ある日突然に0081
魔術学術院へ登校する所ではなくなっちまったなぁ。
俺達の後ろへと来ていたお袋様へ俺は頼む事に。
「何故かお城へ登城して陛下と謁見せねばならない様です。
母上、学術院の方へ休む事を伝えて頂けますか?」
俺が、その様にお袋様へ頼んでいると…
「それには及びませぬ。
魔術学術院の方へは城から連絡を入れております故、ご安心の程を」
宰相様がお袋様へと告げる。
いや、そこは俺へじゃ無くてお袋様へなのね。
そんな宰相様へお袋様は微笑みながら告げる。
「それは態々恐縮ですわ。
そして、この度の騒動を主人が引き起こしまして申し訳御座いません。
愚亭に代わり謝罪致します」
「ちょっ!
愚亭って…おまえ…」
親父が不満そうに。
そんな親父をお袋様がキッと睨み告げる。
「アータァァァッ。
アータが城でガリルから送られた鎧を無駄に自慢しなかったら騒動になっていないですわよねぇっ。
分かっているんですのぉっ!」
うっひぁぁっ、覇気がぁぁっ、覇気がぁぁぁ!
親父が完全に萎縮って…あ、有得ん。
そんなお袋様に冷や汗を掻きつつ宰相様が告げる。
「まぁ、まぁ、ゼネティス殿は近衛の控え室にて同僚に尋ねられ軽く応えただけとか。
それを鎧の性能を無断で鑑定した者が言い触らした故に騒ぎになったらしいですな。
噂とは内容が異なる様ですな」
えっ?親父が城で自慢して回ったって聞いてるんだけど…
俺は近くにいた執事を見る。
「ふむ。
私が聞いた話は噂の類でしたか」
うぉぉぉぉいっ、ダメじゃん。
ま、親父様に直接聞かずに執事に尋ねた俺も悪いんだけどさ。
困ったものです。
そんな事を思っていると、宰相様が顎に手を当てて何やら考え込んでいる。
そしてボソリと。
「ふぅむ。
ゼネティス殿が言う事を聞かない場合、奥方に御連絡すると言う手も…」
そんな不穏な言葉が漏れ聞えたのか…
親父が必死な目で宰相を見て小刻みに顔を左右にと。
いや、必死やねぇ。
そんな親父殿を生贄に、俺のターンってな。
「では宰相様、参りましょうか」ってよぉっ。
『ちょっ、生贄ってw』
何やらサラマンディルが喜んでいるが…良いか。
「さようですな。
思わぬ収穫も御座いましたし、参りましょう」
そう告げる宰相様と共に馬車へと。
おおぅ、この馬車は親父殿から陛下へと献上した馬車ですな。
つまり俺達が王都迄の移動にて用いた俺とノームルが開発した馬車だ。
この馬車は、この世界には此処にしか存在しない。
他国には無い代物だ。
人には同じ品は造れないのでな。
サスペンションの仕組みを解析したければ馬車を分解せねばならないけど、硬質過ぎて解体不能なのさ。
無理やりバラバラにしたら原型を留める事は不可能だろう。
そうなれば解析どころでは無い。
だから真似て造る事も出来ないってな。
故に、この馬車は我が家と王家しか所持していない品となる。
今日は陛下の遣いとして来られたので馬車を貸与されたのかな?
そんな事を思っていると宰相様が呟く様に…
「しかし…この馬車は真に素晴らしいですなぁ。
ゼネティス殿より献上された聞き及んでおりますが…
この馬車を開発された方を御存知ありませんかな?」
探る様な目で俺を見る。
「えっ?
何で私に尋ねられるのでしょう?」
逆に不思議そうに聞き返して…みた。
如何でしょうか?
すると宰相様が俺を見詰めて更に問う。
「ゼネティス殿の鎧をプレゼントされた様に、馬車を造る職人をご存知かと思いましてね。
御存知ありませんかな?」
なんで、そんなに知りたいのかねぇ。
疑問に思ったので尋ねる事に。
「どうして馬車を造った職人を知りたいのです?」
そう尋ねたら、深刻そうに告げられる。
「私は国内の視察に毎年赴かねばならないのですが…
その際に乗る馬車での旅行きが非常に苦痛でしてな。
この国の宰相は年3期制で交代で宰務を回しておるのです。
私の場合は1期が宰相業務となり、2期が国内の視察ですな。
3期目は休養期となりますが、自領の経営に対する残務整理などに追われます。
問題は国内視察なのです。
あの振動がキツイ馬車にて各地を廻るのは非常に辛くてですな。
故に、出来るならば、この馬車と同系統の馬車を調達できぬかと」
いやいや、思ったより切実な理由だったんだねぇ。
本人は告げなかったんだけど…風精霊から余計な情報がね。
強烈な振動を伴う馬車の移動を長期間強いられる事で、3宰相全員が痔持ちなんだとか。
そんな痔持ちの者が振動の強い馬車に揺られて視察行ってか。
そら厳しいわなぁ。
なので、切実な感じで尋ねられるっと言う訳やね。
「分かりました。
その辺りは父にも相談しておきましょう」
どうやら親父様とは業務的にも親しくはなれない様で、つい息子の俺へ告げてしまったみたいだ。
色々とご苦労様です。
「おお、さようですか。
申し訳ないのだが、是非とも」
そう告げて俺の両手を押し頂く様に握る。
いや、野郎に手を握られる趣味は無いんですけどね。
是非とも放して頂きたいものです。




