ある日突然に0083
城の城壁にある城門は馬車にて潜ったんだが…
彼方は跳ね上げ式の城門となっており、深い掘りへ跳ね橋を降ろしてある形式となっていた。
そして俺達が今から入るのが城本体への入り口だな。
玄関って言って良いんだろうけど…
「巨人でも潜るのか?」
思わずな。
俺の呟きが聞えたのか宰相様が面白そうに笑う。
「巨人が潜るは良かったですね。
まぁ、確かに、此処の観音扉は大き過ぎますな。
開け閉めも数人掛かりにて朝晩に行っております。
そうですなぁ、見栄の様な物でしょうか。
横の通用門を使用しても全く問題はないのですが…
大きく大仰に見せた方が有り難味でもあると当時の王は考えたのでしょうかねぇ」
宰相様も俺が感じている様に無用な代物と思っている様だ。
ま、建て替える訳にもいかないだろうしな。
さて、そんな開け放たれた大門を潜り城内へと。
門番もだが衛兵が巡回している。
警備は厳重な様だな。
それ以外にも使用人や文官達が行き交っている。
物語などで王様へ謁見が日々行われ、謁見希望者が控え室にて待つ…そんな事は行われないそうだ。
陛下との謁見は手続きを経て許された場合にしか有り得ない。
庶民が謁見を許される事などは、まず無いと言って良いだろう。
貴族であろうとも男爵や子爵クラスの者達では無理だ。
伯爵クラスにて手続きを行う事で、漸く謁見許可を得られる。
まぁ此れは侯爵であっても同じだな。
その後で日程調整を経てから漸く謁見となる訳だ。
これが公爵ならば話しは別となる。
陛下との謁見に対しては日程調整などが行われるが謁見許可などは不要なのだとか。
まぁ公爵クラスは王家と親戚筋の家柄の方々だから他の貴族とは扱いが違っても当然とも言える。
特に王家を補佐する地位に於いては公爵家の方々が就いておられる形となっているそうだ。
だから陛下と容易く謁見が行える事は少ないと言える。
だが、逆の場合は容易いくらいに謁見へと話が進む事がある。
親父様が在野の者だった時に呼び出されて謁見した時とかな。
そして今、俺が呼び出されて謁見となる様な感じか。
本来は伯爵家の嫡男程度の者が軽々しく陛下と謁見する機会など与えられるものでは無い。
なのに呼び出しにて謁見って…
俺、何かしたか?
『だぁ~らぁっ、鎧を親父さんへ贈ったさかいに謁見騒ぎになったんやろ』
『そうであるぞ。
あの様な高性能甲冑を贈った事が原因であるや』
『ほんに主さんは考え無しで動きなんしなぁ』
だぁぁぁっ、父親に誕生日プレゼントを贈っただけじゃねぇーかぁっ!
『う~むぅ。
おいどんは一緒に造った立場でごわす故、何も言えんでごわすなぁ~』
まぁサラマンディルは知らんが、男なら高性能甲冑などの開発は燃えるもんだ。
なぁ、ノームル。
『そうでごわす。
あれにロマンを感じもうさん男は漢とは言えんでごわんど』
そうだよなぁ。
『酷い言われようやなぁっ!』
いや、事実だからってさぁ、そんなに憤らなくてもなぁ。
などと高速思考を行わずに精霊達と雑談しつつ移動する。
階段を上がり2階へと到る。
5歳児の俺には、この移動は少々キツイかも。
しかも曲がりくねった通路は道を惑わす様な感じか?
これは1人だったら迷うな。
っか、これは攻められた場合に王の元へ容易く辿り着けなくしてあるのか?
恐らくはそうなのだろう。
そして謁見の間へと。
陛下が鎮座される玉座と入り口までを天鵞絨の絨毯が繋ぐ。
その絨毯を挟む形で左右に近衛兵が立ち睨みを効かせている。
俺は宰相閣下と共に絨毯を進んで陛下の前まで進む。
そして臣下の者が跪くべき場所にて止まり跪き頭を垂れる。
そんな俺の行動に宰相様が驚いた様に告げた。
「これこれ、5歳児なのに誰から教わったのやら。
流石に無理に連れて来て、教養を身に付けた者共と同様の作法を教養はせぬ。
頭を上げよ」
「うむ、セドリックが言う通りじゃ。
朕が許す。
面を上げよ」
陛下より許しを得て頭を上げる。
まぁ、跪いた侭なので、壇上の玉座に玉体を納めた陛下を下から見上げる形になるけどな。
五歳児の体だと仕方ないんだよね。
見上げるから首が痛くなるぜっ!
そんな俺を見兼ねて陛下が申される。
「そんなに畏まらぬとも良い良い。
もそっと近う寄れ」
その様に仰るので、思わず宰相様の顔を見てしまう。
すると宰相様が頷くので、仕方なく立ち上がり陛下の下へと。
俺が近付くと陛下が訝しげに俺を見て告げる。
「はて?
ゼネティスの子は男児と聞いておったが…
可愛い幼女ではないか。
朕が聞き間違えたのかのぅ?」
不思議そうに…
って、俺は男、男の子ぉぉっ!
そんなん言えたら言いたいが、相手は王様、国王陛下。
口が裂けても言えましぇ~ん。
「陛下。
ガリル殿は男で御座います」
宰相様が耳打ち。
いや、俺達にも聞えているからね。
それって耳打ちした意味があるの?
つっか、近衛兵の辺りから…
「なっ、男の娘、だ、とぉっ!」
っう呟きがな。
確かに男の子だが、そこまで驚愕する事か?
「幼女な、男の娘…有りだな」
いや、幼女と男の子は両立しませんからねっ。
っか、何が有りなんだよっ!
てか近衛兵、それで良いんかいっ!




