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まいったね、こりゃ 1-4


第4章 転職


「うん?」

 ワープゲート到着まで後1日の距離になった所で、俺は違和感を感じた。

「どうしました?艦長」

「医務室が騒がしいな」

「医務室というと、ケガ人は今のところは出ていませんが?」

「ケガ人は、な。サド先生!」

 俺が艦内電話で呼び出すと、医務室はバタバタと慌てた雰囲気に包まれていた。

「おぉ!艦長、ちょうどよかった!」

「医務室の方が騒がしいんですが、どうしました?」

『目覚めたキュウビ族の奴らが、リーダーに会わせろと言い始めたんじゃ。わしは今は無理じゃというと、とにかく会わせろといって暴れ始めたんじゃ。今、大部屋に閉じ込めておるが、手が負えんから助けておくれー!』

 その通信を聞く限り、かなり暴れているようだ。実際、大部屋にある固定カメラでみてみると、部屋がかなりぐしゃぐしゃだ。後で彼女らが暴れて壊れたものの値段は、彼女たちから請求するとして今は彼女たちを押さえ込むの方が先決だな。

 それと、保安局のメンバーも集めないとな。今は、人数が少ないからまだいいとして今後、数千人数万人単位での人数を乗せることが確定的に明らかなため、今の内に作っておくに越したことはない。といっても、保安局の建物自体は搭載しているため、人を集めてくればいいんだがな。

「サナダ、来てくれ!しばらく席を外すが、指揮は執れるから安心してな」

「アイサー!」

「わかりました」

「サド先生、今行きますんでもう少し踏ん張って欲しい」

『わかったー、待っておるぞー!』

 そう言って、サナダを連れて医務室へと急いで向かう。

「艦長、ピストルでも持って来ましょうか」

「いらん、相手は病み上がりの病人だ。そこに銃なんて持っていったら、警戒されるだけだって」

 そして、俺達が医務室前に着くと件の病室の周辺には人集りができていて、大部屋は静かになっている。しかし、トアが破られるのを警戒しているのか、すでに何人かはカービン型のレーザーアサルトライフルを持ち出していた。

「はーい、散った散ったー。この程度の騒ぎにこんな大人数はいらないでしょー」

 俺はそう言いながら、手を叩いた。すると人集りは割れ、何人かは興味を失ったかのように持ち場に戻っていった。

「サド先生、状況は?」

「数分前から随分と静かになった。何を企んでいるかわからんが、艦長は近づかんほうが良かろうに」

「な~に、相手は俺をご指名だ。無下にはできんやろ」

「それもそうじゃが・・・」

「という事で正面突破ー」

「「「「ちょっ!?」」」」

 みんなは驚いているが、これ以外に今は作戦がないんだから仕方ないだろう。時間がかかると、変にいじられるから好きじゃないんだよねー、こういう場合。

 そんな訳で盛大にドアを開けた。すると、いきなりドアが開いたために驚いた女性が7人。

 ふむ、前回来た時は酸素マスクが付いてあったから顔がわからなかったが、なかなかの美人さんじゃねーか。グラビアアイドルです、て言ってもおかしくないぐらいじゃん。

 それはともあれ。


「俺が艦長のミーナです。あんたらの中で誰がリーダーかね?」

 いきなり艦長のお出ましとは思っていなかったため、しばらく彼女たちで顔を見合わせていた。そしておもむろに、一人の長身の女性が名乗りでた

「私の名はクラウディア、メンバーのリーダーでカルナバ王国の第一王女よ」

 なんとお姫様だったのか!まぁ、雰囲気で何となく察していたが、まさかお姫様だとは予想外だった。

「クラウディア姫、なぜあなた方があの宙域にいたのか、という理由となぜ病室で暴れたのか、理由を聞きたい」

「・・・。そういうのは普通、応接室とかで話すもんじゃないの?」

「おっと失敬。では、応接室に案内します。しかし、条件があります」

「条件?」

「ええ。それは貴方ともう一人だけ、というものです」

「なっ!?」

 驚いたのはクラウディア姫ではなく、後ろに控えていたメンバーの一人だった。声のした方に目を向けると、クラウディア姫とよく似た顔立ちの10代半ばの少女。おそらく、姉妹か親戚なのだろう。その少女ともう一人が、こちらの条件に反対するかのように声を荒げた。

「姉様!行くなんて無謀過ぎます!行かないでください!」

「そうよ!そうやって一人ひとりバラバラにして、薄い本みたいなことをさんざんされた挙句、用済みになったら宇宙空間にダスト・シュートするのよ!」

 「くっ、殺せ!」みたいなことを言ってるのかな?てかもう一人の方、明らかに体つきが小学6年生ぐらいじゃねーかよ。なんで知ってるし。誰かにそういうことを誑かされたのかな?

「・・・いいわ、飲みましょう。メーリン」

「・・・わかった」

「姉様!?」

「お姉ちゃん!?」

 ふむ、話の流れから察するに彼女たちは3姉妹、という事かな。今までに散々ひどい目に遭ってきたんだろうが、こっちも情けをかける余裕はないんでな。お前さん方のお姉さんは借りていくよ。

「では、こちらです」

 そう言って俺はサナダを、クラウディア姫はメーリンを連れて応接室に向かった。


「はい、どうぞ」

 そう言って、俺が出したのはコーヒーだった。

「口に合うかはわかりませんが、これが今、うちで出せる最上のものです」

 元は、というと領主戦後、損傷した駆逐艦の修理で立ち寄った宇宙港で接客時に必要なものとして、経費で購入したものだった。あのくそ領主、かなりけちけちした奴だったらしいが、宇宙港で働いている自立型AIはどの組織にも属さない中立の立場を貫いているため、宇宙で必要なものは基本はそろっていた。

 その中でも比較的いいものを購入したため、味としては悪くないはずだ。コーヒー嫌いの俺でも、美味しいと思わざる負えなかったからな。

「ありがとう。・・・ふむ、悪くないわね」

「かなりいいものを使っているな。入れ方もしっかりしている」

「そいつはどーも」

 ふっふっふっ、応接室に案内している間にコーヒーの淹れ方の基礎知識やら雑学やらを学習しておいてよかったぜ。昔の俺だったらとんでもない失態を犯していたが、高速処理ができるようになった現在の俺のおかげだな。

 え?俺じゃなくて、AIのおかげだろって?細かいことはいいじゃねーか。

 それはともかく。

「それではクラウディア姫。先ほどの我々の疑問ですが・・・」

「あー、それはね・・・」

 やや、困った顔をしながら話してくれた。

 曰く、元々は彼女たちを筆頭に大規模の難民のして移動し続けていたが、彼女たちの能力を求めた国が艦隊を率いて、彼女たちの船団に強襲を仕掛けた。その船団にはまともな装備がなかったため、各艦で散り散りに逃げるしかなく、彼女たちは偶然、ワープゲートを使ってあの領主が支配していた宙域に入ってしまった。

 一安心したのもつかの間、そこでも追われる羽目になって、その宙域の惑星に墜落してしまった。墜落した後、必死に隠れようとしたが、結局捕まってしまい、クラウディア姫の下の妹を捕虜にされ、強制労働に従事させられていた。

 その時に、”ちゃんと働けば全員、宇宙に戻してやる”と言われたらしいが、なかなか戻してもらえないため、彼女たちだけで武装蜂起。何とか下の妹を救出して、哨戒艇の奪取に成功して逃げ出したが、しばらくして巨大なビームが船体にかすったため、行動不能になっていた、という事らしい。

 補足しておくが、経済的に貧しい地域では政府やそれに該当する組織に不満を持っている人々が多数いるのが普通である。しかし、あの国ではフィレンツェ・アッカーマンの信者が大多数のため、民衆を扇動しようにもついてこないので、仕方なく彼女たちだけで反乱を起こした経緯がある。

 それを踏まえた上で長々と説明した後、彼女たちが一息ついたところで疑問に思っていたことを口にする。

「一つ、聞いていいですかね」

「なに?」

「これからどうするんです?」

「「・・・」」

 そう、さっきの病室で暴れている所をモニターで観察していると、何かしらの目的で暴れているようにも感じられた。それに俺が彼女たちに向けた質問の内、ニつ目の質問に対しての答えをまだ受け取っていない。それを聞かない限り、今後の対策は立てられない。

 しばらくすると、クラウディア姫ではなく、もう一人の”メーリン”と呼ばれた人が喋りだした。

「私達は艦を手に入れ、世界中に散って行った同胞を集め、私達の国をもう一度作り直す」

「ほぉ・・・」

「そのため、こんな所で立ち止まっている場合ではないんだ」

 二人の目には、それが唯一の希望であると決意したように見れる。

「しかし、私達が乗っ取った哨戒艇は大破してしまった」

「それは・・・」

「だから頼む!この間に乗せてもらえないだろうか!」

「!?」

「ふぁ!?」

 その人のいきなりの申し出にお姫様が驚いた顔をし、俺は素っ頓狂な声を出してしまった。

「この通りだ!頼む!」

 うわ~、思いっきり頭下げてるよ。断りにくいなぁ。

「・・・私からもお願い」

 しばらく呆然としていたクラウディア姫も、言いにくそうだが、頭を下げながらこう続けた。

「メーリンは人前では決して頭を下げないの。だからお願いします」

 それに対して俺は簡単に、はいそうですか、とは言えなかった。なぜなら、この艦に載っている200名の命を預かっている身だからだ。だから、彼女たちを試すつもりでこう聞いた。

「あなた方は、自分たちが世間一般でどう言われているのか、知ってるんですか」

「「・・・」」

「プライドが高く、選民意識が強い上、他の種族を劣等種族と見なしている。俺はそういう噂をよく耳にした。そんな奴らを他種族が乗っている艦に乗せたらどうなるか、考える間もなくわかると思いますが?」

「・・・確かにそうです。以前の私達は、そう思っていました」

「今は違うと?」

「はい」

「・・・」

 うーん、嘘はついているようには思えんな。つく必要性もないし。だが、それが演技だったとしたら?俺は、乗艦させるか悩んでいた。

「艦長、意見具申、よろしいでしょうか」

「どーぞ」

「一旦、彼女たちを艦隊クルーとして認め、乗艦させましょう。それでもし、他の乗員と折り合いが付かなかった場合、最寄りの宇宙港で下ろす、というのはどうでしょう。そうすれば、早くとも次の宇宙港で降ろせます」

 サナダ、ナイス意見。後で次の一ヶ月間、研究費を上乗せしておくか。

「・・・よし、それで行くか」

 俺はサナダの意見を採用した。実は、俺もサナダと同じような考えがまとまっていたが、それが冷静で正しい判断か、迷っていたのだ。

 そして、俺は頭を下げている二人に声を掛けた。

「二人共、顔を上げてください」

 そうすると、二人はおずおずと顔を上げた。

「一応、あなた方二人を含めたキュウビ族7名を艦隊クルーとして採用します」

 俺がそう言うと、彼女たちは安堵した顔になった。

「しかし!あなた方、キュウビ族を快く思っていない人たちが大勢います。その人達の疑惑を払拭し、関係が良好になるまでは、監視の目があると思ってください」

「わ、わかったわ」

「それでは、明日からそれぞれのチームで働いてもらいます。いいですね?」

「え、ええ」

「もし、分からない事がありましたら、この携帯型ディスプレイで調べてください」

 そう言いつつ、彼女たちに透明な薄い板を渡した。

「その中で、今まででやったことがあったり、経験した職業がありましたら、それにタッチしてください。そうすれば、その職業に就けますのでご安心を。何か、質問は?」

 ちょっと一気に言い過ぎたか。サナダさんもちょっと引いてるし。

 すると、メーリンが質問してきた。

「色々あるが、好きに選んでいいのか?」

「ええ。我々はあくまで一般人。軍隊のように、決まりきっていないのが特徴です故」

「て言う事は、一回決めた後で選び直すことも可能?」

「可能ですよ。ただ、そうコロコロ変えられるのも困りようですので、そこさえ気をつけてもらえればOKです」

「わかった。しかし、私達だけでは決められない。戻ってみんなで話してもいいか?」

「構いませんよ。では、ここでお開きにしましょう。自主的に決めるんでしたら、明日の朝8時までにお願いします。そうしないと、勝手に来ますので気を付けてください」

「わかった、みんなにはそう伝えよう」

 そういう事で、この場はお開きになった。彼女たちは病室に送った後、俺達が艦橋に戻る途中でサナダが聞いてきた。

「しかし、あれでよかったのでしょうか」

「何が?」

「彼女たちをこの艦隊のクルーにする、という話です。ギレンあたりが騒ぎますよ」

「だからって言って放ってはおけんだろ。それに、あの雰囲気からある程度の権力を持った人たちだと思っている。だから今の内に恩は売っておくに越したことはないよ」

「ふっ、わかりました。ギレンは私が抑えます」

「よろしく頼むよ」

「はっ」

 そうして、俺達は艦橋に戻っていった。


 一方、クラウディアとメーリンも考える事はあった。

「ティア、あれでよかったか?」

「ええ、上出来よ」

 ここで言う”ティア”というのは、クラウディアの事を指し、メーリンにだけ呼ばせていた。それほどまでに二人は信頼し合っているのである。

「この規模の艦隊は、この宙域にはなかった。だから、私とメーリンはそれに目を付けた」

「しかし、この艦隊に対抗するだけの艦は私達には持っていなかった」

「だから、組み込んでもらうように仕向けた」

「正直言って、この艦隊に組み込んでもらう作戦を聞いた時には驚いたが、ここまであっさり組み込んでもらえるとは、思ってもいなかった」

「まぁ、結果的にうまく行ったから良しとしますかね~。組み込まれた私達の発言力を徐々に強めていって、いずれは-」

 あの女を倒す。そう断言し、野心を露わにしたクラウディアはメーリンと笑いあった。この話が、当の本人に聞かれているとも知らずに。


~~~~~~


 あの会議の数日後、俺達の艦隊はワープゲートを無事に通過して、ワープゲートに一番近い惑星、レバノンに到着した。あの日の翌日には、彼女たちはそれぞれの部署に配置された。

 あの7人がどこに配置されたか、というと。まず、クラウディアとその上の妹であるサティ、サティの付き人であるリーナは船務科に配置され、カレンのフォローして戦闘を効率的にする役目を担っている。

 メーリンは主計科で予算配分や補給物資の積み込みなど、ヴァレリを手伝っている。

 艦隊のクルーになったキュウビ族の中では年長者であるアヤノは、射撃の名手でミッチャーの下についた。長年の経験から対空火器専門に扱うらしい。 

 のんびりとした口調が特徴のポプリは、オペレーターをやりたがっていたので、やらせる事にした。なんだかんだで戦闘中は、俺がオペレーターもやっていたので負担が軽減したね。

 キュウビ族の中では最年少のリンは、まだ決まっていない。性格的には勝ち気なのだが機械に関して興味がある、という事で一応整備班に配属されたが、まだ幼いという事でフリーとして動き回っている。


 ただ、問題なのが保安局に一人も行かなかったという事だろう。俺個人としては彼女たちの誰かが、行ってくれることを期待していたが残念だ。まぁ、一週間ぐらい停泊するつもりだからこれから募集をかけて、その中から選んでいければいいと思っている。

 という事で、乗員スペースの拡張をした。本来、俺の艦は800人で動かすようにできているが、200人しかいなかったので、基本は俺が操縦していたようなものだ。だから、その分の負担が減るのは大歓迎だな。

 それはさておき、領主との戦闘で勝利したことと、新しいメンバーが増えたことを祝って宴会をやることを全員に伝えたら、全員出席することになり、宇宙港の地上にある酒場を貸し切ることになった。

 そして、ものすごいどんちゃん騒ぎである。

 と言っても各科で仲間意識があるのか、それぞれの科員がチーム内でどんちゃんしている形になっている。例えば砲雷科なら砲雷科、船務科なら船務科、といった形である。

 それでも、酒の飲み比べなんかはチームの垣根を越えて競い合っているので、それが話のネタになったり、賭け事になってたりする。てか、その中心がキュウビ族のメンバーなのだから驚きだ。数日前のあの二人の話が嘘みたいだ。

 まぁ、機会を伺っているんだから隠して当然か。あの話が重要な時でないことを祈ろう。

「あ、艦長~」

 俺が思考の海に耽っていると、ポプリが声をかけてきた。

「何だい?ポプリ」

「あのですね。うちのお姫様がお酒の飲み比べで、他のクルーに圧勝してしまいまして・・・」

「え!?ミッチャーとかギレンとか、かなりの酒豪なんだけど・・・」

「うちのお姫様はそれ以上なんです~」

「えぇぇ・・・」

 ミッチャーとギレンは、アルコール度数40度以上のウィスキーを5,6本、平気で飲み干せる強者なのに、それ以上ってすごくないか、それ。

「それでですね。他のクルーに聞いてみた所、艦長なら何とかなるのでは?言われたものでして・・・」

「それで俺ん所に来たのか・・・」

 確かにミッチャーとギレンが入れ替わり、立ち代りでの飲み比べで、俺が余裕面で勝ったのは記憶に新しいが、あれでもかなり危なかったんだぞ。

「お願いします!これでは賭け事が成立しないんです!」

「わかったわかった、だからそう頭を下げないでほちぃ」

「やってくれるんですか!?」

「やるから案内しておくれ」

「それじゃあ、こっちです~」

 俺がやると決めたら、一気に明るくなって案内してくれた。まさか、このためにわざと困った顔をしてたんじゃなかろうか。そうだったら策士やな。

「さあさあ、こっちです。どーんとやっちゃってください」

「お、おう。て、うわっ!」

「あらぁん、どうしたのかしら?」

 俺が来た時には、クラウディアの周りには10本以上の件のウィスキーの空瓶があった。

「かなり飲んでますねぇ。後で領収書を見るのが怖いれす」

「あら、艦長じゃないの。私と勝負する気になったかしら?」

「勝負はしますが、これではまともに勝負できるんですかねぇ・・・」

「できるできる。だって私、酔っ払てないもの」

「酔っぱらいは全員、そういうんですが・・・」

「じゃあ、勝負しないっていうの!?」

「します、しますよ。おっちゃん!彼女とおんなじのを頼む!・・・ハァ」

「すまんな」

 俺が諦めたようにボヤつくと、クラウディアの隣にいたメーリンがすまなさそうに声をかけてきた。

「彼女は元々、無類の酒好きでな。あの宙域では全く飲めなかったんだ」

「ほぅ・・・」

「だからその反動で、いつもより大量に飲んでいるんだ。後で私から言っておく」

「ええよ、別に。これで笑顔になれるんだったら付き合いましょう」

「ふっ、酒に飲まれるなよ?」

「それはこの人に言ってくだちぃ」

「ちょっとぉ!二人してらぁに話してんのぉ!」

 俺とメーリンで話していると、クラウディアが割り込んできた。

「なぁに、しがないことですよ~。ねぇ?」

「だな。さ、席に着きな、クラウディア」

「あい~」

 クラウディア姫、そんなグデングデンに酔っぱらっていて大丈夫か?

「では始めるぞ、よーい、どん!」

 ふむ、今のレートは2:5で彼女の方が数は大きい。どれ、一稼ぎするかな。そう思いつつ、彼女に負けないように俺も勢いよく飲み干していった。


 後日、俺とクラウディアの勝負で通常の宴会の5倍以上のお金を酒場から請求されたことに怒ったヴァレリに、俺とクラウディア、そして賭け事をしたメンバー含めてこっぴどく叱られたのは言うまでもない。


~~~~~~


 その日、貴女は食事にありつく分のお金すらなかった私を救ってくださいました。


「お腹が空きました」

 そうつぶやく私は、いい匂いがする食堂や売店をいくつも通り過ぎていった。普段なら、小腹が空いたらおやつを食べる感覚で店に入るのだが、長らく蓄えていたお金が底をつき、ただ通り過ぎるだけになっていた。

 思い返せば1ヶ月前、仕事場の上司と折り合いが付かず、些細な事で口喧嘩になって挙句の果てに殴り合いの喧嘩になってしまった。その結果、その上司は全治1ヶ月の入院になり、私は解雇されてしまったのです。

 その上、ちょうど給料日の前日だったため、蓄えていたお金がそれほど多くなく、一日でも生き長らえるために安い宿に泊まり、仕事を得るために職業安定所であるハローワークに毎日通っていましたが、結果的に全て不合格に。そのため、アルバイトなどをして収入を稼いでいましたがどこも正社員が来たため、そこでも解雇通告を言い渡されました。

  こうして思い返すと偶発的とはいえ、不運が重なりすぎているように思えます。うぅ、余りにも惨めです。

 そういった理由で彼女は宿からも追い出されたため、行く宛もなく、ブラブラと散策をしていて気が付くと、宇宙港の船の発着場にいた。そして偶然、電磁広告盤でとある広告を目にする。


『熟練要員求む。資格:18歳以上、2年以上の戦闘艦で勤務経験、健康な方。面接時間・・・』


「!」

 18歳以上で健康、更に戦闘艦で2年以上働いていた人。そこまで見て彼女は、ここしか無い、と直感した。いや、ここにしか道は無いのだが、彼女には天から垂れた一本の蜘蛛の糸のように見えた。そのため、電話番号と面接に必要な道具を用意して、面接室に向かった。


~~~~~~


「やっぱり来ませんなぁ~」

「そりゃそうでしょうよ」

 なかなかやって来ない人に俺がボヤついていると、ウォルフがツッコミを入れてきた。

「俺達は名声値こそ中堅に入りましたが、新入りの新入り。普通の人なら警戒して当然でしょうぜ」

「そう言うがウォルフ、今回はこういう手しか艦長の望む人材は集まらんぞ」

「そうは言ってもね~」

 サナダが俺の発言にフォローを入れてくれるが、ウォルフの言い分もわかる。俺たち、軍隊などの組織に組み込まれていない宇宙で生きる者達にとってランク付けがされている。上から行くと、1位から100位までが上級者。101位から3000位までが中級者。3001位から10000位までが初級者。10001位以下はランク外、となっている。

 俺達のランクは2541位。ランクで言えば中級者になるのだが、俺達の艦隊は結成してから数ヶ月しか経っていないため、人材が慢性的に不足している。そのため、広告を出したはいいが経験が浅いクルーが乗っているところになんか行きたくない、と考える奴らが多い。

 だから人が来ないのだ。

「まぁ、来ない事が前提でしたので、時間いっぱいまで頑張りましょう~」

「ほいさ」

 言わば、当たらない事を前提にしたバクチ、コインが出てこない事を前提にしたスロットル、負ける事を前提にしたババ抜きである。確率云々ではなく、本当に欲しくて堪らないから打った手だった。

 そうこうしている間も時間は刻一刻と過ぎて行き、残り30分となった所で少女が一人でやってきた。

「あ、あの!熟練要員募集会場ってここであってますか!?」

「あ、はい。確かにここでやってます。俺達しかいませんが」

「よ、よかった~」

 その少女はよほど焦っていたのか、息を切らしていて服も何処と無く薄汚れていた。まぁ、それはともかく。

「よく息を落ち着かせてから、そこの席に座ってくれ」

「は、はい」

 彼女は、やや緊張しながら深く深呼吸して席についた。

「えっと、名前は・・・」

「チハです。チハ・ブラウスです」

「ではチハさん。どうして、我が艦隊に応募しようと思いました?」

「それは・・・」

 急に雰囲気が変わったため、少女は多少驚いていた。しかし、俺の世界では一般的な面接の入り方。入社試験で行われていた面接の仕方をなるべく思い出しながら、少女に問いかけていった。

 俺達がどういった仕事をしているかや、彼女自身の質問に対して、少女ははっきりとした受け答えで回答していった。

 順調に質疑応答をこなしていって、最後にこの質問をした。

「我が艦隊は、戦闘以外にも色々な仕事をこなします。荷物や特産品の輸送、資源やガラクタの回収、輸送船団の護衛や支援など、多岐に渡ります。それでも我が艦隊のクルーになろうと思いますか?」

「はい、私に出来る事でしたら何でもやりますので、よろしくお願いします!」

 決まりだな、採用決定だ。そう思い、サナダとウォルフを見ると二人共、同じ結論に達したようで頷いてくる。俺はおもむろに立ち上がり・・・。

「チハさん」

「は、はい!」

「我が艦隊へようこそ。貴女の参加を歓迎します」

 そう言って、俺は笑顔で右手を差し出した。

 一瞬、彼女は理解不能、と言った顔だったが、徐々に喜びと感動で目に涙をためて俺の手を取り、感謝の言葉を紡いだ。俺の隣では、サナダとウォルフは拍手を彼女に送った。

 これで保安局長、ゲットだぜ!


~~~~~~


 宇宙を航行している時に、俺のことが気になっていたティアが声を掛けてきた。

『嬉しそうですね、マスター』

「あぁ、嬉しいさぁ」

 あの後、彼女は緊張の糸が切れたのかぶっ倒れてしまった。そのため、急いでサド先生に見せたら血糖値が下がっていて、ちゃんと面接ができていたのが不思議なぐらいだ、と言われた。

 それほどまでに彼女はやせ細っていたので、しばらくは点滴と病院食を食べさせる事になった。彼女はすぐにでも、保安局の仕事をやりたがっていたが許可は下りなかった。流石に、病人である彼女を働かせる訳にはいかないしね。

 もう2、3日すれば、体調も良くなるからそこからガンガン働いてもらう、という事で納得してもらった。


 とはいえ、俺の艦隊は長期休暇、というものを欲しがるよりも海賊狩りをしている方が身に合っている、という事でこの宙域に来てから2ヶ月は、肩慣らしを含めた航海をしている。金のなる木、美味しいれす。

 それと一つ報告があるとするならば、俺とティア、センチュリオンと駆逐艦達がランクアップした事かな。それだけ多くの海賊船やら不法侵入艦を撃破、捕獲をしてこの宙域を支配している奴らに引き渡していることかな。

 人は政府に引き渡して報酬をもらい、中古品となった船は宇宙管理局に売り渡しているから、かなりうまい儲けになっている。まぁ、研究費と娯楽に半分ぐらい回っているため、実質的な儲けは全体の半分ぐらいだろうか。そのお金で、居住区の設備工場に当てているのでご安心を。


 そして今日も、海賊船と遭遇する。

「艦長!敵艦隊を発見、先遣隊が強襲をかけています!」

「わかった。逃さないように囲い込んでくれ。戦闘配置!」

「各艦に通達~。作戦Bを発令しま~す。包囲した後、無力化を図ってくださ~い!」

「奴さん、まな板の上の鯉だぜ!」

「ヒャッハー!」

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