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まいったね、こりゃ 1-3

第3章 戦闘


 フィレンツェ共和国 首都


「なにぃ!艦隊が全滅だとぉ!」

 そう叫んだのは、この共和国の領主であるフィレンツェ・アッカーマン。彼は今まさに、頭の血管が千切れそうなほど、激高していた。

「は、はい。敵は単艦から6隻に増えたようでして、並大抵の駆逐艦では対処できない、との報告が上がっています」

「その報告はわしも聞いておる!その対策として、常に5~6隻の艦隊を組んて行動せよ、と厳命したではないかっ!」

「はい、たしかに私もそうするように重ね重ね命令したのですが、生存者の報告によりますと・・・」

 彼の部下である男は、これまでの経緯を領主に伝えた。その内容は領主である男にとって、到底受け要らがたいものであった。

「たった一回の戦闘で20隻以上もの艦を失った挙句、その後2週間あまりで70隻以上が撃沈しただとぉ!」

「は、はいぃ」

 通常ではありえないスピードでの、減少傾向であった。

 他国ならば、よく整備された艦は大きな事故などに巻き込まれない限り、100%の力を出せるように設計されている。それが艦隊を組んであるなら、たとえ強力な装備を装備して優秀な乗員が乗っていた”彼”でも、早々と撃沈していたであろう。

 しかし、共和国が自治領であるが故の腐敗が、軍の末端にまで浸透してしまった現状では、たとえどんなに優秀な艦を持ってしても100%の力を発揮できるはずもなく、早々に中古品として売りに出されていたであろう。彼がそれに気付くには、あまりにも遅すぎた。

 結果、残っている艦隊は彼直属の艦隊しか無いのである。

「ええい、こうなったらわし自ら出陣する!支度をせよ!」

「は、ははぁ!」

 そして彼は出陣する。帰陣する事のない、最初で最後の戦闘に。


~~~~~~


 一方、母港を放棄した俺達は、陣形を組んで進んでいた。

内容としては、ティアと俺に駆逐艦4隻ずつを付けて、アメリアとセンチュリオン、クルリを一纏めにして駆逐艦を2隻、護衛させている。

 本来ならば、もう2隻を護衛に付けたかったが、マッド達の暴走によって資金不足が発生。そのため、新規購入は諦めた経緯があった。貧乏人は辛いよ。

 それはともかく、こうした陣形にしたのには意味がある。

 一つ目に、陽動として行動がしやすい、という事。ものすごい改修をした俺達は、敵との戦闘を行うことが本業となった。簡単に言うと、俺とティアの艦隊が敵の懐に入って撹乱&可能ならば殲滅を行う。殲滅し損ねたとしても、エネルギーを充填し終わったセンチュリオンによって、広範囲を殲滅する戦法にした。

 ただ、こんな単純な戦法だとすぐに見破られてしまうため、いずれは更なる改装と艦隊規模を大きくしたい。

 二つ目は、砲艦や空母の足の遅さである。確かに35ノット出せる砲艦は早いが、俺たち巡洋艦や駆逐艦で38ノット、工作艦で40ノット出せるのだ。そんな差を埋めるために、足を揃えて行動していたら、敵からはいい的になってしまう。そのため、戦力分散を承知の上で敢えて3つの艦隊に分けたのだ。


 今回の戦闘は、艦隊の運用と戦術の立証を目的としている。

 そのための戦闘であり、ここに至るまでにこの宙域を支配している領主にはすでに喧嘩はふっかけてある。後はヤツが出てくるだけである。

「艦長、レーダーに感あり。数は10!」

「おいでなすった!」

 この宙域には200隻に及ぶ艦隊があったのだが、そのほとんどを俺たちが撃沈させている。そのため、残っている艦艇は残り10。まさにこの艦隊だけである。

「艦種判明。旗艦オルメルト級巡洋艦1、フィレンツェ級駆逐艦9です」

「総員、戦闘配置。砲雷撃戦、用意!」

 そうすると、艦内の白色点灯から赤色点灯に変わり、一気に雰囲気が変わる。

「敵さん、だいぶ慌てているようだな。ミッチャー、訓練どおりにやれ!」

「うっす、サナダさん」

「各艦隊から信号あり。いつでも行ける、との事です」

「わかったカノン。トクガワ機関長、戦闘出力!」

「アイサー」

 ふむ、さすがは領主直属の艦隊だな。しっかりと整備されている。しかし、焦ってるのか多少足並みが崩れてるぞ。

「ティア、クロスファイア(十字砲火)を行い、あの特徴的な巡洋艦から駆逐艦をひっぺはがすぞ!」

『了解』

「センチュリオン、フルチャージでどのぐらいかかる?」

『10分はほしい!』

「わかった、急かさねえがなるべく急げよ。あの巡洋艦、今にでも撃って来そうなぐらいエネルギーが溜まってるからよ」

『わかったー!』

「みんな、聞いての通りだ。今から10分間、立体機動に入る。それまでに駆逐艦を撃滅する」

「「「「了解!」」」」

 俺たちが陽動で、敵を誘い出す作戦。そのためにはまず、敵を減らさないことには成り立たない作戦なのは、わかっているだろうがここでの戦闘の場合、9隻の駆逐艦を減らすか、巡洋艦の周りに固めさせることから始まる。

 例の巡洋艦、あれはセンチュリオンのような砲艦タイプの巡洋艦で、右舷に本体の1.5倍の砲塔を持つのが特徴的だ。センチュリオンの場合、手札を増やす目的で巨大砲塔でも小柄な500cmの砲塔を2門、備え付けているが、あの巡洋艦の場合だと一撃必殺の目的で、弾の太さが1000cmのレーザー砲を装備している。

 砲艦の中でもあのレベルの砲塔を持つと、そう簡単には撃てなくなってしまうのがネックだ。軍艦というものは本来、近距離から中距離で殴り合うために作られているため、遠距離戦では撃ったレーザーやミサイルはまともに当らない。それを打開するために作られたのが砲艦なのだが、あのサイズだと目標地点の近くに味方の艦船が撃ち合っていると巻き添えにしかねない。

 特に、あの巡洋艦は遠距離戦に特化してしまったため、中距離から近距離での戦闘能力が無いか、あっても自衛程度しかない。その上、目的地点までエネルギーを維持するには、膨大なエネルギーが必要とするため、撃った後はそうそう撃てるはずがない。

 そういった事から、俺たちはとにかく接近していった。

「-っ!敵旗艦より通信、入りました!」

「!?わかった、少し待ってくれ!」

 そう言って、俺は演算能力の2%を使って肉体を形成する。形成した後、動作チェックをしてつなぐように指示した。

『ほう、君がその艦隊のリーダーかね?』

「あぁ、そうだ」

『私はフィレンツェ共和国の皇帝、フィレンツェ・アッカーマンだ』

「この艦隊の指揮官のミーナだ」

 あれ?不思議と違和感なく、名前が言えたぞ?おっかしーなー?まぁいい。そんなことより、偉そうに自己紹介してくれた奴が例の領主か。

 てか、皇帝って。こんな何にもないところで皇帝って。まさに自称皇帝ですねぇ。余りにもアホ過ぎて、草すら生えねーよ。今はそんなことよりも、通信のほうが重要だ。

「で?なんです?こんな戦闘中に通信を掛けてきて。こっちは忙しいんですよ?」

『しらばっくれるんじゃない!私が治める惑星で、脱走者が6名抜け出したんだ!その艦隊にかくまってる事は、バレバレなんだぞ!』

「はぁ?」

 脱走者が6名?200人の脱走者を、どこをどうやったら6人になるんだ?訳が分からないよ。

「何の事だか、さっぱりわかりませんねぇ。200人ぐらいの脱走者と遭遇しましたが、6人のことはわかりませんねぇ」

『そうやってしらを切るつもりか!もういい!このプラズマ砲で一網打尽にしてくれるわ!』

「あっ、ちょ・・・」

「通信、一方的に切れました」

 何ていうか、一方的な言いがかりをつけた挙句に人の話を聞かない、どうしようもない奴に見えてきたぞ。

「ここの領主ってあんな感じなの?サナダさん」

「あぁ、あんな感じだ」

 艦内に微妙な雰囲気が流れ始めたので、とっとと戦闘を終了させよう。

「カレン、レーダーに変化ある?」

「敵巡洋艦のエネルギー上昇が止まりません。後、2~3分でフルチャージになるかと」

「ミッチャー、敵はこちらの射程圏に入ってるか?」

「照準もバッチリだ!いつでも行ける!」

「トクガワ、エンジンの調子は?」

「最大出力で、30分は保証できるぞ!」

「よし、今から立体機動に移る!各艦は自由斉射で、敵に打撃を与えよ!」

「「「「『『了解!』』」」」」


 俺達はそれから10分間、とにかく撹乱に徹した。俺とティアの艦隊は、領主の艦隊を中心に円を描くように回り続けて攻撃を加え続けた。

 その結果、領主の艦隊は蝸牛が殻にこもるかのように丸くなって動けなくなってしまった。そのため、相手は俺達をハエを払うように攻撃をしてきたが、明後日の方向に攻撃するので無傷だった。

 しかし・・・。

「艦長!敵巡洋艦がこちらに急速回頭!目標は我々です!」

「あのエネルギー量で急速回頭は無理だ!おそらく、サイドステップで艦首をこっちに向けてきたんだろう!」

「各艦、最大出力で射線軸から退避しろ!」

「敵のエネルギー砲、来ます!」

「間に合えぇぇ!」

 発射直前の巡洋砲艦の射線軸上に俺の方の艦隊が重なってしまったため、最後尾の駆逐艦にダメージが入ってしまい、後部電磁フィールドと推進力の喪失によって機動力を失ってしまった。その頃になると、護衛の駆逐艦の半数は撃沈していたが。

 損傷した駆逐艦は後で拾うとして、この戦闘における本命がまだ出ていない。

『マスター!エネルギー充填が100%になりました!早くそこから退避してください!』

「了解した、センチュリオン。ティア、退避するぞ」

『了解しました、マスター。これより戦術的撤退行動に移ります』

「みんな、聞いていたな。」

「現場宙域から離脱します!」

「了解した!」


~~~~~~


「見ろ!敵が撤退していくぞ!」

「はい!お見事でございます、フィレンツェ様!」

「ふむふむ、これで後は彼女たちを追うとし・・・」

「ず、頭上より、高エネルギー反応!」

 その報告を受けると、艦内は騒然とする。

「な、なにぃ!?何事だ!」

「敵砲艦より発射されたビームです!」

「た、退避だ!退避するのだぁ!」

「間に合いません!直撃まで後5秒!4,3,2,1・・・」

 0になる瞬間、2本のビームが巡洋艦に直撃した。1本は巨大な砲塔へ、もう1本は本体に直撃した。

 巨大な砲塔は、ミーナ達の艦隊にもう1発撃ち込もうとしていたので、エネルギーを再充填していた途中だった。その砲塔に被弾したため、システムに異常をきたし、エネルギーをコントロールできなくなってしまった。

 コントロールできなくなった巨大なエネルギーの塊が向かうところは、ただ一つ。暴走にたどり着く。

 暴走し始めたエネルギーは徐々に、艦の隙間という隙間から光として漏れ出していき、そして大爆発につながった。その近くには大破してもなお、戦おうとした艦船がいたが爆発から退避しようとして、間に合わずに巻き込まれて連続的な爆発になって沈んでいった。


~~~~~~


 それを遠くから眺めていた俺たちは、敵勢力の喪失によって勝利の美酒に喜んだ。

「こちらのレーダーに敵勢勢力の確認できず。他の艦隊からも、同様の通信が入っています」

「よし、戦闘終了。警戒レベル2に変更し、損傷した駆逐艦を拾いに行こう。他の艦隊にもそう伝えてくれ」

「わかりました」

「ふむ、やはり砲艦を1隻作っておいて正解でしたな」

「あぁ、航宙機のいない俺たちではもう少し損害が出てもおかしくなかった」

「これを契機に航宙機の設計図が手に入れば、どうにかできるんだが・・・」

「はははっ、前向きに検討しますよ」

 どこぞやの政治家のような返事をして、俺はガラクタ集めに3隻ほど敵の沈没宙域に向かわせた。そして、残った艦隊を被弾した駆逐艦の元に集めた。

「クルリとギレン、レムの足周りはどうだい?」

『かなり壊れていますね。応急修理でなんとか動かせますが、本格的な修理なら宇宙港の方がいいですね』

『出力装置が壊れてる上に、船体の一部が完全に溶けて蒸発してやがる!あれが居住区に当たってたら、貨物室の貨物は完全におじゃんだったな』

『申し訳ありません、マスター』

「気にするな、レム。クルリ、ギレン。応急修理で最低限の速度を出せるようにしてくれ!それでも航行に支障が出るようだったら、アメリアに牽引させる!」

『畏まりました』

『わかったぜ!』

『え?聞いてないんだけど・・・』

 いきなり指名されたアメリアは驚いていた。

『無駄飯食らいの空母が、でかい口を叩くんじゃありません』

 と、真面目なテイアが珍しくツッコミを言うと、艦隊は笑いに包まれる。

 ふっ、こういう雰囲気はやっぱり好きだな。友達はあんまりいなかったから、こういう雰囲気にはいつも憧れていたんだ。

 そんな感じで2時間程度で、レムの応急修理は完了。その間に、ガラクタ集めに行っていた駆逐艦が帰ってきた。報告によると、あの爆発で大部分の装備や艦が粉々になったらしく、残っていたものも殆どが価値の無い物になっていたそうだ。

 ただ、一つ例外があって、黒焦げになりながらも内部に大した損傷が無いように見られる金庫があったらしい。拾った駆逐艦から金庫をもらい、サナダ達に開いてもらった。そしたら100万Gもの大金が入っていたのだ。あの爆発でも耐えられる金庫って地味に凄いな。でももう、金庫としての機能がなくなっているので、すぐに破棄したが。

 この時代の貨幣は、クレジットカードのような薄いカードにデータとして入っていて、紙や金属のものは随分と前に廃れていたようだ。ついでに補足しておくが、この100万Gはどの国に行っても100万Gのままらしい。例えるなら、俺のいた時代のアメリカドルのようなものだと考えれば、わかるだろうか。

 何はともあれ、これで懐は随分と温まった訳で、あのクソ領主を倒した時に消耗した物や修理代がチャラになった上に、お釣りまで来たんだから言う事はないな。

 と、いう事で。

「この宙域でやることがなくなったので、次の宙域に行くためのワープゲートに行くよー」

「駆逐艦レムは、空母アメリアの牽引ビームにロックされました。航行には支障がないようです」

「艦隊は艦隊旗艦を中心に陣形を組み直したようだ」

「フィレンツェ共和国から電文!『我がフィレンツェ共和国は自治法の基づき、貴艦隊の罪を問わず。貴艦隊の無事な航海を祈る』だそうです!」

「わかったー、お言葉に甘えさせてもらってとっとと行きますかね~」

「という事は」

「全艦、巡航速度でワープゲートに向かうぞ!」

 自治法というのは、世界各国が決めた取り決めの一つで、『新規で最初に惑星を開拓した者が統治しても構わないが、統治している惑星や惑星が属している宙域で何かしらのトラブルが起きても自己責任である』、という法律だ。

 言うならば、フィレンツェ共和国で発生した俺達の反乱によって領主が不名誉な戦死をしても、それは反乱を止められなかった領主の責任であるため、俺達は無罪放免とのことだそうだ。

 そういう事から、特に追っ手が来る気配もないため、ワープゲートに行こうとした矢先、救難信号を受信したとのことだ。

「どの方向からだ、カレン」

「2時の方向からです」

「まだここは惑星軌道上じゃねーか。どうなってるんだ?」

「共和国の船舶が我々に戦闘に巻き込まれた可能性がある。ここは人道上の理由で救いに行ったほうがよい、と考えます」

「わかった、サナダ。ちょうど進路上だし、ちゃらっと救いましょう~」

「進路変更、救難信号のある場所に向かいます」

「進路変更、右30度」

 がーん。せっかくの雰囲気だったのに、出鼻を挫かれたな。


1時間後


「あれがそうか」

「あれは完全に船体が大破している状態だな」

 大破した艦、と言うのはこの宙域ではよく使われている輸送船を改造した駆逐艦だった。

「真っ黒焦げになってることから、あのクソ領主が持っていた巡洋艦が放ったビームが直撃した感じだな」

 うん、見た感じ戦闘で大破したため、総員退艦した後、って感じがするな

「こんな事なら、この宙域でやるんじゃなかったよ。ところでカレン、救難信号を発信しているのはあれで合ってるんだよな?」

「はい、間違えなくあれから救難信号が発信されています」

「・・・よし。ギレン、メンバーを募って船外活動であの艦の艦内捜索をしてくれ」

『了解!』

「全艦に通達!救難艦を下手に刺激しないようにしてくれ!クルリ、船外活動班の支援にあたってくれ!」

『わかったー』

「これで、何も起こらなければいいんだが・・・」

 俺は悪い予感を吐き出すように、ぼやついた。


 一方、船外活動班のリーダーとなったギレンは、これまでの戦闘で培ってきたダメコンや敵艦の装備のぶんどりで蓄積したデータから、的確にメンバーに指示を出していた。

 彼らが乗っている艦隊旗艦は、自動回復によってダメージがあったとしてもすぐに直せるが、いざって時に困る、という方針からギレンに一任していた。任された当初はかなり手間取っていたダメコンも、今となっては迅速に直せるようになり、彼も含めてかなりの腕のいいダメコン班に成り上がったのだ。

 そのため、損傷艦の1番外側にあるドアを開けるのに10分と掛からなかった。

「艦隊旗艦、今から損傷艦の内部に入る」

『了解、こちらでも把握している。内部に生体反応があるから気を付けて探索してくれ』

「わかった。みんな、聞いていたな。各自の武器を確認してから内部に入る」

 そう言ってそれぞれの武器を構えると、一気に空気が変わる。

「よし、突入する!」

 そう宣言すると、順序よく迅速に入って虱潰しで部屋を確認していき、閉鎖されたドアは金属切断用のバーナーでこじ開けていく。そして、最後に残ったのは・・・。

「司令室?」

『どうした?何かあったのか?』

「いえ。艦隊旗艦、本当に生体反応はあったんですね?」

『あぁ、他の艦にも調べさせたが、同様に生体反応が検知されている』

「わかりました。どうやら生き残りは全員、司令室に立て籠もっているようです」

『わかった、気をつけて入ってくれ』

「アイサー」

 ギレンはそう短く返事をすると、メンバーは残ったドアもバーナーで焼き切った。

 そして司令室内部に入ったメンバーの目に入ったのは、酸欠で今にも死にそうなほど弱っている女性7人だった。そのため、医務長のサド先生に救援要請を出して、メンバーは酸素ボンベをその7人に繋ぎ直して大破した駆逐艦を出た。

 その後、大破した駆逐艦は一山幾らという値段だったため、そのまま破棄。そして、艦隊はワープゲートに向かうため、その宙域を離脱した。


~~~~~~


 クソ領主との戦闘から2週間後。俺達はワープゲートから3日の所まで来ていた。ワープするに当って、ワープした後はどうするか、という事を主要メンバーで会議をしていた。

 その中で今の所、いちばん重要なのは昏睡したままの救助したキュウビ族についてだった。

「サド先生曰く、目立った外傷はなく、極度の疲労と二酸化中毒及び空腹からくる血糖値の低下により、昏睡状態に至っている模様。後2、3日すれば目覚めるのではないか、との事です」

 サド医務長補佐のフランの報告を受けて、この場にいる全員の肩の力が抜ける。何人かは安心したかのようにため息を付いた。

「しっかし、まさか救助した人たちがキュウビ族とはね」

 マッドの代表格サナダでさえ、驚いているように救助要請を聞いたメンバーは全員驚いていた。

「あー、すまん。そのキュウビ族ってやつは一体なんだ?見た感じ、ケモミミと尻尾が9本生えているのはわかるんだが、それ以外はさっぱりだ」

「艦長は知らないんですか?」

 話についていけてない俺は、艦橋にいるメンバーに聞いた。そうすると、フランが不思議そうに話してくれた。

「キュウビ族と言うのはですね。元々は獣耳と尻尾を複数本生やしている亜人、ヨウコ族の一部だったんです。その中でも、最高位に存在している9本の尻尾を持つ者をキュウビ族、と彼らは決めつけたんです」

 随分と身勝手な話だな。

「プライドが高く、選民意識が強かった彼らキュウビ族は、ヨウコ族を含めた他の種族を劣等種族と見なしていて、他種族とは相容れない存在として長く暮らしていました」

 引きこもりなのか。昔のニートみたいだな。

「しかし、彼らが暮らしていた惑星系にある豊富な鉱物資源に目をつけた人間たちは、キュウビ族に対して一方的に宣戦布告。人類はその惑星系からキュウビ族を追い出そうとして、苛烈な戦闘を宇宙でも地上でも繰り広げられました」

 キュウビ族は戦わずにとっとと引っ越せばよかったろうに。

「人類側の圧倒的な物量を前に彼らがなぜ逃げなかったか、というと彼らには鉱物の声が聞ける、という特殊能力があり、それを頼りにこの世で一番硬いオリハルコンを装備して戦っていたからです」

 そいつはすげぇ。まるで、ナナドラのル◯ェ族みたいだな。まぁ、ルシ○族には尻尾はなかったが。

「とはいえ、どんなに強力な武器を持っていても10倍以上の物量に押され、結局キュウビ族は惑星系を放棄せざるを得ませんでした。そのため、戦う前の200分の1以下にまで人口が減少。以後は散り散りになって世界を放浪する難民となっています」

「て事は何だ?俺達は、その難民の一部を拾っちまった、て事か」

「そうなってしまいますね、ギレンさん」

 ギレンは、難民を拾ったという現状に毒づくと俺の方に向き直すと。

「艦長、俺ァ正直に行って難民を保護する事に反対です」

「ほう、その心は?」

「あんなプライドの塊のような奴らに、艦隊の指揮を狂わされるのはゴメンだって事だ」

「まるで会ったかのような反応だな」

「えぇ、会いましたよ。と言っても、まだ糞ガキの頃でしたが」

「はーん」

 実際に会ってるんだったら納得の範囲だな。プライドの塊ってことは、ツンツンしてるんじゃなくてギスギスしたような感じかもしれん。呑気な俺でもあまり話したくない連中だな、それは。

「ギレン、それは言い過ぎ」

「あん?」

「私があったことのあるキュウビ族は、そこまでひどくなかった。寧ろ、親切な人達だった」

 珍しくカレンが反論。この子、基本あんまり喋らないから何考えてるか、わからないんだよなぁ。でも今回の様に、言うべき所で言うから全部が全部、分からないって訳じゃないんだがな。

「そりゃ、おめーんとこはそうだったかもしれねーけど・・・」

「それを言うなら貴方もそう」

 ピキッ。

 あっ、やばい。ここで止めねーと殴り合いの喧嘩になる。

「ふ、二人共、言い争いなら外で・・・」

「「艦長は黙ってろ(てください)!」」

「ひゃい!」

 二人でハモったから変な声出ちまったじゃねーか、恥ずかしい。

「今日の会議はここまで、明日また会議をしましょう」

「「「「「はーい」」」」」

 そう言って俺達は、口喧嘩をする二人をおいて会議室を出た。


 ふーむ、午前中は会議に当てる予定でいたからな。暇で仕方ない。

 戦闘時に出た損害やらの書類は、昨日までに宇宙公安局に提出してあるから問題ない。乗員の福利厚生なんかは、午後からやってもおやつの時間には終わるから余裕はある。乗員の受け答えも、この艦のコアたる俺なら同時並列的に対処も可能だ。

 という事は、残された選択肢は艦内の見回り程度のものである。今、一番見回るべき所は・・・医務室か。


「やぁやぁ、サド先生。調子はどうかな?」

「艦長がこんな所に来るとは珍しいですな。どこか、ケガでもしたのかい?」

「イヤ、そういう訳じゃあないんだが・・・」

「ふふっ、わかっておるよ。キュウビ族じゃろ」

「流石にわかっちまうか」

「ケガをしない艦長が来るのは今の所、そのくらいじゃからのう。こっちじゃ」

 そう言って案内されたのは、医務室にほど近い病室の一部屋だった。

「先の戦闘では、それほどケガ人は出ておらんから個室にしてやりたかったんじゃが、管理の面で大部屋にせざる負えんかった」

 そう言って中に入ると、8人部屋を7人で寝ている彼女たちがいた。栄養補給のための点滴と、酸素マスクがついているぐらいで、本当に外傷はなかった。

「それは仕方ないでしょう。彼女らがどういう考えを持っているのか、今の所知る術はないんだから」

「それはそうじゃが・・・」

「ところで、彼女らの生体機能ってどうなってるんですかね?」

「人間とさして変わらんよ。強いて言うなら、ケモミミと尻尾が生えてるぐらいかの」

「わかった。なんかあったら連絡して。すぐに対応するから」

「ほいよ」

 そう言ってサド先生とは別れた。さてと、次は機関室か。


「おや?艦長がこんな所に来るとは珍しい」

「トクガワ機関長」

 そう言って振り返ると、白髪がお似合いの歴戦の機関長がいた。

「機関長はよく、ここに来ますよね」

「なに、自分の目で確かめないと落ち着かない性分でしてな。特に戦闘後は」

「何か、訳がありそうですね」

「つまらない老人の話で良ければ話しますぞ」

「ぜひ、オナシャス。なにぶん、生まれて間もない小娘ですからね」

 そう、俺はこの体を作った時から女性の体になっていた。肌は褐色、髪の毛は白のロング。それを後ろで一つに結っておさげ風にしている。身長や顔つきから大人びている雰囲気はあるが、生まれて数ヶ月の赤ん坊もいいところだ。

「任された」

 そういうと、機関長は自分の体験談を語ってくれた。

 機関長は若い頃、今と同じように宇宙で活動する艦の機関室を任されていたようだ。当時は精密な機械が壊れるはずがない、壊れてもすぐに原因がわかると考えていた。

「当時、自分はまだ若く、艦の遭難事故を聞くとそれは精度の悪い機械を載せているからだ、という一方的な考えから抜け出せないでいた。無論、今となってみれば、余りにもお粗末な考えだという事がよくわかる」

「何か理由がありそうですね」

「そう、それを身を持って実感したのが機関室の緊急停止だった」

「それってやばくないですか」

「あぁ、普通の艦なら半日も持たぬ緊急事態だ」

 この世界の艦も俺がいた時代の船も、膨大な電力を必要としている。なぜなら、シャワー室の温かいシャワーから厨房の食事を作る機材まで、電力があってこそ可能なシステムといえる。その膨大な電力を生み出しているのがエンジンがある機関室だ。

 もし、エンジンが何らかの理由で止まったとしても予備のバッテリーに蓄えている電力もあるが、基本的には緊急時以外では使わない。そのため、限られた時間内で原因を究明しないとそれこそ漂流してしまう。

「しかし、限られた時間内で原因が究明できず、電力が尽きて本当に漂流してしまった」

 普通に考えたらきついなぁ、何もない暗い空間で、酸欠によって苦しみながら死ぬ。俺だったら絶対に無理だな。

「事前に救難信号を出していたため、運よく近くを航行していた艦に救助されたが結局、わしはその艦を下ろされた」

「後日わかったことは、艦橋にある配電盤と機関室をつなぐ回線が焼けて千切れていたという事だった」

「そんな事があったんですね」

 その後の展開は大方、予想はできる。職を探そうとして、あの星に流れ着いたんだな。

「ふっふ、もうだいぶ昔の話ですわい。まぁ、その件以来はちゃんと自分の目で確認するようにしてるし、何よりその艦を降ろされてよかった、と思っておる」

「なぜ?」

「この艦に乗れたからじゃよ」

 俺は黙って理由を聞く。

「自分の意志で行動し、自分の体を持って乗員と会話をし、成長する。こんな艦は他の所に行っても早々お目にかかれんからのぅ。それに艦長は別嬪さんと来ておる。そんな艦の機関長を任されて折るからにはおちおち眠りこけてもおれんでしょう」

「貴方からそんな言葉が聞けるとはね。光栄の極みです」

 俺がそう言うと、二人で笑いあった。

「ではまた・・・」

「また後でな、トクガワ機関長」


~~~~~~


「で、お前たちは一体何をやってるんだ」

 目の前ではお茶会をしていたり、ゲームをしていたり、トランプをしていたり。まさにカオス。

「あぁ、やっと来たのですかマスター。遅かったですね」

 俺の存在に気づいたティアは、やっと来たのか、と言わんばかりに言った。

「まったく、あまりにも遅かったからお茶が冷めてしまいましたよ」

「いや、ここ電脳空間だから冷めんだろうに」

 そう、俺達がいるのは仮想世界である。決して中二病とかではなく、通信で取り扱える情報量が膨大なため、俺たちならではの行為である。その量は、俺のいた世界で言う所の量子通信の数倍、というところまで行っているらしい。まさに超未来。まさに何でもありだな、オイ。

「急に呼び出されたから来てみたものの、意図が見えんのだが?」

 そう言いながら、俺はティアがいるテーブルの席に座った。

「マスターが珍しく、あの人間たちと多く話していたので、私達も真似てみようかと」

「そういう理由でか。でも、なんでお茶会?」

 その点で俺は首を傾げていると、クルリが答えてくれた。

「それはマスターが、あの体を使って人間と話している時、とても嬉しそうでしたから」

「あー、そういう風に見えてたのか」

「それだけじゃないよー、だってティアが物凄い・・・」

「あー!待ってください!それは言わない約束です!」

 ん?アメリアが何か、ネタバレをしようとしてティアに止められた。なんだろう。

「カッカッカッ、ものすごい剣幕やなぁ、ティアは。そもそものきっかけは、マスターが演その算能力の2%を使って、その体を維持し続けていることから始まったんだぜ?」

「どゆこと、センチュリオン」

「そもそも、うちらには生身の肉体はいらん。なぜなら船体自体がうちらの体やからな。ココまではOK?」

「おう」

「やけど、マスターは違う。赤の他人と会話をする時は必要やけど、マスターはそれ以外の時間もあの体を維持し続けておる。それがうちらの疑問になったんや」

「あー、なるほどね」

 関節や筋肉の動き、瞬きの動きや発音の時の口の動かし方など、一見人間の体は単純そうに見えて、かなり複雑に動いている。

 2%とはいえ、それなりの負荷は演算能力に掛かっている。特に戦闘中はなおさらだ。それでもやめようとしない俺の行動に、自律AIである彼女たちには怪奇に見えた事だろう。

「な~に、特に深い意味はないよ。ただ。人間として話したりしたかっただけだぜ?」

「では!」

 至極単純な理由で肉体を維持し続けている俺に対して、ティアは身を乗る出してきた。

「特に理由もなく、やっている行為なのですか!そんなことをしている間に、仮に艦隊旗艦である貴方が人間の情に流されて正常な判断ができなくなるのでは、と私はとても心配なのです!」

 普段は冷静沈着で、声も荒らげない彼女がココまで感情を露わにするのも珍しい。

「そもそも貴方はいつもおちゃらけていて、戦闘でもその場にそぐわない雰囲気で事に当たりますし、この前の戦闘でも・・・一歩間違えれば・・・あのびーむに・・・」

 ・・・ばたり

「ちょっ!?ティア!?」

「ティアが倒れちゃった」

「だ、大丈夫ですかー?」


10分後


「んっ・・・」

「ようやく目覚めたか、ティア」

「!?な、なにを・・・!?」

「お前が倒れたから、介抱してやったのだ」

「だからって膝枕は・・・」

「いいから寝てろ」

「・・・っ」

 俺はティアにそう言うと、彼女は俺に背を向けるように寝返りを打った。

「変化を受け入れがたい気持ちは理解しているつもりだ。本来の俺も、そういう性格なのだからな。だからゆっくりでいい。焦る必要など、どこにでも無いのだから」

 今日の俺はどうしたんだろうか。妙に人間臭い、というかなんて言うか。多分、昔の頃を思い出す上で心に整理をしたいんだろうか。何しろ、20数年人間として生きていた俺が、急に軍艦になったのだから無理のないことか。

 そう、思考の海に耽っていると・・・。

「ふーん、ティアにも意外とかわいい面もあるじゃん」

 声がしたの方に顔を向けるとシグマがいて、ほかの駆逐艦も作業を中断してこっちに来ていた。

 あーこいつら、いたんだったな。ティアがぶっ倒れたせいですっかり忘れていたよ。


パリーン


 あ、ティアの眼鏡が割れた。そういや、ティアは委員長みたいな格好してるな。みんなをまとめるから、そういう風な格好にしているのだろうか。彼女は無意識でそうしているんだろうが、こっちとしては心がピョンピョンするんじゃ~。

「ちょっ、違うんです!これはただの気の迷いっていうか・・・」

「へ~、違うんだ」

 物凄くシグマ達ががにやにやしてる。

「本当に違うんです!わかってるんですか、シグマ!?」

「わかってるよ~、委員長さん」

「~~~~~~っ!!」

 あっやばい、ティアが自身の主砲を駆逐艦の方に向けた。

「待て待て待て、せっかくランクアップ寸前までレベリングしたのにここで台無しにする気か!?」

「止めないでください!マスター!」

「いや、これはさすがに止めるって!」

「とてもかわいいですよ~、委員長~」

 俺がティアを止めようとすると、シグマがさらに油を注ぐ。

「シグマは後で絶対説教します!覚えておきなさい!」

「やなこった~」

「シグマは黙ってろよ。てか説教って物理的な方じゃないだろうな!?」

「物理的にです!!」

「やめろー!!」

 シグマがティアをいじった結果、それから30分ぐらい物理的に説教をするかどうかで揉めた。

 結論としては、シグマはティアを妙にいじくらない、ということで落ち着いた。その間、乗員たちからは艦隊の間での通信量の増加が疑問に思われた。

 楽しかったけどとても疲れた。そう思いつつ、俺は一人、深いため息をついた。

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