになってしまった。

 その後、敵の残存艦隊を捕獲したティア達に盛大に叱られたのはいい思い出になるだろう。


~~~~~~


「くそぅ!艦は全部売られ、財宝も持っていかれ、いい商品だったものまで持っていかれるとは!何たる屈辱!」

 そう泣き叫んでいるのは、スカーレル海賊団の頭領であるライン・スカーレルであった。その頭領が泣き叫ぶのに意味があって、先の戦闘で損傷した俺達の艦隊の多額の修理費用を請求されたからである。

 先の戦闘で、彼らの艦隊が壊滅したのを見たスカーレル海賊団の陸戦隊はあっさりと降伏したため、大した地上戦もなく、彼らの本拠地を制圧。

 人身売買で攫われてその惑星にいたのは、惑星クルスクに居酒屋にいた看板娘達だけではなく、他の惑星からの人達も含めておよそ2000人だった。前々からやっていた事を考えると、それ以上の人数が売られて行ったのかもしれない。

 それはともかく、2000人もの人数を収容するのに俺だけでは不可能なため、ティアに頼んで改装してその人達を収容できるようにした。後でいい油と部品を渡す条件で改装してもらったが当初、人を乗せる事に反対していたティアがあっさり乗せたのに拍子抜けしてしまった。

 どうやら彼女も、徐々にではあるが考え方に変化があるようだ。


 一方、多額の修理費用を請求されたスカーレル海賊団は、現金は多少あったがそれで補填できる訳もなく、彼らが保有していた軍艦から宝石などの財宝を全部売りさばいてようやく補填できた。

 彼らはそこでホッと一息つけるかと思ったのも束の間、俺達が彼ら自身に逮捕状が出ているのを思い出したため、少マゼラン王国に強制送還する旨を伝えると、彼らは膝から崩れ落ちてしまった。


 俺達の艦隊を修理している間、少マゼラン王国のオムレス宙佐とのやり取りでスカーレル海賊団を壊滅させ、その主要人物たちを捕らえていることを伝えた。すると、報酬はたんまり出すから連れてきてくれ、と言われたので修理中の駆逐艦の何隻かを改装して分散して乗ってもらう事にした。

 また、人身売買のルートや方法、それを行うための裏道などが書いていったデータがあったため、オムレス宙佐に会った時に渡しておこう。


 そんな訳であっという間に1週間が経過したため、必要な物資や資材などを艦隊に搭載して出発する事にした。そりゃあもう、載せれるだけ載せたのでスカーレル海賊団の残党があそこに戻っても、大した物資は残ってないけどな。

 その事を艦橋クルーに伝えると、

「汚いな、さすが白鯨、汚い」

 と、ミッチャーに言われた。

「何だ、それ?」

「ん?あぁ、この言葉はあの海賊団の頭領が言っていたやつだぞ?」

「いや、そっちじゃなくて"白鯨”って何?」

 少なくとも現時点で俺達は無名の艦隊な訳だし、そんな大仰とした名前はなかったはずだ。

「俺もそれが気になって聞いてみたら、こう言ったぜ」

 彼らの中では"敵対したすべての敵を飲み込み、身ぐるみを剥ぐ魔物。これを白鯨と呼ぶ”という伝説があり、ライン・スカーレルはそれにちなんで、俺達の艦隊をそう呼んだ、と。

「白鯨。白鯨、ね」

 その名を聞いた瞬間、体の奥から込み上げてくるものがあった。怒り、とかではなく、歓喜の類だ。

「いいじゃない。その二つ名、ありがたく貰おうじゃねーか!」

 俺が嬉しそうに言うと、サナダが聞いてきた。

「いいのか?」

「俺は一向に構わん。みんなはどうだ?」

 聞かれた俺が逆に聞くと、みんなは異存はない、といった顔で頷いた。


 こうして俺達は、無名の艦隊から白鯨艦隊になり、名声を上げていくのであった。


~~~~~~


 一週間後 惑星ラドクリフ


「な、何だよ。この惨状は!?」

 白鯨艦隊と名乗ったミーナ達とスカーレル海賊団との戦闘から1週間が経ったその宙域に、1人の少年が乗った巡洋艦と数隻の駆逐艦がメイルストロームの方面から現れた。

「残骸の傷跡を見る限り、つい最近の戦闘だね」

 少年が乗った艦隊の副長である歴戦の美女は、その経験からそう断定した。

「間に合わなかった、って事か!?」

「とにかく、宇宙港に行くよ!」

 その少年は昔、ミーナ達がその強力な砲火を持って破壊した、アッカーマン艦隊の領地から出てきた新参者だ。その少年の手伝いをしている女性は、ある噂を聞いて危機感を持っていた。

 それは数十隻に及ぶ艦隊で、海賊狩りから貨物輸送、輸送船団護衛などを引き受ける無名の艦隊がいる。その艦隊は数ヶ月前に突然現れて、圧倒的な火力で海賊の身ぐるみを剥いで行くことから恐怖の艦隊などと呼ばれている。

 実際、ここに来るまでに殆どの海賊に出会わなかったが、それは彼らが通った後ではないか、と彼女は推測していた。他にも、リストラなどで宇宙に出るしか他になかった一流の技術者は、その艦隊にスカウトされているため、彼らの艦隊はいつも人材が不足していた。そのため、メイルストロームを越えるだけでも一苦労だった。

 そして彼女は思うのだった。


 このままでは、せっかく会えたパンドラの箱の適応者を殺してしまう事になりかねない、と。


~~~~~~


 惑星ボルフ


「今回も盛大にやらかしたな、君たちは!」

「いや~、すみませんねぇ、毎度毎度」

 今回の件で、少マゼラン王国から大幅の名声値の引き上げと多額の報奨金が確約されたため、オムレス宙佐からどやされてしまった。その隣でギルガメッシュが爆笑していて、クレムもニヤけている。

 オムレス宙佐がブチ切れているのも当然で、今まで少マゼラン王国にとって目の上のたんこぶであったスカーレル海賊団を大した損害も出さずに民間企業が壊滅させ、その頭領と幹部をまるごと拘束して持ってきてしまったからだ。

 こんなに簡単にやってくれるんだったら、正式に依頼を出せばよかった、と言った所か。

 まぁ、俺らとしてはさらわれた看板娘たちを助けるために行動したため、彼らの拘束は副産物程度の感覚だったがそれほど凄かったらしい。

 そのため、上から2145位だった名声値は1489位にまで引き上げられ、白鯨艦隊の名と共に艦隊に組み込める軍艦の数が大幅に増えた。

 名声値のランキング自体は敵と戦って勝利したり、人のために行動したりする時に増える謎のシステムなのだが、上位1500位以内に乗った事と白鯨の二つ名を持った事で、個人的な上位システムがそれを了承した事なのだろう。


 "個人的な上位システム”に関しては、情報が全く皆無なため、検索しようがない。何かしらの干渉でもあるのか、とも思ったが今の所そういったのはない。

 まぁ、それはともかく。何もしなくても軍艦の数が増える事は確実になった訳だが、艦隊全体のレベルも上がったため、全員ランクアップする事にした。

 オムレス宙佐に、スカーレル海賊団を引き渡して大金を銀行に振り込んでもらったのを確認した後、軽く世間話をして別れた。

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