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まいったね、こりゃ 1-6

 第6章 依頼


「しっかし、伝説級の宝物"パンドラの箱"が出てくるとはね」

「頼む、艦長!分析させてくれ!」

「ダメだ、つってんだろ!くそマッド!」

 さっきから、ギレンがやかましいから何度か蹴り飛ばしているが、その度に嬉々として起き上がってくる。もしかしたら、蹴り飛ばすのがいけないのかもしれない。しかし、サティよ、運が悪かったな。マッド達は、一度言い出したら止まらない変態たちだ。

「あの、それってそんなに凄い物なのかしら」

 サティは俺たちのやり取りになかなか入れずに、おずおずと聞いてきた。

「凄いってレベルじゃねーぞ。これを求めて、何人もの宇宙空間で生きる者達が力尽きていったか」

「その箱は、宇宙に起源を知る上で重要な手掛かりになる、と言われているんだ」

「それで他人には、見せない方がいいのかしら?」

 話の機微に敏感なサティは、そう尋ねた。

「俺でよかったな。じゃなかったら、普通に君から没収した上、宇宙にダストシュートしていた所だ」

「あれ?俺は?艦長、俺は?」

「おめーはだめだ。何しでかすかわからねーからな」

「・・・泣けるぜ」

 そう言って凹むギレンを放置して、俺は話を続ける。

「結論として、そいつはもうしばらく隠し持っておいた方がいいぞ」

「なぜ?」

「海賊、軍、ならず者、宇宙の起源を知りたがっている奴らはごまんといる。無論、わが艦隊にもな。そんな奴らと戦いを続ける日々なんて、俺がごめんだね」

「わかった、しばらく黙ってるわ」

「俺も黙っていよう。ギレン、いつまで凹んでんだい!」

「は、はい!」

「話は聞いていたな?」

「この話、黙ってます!」

「話していたら、その度にペナルティーだ!」

「サー!イエス、マム!」

 ふーむ、サティがこの話をしたって事は、あの箱に関して何かしらの情報を知りたがっていたのか?それだったら、俺達が軍の基地に行く前に話しておけば軍に依頼する事ができたはずだ。ここまでタイミングよく聞いてくるという事は、クラウディア姫たちの反乱を示唆している?

 ・・・だめだ、情報が足りなすぎる。判断すべき事案じゃないな。今度、オムレス中佐にあった時に依頼してみよう。何かしらに情報を引き出してくれるはずだ。

 そう俺が考えていると、艦橋から通話が来た。

『艦長、エルメッツァ軍のオムレス宙佐からの依頼メッセージが届いています』

「わかった、すぐに行く」

 俺は艦長室にいる二人に、それぞれの部署に戻るように伝えると艦橋に向かった。


~~~~~~


 一方、メーリンの部屋。

「どう?“彼女”に関して、なにか分かった?」

 その部屋には、ミーナが気にしていたクラウディアもいた。

「あぁ、信じられない事がわかったぞ」

「あら、どんな事?」

 信じられない事、が気になったのか、クラウディアは肉食獣のような笑みを浮かべた。

「この艦隊の艦長は、人間じゃない」

「人間じゃない?」

 しかし、クラウディアの予想以上の事が出てきて、きょとんとした顔になった。

「あぁ、少なくとも人間の常識からは逸脱したような体をしている、と言った方がいいな」

「どういう事?」

 今度は話に付いていけず、観念したような顔になる。

「あぁ、分かりやすく言うと機械仕掛けの体、と言う事になる」

「ロボット、て事?」

「概念的にはそうなるが、実際には違う」

「じゃあ、どういう事よ、焦らさないで頂戴」

「この艦のコアたる存在、いわば軍艦搭載型の自律AIそのものが彼女、という事だ」

「本当なの?」

「あぁ、本当だ」

 その事を聞くと、クラウディアの顔は徐々に険しくなっていく。

「根拠は何かしら」

「根拠は3つ。1つ目は、用途不明な演算能力の数%を常に使っている事。2つ目、この艦のAIと彼女の思考パターンが全く同じな事。3つ目、少なくとも艦橋クルーはそれを知っていながらそれが当然の様に彼女と接している事」

「3つ目はともかく、初めの2つは確かなの?」

「初めはよく似ているんじゃないのか?とか、演算能力の誤作動なのか?とか考えたが、そうじゃないようだ」

「・・・」

「どうする?計画を変更するか?」

 彼女たちの予想を斜め上を行ったのか、彼女たちの間に迷いが出てきた。何しろ、この艦隊を指揮しているミーナが人間ではなくて、艦そのものだったのだ。そのため、計画を大幅に変更するしかない。だが、彼女たちは諦めた訳ではない。

 彼女たちの悲願達成のためには、手段は選んではいられないのだ。そのためにも、今後どうするかと検討し直していった。


~~~~~~


「という事で、仕事の仲介人を探しに行こうと思う」

「「「「「は?」」」」」

 艦橋クルーの声がハモった。それも当然か。

 だって、オムレス宙佐からのメールを読んだ直後にこう宣言したのだから驚くのも仕方ない事だ。

「艦長、オムレスの野郎はなんてメールしてきたんだ?」

「ん?あぁ、それはな・・・」

 ミッチャーが質問してきたので、原文を読んだ。


『親愛なる貴艦隊へ


  某海賊団の動向と本拠地を探るべく、指定された座標で仲介人と会ってくれ


  幸運を祈る                                オムレス』


「仲介人って言うと・・・」

「おそらくスパイの事だろう」

「指定されている座標は、惑星ボルブ」

「ザルスを越えて行くのが最短ルートになるぜ」

 オムレス宙佐曰く、惑星ボルブでスパイに会って情報をもらってくれ、という事らしい。スパイとの合言葉も添付されている事から推測するに、正規の軍人がそこら辺でうろちょろしているのも危ない、って事だろう。何しろその惑星、無法地帯ですし。敵のスパイもいて当然、という事だろうな

「しっかし、タダ働きは勘弁してほしいぜ?」

「それについてはぬかりない、それ相応の報酬は引き出すつもりさ」

「ならいいんだけどね~」

 ミッチャーの言い分もわかる。民間会社などは政府の力に屈しやすいし、対抗できるだけの力も持っていない。仕事が成功しても、2足3文のはした金をもらう事もあり得るから困る。ただ、だからと言ってせっかく持てた政府とのパイプは捨てたくはない。

 そのため、幾つかのやり取りで文字通り、それ相応の報酬を確約してから依頼を引き受ける事にした。こちらが要求したのは、パンドラの箱に関する情報と一定の金額である。

 その内容にオムレス宙佐は幾分渋っていたが、こちらが他を当たってくれ、とメールをしたら仕方なしに要求を飲んでくれた。なにぶん、こっちは1500人分の命と輸送用の貨物が30万トン分、そして40隻の艦が俺の両肩に掛かっているんだから慎重にもなるぜ。

 多分、渋っている理由は関係各所に提出する書類の量なのだろう。何しろ、伝説級の宝物に関する情報なのだから、国の機密中の機密。それを引っ張り出すだけでも、相当の労力が必要とするだろう。しかし、俺達にそんな事は知った事ではない。こっちも部下を危険地帯に連れて行くのだから、それ相応の対価を払わないと困るってもんだ。

「という事で、惑星ボルフに向けて出発~」

「惑星ボルフに向かいます。面舵40度」

「面舵40度、ヨーソロー」

「ポイントÇで第2巡航速度に入ります」

 そんな訳で、俺達は惑星ボルフに向かって航行を初めた。


~~~~~~


「何!ディエゴが捕まっただと!?」

「はっ!内通者によると、確かに捕まった、と報告があります」

「ぬぅ~、ディエゴにはかなり強力な艦隊を渡していたはずだが・・・倒しては相手はどこの誰だ!まさかエルメッツァ軍ではあるまいな!」

「はっ!”例の艦隊”であります!」

「なん・・・だと・・・?それは本当か!」

「確かであります!」

 この男、スカーレル海賊団3代目頭領、ライン・スカーレルが驚くのも無理はない。"例の艦隊”というのはミーナ率いる艦隊のことで、海賊たちでもっぱら噂になっている艦隊である。

 曰く、ビームを命中させても電磁フィールドに阻害され、それを貫通しても船体の装甲が固く、ダメージを与えられない、とか、恐ろしく命中精度が高く、一発で艦の攻撃力と機動力を奪ってから全ての身ぐるみを剥ぐ悪魔だ、とか、挙句の果てには軍隊アリのように一つの獲物に集団で寄ってたかってボコボコにする無差別殺戮集団だ、と言われている。

 そんな艦隊が数百隻で、少マゼラン王国でも有数のスカーレル海賊団の本拠地に襲いかかれば半日で陥落するだろう。ただ、彼らの地理的優位性が失われない限り、本拠地は落とせない。

 なぜなら、裏道を知っていないとろくに戦えないからだ。だからこそ、まだ余裕があると言えよう。

「くくく、序列3位のディエゴを倒せても”メイルストローム"が貴様らを待っているぞ」

 ライン・スカーレルは黒い笑みを浮かべつつ、失った分の戦力の再建に取り掛かった。


~~~~~~


 惑星ボルフ 


 俺達が向かったのは、ボルフの首都にある一つの酒場だった。

「ここの酒場に”人"がいるんだったな」

「ああ、その人から”荷物"を受け取ったら来るように言われている」

「しかし、けばい町並みですね。私はあまり好きになれません」

 俺が砲雷長のミッチャーを一緒に連れ立ったのは、保安局長のチハだった。

「あー、わかるぞチハ。俺もこういった町並みは好きじゃねぇ」

「え?」

「こういった派手な町並みが続いている、て事はそれだけ犯罪率も高いって訳だ」

「ではなぜ、危険地帯であるここで落ち合う事になったんでしょう?」

「そりゃ、それだけ目立たねぇようにだろ」

「どうしてです?」

 チハは、犯罪率の事と今回の依頼についてわかっていないように思えたので、ミッチャーはわかりやすく説明してくれた。無法地帯、という事はそれだけ出自の分からない人間がたむろしている事が多く、多少変な格好をしても奇異な目では見られない。

 寧ろ、犯罪者などがそういった格好で追っ手をくらます場合もあるため、公共機関も敢えて見逃している面もある。そのための町並みと言える。

「なるほど。それで他のクルーを宇宙港から一歩も出さず、私達も安っぽい服装できている訳ですね」

「あぁ、そういう事だ」

「二人共、雑談はそろそろ終わりにしようぜ。目的地に着いたからよ」

 チハが納得した所で、指定された酒場に着いた。そして、特に躊躇せずに入った。こういうのは、違和感なく行動するのがベストだぜ。

「さてと、肝心の野郎はどこに・・・」

「いたな」

「いましたね」

 ミッチャーが言い終わる前に、俺達は見つけてしまった。だってその人、如何にも軍人です、って格好しているのだもの。こんな無法地帯で軍服って、流石にないわー。

 あっ、でも仲介人だから目立たないと困るんだったな。でも、無表情でワインを傾けるとか、どこの伝説のスナイパーだよ。あれか、そいつの秘密を知りすぎたら撃ち殺されるのか?まぁいいや。

「今日はワリカンだから適当に飲んでくれ」

「ゑ・・・」

「わかりました。ミッチャーさん、行きましょう」

「いやでも、手持ちが・・・」

 残念だったな、給料日は明日だから手持ちのお金が殆ど無いんだっけか。安心しろ、あんまり飲まないから。

「しけた顔でどうしたんですか?ボトル3本、奢りますよ」

 俺がそいつの向かいの席に座ってそう言うと、そいつは手のひらサイズのケースを渡してきた。どうやら中身はICチップみたいだ。

 俺はそれを受け取ると、そいつは特に目を合わせる素振りもなく、会計を済ませて出ていってしまった。

(特に会話らしい会話もなく、行ってしまった。スパイ系のやり取りはそういうものだといえば、そうだがあいつは少々違ったな)

 通常、人というものはどんなに訓練しても微細な変化が現れる。しかし、あいつからはそういった変化は見られなかった。

 そう、まるで操り人形みたいに。

 ま、今のあいつを追いかけても操っている方も困りものだし、俺達にも何の利益もない。だから適当に飲んでから行きますか。

 俺はそう決めると、ミッチャー達がいるテーブルに向かった。


~~~~~~


「いや~、今回ほど報酬を用意するのに手間取ったのはなかったぞ」

 ラルフのエルメッツァ軍基地に到着し、今回は1人でオムレス宙佐に会った途端、彼にそう言われてしまった。

「民間人からすれば、あそこは危険地帯だからねぇ。そんぐらいは要求しないと」

「ふっ、言ってくれる」

 彼の発言は、軽い苦情みたいなものだからこっちもそのぐらいのノリで言い返した。

「それで、報酬の件だが・・・」

「あぁ、金額の方は君たちの口座に振り込んどいたよ。情報の方はもう1ヶ月程、待ってくれ」

「なぜ?」

「A級機密の情報だぞ?そう簡単に出してくれるものか」

「そういうものですかね?」

「そういうものだ」

 そりゃ、そうか。情報局などの極秘情報は、そうそう出せるものじゃない。その情報が世の中に出てしまうと、その国の計画や方針が失敗し、大損害が出てしまう可能性がある。そのため、そういった情報はそれ相応の理由がないと引き出す事すらできない。

 だから、彼は関係各所に提出する書類の矛盾がないか、精査に精査を重ねて提出したのだろう。

「じゃあ、忙しそうなオムレス宙佐のために退散するとし・・・」

「よ~、オムレス。久しぶり~」

 例のICチップを彼に渡した所で退散しようとしたら、軽いノリの声と共にドアが開いて男が二人、入ってきた。

「なんだよ、誰かと話して・・・俺と付き合わないか?」

「8000%、無理です」

 全く、出会って1秒でデートに誘われたぜ。そりゃ、今の俺の容姿は美人の部類に入るんだろうけど、出会って間もない奴と付き合うほど安くはないぜ。

 そんな訳ですぐに断ると、誘った男は大層驚いたようで、

「俺の何が悪かったんだろうか・・・」

 なんてボヤついていた。今の誘い文句はないぜ、あんちゃん。

 今のやり取りをした後で、コホンと咳払いが聞こえた。

「ギル!お前はなんで、毎回毎回ノック無しで入ってくる!」

「だって、こんなむさ苦しい所に長くいたくね~からよ」

「だからって、彼女に失礼じゃないか!」

「いや、だって・・・」

 あ、やばい。これは話が長くなるパターンや。今、俺にできるのは・・・。


  無言で立ち去る。

 ⇒気にしていない事を伝える。

  ギルという人と一緒に入ってきた人に声をかける。


「別に気にしてませんよ~」

 俺は、説教をし始めようとしているオムレス宙佐にそう言った。

「いや、しかし・・・!」

「はっはっはっ、おもしれー姉ちゃんだ。俺はギルガメッシュ・クラウン。階級はこの堅物と同じ2等宙佐で、愛称はギル。姉ちゃんもそう呼んでくれるとありがたい」

「私は艦隊を率いているミーナさ。よろしく、ギル宙佐」

「よろしく、ミーナ艦長。こっちはクレム宙佐」

「クレム・ヤマナカだ。階級は1等宙佐」

「よろしく、クレム宙佐」

「ふっ・・・」

 ギルガメッシュは見た感じ、なかなかの好青年だな。喋り方と言い、雰囲気と言い、見た目もそれらしい格好をしている。そしてクレムさんは、物静かな初老の男性だ。こっちも、長く蓄えた髭がなかなかいい雰囲気を出している。

 その後、ギルガメッシュはオムレスの説教を10分ほど受けた後、軽く雑談をして俺は部屋を出た。


「良かったのかい?あのまま、行かせてよ」

「あぁ、まだ彼女たちを巻き込む訳にはいかない」

 ミーナが部屋を出ていった後、ギルガメッシュは雰囲気を変えた。変えたというよりも、変わった、というべきだろうか。さっきまでの、ミーナと話していたのは演技としての彼であり、本来は実力主義の旨とする武闘派である。

 そんな武闘派の彼は、さっきの数分間でミーナの実力というものをある程度把握していた。その彼の評価は、何としてでも彼女の艦隊をエルメッツァ軍に引き入れるべきだ、と主張しているのだ。

「それに、例えどんなにいい報酬を与えても、彼女が了承しても、彼女の部下が納得しないだろう」

「そうじゃのぅ。彼女自身は天真爛漫、無垢な子供のようだがそれ故、先入観がない。だから、部下の希望と自分の信念のすり合わせで動いておる。それが一致しない限り、この計画に乗ってこんじゃろう」

 生粋の軍人であるオムレスならともかく、参謀としての気質が強く、それでいながら寡黙と貫くクレムにギルガメッシュは驚きを隠せなかった。

「クレムの爺さんがそこまで言うなんてな。それほど凄かったのかい?」

「今の時代に、あんな素質を持つ人間がいるとは珍しい」

 クレムはそうつぶやくと、昔を懐かしむような目をしていた。


~~~~~~


「え?盛大な宴会がしたい?」

 俺が艦橋に戻り、出港準備が終わりかけているのを確認した時に、ミッチャー達がその話を持ちかけて来た。

「あぁ、何でもディエゴ戦で大活躍した奴らがいてな。そいつらを幹部にした祝いとしてやりたいそうだ」

「あ、なるほどね」

 事実、先のディエゴとの戦いで大規模な損害を出す筈だったのが、それを最小の損害で勝利したのはそいつらが懸命に働いた結果だろう。そのため、艦橋クルーに離れないが現場指揮官や、現場指揮官のサポートができるような立場にしよう、という事だろう。

「えぇっと、確か30人ぐらいだったけ?」

「正確には32人です」

「わかった。昇任祝いは必ずやるからとっとと作業を終わらせちまいな!」

「「「「「サー!イエス・マム!」」」」」」

 俺がそう言うと、メンバーは張り切って作業を終わらせて出港した。

 とは言え、1500人もの人数で宴会するには相当の規模の宴会場が必要な訳で、それがある場所はそう多くない。それにその分の費用を経費で賄うとなると、かなりの額になる訳で、そうなると会計局長のヴァレリと激しいやり取りが必要になる。

 それを考えると、ひどく頭が痛くなってきた。


~~~~~~


 惑星 クルスク


「え~、新人の昇任を祝って~」

「「「「「「「「「「かんぱ~い!!」」」」」」」」」」

 ここは、メイルストロームの近くにある地方惑星クルスクの居酒屋だ。都会、この世界でも都会は人口が多く、交通の便が発達している所を言い、地方にあるクルスクは交通量がそれほど多くないため、正直言って田舎と言ってもおかしくないほど人口が少なかった。

 しかし、田舎と言えど俺のいた地球レベルでの発展はしているため、比較的安い値段で1200人分の予約が取れた。それでも、普通の宴会よりも数倍の予算が必要になったし、予約を受ける側もかなり驚いていた。

 補足としてあげておくが、乗員は全部で1500人なのに宴会に参加する人数が減っているのは、宴会に乗り気ではないメンバーがちらほらといた事。

 それに、何かあった時は最低人数で動かさないといけないため、ある程度残ってもらったのだ。無論、参加しなかったメンバーには後で差し入れ入れるつもりだ。

 それにしても、移動するのも大変だ。現在、俺の艦隊は1500人で構成されていて、組織しているのは11の部署。各部署は大体、120~130人ほど。多い所では160人ほどで、少ない所でも40人でも構成されているため、移動して挨拶回りでもすると、いくら時間があっても足りない。

 そのため、昇任したクルーを中心に回っていこうと思う。


 まずは砲雷科。ここはミッチャーとクラウディアが中心になって騒いでいるため、昇進したクルーが脇に追いやられている。何やってるし。

「今回、頑張ったんだってな」

「あ、艦長」

 俺は脇に追いやられたクルーの下に行って、声をかける。

「まー、昇進したってゴールじゃないから、そこは間違えないように」

「あ、はい」

「とは言え、今は無礼講だから好きなだけ飲んでいってくれ」

「わかりました」

「あっ、艦長~」

「聞いてくれよぉ!」

 俺は長居すると堅苦しくなるため、そこを離れようとするとミッチャー達に捕まった。

「こいつら一人前に、酒が飲めねぇって言ってるんだぜ~?」

「艦長からも一言、言ってやってくださいよぉ」

 と、ミッチャーとクラウディアがまくし立てる。

「そうなのか?って酒臭っ!どんだけ飲んでるんだよ!」

「そんなに飲んでねぇよな?クラウディア?」

「そうさぁ。こんぐらい序の口さ!」

 と言いつつも、すでに二人共へべれけ状態。てか、クラウディアって船務科配置じゃなかったけ?そう思っていたら、メーリンが来た。

「すまん、艦長。後で私から言っておく」

「そうか。それほどきつくなくていいから、言っておいてくれるか?」

「それでやめるような弾じゃないがな。まぁ、言っておこう」

「あぁ、頼むよ」

 メーリンは諦めたような笑顔でボヤついていたが、俺よりは遥かにちゃんと言ってくれるだろう。

 そんな訳で、その場はメーリン達に任せて次に行こう。


 次は、船務科と航海科がメインの所に来たぜ。

 ここは至って普通の宴会で、昇進したクルーがメインになって騒いでいる。そんな中でも、あまり馴染めないクルーがいるようで、そいつに声をかける。

「よう」

「あ、艦長・・・」

 そう、馴染んでいないのはクラウディアの妹のリンだ。見た所、どう接していいかわからずじまい、と言った所か。

「こんな時にな~にしょぼくれてるの?」

「いや、しょぼくてなんか・・・」

「わかってるよ。なかなか、会話の輪の中に入れないんだろ?」

「・・・っ」

 図星だったようだ。だから俺は、軽い口調で彼女に言った。

「最初は聞くだけでもいいから、入ってみたらいいんじゃないかな?」

「え?」

「寡黙なのが正しい、とは思わないけど、会話に入んないとみんなも気付かないよ?」

「そうは言っても・・・」

 どうやって入っていいかわからない。そういった顔をした。

 確かにリン達はキュウビ族で、他の場所では歓迎されなかったかもしれない。だが、ここではそういった空気は俺の艦隊では今の所感じられない。だから俺は言葉を続ける。

「なぁに、入ってしまったら後は簡単だぞ?」

「・・・」

「ふむ、ちょうどいい所に・・・」

 俺が目を向けると、この宴会の中心となるグループがいた。

「ちょっといいか?」

「あ、艦長」

「どうしたんです?こんな所に来て」

 俺が声を掛けたのは、カレンとウォルフの2大艦橋クルーが昇進したクルーを含めて色んなメンバーとワイワイ話していたグループ。話し上手なウォルフとそれをフォローするカレンが色々と喋り、それをクルー達が頷いたり、疑問に思った事を口にしたりしていた。

 そんなグループならある程度、話の中に入れるだろうと、考えた結果だ。

「リンが恥ずかしがって、グループに入れないから入れてやってくれ」

「はいよ、リン?こっちにおいで~」

「ちょうど、一人分の席は空いている」

「え?」

 いきなり、二人に誘わたから戸惑いながら俺を見た。

「二人ならある程度察してくれるから、肩の力を抜いて行ってくるといい」

「え、でも・・・」

「なぁに、物は試しだ。行ってきな」

 俺がそう言うと、彼女は意を決したかのように腹を括った。

「わかったわ、行ってくる」

「おう、行ってらっしゃい」

 俺にそう言うと、リンはグループに入っていった。


 そうして夜は更けていって、一通り落ち着た所でお開きにした。お開き、と言っても飲み足りないメンバーは2次会に行き、それ以外は艦に帰っていった。


~~~~~~


 次の日。


「た、大変だ~!」

 その声で宇宙港にいた二日酔いのクルー達と、ケロリとしている俺は居酒屋の店長に視線を向ける。

「う、うちの看板娘達が帰ってきていないんだ!」

「それって、ただ単に道に迷っている、とかじゃなくて?」

「生身の人間が、宇宙空間で道に迷うかね!?」

 それを聞いた俺達は、事態の大きさを察して慌ただしくなる。


「今回、俺達が受けた依頼内容はこうだ」

 俺は、艦橋クルーや主要なメンバーを作戦室に集合させて依頼内容を説明する。

「失踪した居酒屋の看板娘達は人攫いに会い、拘束されてある方向に向かっている。その方向とは・・・」

「メイルストローム・・・」

 そう。人攫い達はメイルストロームを越え、惑星ラドクリフに向かっていた。

 メイルストロームとは本来、海で潮の流れが激しい所を指す。それが地球の数十倍の質量を持つ恒星が絶妙な位置に配置されているために、宇宙空間で巨大な隕石の流れが起きている。その幅は少なくとも数百km以上あり、長さは長いもので数千万kmにも及ぶ。

「そう、通常ならこの流れに入ることすら憚れるのだが彼らはできている」

「なんか仕掛けがありそうだな」

「あぁ、それを含めてサナダから話があるそうだ」

 ギレンがにやりと笑いながら言うと、俺はマッドサイエンティストのサナダに話を振る。

 話を振られたサナダは説明をしたが長いため、ここではその要点だけを説明しよう。


 巨大な隕石の流れであるメイルストロームを突破するには、プロテクターと呼ばれる特殊な電磁フィールドが必要である事。それはこれまで、各地の惑星を転々と動き回っている間にその設計図をすでに買っていた事。そしてそれは、この艦隊では標準装備である電磁フィールドによく似たシステムであるため、その電磁フィールドと組み合わせる段階まで来ている事。組み合わせた場合、対艦ミサイル等の物理的なダメージに対しても有効に対処できる事などである。


「で?予算は?」

 サナダが一通り話を終えた所で、ヴァレリが質問した。唯でさえ、今回の宴会で予算を色んな所で集めてきて大変だっていうのに、これ以上書類を増やされたらたまらない、と言うことだろう。それに対して、サナダは冷静に答える。

「研究ポイントと併用すれば、通常の約10分の1以下で済みます」

 そう、俺が生まれた当時や乗員の安全性の向上に邁進していた時期と比べて、今は基本的に安定しているために研究ポイントが大分溜まっている。

 武装や装甲の強化をするにしても、現状では向かう所敵なし、と言った所である。そのため、武装などではなく、それをコントロールするシステムのバージョンアップを繰り返してきていて、どのコントロール室も最大のレベルⅤまで上げている。

 その結果、システムをちょっといじれば付加能力を簡単に付けられるため、ここまで少ない予算でも大丈夫なのだ。

「わかった。主計局は、取り付け作業に関して異存はない」

 説明を聞いたヴァレリは、ホッとしたように賛成してくれた。

「では、他に質問は?」

 それを見た俺は、他の主要なメンバーに話を振る。すると、船務科の方から手が挙がる。

「敵の装備や数なんかを聞きたいんだが、いいか?」

 手を挙げたのは、リンだった。雰囲気的に一皮むけた感じだな。

「敵の数はおよそ500。装備に関しては、主力となる軍艦は先のディエゴ戦とほぼ同じと推測するが、それ以上の装備を持つ軍艦がいる可能性は極めて高い」

 その質問に対して、俺は事実を告げる。そうすると、作戦室に集まっていたクルー達はざわつき始める。

 それも当然で、その内容はこの作戦会議前に集まっていた艦橋クルー達と、打ち合わせをした結果をそのまま伝えたのだから。だがそれと同時に、艦橋クルー達は楽観的だった。

 何故ならその500隻もの敵艦の内、300隻以上も戦闘で拿捕して中古艦として売却済みなんだから。その内の半分以上は主力艦だという結論が上がっているため、だいぶ戦力がダウンしているはずだ。伊達に3ヶ月もこの宙域にいる訳でもないしね。

 それでも2線級とは言え、200隻近い軍艦はある訳で気楽にとまでは行かないだろう。

 そういった意味で準備を万全にするように、と各部署に伝えて出港準備に取り掛かった。

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