表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

まいったね、こりゃ

序章


 ゆっくりと意識が浮上していく中、2度寝しようと寝返ろうとして----できなかった。いや、できたといえばできたのだがベットの感触が無く、さらに今までの体の感覚すらなかった。

 頭のなかで混乱しながらゆっくりと目を開けると、目の前には星が瞬く宇宙が広がっていた。

「な、何だこりゃーーー!」

 意識はすぐに覚醒し、自分の体を見てみると宇宙船になっていた。

「う、宇宙船・・・なのか?いや、砲塔みたいのがあるから軍艦か」

 自分の体の全体像を見ていくと、徐々に冷静になっていく。

 それと同時に、軍艦があるというワクワク感とどうしてこうなっているのかを思い出していく。


 俺はしがない大学生だった。

 普通の家庭で生まれて普通の高校を卒業、大学に入学したが入学した後に遊びすぎて単位が足りずに留年が確定。

 だがニート願望より就職に意欲があったため、とっとと卒業しようと頑張っていた結果、留年2年目で卒業ができる事になった。

 しかし、卒業する年度の12月に事故があった。トラックに轢かれたのだ。いつも通り授業が終わり、家に帰る途中の横断歩道でトラックの運転手が居眠り運転をして突っ込んできたのだ。

 咄嗟の事で避けれず、轢かれる瞬間、

(疲れてるのはわかるけど、運転中に寝るなーー!)

 そう思いつつ、トラックにぶつかった瞬間、意識が途切れた。


 一通り思い出した所で、やるせない気持ちになった。

「あー、くそ!最後に、両親に感謝の言葉も言えなかったぜ!チクショーメー!」

 某総統閣下の真似をしてそう叫びつつ、ステータス画面はどこかな?と思いつつ、試行錯誤していたら目の前に画面が出てきた。


【艦種:コルベット】

LV:1/5 装備重量:450/650 HP:250/250 MP:200/200 攻撃力:90 防御力:50 速度:60ノット

固有スキル:エネルギー転換システム、物質転換システム、レーダー能力上昇【大】、レーダー逆探知システム上昇【中】、鑑定9

固定武装:単装8cmレールガン×3、4連装ミサイル発射管×2

研究ポイント:1000

【補足】

速度は早いが、ごく一般的なコルベット


「うむ?なんだ、このエネルギー転換システムと物質転換システムというは?」


【エネルギー転換システム:ダークエネルギーを軍艦の動力に必要なエネルギーに転換させるシステム。MP自動回復に直結】

【物質転換システム:ダークマターを軍艦に必要な物質に転換させるシステム。HP自動回復に直結】


「ふーむ、自動回復か。こいつはありがたい、俺が宇宙空間にいるってことは母港となる基地はないだろうし、補給ができないとどんなに優秀な軍艦でもすぐに沈んでしまうからな」

 そうぼやきつつ、次に気になったのは研究ポイントだ。


【研究ポイント:武装及び防御システムなどの研究開発及び取得に必要なポイント。戦闘に勝利した時に習得する事ができる】


 はーん、武装を強化できるのか。確かに重量には余裕があるし、武装も貧弱だ。一般的なコルベットって事は、駆逐艦より小さいフリゲートよりも更に小さいからな。できるだけ強化するか。


10分後


「できた。これで多少は強化できただろう」


【艦種:コルベット】

LV1/5 装備重量650/650 HP250/250 MP200/200 攻撃力:120 防御力:80 速度48ノット

固定武装:単裝10cmレールガン×3(New!) 4連装ミサイル発射機×6 3連装機銃×2(New!) 電磁フィールド(New!)

【研究ポイント:690】

【補足】

武装を強化したコルベット。重量が増加したため、速度が低下したが場合によってはフリゲートを撃破することも可能


 初心者用だったのか、武装などは研究開発せずに取得できてしまった。

 装備重量に余裕があったため、色々と悩んだが結果的にこれに落ち着いた。

 艦としてHPが少ない上、防御力も心もとないため、あらゆる状況に対応できるようにしたのだ。そうしないと落ち着かない性分なのも含まれるだろう。

 しかも驚いたことに食堂やスポーツジム、映画館などの娯楽に関しての研究開発もできるようだが、艦のスペース的に余裕もないので艦自体が大きくなった後で考えるとしよう。

 さっきから8cmとか10cmとか出てきてるがこれは砲塔の大きさではなく、撃ち出す弾丸の太さの事を指し、この数字が多ければ多いほど弾が太くなり、敵艦に与えるダメージが大きくなるということだ。

 本来なら1発ずつ撃ち出す単装砲ではなく、2発から3発を同時に撃ち出すことができる砲塔が欲しかったのだが、艦自体の大きさからそれも不可能だった。

「レベルの概念があるから、進化ができるのだろう。その時に期待するしか無いな」

 武装を強化している間に色んな思いが湧き上がっていたが、それをここで思い返しても意味は無いと思い、思考を切り替える。


 死んだから三途の川を渡ったと思ったら、いきなり軍艦になっていた。

 その事に大きな戸惑いはあるし、言いたいことも言えなかった、やりたいこともできなかった後悔もある。目標もあったし、自分なりの生き方で天寿を全うして死にたかった。

 だがら後悔しないように生きよう。これから始まる冒険と戦いの日々に於いて悔いのないように。

 ステータス画面閉じながら、そう決意した。


第1章 戦闘


 異世界(?)に生まれてから1週間が経った。

 本当は生まれ直した場所でぼんやりと過ごしたかったが、いつまでもコルベットのままでは体裁も良くないから気の向くままに移動していた。

 道中で急加速からの急停止、急上昇や急下降、急なカーブから宙返りなどを本来、人が乗っていたら失神しそうなコースを進みながら武器の威力や射程、装填に何秒掛かるか、などを試してみた。


 結果としてレールガンの場合、フルチャージで撃って最大射程は0.3光秒(約9万km)、装填に5秒程度だった。全門斉射しても同じだった。

 ミサイルは射程が0.1光秒、1発装填するのに30秒掛かるため、効率的に撃つには複数発撃ってからまとめて再装填したほうが良さそうだ。。

 まぁ、敵が弱かったり、時間に余裕がある場合はあまり気にしなくてもいいかもしれない。

 結論として、射程に関しては短いと思われる。だって10cmの弾を0.3光秒の彼方に撃てるのだから、これがもっと太く大きくなったらさらに遠くに撃ち出せるはずだ。

 一方、威力に関しては目標となる物体がないため、確認のしようがない。ただ、攻撃力が50となっているため、一定の威力はあると思う、多分。


「ふーむ、こうしてみると改めて人間じゃないな。ラノベの影響で転生モノには憧れていたが、まさか中世ではなくて未来に飛ばされるとはね。飛ばされるんだったら、せめて人間にしてほしかったね」

 あっ、でもダメか。そしたら普通に天寿を全うしそうだ。24年間行きて、根っこに染み付いた一般的に終わりたいという、願望はそう簡単に変わりそうにはないな。

 その考えに至り、苦笑しながら艦を進めていく。

 そんなこんなで移動していたら、レーダーに感あり。艦種はフィレンツェ共和国フリゲートが2隻。

 HPは400、攻撃力150で防御力100、速度は40ノット。装備は標準でこの場合、並のコルベットでは勝ち目はないだろう。しかも明らかにこっちに向かってきている。ついでに無線も傍受できた。

 内容は


 『そこの海賊艦、直ちに引き返しなさい。ここはフィレンツェ共和国の領海である』

 『直ちに引き返さない場合、撃沈する用意がある』


 だそうだ。

 全く穏やかじゃないねぇ。こっちはただのんびりと宇宙空間を移動していたのに。

 しかも海賊だと決めつけてやがる。そのため、話は通じそうにない。正直、国の軍艦を沈めるのには気が引けるが、こっちも命がかかってるんでね。先手必勝とさせてもらう。

 ということで、

「おらー!やれるもんならやってみやがれー!」

「!?」


30分後


「ふぅ、意外に時間がかかったな」

 時間がかかったのには理由があって、こっちの武装が貧弱だった上に相手は2隻と数でも劣っていた。

 さらに、常に左右から来る戦法を取ってきていた。

 だが、こっちは速度で勝っていた事にプラスして、高い立体機動で相手の死角を取って攻撃をしたので、ダメージはあまり受けなかった。

 種類上、ワンランク上だったが装備や防御力が似たようなものだったから、それで助かっていたのかもしれない。

「さてと、敵を倒したから研究ポイントが溜まってるかな~?」

 そうつぶやきながらステータス画面を開くと、こうなっていた。


【艦種:コルベット】

LV:5/5(MAX) 装備重量650/650 HP:290 MP:230 攻撃力56 防御力45 速度48ノット

固有スキル:エネルギー転換システム、物質転換システム、レーダー能力上昇【大】、レーダー逆探知システム上昇【中】、鑑定9、立体機動上昇【小】(New!)

スキル:全門斉射(New!)、連続発射(New!)、立体機動(New!)

固定武装:単裝10cmレールガン×3 4連装ミサイル発射管×6 3連装機銃×2 電磁フィールド

【研究ポイント:990】

【補足】

武装を強化したコルベット。重量が増加したため、速度が低下したが戦術によってはフリゲート艦を撃破することも可能


 やはりレベルが上がると、ステータスも少し上がるようだな。

 研究ポイントはコルベット1隻で150ポイント、と言ったところか。てか、レベルがMAXなのを忘れてた。

 戦闘に夢中だったから気が付かんかったわ。次からは少し冷静になりながら戦闘をしないとな。

「ふむ、レベルがMAXになったから何か起きると思っていたんだが・・・」


【ランクアップしますか?】


 おっ、きたきた。イエスイエス、早うランクアップしたいでござるよ。


【ランクアップ】

{多用途フリゲート}

{中型フリゲート}

{小型フリゲート}

【現在】

{コルベット}

【過去】

なし


 うん、見た感じおおよそ見当が付くがやり直しが効くかわからないため、説明がほしい。

【多用途フリゲート】

 フリゲートの中では最大の大きさを持ち、その大きさから艦隊護衛、船団護衛、基地の防衛などの他に、敵艦隊への切り込み隊などの多用途に使われる。ランクアップ時の発展性に富む。

【中型フリゲート】

 フリゲートの中では中型で、主に船団護衛に使われる。物資が不足している状況では艦隊護衛に使われるが、前線に出ることは稀である。発展性はあまりよくない。

【小型フリゲート】

 フリゲートの中では小型で、基本的に基地の防衛に使われる。発展性はほとんどない。


何なんだ、これは。小型フリゲートや中型フリゲートは完全にハズレじゃねーか。いや、こっそりと生きるんだったら別にいいのか。

 ただ、やっぱり生まれ変わったのなら強くなりたいじゃないか。だからここは発展性のある【多用途フリゲート】にするぜ。

 多用途フリゲートを選択して、決定ボタンを押した。すると・・・。


ギギギギギ・・・


 うがぁ、激しく全身が痛い、主に背骨あたりが痛い。感覚としては、全身に成長痛と筋肉痛が同時に起きた感じだ。

 その痛みに10分ぐらい悶えていると、不意に体が軽くなった。それと同時に体が少々大きくなった感じがしたので、ステータス画面で確認する。


【多用途フリゲート】

LV1/15 装備重量650/1500 HP450 MP300 攻撃力:70 防御力:100 速度:55ノット

固有スキル:エネルギー転換システム、物質転換システム、レーダー能力上昇【大】、レーダー逆探知システム上昇【中】、鑑定9、立体機動上昇【小】

スキル:全門斉射、連続発射、立体機動、一撃離脱(New!)

固定武装:単裝10cmレールガン×3 4連装ミサイル発射管×6 3連装機銃×2 電磁フィールド

【研究ポイント:2490】

【補足】

 瞬間的な攻撃力に劣るフリゲート。奇襲を受けたら押し負ける可能性あり。


 全体的にステータスは上がっているが、それでも弱い方なのか。平均の水準がよくわからんな、これ。

 でも装備重量が増えてるし、さり気なく研究ポイントが増えてるな。地味すぎて軽く見落としそうになったぜ。

 前世では大雑把に生きてきたせいか、細かい事に関して必要な時に忘れてる場合が多かったな。

 その時は別に命の危険性はなかったから良かったものの、この宇宙空間では一瞬の油断が命取りになりかねんから出来得る限り注意していこう。

 ふむ、せっかく装備重量が増えたから武装を強化していこうか。そう思い、俺は周囲に敵がいないことを確認してから作業に入っていった。


1時間後


 最初の時より時間が掛かってしまった。武装に関してだったら、迷いが少ないから別にそれほど掛からなかったのだが、乗員の居住スペースで手こずってしまった。

 その反面、手こずった分の利益があったと思うからステータスを上げておく。


【艦種:多用途フリゲート】

LV:1/15 装備重量1500/1500 HP:450 MP:300 攻撃力:250 防御力:150 速度:42ノット

固有スキル:エネルギー転換システム、物質転換システム、レーダー能力上昇【大】、レーダー逆探知システム上昇【中】、鑑定9、立体機動上昇【小】

スキル:全門斉射、連続発射、立体機動、一撃離脱

固定武装:12cm連装レールガン×4(New!) VLS(垂直ミサイル発射機)×64セル(New!) 4連装機銃×6(New!) 電磁フィールド

居住区(New!):司令室、火器管制室、レーダー哨戒室、乗員船室、食堂、医務室

【研究ポイント:850】

【補足】

 火器管制等を設けた事により、攻撃力が大幅に上がったフリゲート。その分、速度が低下したがそれを補って余りある戦闘能力がある。


 まぁ、こんな所だろう。武装だけでは300ぐらいの装備重量が余ったので、居住区の方で今すぐ必要なものを入れてみた。

 フリゲートの中でも大型だが、艦としてはまだまだ小さい方だったため、必要最低限のものしか入れられなかった。だが、それでも入れた分だけ攻撃力が大幅に上がったため、これで良しとしよう。

 ついでにほとんどの武装が変わったため、ここでまとめて解説しておく。


 連装レールガン:2発同時に撃てるレールガンで、連射と単射の2つがある。12cmの場合、1門で1分間に70発前後の弾を撃てるため、俺の艦に乗せているレールガンの場合、1分間に560発前後を連続で撃てることになる。

 VLS:艦に埋め込まれたミサイル発射機。今までは、艦の外に剥き出しの状態で設置されていたため、少しでも攻撃をもらうと暴発して装備自体が破壊されてしまう可能性があった。

 しかし、艦内にミサイルがあることで攻撃をもらってもすぐに使えなくなる、という心配がなくなるため、これを装備できるようになってからすぐに今までのミサイル発射機と取り替えた。

 4連装機銃:主に近接防衛用の武装。今までは手動で標的を狙っていたが、火器管制システムによって自動的に自分にとって脅威になるものを識別。

 その中で、脅威が高いものから迎撃するようになった。ミサイルやレールガンとの連動も可能。


 まぁ、こんなところか。いやぁ、武装やら何やらを研究開発して自分で装備できるって嬉しいね。

 今までに読んできたラノベやらマンガやらだと、軍艦に乗るようなSFは少なかったし、転生モノに関しては大きな流れの中で強くなっていくようなのが多かった。

 そのため、特に大きな目的や目標もなく、自分の考えで好き勝手できるのが新鮮に感じる。

 とは言え、強くなる、という目標があるから他の物語と大差はないのかもしれないが、軍艦そのものになった興奮が強かったため、あまり気にならなくなっていた。

 「よっしゃー!どんどん強くなるぞー!」

 そう言って、俺は銀河の彼方へと移動していったのだ。


 一方、同時刻のフィレンツェ共和国では・・・


「なにぃ!正体不明感に撃沈されただとぉ!」

 そう部下に怒鳴った太った男、フィレンツェ・アッカーマンはフィレンツェ共和国の初代皇帝なのだ。

 皇帝と名乗っているがその実、辺境の特にめぼしい特産品もない開拓してできたばかりの3つの惑星を、貴族の次男坊が仕切っていた。

 ではなぜ、貴族の次男坊がこんな辺境の惑星にいるのかというと・・・

「はい、定時連絡がなかった当該艦に不審に思った連絡員が、近くにいたコルベットに最後に定時連絡があった場所周辺を捜索したら撃沈されたようでして・・・」

「言い訳はいらん!撃沈させた海賊船を探しだぜ!じゃないと貴様はクビだ!」

「は、はいぃ!」

 部下は焦ったように返事をして、慌てて執務室を出ていった。

 とまぁ、こんな感じでものすごく短気な上、無能な割には事あるごとに自分が貴族の次男坊であることを周囲に振りかざしている、悪い意味での典型的な貴族であった。

 そのため、両親から勘当に近い左遷を受けたが本人は全く理解せず、寧ろこうなったのは全て両親が悪い、とまで思っていた。

 その結果、開発援助を全くしない事からその地域の国力は全く上がらず、当然そこのいる人達は飢える一方、インフラや艦の整備すらままならない状況になっている。

 その上、国外逃亡する者が後を絶たず、出国禁止が発令しているものの警備隊の面々も裏で糸を引いているため、あって無いも同然になっていた。


~~~~~~~


 この世界に来て、初めての戦闘から三周間が経った。あれから30回以上の戦闘があって、100隻近いコルベットを撃沈したため、レベルが10も上がった。

 それと同時に、コルベットの時より確実に力が上がっているのを確認できた。だが、この戦闘を通して一つの疑問が出てきた。

 それはほとんどの艦が手負いの状態で、中には修理するよりそのまま廃艦した方がいいだろうと思う艦もあった。

 一般的に戦闘をする艦に限らず、一般的な船も含めて壊れた箇所が出た場合、基地や拠点で可能な限り修理することが原則になっている。

 何故かと言うと、海に浮かぶ船の場合、場所によっては嵐などが無くても浸水するし、電気系統が壊れて遭難する場合もある。

 何よりも乗員の安全を確保する上でも、壊れた箇所を無くさないと国際上、大問題になりかねない。これはおそらく、この宇宙空間でも同じことが当てはまるはずだ。

 ここから考えられるのは、軍艦を多数運用している人物がよほどのケチな人か、部品を横流ししているか、もしくはどこかで戦争しているのではないか。

 可能性からして、一番最後のはない。そんな大規模な戦闘があるのなら、俺のレーダーに引っかかるし、他のタイプの艦もあっていいはずだ。

 今まで出会ってきた艦以外のタイプの残骸すら無い事から、最後のはなし。

 2番目の可能性の場合、軍艦以外の船を見かけたらすぐに鑑定しているが、目立った所で軍の部品は検知できなかった。

 細かい部分であったかもしれないが、横流しが横行している地域で、そこまで細かくする必要が無いと個人的に思う。

 となれば、一番最初の軍の幹部、もしくはその上がケチってる可能性。この場合、様々な要因が重なっているため、特定は難しい。政府の収入の低さ、需要供給のアンバランス、その地域の気質などである。

 なにはともあれ、楽なのには変わりないがレベルが上がりすぎて、相手が弱くなってしまった。一週間が過ぎた頃から、敵が発射した弾を自分の体に命中させること難しくなってしまった。

 むぅ、もうちょい強い相手を探しに他の地域にでも進出した方がいいのだろうか。しかし、政治情勢がわからない上に、関門なんかがあった面倒になりかねない。

 せめて人間でも載せてたら楽なのになぁ、チラッチラッ。そしたら適当に見繕うことができるのに。

 そんな事で遭難した船などがないか探していると、レーダーに反応があった。えーと、艦種は・・・駆逐艦、5隻・・・だと?しかも、こっちに向かってきてるしー!?

 えええええ、ついに共和国も本気出し始めたの?いくら強化したフリゲートとはいえ、無傷の駆逐艦相手に2、3隻撃破できればいい方だよ?それなのに5隻ってありえないでしょって、ん?

 ・・・これも正常に機能していないな。鑑定の結果、おそらく故障しているんじゃなくて、装備自体が古すぎてオンボロになってるんだな。

 だったらまだ、希望があるな。よっしゃ、やったるか!多用途フリゲートの力、見せてやんよ。

 その後、1時間かけて1隻ずつ確実に撃破させていった。相手は装備がオンボロだったせいで、まともにレールガンなどを動かせないでいたが、圧倒的に不利な状況でも何発かは当ててきていた。

 普通のフリゲートならばそれで大破確定なんだろうが、電磁フィールドである程度ダメージは軽減できたし、自動回復のおかげで大事には至らなかった。

 ともあれ、勇敢な彼らに黙祷を捧げつつ、次に向けてどうするかを決める上でステータス画面を開ける。


【艦種:多用途フリゲート】

LV:15/15 装備重量1500/1500 HP:600 MP:420 攻撃力:380 防御力:240 速度:42ノット

固有スキル:エネルギー転換システム、物質転換システム、レーダー能力上昇【大】、レーダー逆探知システム上昇【中】、鑑定9、立体機動上昇【小】、ダメージ軽減上昇【小】(New!)

スキル:全門斉射、連続発射、立体機動、一撃離脱、ダメージ軽減(New!)

固定武装:12cm連装レールガン×4 VLS(垂直ミサイル発射機)×64セル 4連装機銃×6 電磁フィールド

居住区:司令室、火器管制室、レーダー哨戒室、乗員船室、食堂、医務室

【研究ポイント:17900】

【補足】

 火器管制等を設けた事により、攻撃力が大幅に上がったフリゲート。その分、速度が低下したがそれを補って余りある戦闘能力がある。


 ふむ、今回の戦闘でスキルが増えてるな。研究ポイントが凄いことになっているが、100隻近いコルベットを沈めた上に、さっきの戦闘で大幅に増えてるな。

 オンボロだったのも加味しても1隻500ポイントとは、現時点ではでかい。これが巡洋艦や戦艦だったら、更に凄い事になってるな。

 とはいえ、今では使い所がないので放置しておく。どうせ、ランクアップした時に更に増えるしね。

 という訳で、ランクアップ画面、カモ~ン。


【ランクアップ】

{大型駆逐艦}

{護衛駆逐艦}

{対艦重視型駆逐艦}

{対空重視型駆逐艦}

{対潜重視型駆逐艦}

{哨戒型駆逐艦}

【現在】

{多用途フリゲート}

【過去】

{コルベット}


 うっは、前回の説明の時にランクアップ時の幅が広いって言ってたけど、5種類あるとはね。

 その中でも一番気になるのが、大型駆逐艦だな。前回もそうだったが、なぜ迷いもなく大型のものを選ぶかというと、汎用性の高さ、簡単に言ってしまえば、使い勝手の良さがそこにあるからだ。

 周回プレイやリプレイができるゲームならともかく、一つの選択肢で生死を分けることになってしまう現実からすると、わざわざハードプレイにする理由がない。

 とはいえ、説明を聞かずに即決して決めるのも危ないし、面倒くさくとも説明は聞こう。


【大型駆逐艦】

 駆逐艦の中でも大きめのものを指し、武装によっては対艦重視型や対空重視型にもなれるだけの余裕も持つ駆逐艦である。多用途フリゲートと同じように発展性に富む。

【護衛駆逐艦】

 駆逐艦の中でも中型のものを指し、装備も限られる。用途としては、基本的に艦隊護衛や船団護衛など数の暴力によって使われる。そのため、ランクアップ時の発展性も限られていて、軽巡洋艦や巡洋戦艦までが限界である。

【対艦重視型駆逐艦】

 船体の大きさは大型駆逐艦と同規模だが、武装及び防御システムは対艦用が中心になる。装備自体は豊富だがその反面、速度が遅くなりがちなため、主に移動砲台として使われる。

【対空重視型駆逐艦】

 船体の大きさは大型駆逐艦と同規模だが、武装及び防御システムは対空用が中心になる。装備は敵航空機及び敵ミサイルを撃破するものに限られるため、敵艦との戦闘になった場合に攻撃面で不安が残る。

【対潜重視型駆逐艦】

 船体の大きさは大型駆逐艦と同規模だが、武装及び防御システムは対潜用が中心になる。装備は敵潜水艦を発見追尾し、撃破を主目的にしているので、その他の装備は最低限しか開発できない。

【哨戒型駆逐艦】

 駆逐艦の中でも小型のものを指し、主に偵察や基地の防衛にしか使われない。まさにハズレくじ。


 ふーむ、思っていた通りだな。大きさ自体は、護衛駆逐艦や哨戒型を除けば大体同じようだし、いわば運用次第で種類が変わってくるようだな。

 生まれた場所次第では、一つの分野に特化してもいいとは思うが、何かしらの支援や後ろ盾がない以上、ここは大型駆逐艦にしておくのが無難だろう。

 ということで、俺は大型駆逐艦にするぜ!


 OKボタンを押したと同時に、前回と同じように全身に痛みが走った。


 それから10分ぐらい悶ていたが、本当に痛かった。いや、前回より痛みは感じなくなっているが、それでも痛いものは痛い。

 ふーむ、なんで痛みを伴うランクアップの仕方にしたのか、理由がわからんな。まぁいい、そんな事よりステータスチェックだ。ランクアップ後のステータスの確認だけは譲れん。


【艦種:大型駆逐艦】

LV:1/25 装備重量1500/3000 HP:800 MP:550 攻撃力:500 防御力:420 速度:45ノット

固有スキル:エネルギー転換システム、物質転換システム、レーダー能力上昇【大】、レーダー逆探知システム上昇【中】、鑑定9、立体機動上昇【小】、ダメージ軽減上昇【小】

スキル:全門斉射、連続発射、立体機動、一撃離脱、ダメージ軽減

固定武装:12cm連装レールガン×4 VLS(垂直ミサイル発射機)×64セル 4連装機銃×6 電磁フィールド

居住区:司令室、火器管制室、レーダー哨戒室、乗員船室、食堂、医務室

【研究ポイント:22900】

【補足】

 ごく一般的な駆逐艦。


 ふーむ、ステータスが軒並み上がってるな。この時点で、フリゲートにランクアップする直前の頃と比べると、10倍ぐらいにまでなってる。

 ランクアップしたら、一時的にでもステータスが下がるんじゃないか、とも考えたんだが、そうでもなさそうだ。

 ともあれ、これで新たに装備できるものも増えたんだし、研究ポイントを使ってじゃんじゃん装備を増やしていく・・・おん?なんだ?


【メッセージが届きました】

【艦隊を組めるようになりました】

【5隻を選んでください】

【貴方を含めて6隻までは編成を自由に組めるようになりました】

【この艦隊を使い、貴方の思うように生きて動かしてください】

【Good Luck】


・・・は?


~~~~~~


 彼が駆逐艦になった同じ日の夜、首都にほど近い貧村。その中のとある家に5人の人影が集まっていた。

 その村は、25年前に土地の開発が比較的されていたこの地域では、とある事故で開発に失敗。そのため、国は開発を放棄。

 国は、そこに住んでいた村人たちを強制移住させようとしたが、村人たちは断固反対の姿勢を通した。

 そのため、仕方なしに働き手を他の場所に借り出して、重労働を課していた。その結果、その村のただでさえ苦しかった生活が、余計に苦しくなってしまったのだ。

 そしてこの夜、数人の人影が集まった。

 その理由とは、以前から練っていた計画を実行するかどうか、を決める事となった。


「さて、以前から練っていたこの計画、実行する時が来たようよ」

 そう言って最初に口を開いたのは、リーダーらしき10代後半の女性。

「理由はわからないけど最近、軍の上層部が慌ただしくなってきたのよ。だから、今日中に・・・」

「待ってください!」

 そう叫んだのは、リーダーらしき女性の話を遮ったのは彼女の妹に当たる人物だった。

「いくらなんでも早急すぎます!それに脱出するにしても、8cm単裝レールガン2門で巡洋艦を相手にするのは無謀すぎます!」

「だけど、もう私たちには余裕が無いの。リン達が人質に取られている以上、命だけはと思い、出せるものは出してきた。でも、もう限界なのよ」

「だけど・・・!」

「カノン、気持ちはわかる。私もできれば反対したいんだ。だけどもう、この手しか無いんだ」

 そう静かに言ったのは、黒髪の女性だった。

「くっ・・・、わかった。だけどあの巡洋艦が稼働しているときにして頂戴!でないと承服しかねます!」

「わかったわ。でも、今回で絶対に出るわよ!では、解散!」

 そう言って、彼女たちは各々の家に帰っていった。


 ここで、彼女たちの置かれている状況についておさらいしておく。

 彼女たちは元々、フィレンツェ共和国の生まれではない。特に、リーダー格の女性とカノン、リンはとある貴族の三姉妹の令嬢達で、黒髪の女性も含めて6人の女性たちが彼女たちの旧知の仲、と言っても過言ではないほど仲が良かった。

 今回、リンが15歳の成人となったため、訓練を兼ねて宇宙空間に出たのだ。姉たちやその友人たちは、その手伝いとしてたまたま乗り合わせていたのだ。

 しかし、その道中でエンジントラブルに見舞われて、この星に不時着したのだった。

 本来、その星のトップに立つものに、その星の衛星軌道にある宇宙ステーションに牽引する義務が生じるが、皇帝であるフィレンツェ・アッカーマンはこのことを無かった事にしようとしているのだ。

 そのための人質であり、彼女たちが乗っていた戦闘艦は没収していたのだった。

 その上、不慣れな重労働をも課せていたため、彼女たちの不満が溜まっていった。そして、とある計画を立案し、実行に移そうとしていたのだ。


 そしてその1ヶ月後、この世界に艦として転生した彼に最初の試練が待ち受ける事になるのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ